夢で得た力が、現実でも使えました!?

緑牙

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一章 森の中の小さな村

1話 僕の才能は……夢……?

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 世界は、とっても広い。

 見たこともない生き物や食べ物、そして沢山の種族の人達がいて、見たことのない色んな場所がある。

 だけど、僕は森に囲まれた村から一歩も外に出たことはない。

 でも、僕は世界がとっても広いことを知ってるんだ。


 ──毎日、夢で旅をしてるから──

 



 僕の名前はムト。

 鬱蒼うっそうとした森の中にポツンとある村で、お母さんと弟と妹の三人で暮らしてるんだ。

 お父さんは、一年前に村を襲ってきた魔物にやられちゃって……

 お母さんは、僕達のために頑張ってお仕事してるけど……いつも顔色が良くないんだ。

 来月には僕も十六歳。

 ついに、大人の仲間入りなんだ。

 村の教会で洗礼をしてもらえば、その時に僕の才能を教えてもらえる。

 今までは家にある小さな畑のお手伝いや、家事しかできなかったけど……

 才能が分かれば、それを生かして働くことができるんだ!

 夢の中とは違って・・・・・・・・僕にどんな才能があるのかは分からないけれど、家族のために頑張らないと!



 家の手伝いをしたり弟達の相手をしていると、あっという間に十六歳の誕生日になった。

 朝起きたら、家族みんなで誕生日のお祝いをしてくれた。

 晩御飯は、久しぶりにお肉を使った料理を作ってくれると言っていたから、今からすごく楽しみ!

 朝御飯を食べ終わると、家事の手伝いをしてからお母さんと一緒に教会へ向かった。



 村の真ん中にある、村で一番立派な建物の教会。

 横にある村長の家よりも遥かに立派で、聞いた話によれば魔物を寄せ付けない結界まで張ってあるらしい!

 ……どうせなら、村全体を結界で囲ってくれれば、お父さんみたいに死んじゃう人も減ると思うけど……

 そんなに大きい結界を張ることができる人は、ほとんどいないみたい。

 夢の中では・・・・・良く見かけたんだけどな……



 教会に入ると虹色のガラス越しに入ってくる光がとっても色鮮やかで、僕の目にはまるで光が踊っているようにも見えた。

 入り口で思わず立ち止まってしまった僕の背を、お母さんは苦笑しながら突っついた。


「ムト? 入り口で止まっても洗礼はしてもらえないわよ?」
「あ、うん……光が、すごく綺麗だったからつい……」


 若干恥ずかしくなった僕は、教会の奥に見えたお爺さんと目が合うと、早足で奥へと入っていく。


「おはようございます! 今日は、よろしくお願いします!」

「司祭様、おはようございます。本日はよろしくお願いします」

「おおムト君とシュムさん、おはよう。こちらこそ、よろしくのぅ」


 お爺さんの目の前まで来て、しっかりと挨拶をする。

 このお爺さんは村の人に司祭様と呼ばれてる人で、今日は僕の洗礼をしてくれるんだ。

 いつもは教会でお祈りしたりお掃除をしている人なんだけど、村から外に出る人やお祝い事の時にもお祈りしてみんなを守ってくれている、すごい人なんだ!


「では、早速洗礼を行おうかのぅ。ではムト君、女神様の像の前で膝を着くのじゃ」

「はい、分かりました!」


 僕は返事をすると、教会の一番奥に佇んでいる女神様の像の前に歩いていき、右膝を着いた。


「うむ。ではムト君よ、そのまま手を組んで目を閉じ、女神様に祈りを捧げるじゃ」

「手を組んで目を閉じて、祈る……分かりました」


 ちょっと緊張してきた……えっと、このままの姿勢で目を閉じて……あ、先に手を組むんだっけ!?


「ムト、焦らなくていいから落ち着くのよ!」

「ほっほっほ。普段のムト君はとても大人びていると思っとったが、こういうところを見ると年相応じゃのぅ」


 ……うぅ……恥ずかしい……

 とにかく、手を組んで目を閉じて祈る……!

 ……女神様に祈る……

 …………何を祈ればいいんだろ……?

 僕が悩んでいると、どこからか涼やかな声が──


《──ムト、十六歳の誕生日、おめでとう。あなたの才能は、『夢の旅人』です。あなたなら、きっとこの──を──》


 ──そこで声は途絶えてしまった。

 言いかけて途中で途切れるのって、続きがすごく気になるんだけど!?

 ……と言うかこれ、いつまでこのままでいればいいのかな……?


「──ト君、ムト君! ワシの声が聞こえとるか?」


 聞こえてきた声にはっとして目を開けると、お爺さんが心配そうにこちらを覗き込んでいた。


「あ……はい、聞こえました。もう終わったんですか?」

「うむ……終わったには終わったのじゃが……」


 なんだかお爺さんの様子が変だな……? 僕、なにか間違っちゃったのかな?


「ごめんなさい……僕、なにか間違えてましたか?」
「いやいや、そうではなくてのぅ。ムト君や、お祈りをした時に何か変わったことはなかったかの?」

「変わったこと……?」
「ムト、あなた……お祈り始めてすぐに光っていたのよ?」


 ……はい? 光ってたって何!?


「お母さん、僕のどこが光ってたの!?」
「全部よ!」


 全部!? どう言うこと!?


「シュムさんもムト君も、少し落ち着きなされ」


 お爺さんの声で、僕とお母さんはハッとして我に返った。

 お爺さんの声って、なんか聞くと落ち着くんだよなぁ……不思議……
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