58 / 143
2章 村での生活
13話 とある冒険者達の遭遇 ④
しおりを挟む
「わかったよ……囮になりゃいいんだろ!」
「わかってくれたようで何より! では、準備が出来たらよろしく!」
(なんて無責任な……まあ、依頼主だから仕方ないが……)
フロンドは無理矢理に自分を納得させると、装備の見直しをしていく。
(とりあえず、倒すつもりじゃないから弓だけでいいかな……回避優先で……っと)
全体的に軽量かつ、森の中だと見付かりにくい装備に変えると、ジアスに合図を出す。
ジアスがうなずいたので、フロンドは泉の右側に回り込むようにして移動する。
囮としては泉の反対側まで行きたいのだが、そちらまで行くのはもう一つの反応に近いのでやむを得ない。
回り込んだ先の茂みに身を隠すと、一旦息を整える。
(とりあえず回避優先、可能なら倒したいところだけど……ジアスが水を採取し終わった時の状況次第……かな)
一息ついて覚悟を決めたフロンドは、茂みから飛び出して弓を構え────
弓を下ろして立ち尽くしてしまっていた。
強くて恐ろしい魔物を想定していたのに、泉の真ん中あたりにぷかぷかと浮かんでいたのは、かわいいアヒルだったからだ。
──しかも、丁度魚を捕まえて咥えたばかりの状態の。
(アヒル!? 魔物じゃないじゃん! でも索敵では、明らかに俺より強いはず……?)
再び索敵するも、やはり自身よりも強いらしい。
見た目で油断してはいけないと思い、弓を構えようとしたが──
次の瞬間目に映った光景に思わず脱力してしまい、弓を構える気が起きなかった。
アヒルは魚を咥えたまま羽ばたきつつ、
グワー! と鳴いた。
魚を咥えてるのに鳴いたりしたから、当然魚はくちばしから逃れて泉に逃げていった……
(えっ……あのアヒルなにやってんの!? ……もしかして、喜んで思わず声が出たとか……? というか、めっちゃ落ち込んでる……)
アヒルはうなだれて、水面にくちばしを浸けたまま固まってしまっている。
その光景を見ていたフロンドは、相手が強い存在だということや、囮としての役割などをすっかり忘れていた。
(と言うか、アヒルって魚食べるんだっけ?)
────
ジアスはフロンドが出ていってから一分経ったので、もういいタイミングだと思い泉に駆け寄って水に触れた。
(水をいっぱい収納!)
かなり適当な指定だったため、泉の水位が数センチさがるほどに収納してしまった。
(さて、どれくらい入ったかな……おおっ! 光の魔力を含む湧き水が99も入ってる! どれどれ、早速一口……)
早速水を取り出して(革の水袋に入った状態で出てきた)飲んでみると、冷たくてほんのり甘く、元気が湧いてくるのを感じる。
(これはうまいっ! 今まで飲んだことがないくらい、おいしい水だな!)
夢中になって水を飲んでいたジアスは、水位が下がったことでアヒルが異変に気付き、こちらを向いていることに気付いていなかった。
(うますぎる! いくらでも飲めるな!)
────
アヒルは落ち込んでいた。頑張って取った魚を逃がしてしまったからだ。
(またやっちゃった……やっとお魚とれて、うれしくて……ついさけんじゃったよぉ……おなかすいたぁぁぁ……)
落ち込んで水面を覗き込んでいたら、急に水が減ったような感じがして、キョロキョロと辺りを見回す。
すると、そこには泉に手をつけている人間がいた。
(こんなところに人間がくるなんて、めずらしいなぁ。……あ、もしかして! ぼくのお魚をよこどりに!? いそいで犬くんをよばなきゃ!)
アヒルは慌てて大声を出して友達の犬くんを呼ぶのだった。
「グワァ~~!!(いぬく~~ん!!)」
────
フロンドがアヒルの行動を見守っていると、ジアスが泉の水を採取しに来たのが目に映る。
(やべ、囮のことすっかり忘れてた……まあ、よほど変なことをしたり危害をくわえなきゃ大丈──)
フロンドが見ている前で、明らかに泉の水が減り、思わず頭を抱えたくなるのだった。
(なにやってんのジアス!! そんな派手にやったら気付かれるだろ!)
案の定、ジアスに気付いたアヒルはかなりの音量でグワァ~~!! と、鳴き叫んだ。
まるで、某狩猟ゲームの鳥のモンスター並の音量に、フロンドは思わず耳を塞いでしまった。
(うわっ……凄い鳴き声……! これがもう一つの強い反応を呼んでるなら、ヤバすぎる!)
フロンドは鳴き声が止んだタイミングを見計らって、ジアスに走りよりながら告げる。
「今のでヤバいやつが来る! 逃げるよ!」
「了解!」
フロンドは全力で走る自分に遅れること無く追従してくるジアスに内心驚きつつも、索敵しながら全力で森を駆け抜ける。
今の状態で、前方を塞がれたら完全に詰みだから。
(くそっ! 今日は厄日かなんかか!?)
────
アヒルは大声で犬くんを呼んだけど、あっさりと人間が逃げていったので、正直困っていた。
(どうしよう……これじゃあ、森をしらべに行った犬くんをよんだだけになっちゃうなぁ……)
そんなことを考えていたら、アヒルのお腹がクゥーと音を立てた。
(そういえば、お魚にがしちゃったからなにもたべてないんだったぁ……おなか、すいたよぅ……)
アヒルは、友達の犬くんが何か食べ物を持ってきてくれることを心から願うのだった。
────
一方そのころ、二人は無事に森を抜け出すことができていた。
そして──ジアスはフロンドに説教をされていた。
「おいジアス! 今回は逃げきれたからいいけど、あんな真似されたら困るわ!」
「まあまあ! とりあえず水飲まない?」
「まあまあじゃないし、いらんわっ!! ……ってか、強い反応があるから危ないって言ったろ!?」
「次は、頑張る!」
全く反省が見られず、むしろ楽しげにしているジアスにため息しか出てこない。
「はぁ……次、あるん……? 俺はもう欲しい素材は特にないので、次はお断り──」
「これなんかどう?」
ジアスが提示したアイテムは、相当な美味で知られる森にしかないレアな食材アイテムだった。
「えっ!? マジ!?」
「マジマジ!」
「いつの間に手に入れてたん!?」
「逃げてる時に土に埋まってた!」
(また土の中かよ!! ってか、逃げてる時に!?)
心の中で思いっきり突っ込みを入れつつ、とても美味と言われている食材アイテム──ミドリサツマノイモを目の前にして、フロンドは大いに悩むのだった。
「わかってくれたようで何より! では、準備が出来たらよろしく!」
(なんて無責任な……まあ、依頼主だから仕方ないが……)
フロンドは無理矢理に自分を納得させると、装備の見直しをしていく。
(とりあえず、倒すつもりじゃないから弓だけでいいかな……回避優先で……っと)
全体的に軽量かつ、森の中だと見付かりにくい装備に変えると、ジアスに合図を出す。
ジアスがうなずいたので、フロンドは泉の右側に回り込むようにして移動する。
囮としては泉の反対側まで行きたいのだが、そちらまで行くのはもう一つの反応に近いのでやむを得ない。
回り込んだ先の茂みに身を隠すと、一旦息を整える。
(とりあえず回避優先、可能なら倒したいところだけど……ジアスが水を採取し終わった時の状況次第……かな)
一息ついて覚悟を決めたフロンドは、茂みから飛び出して弓を構え────
弓を下ろして立ち尽くしてしまっていた。
強くて恐ろしい魔物を想定していたのに、泉の真ん中あたりにぷかぷかと浮かんでいたのは、かわいいアヒルだったからだ。
──しかも、丁度魚を捕まえて咥えたばかりの状態の。
(アヒル!? 魔物じゃないじゃん! でも索敵では、明らかに俺より強いはず……?)
再び索敵するも、やはり自身よりも強いらしい。
見た目で油断してはいけないと思い、弓を構えようとしたが──
次の瞬間目に映った光景に思わず脱力してしまい、弓を構える気が起きなかった。
アヒルは魚を咥えたまま羽ばたきつつ、
グワー! と鳴いた。
魚を咥えてるのに鳴いたりしたから、当然魚はくちばしから逃れて泉に逃げていった……
(えっ……あのアヒルなにやってんの!? ……もしかして、喜んで思わず声が出たとか……? というか、めっちゃ落ち込んでる……)
アヒルはうなだれて、水面にくちばしを浸けたまま固まってしまっている。
その光景を見ていたフロンドは、相手が強い存在だということや、囮としての役割などをすっかり忘れていた。
(と言うか、アヒルって魚食べるんだっけ?)
────
ジアスはフロンドが出ていってから一分経ったので、もういいタイミングだと思い泉に駆け寄って水に触れた。
(水をいっぱい収納!)
かなり適当な指定だったため、泉の水位が数センチさがるほどに収納してしまった。
(さて、どれくらい入ったかな……おおっ! 光の魔力を含む湧き水が99も入ってる! どれどれ、早速一口……)
早速水を取り出して(革の水袋に入った状態で出てきた)飲んでみると、冷たくてほんのり甘く、元気が湧いてくるのを感じる。
(これはうまいっ! 今まで飲んだことがないくらい、おいしい水だな!)
夢中になって水を飲んでいたジアスは、水位が下がったことでアヒルが異変に気付き、こちらを向いていることに気付いていなかった。
(うますぎる! いくらでも飲めるな!)
────
アヒルは落ち込んでいた。頑張って取った魚を逃がしてしまったからだ。
(またやっちゃった……やっとお魚とれて、うれしくて……ついさけんじゃったよぉ……おなかすいたぁぁぁ……)
落ち込んで水面を覗き込んでいたら、急に水が減ったような感じがして、キョロキョロと辺りを見回す。
すると、そこには泉に手をつけている人間がいた。
(こんなところに人間がくるなんて、めずらしいなぁ。……あ、もしかして! ぼくのお魚をよこどりに!? いそいで犬くんをよばなきゃ!)
アヒルは慌てて大声を出して友達の犬くんを呼ぶのだった。
「グワァ~~!!(いぬく~~ん!!)」
────
フロンドがアヒルの行動を見守っていると、ジアスが泉の水を採取しに来たのが目に映る。
(やべ、囮のことすっかり忘れてた……まあ、よほど変なことをしたり危害をくわえなきゃ大丈──)
フロンドが見ている前で、明らかに泉の水が減り、思わず頭を抱えたくなるのだった。
(なにやってんのジアス!! そんな派手にやったら気付かれるだろ!)
案の定、ジアスに気付いたアヒルはかなりの音量でグワァ~~!! と、鳴き叫んだ。
まるで、某狩猟ゲームの鳥のモンスター並の音量に、フロンドは思わず耳を塞いでしまった。
(うわっ……凄い鳴き声……! これがもう一つの強い反応を呼んでるなら、ヤバすぎる!)
フロンドは鳴き声が止んだタイミングを見計らって、ジアスに走りよりながら告げる。
「今のでヤバいやつが来る! 逃げるよ!」
「了解!」
フロンドは全力で走る自分に遅れること無く追従してくるジアスに内心驚きつつも、索敵しながら全力で森を駆け抜ける。
今の状態で、前方を塞がれたら完全に詰みだから。
(くそっ! 今日は厄日かなんかか!?)
────
アヒルは大声で犬くんを呼んだけど、あっさりと人間が逃げていったので、正直困っていた。
(どうしよう……これじゃあ、森をしらべに行った犬くんをよんだだけになっちゃうなぁ……)
そんなことを考えていたら、アヒルのお腹がクゥーと音を立てた。
(そういえば、お魚にがしちゃったからなにもたべてないんだったぁ……おなか、すいたよぅ……)
アヒルは、友達の犬くんが何か食べ物を持ってきてくれることを心から願うのだった。
────
一方そのころ、二人は無事に森を抜け出すことができていた。
そして──ジアスはフロンドに説教をされていた。
「おいジアス! 今回は逃げきれたからいいけど、あんな真似されたら困るわ!」
「まあまあ! とりあえず水飲まない?」
「まあまあじゃないし、いらんわっ!! ……ってか、強い反応があるから危ないって言ったろ!?」
「次は、頑張る!」
全く反省が見られず、むしろ楽しげにしているジアスにため息しか出てこない。
「はぁ……次、あるん……? 俺はもう欲しい素材は特にないので、次はお断り──」
「これなんかどう?」
ジアスが提示したアイテムは、相当な美味で知られる森にしかないレアな食材アイテムだった。
「えっ!? マジ!?」
「マジマジ!」
「いつの間に手に入れてたん!?」
「逃げてる時に土に埋まってた!」
(また土の中かよ!! ってか、逃げてる時に!?)
心の中で思いっきり突っ込みを入れつつ、とても美味と言われている食材アイテム──ミドリサツマノイモを目の前にして、フロンドは大いに悩むのだった。
0
あなたにおすすめの小説
この子、貴方の子供です。私とは寝てない? いいえ、貴方と妹の子です。
サイコちゃん
恋愛
貧乏暮らしをしていたエルティアナは赤ん坊を連れて、オーガスト伯爵の屋敷を訪ねた。その赤ん坊をオーガストの子供だと言い張るが、彼は身に覚えがない。するとエルティアナはこの赤ん坊は妹メルティアナとオーガストの子供だと告げる。当時、妹は第一王子の婚約者であり、現在はこの国の王妃である。ようやく事態を理解したオーガストは動揺し、彼女を追い返そうとするが――
30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。
ひさまま
ファンタジー
前世で搾取されまくりだった私。
魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。
とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。
これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。
取り敢えず、明日は退職届けを出そう。
目指せ、快適異世界生活。
ぽちぽち更新します。
作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。
脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。
聖女の座を奪われてしまったけど、私が真の聖女だと思うので、第二の人生を始めたい! P.S.逆ハーがついてきました。
三月べに
恋愛
聖女の座を奪われてしまったけど、私が真の聖女だと思う。だって、高校時代まで若返っているのだもの。
帰れないだって? じゃあ、このまま第二の人生スタートしよう!
衣食住を確保してもらっている城で、魔法の勉強をしていたら、あらら?
何故、逆ハーが出来上がったの?
【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。
BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。
辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん??
私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?
【完結】お花畑ヒロインの義母でした〜連座はご勘弁!可愛い息子を連れて逃亡します〜+おまけSS
himahima
恋愛
夫が少女を連れ帰ってきた日、ここは前世で読んだweb小説の世界で、私はざまぁされるお花畑ヒロインの義母に転生したと気付く。
えっ?!遅くない!!せめてくそ旦那と結婚する10年前に思い出したかった…。
ざまぁされて取り潰される男爵家の泥舟に一緒に乗る気はありませんわ!
アルファポリス恋愛ランキング入りしました!
読んでくれた皆様ありがとうございます。
*他サイトでも公開中
なろう日間総合ランキング2位に入りました!
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
無属性魔法しか使えない少年冒険者!!
藤城満定
ファンタジー
「祝福の儀式」で授かった属性魔法は無属性魔法だった。無属性と書いてハズレや役立たずと読まれている属性魔法を極めて馬鹿にしてきた奴らの常識を覆して見返す「ざまあ」系ストーリー。
不定期投稿作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる