4 / 5
漬けマグロ
しおりを挟む
「猫にあげたのをもう一回作れってことですか?」
「ああ。どうやって霊力を込めたのかどれぐらい霊力が入っていたのかを知りたい」
「はぁ」
当たり前だけど、私はいつも通りに作っただけだ。
霊力なんてものを入れたつもりはこれっぽっちもない。
それに、もう一度猫にあげたものを作れと言うのは物理的に無理なのだ。
「すみません。同じものは作れないです」
「あ? なんでだ?」
「マグロなんですけど、もう漬けにしてしまって……」
「づけ?」
「はい。漬けマグロです」
スーパーの特売の赤身のマグロをおいしくさせる魔法の調理法。それが漬けだ。
私は醤油とみりんで作ったの甘めのタレが好きで、すでに猫にあげた以外のマグロは漬けてしまった。
マグロの赤身に少しずつ醤油が染み、色がついていく。
みりんのアルコール分が生臭さを抑え、その甘味でマグロの味をしっかりと引き立ててくれる。
……食べたい。
今、この瞬間にもマグロはどんどんおいしくなっているはず。
それを思うと、おなかがぐぅと鳴った。
「なに、腹を鳴らしてんだよ。じゃあ、それでいいから見せてみろ」
「あ、はい」
猫とか霊力とかどうでもいい。一刻も早く食べたい。
金髪ヤンキーにマグロを見せて解決するのならば、さっさと見せて、ささっと夜ごはんにありつきたい。
なので、私は特に反論もせず、金髪ヤンキーを連れ、ダイニングの向こう側。キッチンへと共に足を踏み入れた。
「結構きれいだな」
「そうですか? 今はいろいろと出てますけど」
一人暮らしにしてはそこそこ大き目なキッチン。
調理途中ということで調理台の上は散らかっていたのだけど、金髪ヤンキーにはきれいにみえたようだ。
「あ、これが漬けマグロです」
調理台の上にある金属のバット。
その中にはマグロがきれいに並び、タレに漬けこまれていた。
「うまそう」
「おいしそう」
金髪ヤンキーと私。揃って、思わず言葉をこぼしてしまう。
醤油とみりんで作った、少しとろみのあるタレに漬けられたマグロ。
その赤い身はそんな私たち二人に応えるようにきらっと光った。
「せやろ? たったそれだけなのに霊力満タンやろ?」
金髪ヤンキーと二人、ごくりと喉を鳴らしていると、のんびりとした猫の声が響く。
そちらを向けば、対面式のカウンターの向こうからこちらを覗いていた。
どうやら、ダイニングテーブルの椅子に座っているようだ。
「あ、ああ。そうか、そうだったな。霊力な。ああ」
じっと漬けマグロを見ていた金髪ヤンキーが猫の言葉にハッとした。
そして、誤魔化すように言葉を続けた。
「このマグロ、既に霊力が満ちている」
「本当ですか? 私には全然わからないですけど……」
普通のマグロだけど。
普通においしそうな漬けマグロだけど。
「このマグロはスーパーで買ったのか?」
「はい。すぐそこのスーパー、スリースマイルです」
「そこなら俺も行く。あそこの鮮魚売り場に霊力の満ちたものなど見たことがない。だからやっぱりお前が霊力を持っているんだと思う」
「せやなぁ。スーパーでこんな霊力入りの魚を売ってくれるんなら、あやかしがわっさわっさと来るやろうしなぁ」
「ああ。こんな霊力マグロが売ってあったら、大混乱だろうな」
霊力マグロとは。
「この後、まだ調理するのか?」
「あ、はい。今日は丼ものにしようと思っていたので」
金髪ヤンキーの言葉に頷くと、金髪ヤンキーは冷蔵庫に背を預け、腕を組み、こちらをじとっと睨んだ。
「じゃあ、それを作れ」
「ああ。どうやって霊力を込めたのかどれぐらい霊力が入っていたのかを知りたい」
「はぁ」
当たり前だけど、私はいつも通りに作っただけだ。
霊力なんてものを入れたつもりはこれっぽっちもない。
それに、もう一度猫にあげたものを作れと言うのは物理的に無理なのだ。
「すみません。同じものは作れないです」
「あ? なんでだ?」
「マグロなんですけど、もう漬けにしてしまって……」
「づけ?」
「はい。漬けマグロです」
スーパーの特売の赤身のマグロをおいしくさせる魔法の調理法。それが漬けだ。
私は醤油とみりんで作ったの甘めのタレが好きで、すでに猫にあげた以外のマグロは漬けてしまった。
マグロの赤身に少しずつ醤油が染み、色がついていく。
みりんのアルコール分が生臭さを抑え、その甘味でマグロの味をしっかりと引き立ててくれる。
……食べたい。
今、この瞬間にもマグロはどんどんおいしくなっているはず。
それを思うと、おなかがぐぅと鳴った。
「なに、腹を鳴らしてんだよ。じゃあ、それでいいから見せてみろ」
「あ、はい」
猫とか霊力とかどうでもいい。一刻も早く食べたい。
金髪ヤンキーにマグロを見せて解決するのならば、さっさと見せて、ささっと夜ごはんにありつきたい。
なので、私は特に反論もせず、金髪ヤンキーを連れ、ダイニングの向こう側。キッチンへと共に足を踏み入れた。
「結構きれいだな」
「そうですか? 今はいろいろと出てますけど」
一人暮らしにしてはそこそこ大き目なキッチン。
調理途中ということで調理台の上は散らかっていたのだけど、金髪ヤンキーにはきれいにみえたようだ。
「あ、これが漬けマグロです」
調理台の上にある金属のバット。
その中にはマグロがきれいに並び、タレに漬けこまれていた。
「うまそう」
「おいしそう」
金髪ヤンキーと私。揃って、思わず言葉をこぼしてしまう。
醤油とみりんで作った、少しとろみのあるタレに漬けられたマグロ。
その赤い身はそんな私たち二人に応えるようにきらっと光った。
「せやろ? たったそれだけなのに霊力満タンやろ?」
金髪ヤンキーと二人、ごくりと喉を鳴らしていると、のんびりとした猫の声が響く。
そちらを向けば、対面式のカウンターの向こうからこちらを覗いていた。
どうやら、ダイニングテーブルの椅子に座っているようだ。
「あ、ああ。そうか、そうだったな。霊力な。ああ」
じっと漬けマグロを見ていた金髪ヤンキーが猫の言葉にハッとした。
そして、誤魔化すように言葉を続けた。
「このマグロ、既に霊力が満ちている」
「本当ですか? 私には全然わからないですけど……」
普通のマグロだけど。
普通においしそうな漬けマグロだけど。
「このマグロはスーパーで買ったのか?」
「はい。すぐそこのスーパー、スリースマイルです」
「そこなら俺も行く。あそこの鮮魚売り場に霊力の満ちたものなど見たことがない。だからやっぱりお前が霊力を持っているんだと思う」
「せやなぁ。スーパーでこんな霊力入りの魚を売ってくれるんなら、あやかしがわっさわっさと来るやろうしなぁ」
「ああ。こんな霊力マグロが売ってあったら、大混乱だろうな」
霊力マグロとは。
「この後、まだ調理するのか?」
「あ、はい。今日は丼ものにしようと思っていたので」
金髪ヤンキーの言葉に頷くと、金髪ヤンキーは冷蔵庫に背を預け、腕を組み、こちらをじとっと睨んだ。
「じゃあ、それを作れ」
0
あなたにおすすめの小説
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?
来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。
そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった!
亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。
「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」
「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」
おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。
現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。
お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、
美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!
異世界召喚されたけどスキルが地味だったので、現代知識とアイテムボックスで絶品料理を作ったら大商会になっちゃいました
黒崎隼人
ファンタジー
手違いで剣も魔法もない異世界に召喚された、しがない日本のサラリーマン、湊カイリ。
彼に与えられたのは、無限に物が入る【アイテムボックス】と、物の名前が分かる【鑑定】という、あまりにも地味な二つのスキルだけだった。
戦闘能力は皆無。途方に暮れるカイリだったが、異世界の食事が絶望的に不味いことを知り、大きなチャンスに気づく。
現代日本の「当たり前」の知識は、この世界ではとんでもない「宝」なのだと!
「醤油?味噌?そんなものがあれば、この世界の食文化はひっくり返るぞ!」
ひょんなことから出会った没落貴族の美少女・リリアナと共に、カイリは現代知識と地味スキルを駆使して屋台から商売をスタート。
絶品料理で人々の胃袋を掴み、さらには便利な生活用品を次々と発明していく。
伝説の神獣の幼体「フェン」やドワーフの鍛冶師など、頼れる仲間たちも加わり、彼らが立ち上げた「サンライズ商会」は瞬く間に大躍進!
迫り来る悪徳商会や腐敗した貴族の妨害も、現代のマーケティング術と知恵で痛快に打ち破る!
これは、平凡なサラリーマンが異世界の常識を覆し、食と生活に革命を起こして一代で大商会を築き上げる、痛快成り上がりファンタジー!
美味しい料理と、もふもふな相棒、そして仲間との絆。
人生、逆転できないことなんて何もない!
追放料理人とJKの異世界グルメ無双珍道中〜ネットスーパーは最強です〜
音無響一
ファンタジー
わーい、異世界来ちゃった!
スキルスキル〜何かな何かな〜
ネットスーパー……?
これチートでしょ!?
当たりだよね!?
なになに……
注文できるのは、食材と調味料だけ?
完成品は?
カップ麺は?
え、私料理できないんだけど。
──詰みじゃん。
と思ったら、追放された料理人に拾われました。
素材しか買えない転移JK
追放された料理人
完成品ゼロ
便利アイテムなし
あるのは、調味料。
焼くだけなのに泣く。
塩で革命。
ソースで敗北。
そしてなぜかペンギンもいる。
今日も異世界で、
調味料無双しちゃいます!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
#密売じゃありません!ミツバイギフトで最高に美味しい果物作ったら、領主令息が夫になった件について
国府知里
ファンタジー
「がんばっても報われなかったあなたに」“スローライフ成り上がりファンタジー”
人生に疲れ果てた北村めぐみは、目覚めると異世界の農村で少女グレイスとして転生していた。この世界では6歳で神から“ギフト”を授かるという。グレイスが得た謎の力「ミツバイ」は、果物を蜜のように甘くするという奇跡の力だった!村を、領地を、やがて王国までも変えていく果樹栽培の物語がいま始まる――。美味しさが未来を育てる、異世界農業×スローライフ・ファンタジー!
最弱白竜ですが、なぜか学園最強の銀竜に番認定されました
斉藤めめめ
恋愛
竜の血を引く者だけが貴族になれるこの世界で、白竜は最も格の低い竜の証。
白竜の男爵令嬢リーゼロッテは、特待生として国内最高峰の王立竜騎学園に入学する。待っていたのは上位貴族からの蔑みと、学園を支配する四人の御曹司「四竜」。
その筆頭、銀竜公爵家の嫡男ルシアンに初日から啖呵を切ったリーゼは、いじめと嫉妬の嵐に巻き込まれていく。
それでも彼女は媚びない、逃げない、折れない。
やがてルシアンはリーゼから目が離せなくなり――
白竜の少女が、学園と王国の運命を変える。
身分差×竜×学園ラブファンタジー、開幕。
『異世界味噌料理人』〜腹を満たす一杯から、世界は動き出す〜
芽狐@書籍発売中
ファンタジー
事故をきっかけに異世界へ転移した料理人タクミ。流れ着いた小さな村で彼が目にしたのは、味も栄養も足りない貧しい食事だった。
「腹が満ちれば、人は少しだけ前を向ける。」
その思いから、タクミは炊事場を手伝い、わずかな工夫で村の食卓を変えていく。やがて彼は、失われた発酵技術――味噌づくりをこの世界で再現することに成功する。
だが、保存が利き人々を救うその技術は、国家・商人・教会までも動かす“戦略食料”でもあった。
これは、一杯の料理から始まる、食と継承の長編異世界物語。
【更新予定】
現在ストックがありますので、しばらくの間は毎日21時更新予定です。
応援いただけると更新ペースが上がるかも?笑
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる