Dark Angel

真田晃

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背を向け、勝手に自己完結した藤井が俺の存在を無視し、身形を整え始める。

「………」

震える指先。
認識した時にはもう、藤井の細い首に両手を掛けていた。


「──お前、眠れねぇんだろ……?!」


その衝動に任せ、藤井の背中を地面に押し付けると上に跨がる。


籠めた力を緩める気は、毛頭ない。

後戻りなど──絶対にしない!


「彼女が犯されてる光景が頭にこびり付いて………苦しいんだろ? 夢にまで出てくる程によ……
だからここで、男にレイプごっこでもして貰わねぇと……その日を安心して終わらせられねぇ……

──違うか?」

「……」

「そうしねぇとお前は──明日を生きられねぇんだよなァ……!?」


藤井を上から睨みつけてやれば、瞳孔の開いた藤井が、瞳を小さく揺らしながら俺の深層部分まで探っていた。


「………だったら俺が、相手してやるよ。
お前の望み通り、酷い抱き方をしてやる。

毎晩……ここでな……!」


荒げる息を整える余裕もなく、藤井を見下げれば……涙で潤んだ藤井の瞳が緩み、僅かに口角が持ち上がる。

そして差し出される、細い首。
顎を軽く突き出し、俺の狂気を受け入れる──藤井。

蒼白い月光が辺りに射し、藤井の顔の一部を妖しく照らす。


「──明日も、来いよ!」

「………」

「いいなっ!」


脅さなくても、藤井は抵抗しない。

その深くて暗い闇のような瞳に、俺の方が飲み込まれてしまいそうになるのを感じた。
……まるで俺をこうさせるように、藤井が仕向けたみたいに……


「……」

指先を、緩める。
手を離し……自分の両手のひらをゆっくりと表に向ける。

その下で。一気に空気を吸い込んだ藤井が、咳き込みながら顔を横に向け、俺に首筋を曝す。



「──いい、よ」


月光に濡れ、蒼白く光る首筋。

艶やかな唇が割れ、濡れそぼつ赤い舌がチラリと見える。


「……また、明日……」





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