社畜にもなれなかった俺が、JSに転生して経営の才能が開花した件 〜駄菓子屋からはじめて100億円企業を創るまで〜

中田翔子

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第二章 駄菓子屋経営

駄菓子屋スプーン

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 bar C-SHOCK にて。

「いやあ、彼女ね。どうしても悪い奴には見えなくてさ」

 俺はオレンジジュースのストローを噛みながら、片桐さんに言う。口調はおっさんだが、振る舞いは小学生である。

「ああ、スプーンの楓ちゃんかあ。彼女偉いよなあ。おばあちゃんが亡くなってから、店を守らなきゃってあの年で一人で切り盛りしてるんだよ。だから嬢ちゃんも仲良くしてやんなよ」


 週明けの放課後、俺は冴と芽依とは教室で別れ、正門から出た。

(確かこの先の角を曲がって……)

 駄菓子屋スプーンのシャッターは下りていた。店舗兼住居のようだ。インターホンを鳴らす。

「ごめんね、今日はおやすみで……ってあんた南門の」

「話があってきました」

 楓も子ども相手となると無下にできないのか、ドアを開けてくれた。

 楓の目元が腫れぼったい。随分泣き腫らしたとみえる。

「で、話って」

 ちゃぶ台にりんごジュースを出してくれる。

「学校の友達に聞きました。みんな『スプーン』が大好きだって」

 楓が固まる。

「楓お姉さんがいつも笑顔で話しかけてくれて嬉しいんだって。駄菓子も美味しいし、それに優しかったおばあちゃんも……」

 言いかけて、やめる。楓が大粒の涙を零しているからである。泣きながら楓は言う。

「私だってみんなのこと大好き。みんなが毎日遊びに来てくれるから私も元気を貰える。日々成長していくあの子達を見ていたらそれだけで嬉しくって。

ここはおばあちゃんが大事にしてきたお店なの。おばあちゃんは一昨年死んじゃったけど、大切なこの店だけは守りたかった。だから辞めたくなんてないんだからぁ」

 気持ちが溢れ出し嗚咽する。俺は出されたりんごジュースをただじっと見つめていた。

「俺たちのこと、恨んでる?」

 もはや泉としてではなく、和泉澄人として会話していた。

「ううん、どのみち店を畳まなきゃいけないくらい売上は落ち込んでいたのよ。だから、調子のよさそうなあなたたちに八つ当たりした。最低よね。きな粉棒だって、自腹切って、1本1円で売り捌いたのよ」

 それはなんとなく風の噂で知っていた。俺も一番最初に思いついた手ではあった。だがそれをしてしまうと、いろいろなものが崩れてしまう。経営者としては絶対にやってはいけない選択だ。楓はきっと優しすぎるのだ。プレーヤーとしては優秀だが、経営者には向かないタイプなのだろう。

「じゃあさ、この駄菓子屋続けてよ」

 突然の俺の言葉に、動揺する楓。状況が飲み込めないようである。

「同情されたって嬉しくないから。それに続けるったって、近くにこんな競合がいたら」

 楓の言葉を遮るように俺は言う。

「だからさ、うちが駄菓子屋やめるよ」

「何の冗談? 私は勝負に負けたのよ。情けをかけられながら店を続けるなんて、みっともないったらありゃしない」

「おばあちゃんの店を守れない方がよっぽどみっともないじゃないか」

 楓は言葉を失う。

「その代わり、もちろんタダじゃない。経営はうちにやらせてくれ。いわば“乗っ取り”だ。経営にかかる資金の51%はうちが負担する。そのお金を使って楓ちゃんにはスプーンをもっともっと盛り上げて欲しいんだ」

 俺が出した条件は、駄菓子屋ぷぷのPB商品を店先に置くこと、PB商品の売上全額と駄菓子屋スプーンの利益の51%をうちに納めることだ。それと引き換えに、こっちは駄菓子屋事業から完全に撤退する。

 経営方針などは都度相談しながらにはなるが、基本的には楓に任せる方向だ。きっとその方がうまくいく。

「本当にいいの?」

「だって、おばあちゃんの店、大事にして欲しいじゃん」

 こうして二人の会話は終わった。楓は最後までありがとう、ありがとうと言い続けていた。
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