園芸店店長、ゲーム世界で生産にハマる!

緑牙

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2章 村での生活

13話 とある冒険者達の遭遇 ④

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「わかったよ……囮になりゃいいんだろ!」

「わかってくれたようで何より! では、準備が出来たらよろしく!」


(なんて無責任な……まあ、依頼主だから仕方ないが……)


 フロンドは無理矢理に自分を納得させると、装備の見直しをしていく。


(とりあえず、倒すつもりじゃないから弓だけでいいかな……回避優先で……っと)


 全体的に軽量かつ、森の中だと見付かりにくい装備に変えると、ジアスに合図を出す。

 ジアスがうなずいたので、フロンドは泉の右側に回り込むようにして移動する。

 囮としては泉の反対側まで行きたいのだが、そちらまで行くのはもう一つの反応に近いのでやむを得ない。

 回り込んだ先の茂みに身を隠すと、一旦息を整える。


(とりあえず回避優先、可能なら倒したいところだけど……ジアスが水を採取し終わった時の状況次第……かな)


 一息ついて覚悟を決めたフロンドは、茂みから飛び出して弓を構え────


 弓を下ろして立ち尽くしてしまっていた。

 強くて恐ろしい魔物を想定していたのに、泉の真ん中あたりにぷかぷかと浮かんでいたのは、かわいいアヒルだったからだ。

 ──しかも、丁度魚を捕まえて咥えたばかりの状態の。


(アヒル!? 魔物じゃないじゃん! でも索敵では、明らかに俺より強いはず……?)


 再び索敵するも、やはり自身よりも強いらしい。
 見た目で油断してはいけないと思い、弓を構えようとしたが──
 次の瞬間目に映った光景に思わず脱力してしまい、弓を構える気が起きなかった。


 アヒルは魚を咥えたまま羽ばたきつつ、
グワー! と鳴いた。

 魚を咥えてるのに鳴いたりしたから、当然魚はくちばしから逃れて泉に逃げていった……


(えっ……あのアヒルなにやってんの!? ……もしかして、喜んで思わず声が出たとか……? というか、めっちゃ落ち込んでる……)


 アヒルはうなだれて、水面にくちばしを浸けたまま固まってしまっている。
 その光景を見ていたフロンドは、相手が強い存在だということや、囮としての役割などをすっかり忘れていた。


(と言うか、アヒルって魚食べるんだっけ?)


────


 ジアスはフロンドが出ていってから一分経ったので、もういいタイミングだと思い泉に駆け寄って水に触れた。


(水をいっぱい収納!)


 かなり適当な指定だったため、泉の水位が数センチさがるほどに収納してしまった。


(さて、どれくらい入ったかな……おおっ! 光の魔力を含む湧き水が99も入ってる! どれどれ、早速一口……)


 早速水を取り出して(革の水袋に入った状態で出てきた)飲んでみると、冷たくてほんのり甘く、元気が湧いてくるのを感じる。


(これはうまいっ! 今まで飲んだことがないくらい、おいしい水だな!)


 夢中になって水を飲んでいたジアスは、水位が下がったことでアヒルが異変に気付き、こちらを向いていることに気付いていなかった。


(うますぎる! いくらでも飲めるな!)


────


 アヒルは落ち込んでいた。頑張って取った魚を逃がしてしまったからだ。


(またやっちゃった……やっとお魚とれて、うれしくて……ついさけんじゃったよぉ……おなかすいたぁぁぁ……)


 落ち込んで水面を覗き込んでいたら、急に水が減ったような感じがして、キョロキョロと辺りを見回す。

 すると、そこには泉に手をつけている人間がいた。


(こんなところに人間がくるなんて、めずらしいなぁ。……あ、もしかして! ぼくのお魚をよこどりに!? いそいで犬くんをよばなきゃ!)


 アヒルは慌てて大声を出して友達の犬くんを呼ぶのだった。


「グワァ~~!!(いぬく~~ん!!)」


────


 フロンドがアヒルの行動を見守っていると、ジアスが泉の水を採取しに来たのが目に映る。


(やべ、囮のことすっかり忘れてた……まあ、よほど変なことをしたり危害をくわえなきゃ大丈──)


 フロンドが見ている前で、明らかに泉の水が減り、思わず頭を抱えたくなるのだった。


(なにやってんのジアス!! そんな派手にやったら気付かれるだろ!)


 案の定、ジアスに気付いたアヒルはかなりの音量でグワァ~~!! と、鳴き叫んだ。
 まるで、某狩猟ゲームの鳥のモンスター並の音量に、フロンドは思わず耳を塞いでしまった。


(うわっ……凄い鳴き声……! これがもう一つの強い反応を呼んでるなら、ヤバすぎる!)


 フロンドは鳴き声が止んだタイミングを見計らって、ジアスに走りよりながら告げる。


「今のでヤバいやつが来る! 逃げるよ!」

「了解!」


 フロンドは全力で走る自分に遅れること無く追従してくるジアスに内心驚きつつも、索敵しながら全力で森を駆け抜ける。
 今の状態で、前方を塞がれたら完全に詰みだから。


(くそっ! 今日は厄日かなんかか!?)


────


 アヒルは大声で犬くんを呼んだけど、あっさりと人間が逃げていったので、正直困っていた。


(どうしよう……これじゃあ、森をしらべに行った犬くんをよんだだけになっちゃうなぁ……)


 そんなことを考えていたら、アヒルのお腹がクゥーと音を立てた。


(そういえば、お魚にがしちゃったからなにもたべてないんだったぁ……おなか、すいたよぅ……)

 アヒルは、友達の犬くんが何か食べ物を持ってきてくれることを心から願うのだった。


────


 一方そのころ、二人は無事に森を抜け出すことができていた。
 そして──ジアスはフロンドに説教をされていた。


「おいジアス! 今回は逃げきれたからいいけど、あんな真似されたら困るわ!」

「まあまあ! とりあえず水飲まない?」
「まあまあじゃないし、いらんわっ!! ……ってか、強い反応があるから危ないって言ったろ!?」

「次は、頑張る!」


 全く反省が見られず、むしろ楽しげにしているジアスにため息しか出てこない。


「はぁ……次、あるん……? 俺はもう欲しい素材は特にないので、次はお断り──」
「これなんかどう?」


 ジアスが提示したアイテムは、相当な美味で知られる森にしかないレアな食材アイテムだった。


「えっ!? マジ!?」

「マジマジ!」

「いつの間に手に入れてたん!?」

「逃げてる時に土に埋まってた!」

(また土の中かよ!! ってか、逃げてる時に!?)


 心の中で思いっきり突っ込みを入れつつ、とても美味と言われている食材アイテム──ミドリサツマノイモを目の前にして、フロンドは大いに悩むのだった。
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