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転生〜統治(仮題)

買い取り後に増えました

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翌朝、朝食をゆっくりと済ませてから冒険者ギルドへと向かった。ちなみに、ゆっくり食べた訳ではない。あまりの量だった為、食べるのに時間が掛かったのだ。ティナが。20人前を食べても、全く太らないのが不思議である。

冒険者ギルドに入ると、受付のお姉さんにギルドマスターの部屋へと案内された。

「ギルドマスター、ルークさんをお連れしました。」
「入って頂戴。」

ギルドマスターの部屋を見回すが、意外とスッキリしていた。仕事に追われているのかと思っていたが、そうでもなさそうだ。

「あら、何か珍しい物でもある?」
「いいえ、てっきり書類の山でもあると思ってました。仕事の出来る方なんですね。」
「違うわよ。ウチは職員が優秀だから、私の仕事なんてほとんど無いの。」
「………普段は何を?」
「訓練場で、冒険者の相手よ。」

これは掘り下げたらダメなパターンだ。貰う物を貰って、さっさと退散しよう。

「丁度いいわ。私と模擬せ「嫌です。」…断るの早過ぎるでしょ!」
「オレは出来る限り、のんびり過ごしたいんです。それよりも換金の方を。」
「徹夜で査定したんだから、ちょっとは付き合ってくれてもいいんじゃないの?」
「徹夜したのは職員の方達ですよね?」
「それはそうだけど…。まぁいいわ、査定結果を教えるわね。全部で白金貨100枚よ。」
「白金貨100枚!?」

えぇと、銅貨100枚で銀貨1枚。銀貨100枚で金貨1枚。金貨100枚で白金貨1枚だから……金貨1万枚!?前世の、それも日本の価値で例えると、銅貨1枚100円程度のようだった。と言う事は100億円!?

物流等の文明差がある為、物価はかなり違うがおおよそ間違ってはいないだろう。金額に驚いたが、冷静に考えよう。ティナさん、あなたここ数年の食費が100億円を超えてますよ。

「正確にはクエストの報酬も含まれているわ。ギルドで確実に判断出来る依頼だけで悪いんだけど。」
「クエスト?受けてないですけど…。」
「だから、確実にこっちで判断出来る依頼に関してだけよ。冒険者が知らずに達成している依頼だってあるかもしれないでしょ?そういうのって、ギルドが確認出来る物は依頼達成と判断してるのよ。そうじゃないと、冒険者のメリットが減るでしょ?」
「そうかもしれませんね…。」

可能性はゼロではないだろうな。そしてティナの食費は100億円を超えていなかった。ゴメン。

「それに、依頼達成とギルド側で判断してしまわないと、報酬に関して依頼主とギルドが揉める原因にもなるのよ。それに冒険者へ報酬を支払う事によって、冒険者のランクアップにも繋がるから、優秀な人材をギルドが抱え込む事も出来るわ。ギルドとしては、判断出来る物は率先して報酬を支払うもんなのよ。」
「あぁ、依頼を受けてないからって理由で報酬を出さないと、依頼主だけが儲かりますもんね。」
「そう言う事。過去にはそれを見越して、意図的に依頼を遅らせて来る依頼主が増えちゃって…魔物被害が増加したって経緯があるそうよ。」

誰でも出費が少ないに越したことはないもんな。しかしギルドというのは、冒険者の事を良く考えている。自分たちの利益になるとは言え、素晴らしい仕組みだと思う。これなら良好な関係を築いておいても良いかもしれない。長居はしたくないけど。

「冒険者ギルドというのは、素晴らしい組織なんですね。」
「あら?褒めたって何もあげないわよ?」
「いえ、魔物の買取金額分の代金を頂ければ充分ですよ。」
「………そんなに邪険にしなくても良くない?」
「いえいえ、邪険に扱っているつもりはありませんよ。お仕事の邪魔にならないように、早々に立ち去るべきだと思っているだけですから。」
「それって嫌味かしら?悪かったわね、忙しくなくて。」
「そういうつもりで言った訳ではなくて……早く帰りたいだけです。」
「簡単には帰したくないんだけど?」
「そういう台詞は、恋人にでも言ってあげて下さい。」
「……いたら毎日言ってあげるわよ。」

発する声の低さから、地雷を踏んでしまった事に気付く。ナディアさんの目つきが鋭くなった。

「ルーク。壊し屋ナディアの相手が務まる男性は、おそらく片手で数える程しかいませんよ。」
「…ティナ、それはちょっと失礼なんじゃない?」
「いいえ。純然たる事実です。自分に言い寄る男性は、タイプでなければ殴り倒し、タイプであればお酒を飲みに行っては潰してしまう。そんな事を繰り返していましたからね。壊し屋ナディアなんて呼ばれる訳です。」
「仕方がないじゃない!言い寄って来るのが情けない男ばかりなんだもの。それに、私は猫なんて被りたくないの!!」

狐だもんね。……いかん、自分で考えておきながら、笑えてきた。必死に堪えてみるが、どうやらティナとナディアさんに気付かれたようだ。

「何がおかしいのよ!?」
「ルーク、どうしました?」
「いや、狐の獣人だから、猫は被れないよなって思ったらつい……ごめんなさい。」
「「…………」」
「本当にすみませんでした!!」
「はぁ。もういいわ。それよりも、ルークは私の失敗談を聞いても私を見る目が変わらないのね。」
「そういう人もいるでしょうからね。別に良いんじゃないですか?オレだって、恋愛に妥協はしたくないですから、ナディアさんの気持ちは理解出来ますよ。」
「…私と違って戦姫は美人だもの。妥協なんて言ったらバチが当たるわよ。」
「ナディアさんだって、ティナに負けず劣らずの美人だと思いますけど?」

これは本心である。ティナと出会っていなければ、おそらく一目惚れしていただろう。ティナがモデルの様な容姿だとすると、ナディアさんはグラビアアイドルの様な容姿だ。甲乙つけ難い。

「な、ななな何を言っていりゅのかしりゃ?!?」

あ、噛んだ。顔を真っ赤にして動揺している。悪評が先行しているせいで、褒められ慣れていないんだろうな。ここは、ナディアさんの魅力を伝えて、自信を持ってもらおう。

「いえ、本心ですよ?ティナと出会ってなければ、きっと惚れていたと思います。ナディアさんはもの凄く美人なんですから、自信を持って下さい。」
「え?……えぇぇぇぇぇ!?」

茹で蛸の様に全身真っ赤になってしまった。湯気でも出そうだが、これで自信を持ってくれればいいな。しかし、さっきからティナが無言なのが気になる。ここはきちんとフォローしておかなくては。

「オレはティナ一筋だから、心配しないでね?」

「ありがとうございます。ルークの気持ちは嬉しいのですが、私一筋である必要は無いですよ?」
「ん?」

ティナさんや、今変な事言いませんでしたか?

「ですから…あぁ、ルークには説明していませんでしたね。Sランク以上の冒険者ともなると、国に属した際に爵位を賜る事が出来ます。つまり、ルークも貴族となりますね。そうなると、正室以外にも側室や妾、愛人を持つ事が出来るのです。」
「いや、オレはティナだけで満足なんだけど…。」
「いいえ、それはダメですよ。私はエルフ族ですから、特に問題です。エルフ族の出生率は相当低いですから、貴族の義務の1つである『後継者』を作る事が難しいのです。ですから、奥さんは複数名でなければなりません。」
「だったら国に属さなければ…」
「ルークは料理屋を営むのが夢ですよね?それならば国に属すのは絶対です。国民しか営業許可は貰えませんから。それに、ルークは出来る限り子供を作らなければなりません。…と、母が言ってました。」
「なんじゃそりゃ。って、そもそも、何で今そんな話を?それに、ティナはそれで満足なの?」
「私は構いません。そもそも、ルークを独り占めしようとは思っていませんよ。この話を今したのは、折角なのでナディアも娶ってはどうかと思いましたので…。」
「「は!?」」

おぉ。ナディアさんが復活したようだ。思わずハモってしまった。

「ルークは、ナディアもタイプなんですよね?」
「うん…まぁ。」
「ナディアも、動揺するという事は、まんざらでもないという事ですよね?」
「えぇ…そうね。」
「でしたら、何の問題もありませんよね?」
「「いやいやいや」」
「ルーク、このままだとナディアは、結婚どころか恋人すら出来ないままです。勿体無いとは思いませんか?」
「そりゃあ、こんな美人がいつまでも独り身なのは物凄く勿体無いとは思うけど…」
「ナディアの相手になりそうなのは、ルーク位のものです。幸せになって貰いたいですよね?」
「まぁ、そうだね。」
「でしたら、ルークが幸せにしてあげましょうね。…ね?」

ティナの目力が凄い事になっている。こうなったらテコでも動かない。言う事聞くしかないんだろうな。でも一夫多妻なんて、物凄く抵抗があるんだけど…。郷に入っては郷に従えって言うし、この世界の常識に倣うしかないかぁ。

「はぁ。わかったよ。わかりました。ナディアさんが良いなら、ナディアさんとも結婚するよ。で、ナディアさんはどうします?嫌なら断って頂いて構いませんよ?」
「します!結婚!!側室でも妾でも構いません!!!お願いですから、どうか貰って下さい!!!!」

即答かよ!しかも必死過ぎて口調が変わってるじゃねぇか!!まぁ、美人だしティナが良いなら構わないか。・・・構わないか?

そんな訳で、奥さん(仮)が2人になりました。…どうしてこうなった!?
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