19 / 20
19
しおりを挟む背を向け、勝手に自己完結した藤井が俺の存在を無視し、身形を整え始める。
「………」
震える指先。
認識した時にはもう、藤井の細い首に両手を掛けていた。
「──お前、眠れねぇんだろ……?!」
その衝動に任せ、藤井の背中を地面に押し付けると上に跨がる。
籠めた力を緩める気は、毛頭ない。
後戻りなど──絶対にしない!
「彼女が犯されてる光景が頭にこびり付いて………苦しいんだろ? 夢にまで出てくる程によ……
だからここで、男にレイプごっこでもして貰わねぇと……その日を安心して終わらせられねぇ……
──違うか?」
「……」
「そうしねぇとお前は──明日を生きられねぇんだよなァ……!?」
藤井を上から睨みつけてやれば、瞳孔の開いた藤井が、瞳を小さく揺らしながら俺の深層部分まで探っていた。
「………だったら俺が、相手してやるよ。
お前の望み通り、酷い抱き方をしてやる。
毎晩……ここでな……!」
荒げる息を整える余裕もなく、藤井を見下げれば……涙で潤んだ藤井の瞳が緩み、僅かに口角が持ち上がる。
そして差し出される、細い首。
顎を軽く突き出し、俺の狂気を受け入れる──藤井。
蒼白い月光が辺りに射し、藤井の顔の一部を妖しく照らす。
「──明日も、来いよ!」
「………」
「いいなっ!」
脅さなくても、藤井は抵抗しない。
その深くて暗い闇のような瞳に、俺の方が飲み込まれてしまいそうになるのを感じた。
……まるで俺をこうさせるように、藤井が仕向けたみたいに……
「……」
指先を、緩める。
手を離し……自分の両手のひらをゆっくりと表に向ける。
その下で。一気に空気を吸い込んだ藤井が、咳き込みながら顔を横に向け、俺に首筋を曝す。
「──いい、よ」
月光に濡れ、蒼白く光る首筋。
艶やかな唇が割れ、濡れそぼつ赤い舌がチラリと見える。
「……また、明日……」
0
あなたにおすすめの小説
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
【完】君に届かない声
未希かずは(Miki)
BL
内気で友達の少ない高校生・花森眞琴は、優しくて完璧な幼なじみの長谷川匠海に密かな恋心を抱いていた。
ある日、匠海が誰かを「そばで守りたい」と話すのを耳にした眞琴。匠海の幸せのために身を引こうと、クラスの人気者・和馬に偽の恋人役を頼むが…。
すれ違う高校生二人の不器用な恋のお話です。
執着囲い込み☓健気。ハピエンです。
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
【完結済】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている
キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。
今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。
魔法と剣が支配するリオセルト大陸。
平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。
過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。
すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。
――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。
切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。
全8話
お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /c
僕の幸せは
春夏
BL
【完結しました】
【エールいただきました。ありがとうございます】
【たくさんの“いいね”ありがとうございます】
【たくさんの方々に読んでいただけて本当に嬉しいです。ありがとうございます!】
恋人に捨てられた悠の心情。
話は別れから始まります。全編が悠の視点です。
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
神父様に捧げるセレナーデ
石月煤子
BL
「ところで、そろそろ厳重に閉じられたその足を開いてくれるか」
「足を開くのですか?」
「股開かないと始められないだろうが」
「そ、そうですね、その通りです」
「魔物狩りの報酬はお前自身、そうだろう?」
「…………」
■俺様最強旅人×健気美人♂神父■
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる