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長芋と水出汁
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金髪ヤンキーの言葉に大人しく従い、調理を始める
命令口調はどうなの? 文句も言わずに従っていいのかって?
いいよ! だっておなか空いてるから! 霊力なぞ知らん! 食べ物をよこせ!
「じゃあ残りの調理をしますね」
「あ? マグロを白飯に乗せるだけじゃないのか?」
「はい。今日のメニューは山掛けマグロ丼ですから」
金髪ヤンキーに答えながら、調理台の上にあった長芋を手に取る。
そう! 今日はマグロだけじゃなく、長芋も使うのだ!
山掛けマグロ丼。
それはまさにファンタジー。
マグロのうまみに山掛けのとろっとした食感が加われば、ごはんがするするとおなかに入ってしまう。
というわけで、長芋に巻かれていたラップを取っていく。
これもスーパー、スリースマイルで買ってきたものだ。
そして、半分だけ皮を剥くと、おろし金ですりはじめる。
「……皮、残ってんぞ」
「これはわざとです。全部の皮を剥いてしまうとつるつる滑ってやりにくいので。皮のところを持つと滑らずにおろせるんですよ」
「へぇ」
「ほら、あっという間」
長芋は滑るのさえ気をつければ、簡単にすり下ろせる。
水分が多く、身も柔らかいからだ。
そうして、さっとできたとろろに醤油をさっとかける。
それを見て、金髪ヤンキーが目をぱしぱしと瞬かせた。
「先に味付けすんのか?」
「まあ好みですけどね。普通のとろろごはんなら後でいくらでも混ぜられますけど、マグロが入ると混ぜるというよりはこう縦にすくって食べるみたいになるじゃないですか。それだと味がばらけてしまうので、今回は先に味付けしようかな、と」
「……色々考えてるんだな」
「まあ」
さらに言えば、味の付け方も色々と考えている。
今回は甘めのタレに漬けたマグロに合わせて、長芋の味付けは醤油だけにした。甘さは長芋の本来持っているもので十分だろう。
「で、次は残った長芋の皮も剥きます」
「なんでだ?」
「私、長芋ってとろろも好きだけど、あのシャリシャリ感も好きなんです」
長芋のおいしさはその食感の変化だと思う。
とろろにすればとろとろに。火を通せばホクホクに。そして、生のままカットすればシャリシャリ食感を楽しめるのだ!
「なんで今回の料理を正確に言えば、『漬けマグロにとろろをかけ、短冊切りの長芋をごはんの上に添えました』ですね」
「……長ぇ」
「ほら、推しっていろいろな側面を持っているじゃないですか。それと同じで長芋も調理の仕方によって全然違う。じゃあ、どの推しが好きなの? って聞かれるけど、違うんですよね。どの推しっていうか、推しのその全部が好き。いろんな推しを堪能したい。だから、私は長芋も堪能したい」
「お前、時々何言ってんのかわかんねーな」
「すみません。オタクなんで」
そうして会話をしている間に長芋を短冊切りにし終わる。
切り終わった長芋は器に取り、空いた包丁とまな板をさっと洗った。
「で、もう一品作りますけど」
「いてっ」
「これがさっき猫にあげたマグロにかけた出汁です」
手をさっと拭き、金髪ヤンキーの持たれていた冷蔵庫をぱたっと開ける。
もたれていた金髪ヤンキーを無理やり動かしてしまったが、深く考えない。
そうして、冷蔵庫から取り出したものをはい、と渡すと、金髪ヤンキーはぎゅっと眉間に皺を寄せた。
「……これが?」
「はい」
「これ、麦茶じゃねーのか」
金髪ヤンキーが手に持ったアクリルのピッチャーをしげしげと眺めている。
そう。それは夏にホームセンターなんかでよくみかける、麦茶などを入れておく冷水筒。
今はそこに薄く色のついた液体が入っていた。
「これは麦茶じゃなくて、水出汁です」
「みずだし?」
「ほら、出汁って昆布を水につけて時間をおいて、温めたあとに鰹節を入れるとかいろいろあるじゃないですか」
「ああ。そんなに詳しくは知らねーけど」
「あれ毎食はさすがにしんどいので、こうして昆布や煮干しを水に入れておくんです」
水出し用のポットを使えば、お茶パックを入れておくような付属の部品がついてたりするので、本当に便利。
冷蔵庫に入れておけばできるし、そこそこ日持ちもするから、使い勝手もいいし。
その水出汁を適量片手鍋に入れる。
とぽとぽと鍋に入る水出しはほんのり色づいた黄金色だ。
すると、その様子を見ていた金髪ヤンキーがぼそりと呟いた。
「……霊力が漏れてる」
「せやろぉ? うまそうやなぁ」
「霊力出汁だな」
霊力出汁とは。
命令口調はどうなの? 文句も言わずに従っていいのかって?
いいよ! だっておなか空いてるから! 霊力なぞ知らん! 食べ物をよこせ!
「じゃあ残りの調理をしますね」
「あ? マグロを白飯に乗せるだけじゃないのか?」
「はい。今日のメニューは山掛けマグロ丼ですから」
金髪ヤンキーに答えながら、調理台の上にあった長芋を手に取る。
そう! 今日はマグロだけじゃなく、長芋も使うのだ!
山掛けマグロ丼。
それはまさにファンタジー。
マグロのうまみに山掛けのとろっとした食感が加われば、ごはんがするするとおなかに入ってしまう。
というわけで、長芋に巻かれていたラップを取っていく。
これもスーパー、スリースマイルで買ってきたものだ。
そして、半分だけ皮を剥くと、おろし金ですりはじめる。
「……皮、残ってんぞ」
「これはわざとです。全部の皮を剥いてしまうとつるつる滑ってやりにくいので。皮のところを持つと滑らずにおろせるんですよ」
「へぇ」
「ほら、あっという間」
長芋は滑るのさえ気をつければ、簡単にすり下ろせる。
水分が多く、身も柔らかいからだ。
そうして、さっとできたとろろに醤油をさっとかける。
それを見て、金髪ヤンキーが目をぱしぱしと瞬かせた。
「先に味付けすんのか?」
「まあ好みですけどね。普通のとろろごはんなら後でいくらでも混ぜられますけど、マグロが入ると混ぜるというよりはこう縦にすくって食べるみたいになるじゃないですか。それだと味がばらけてしまうので、今回は先に味付けしようかな、と」
「……色々考えてるんだな」
「まあ」
さらに言えば、味の付け方も色々と考えている。
今回は甘めのタレに漬けたマグロに合わせて、長芋の味付けは醤油だけにした。甘さは長芋の本来持っているもので十分だろう。
「で、次は残った長芋の皮も剥きます」
「なんでだ?」
「私、長芋ってとろろも好きだけど、あのシャリシャリ感も好きなんです」
長芋のおいしさはその食感の変化だと思う。
とろろにすればとろとろに。火を通せばホクホクに。そして、生のままカットすればシャリシャリ食感を楽しめるのだ!
「なんで今回の料理を正確に言えば、『漬けマグロにとろろをかけ、短冊切りの長芋をごはんの上に添えました』ですね」
「……長ぇ」
「ほら、推しっていろいろな側面を持っているじゃないですか。それと同じで長芋も調理の仕方によって全然違う。じゃあ、どの推しが好きなの? って聞かれるけど、違うんですよね。どの推しっていうか、推しのその全部が好き。いろんな推しを堪能したい。だから、私は長芋も堪能したい」
「お前、時々何言ってんのかわかんねーな」
「すみません。オタクなんで」
そうして会話をしている間に長芋を短冊切りにし終わる。
切り終わった長芋は器に取り、空いた包丁とまな板をさっと洗った。
「で、もう一品作りますけど」
「いてっ」
「これがさっき猫にあげたマグロにかけた出汁です」
手をさっと拭き、金髪ヤンキーの持たれていた冷蔵庫をぱたっと開ける。
もたれていた金髪ヤンキーを無理やり動かしてしまったが、深く考えない。
そうして、冷蔵庫から取り出したものをはい、と渡すと、金髪ヤンキーはぎゅっと眉間に皺を寄せた。
「……これが?」
「はい」
「これ、麦茶じゃねーのか」
金髪ヤンキーが手に持ったアクリルのピッチャーをしげしげと眺めている。
そう。それは夏にホームセンターなんかでよくみかける、麦茶などを入れておく冷水筒。
今はそこに薄く色のついた液体が入っていた。
「これは麦茶じゃなくて、水出汁です」
「みずだし?」
「ほら、出汁って昆布を水につけて時間をおいて、温めたあとに鰹節を入れるとかいろいろあるじゃないですか」
「ああ。そんなに詳しくは知らねーけど」
「あれ毎食はさすがにしんどいので、こうして昆布や煮干しを水に入れておくんです」
水出し用のポットを使えば、お茶パックを入れておくような付属の部品がついてたりするので、本当に便利。
冷蔵庫に入れておけばできるし、そこそこ日持ちもするから、使い勝手もいいし。
その水出汁を適量片手鍋に入れる。
とぽとぽと鍋に入る水出しはほんのり色づいた黄金色だ。
すると、その様子を見ていた金髪ヤンキーがぼそりと呟いた。
「……霊力が漏れてる」
「せやろぉ? うまそうやなぁ」
「霊力出汁だな」
霊力出汁とは。
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