園芸店店長、ゲーム世界で生産にハマる!

緑牙

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2章 村での生活

21話 サラさん一家の食料事情

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 タンジーに引っ張られて部屋に入ったが、そこで俺が目にしたのは、赤く腫れたおでこを涙目で冷やそうとしているサラさんの姿だった……


「えっと、こんばんは……」

「……こんばんは、リョウさん……」


 とりあえず挨拶はしてみたが、サラさんは返事をしたあとおでこをおさえて俯いてしまった。
 当たり前かもしれないが、いつもの勢いが全く感じられない。

(これは、違う話題を振った方が良さそうだな……)


「今日はちょっと用があって来たんですが、その前にちょっと確認したいことがありまして……」

「……はい、なんでしょうか……?」


 そういって顔を上げたサラさんの顔には、おでこの件について触れて欲しくない……そう書いてあるかのようだった。


「タンジーはともかく、セージ君とサラさんはちゃんとごはん食べてます?」

「……はい?」


 どうやらサラさんにとって想定外の質問だったらしく、目を丸くしてこちらを見ている。


《……まあ、普通はこういう反応になりますよね。どう考えても、たんこぶについて言われると思っていたでしょうし》


 俺の肩に止まったままのブレンには、想定内の反応だったらしい。


「いや、セージ君はなんか少し元気無いし……サラさんも、なんと言うか……栄養足りてないように見えたので」

「あ……その……」
「お兄さん、とりあえずいすにすわっちゃお?」

「お、ありがとな。では失礼して」


 言葉に詰まったサラさんを見かねたのか、タンジーが椅子を引いてくれたので、礼を言って座る。

 すかさず隣に座る辺り、タンジーらしいな……などと思って微笑むと、目があったタンジーもニカッと笑った。

 俺は改めてサラさんの方に向き直ると、できるだけ優しく声をかけた。


「一応先に断っておきますが、別に責めたくて聞いてる訳ではないですからね?」

「はい。じゃあ、あの……リョウさん……怒らないでくださいね?」


 不安そうにこちらの顔を覗き込んでくるサラさん。
 俺は思わず苦笑してしまった。


「怒ったりしませんよ。心配してるだけですから」


 明らかにほっとして表情を緩めたサラさんは、ぽつりぽつりと話してくれた。





「──と言う訳なんです」

「なるほど……それじゃ仕方ないですね……」


 サラさんから聞いた話を統合すると


 行商人が来る日は明後日なので、行商人から仕入れをしている雑貨屋の食料の在庫が品薄。

 行商人が来なくとも普段なら村に近付いてきた獣を村の狩人が倒し、それを買い取って肉を得ていた雑貨屋。

 だがここ数日は獣の姿がほとんど見られず、肉を得られない状況。

 それにより僅かしかない肉の価格が高騰こうとうしているため、とても手が出せないと言う。

 ほとんどの食材の価格が高騰している中、それでも子供達のためにと可能な限り様々な食材を買っていたらしいのだが……

 どうやら以前俺が断って、子供達に使って欲しいと言ったマネを全く使ってないらしい。

 どこにも俺が怒りそうな要素がないと思っていたが、どうやらこの事を気にしていたようだ。

(ちゃんと報酬はあとにして欲しいと説得しておくべきだったな……今回の事は、話をするのをあとに延ばしていた俺のせいでもあるな)

 俺が思考を止めてサラさんを見ると、叱られている子供のような表情をしている。

 ここで説得するのは叱るのと同じようなものだし、お腹を空かせた人にそんなことはできないな。

 ……となれば、俺が今するべきことは──


「サラさん」
「は……はいっ……」


 俺が声を掛けた瞬間にビクッとして姿勢を正したサラさん。

 叱られると思ったんだろうが、俺にそんなつもりは毛頭ない。


「ちょっとキッチンお借りしていいですか?」

「……え……?」
「「……!!」」

《やはり、こうなるんですね……》

 サラさんは、ポカーンと口を開けて固まっている。
 子供達を見るとどうやら俺が何をしようとしているのか分かったらしく、溢れんばかりの笑顔をこちらに向けていた。

 ブレンには、俺がこの状況でやることが予測できていたらしい。


「でも……またご迷惑を──」
「サラさん、俺は今までも迷惑なんて思ったことはないですよ。むしろここでさっさと帰る方が気になりますし」


 と言うか、まともな人ならみんな放置しないだろう。
 だから、俺のやってることは普通なはず。

 ……普通な、はずなので……みんなしてそんなキラキラした目で見ないで欲しいんだけど……


「と言うわけで、キッチン借りてもいいですか?」

「……はい! よろしくお願いします……!」


 許可を得られたので、早速キッチンへ──


「お兄さん、わたしも手伝うよ!」
「あっ、じゃあ私も──」

「いえ、実は時間がなくてすぐできるものだけ作るので、食器を出すのにタンジーだけ来てもらってもいいかな? サラさんはセージ君と待っていて下さい!」

「はーい!」
「はい……」


 そう言ってサラさんが来るのを阻止すると、タンジーを連れてそそくさとキッチンへ。

 タンジーは嬉しそうだが、サラさんはまぁ……ある意味予想通りの反応かな。

 だが二人が揃って来てしまったら、前回みたく時間がかかるのは間違いないからな。
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