Shining Rhapsody 〜神に転生した料理人〜

橘 霞月

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転生〜統治(仮題)

料理研究会

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学園長から料理研究会のある場所を聞き、オレ達はそこに辿り着いた。一般生徒の校舎と特待生の校舎の中間にある、教職員用棟の1回にあった。正式名称は第4調理室。有事の際に利用する事を目的として作られたらしいが、これまで問題が起こらなかった為、放置されていたその部屋を料理研究会が利用しているとの事だった。

一般生徒との不必要な接触を避ける事が出来る点では、嬉しい誤算と言えるだろう。本当の意味での誤算は、教職員が近くにいる事だ。この建物の最上階には、例の変態がいる。万が一身の危険を感じたら、建物ごと爆破してやろうと思う。調理中の事故だと言い張れば、きっとバレない。鑑識なんて上等な物など存在しない世界なのだから。

この学園の調理室は全て、建物の中と外に扉がある。外側の扉は常に、内側の扉は教職員がいる間のみ解放されているとの事だ。冒険者見習い等の学生が深夜に帰って来ても、温かい食事を摂れるようにとの配慮がされている。もう1度言うが、素晴らしい考え方だ。学園長の理念だというのが、どうにも釈然としないのは仕方がないだろう。

話が逸れたので料理研究会の件に戻るが、オレ達は第4調理室へと入る。ノックしないのは、常に解放されているので不要となっている為らしい。中に入ると、栗色の髪が腰付近まである女性が、何かの生地を煉っていた。こちらに気付いたようで、手を止めて話し掛けてきた。

「あら?ここに誰かが来るのも珍しいわねぇ。この部屋を使いに来たのかしら?」
「いえ、料理研究会の見学に来たのですが・・・」
「あら?本当に!?嬉しいなぁ!今までずっと1人だったから、後輩と一緒にお料理するのに憧れてたんだ。どうしよっか?何か作ってみる?あ、初心者でも大丈夫だからね?お姉さんにまっかせなさ~い!」

力こぶを作る仕草をしながらウィンクするこの女性に、オレの心は完全に捕らえられた。こ、このお方は・・・オレが前世で憧れていた『お姉ちゃん』キャラそのものじゃないか!!優しそうな笑顔に、容姿も端麗である。文句のつけようがない。

テンションが上がり過ぎて、逆に思考が冷静になる。妙だ、何かがおかしい。そう、こんな人とお近づきになれる場所に、人がいないのである。何かとんでもない理由が隠されている気がする。しかし、考えた所で答えは出ないだろう。即断即決がモットーのオレだが、料理に関しては慎重になるべきだろう。

「そうですね。では、何か作らせて貰いますね。と・・・その前に。1年特待生クラスのルークと言います。よろしくお願いします。」
「あら、私ったら嬉しくて自己紹介を忘れちゃってたわね?私の名前はクララ。3年のHクラスだよ。よろしくね?ルーク君!」

ヤバイです。今回オレが料理するのは、クララさんじゃダメですか?しかし残念な所が1つ。名前、モカさんじゃ・・・なんでもないです。舞い上がったオレは気付かなかったが、後ろで嫁さん達がコソコソと会話している。ちなみにリリエルが不参加なのは、人との接触を望んでいないからである。気付いたらいなかったので、オレ達も特に気にしていない。

「あんな嬉しそうなルーク様、初めてみましたよ!?」
「私も、あんなデレデレのルークは見た事ないよ。」
「エミリアさんとリノアさんも見た事が無いとなると・・・ちょっとマズイかもしれませんね?」
「リノアさんとクレアさんは、お料理が得意ではありませんから・・・私が間に入って警戒します。お2人は、万が一に備えて下さい。」
「「はい!」」

こうしてオレとクララさんの間にエミリアが割り込んで来たのだが、オレに焦りはない。焦る必要など無いのだ!何故なら、料理研究会に入れば毎日のようにお姉ちゃん成分を吸収出来るのだから!!

とりあえず、オレとエミリアはお腹が空いていない事もあって、デザートを作る。食材はあまり無かったので、作れそうなカップケーキにしてみた。どうしてエミリアと一緒に料理したのかと言うと、エミリアがくっ付いて離れなかったからである。どうやら信用されていないらしい。

しかし、エミリアの判断は正しい。他人を信用してはならない。信じられるのは自分だけ。前世のオレは、上司にそう教わった。所詮世界は弱肉強食。他人を蹴落として這い上がって行く物だった。オレは他人を蹴落とそうとは思わないが、信用はしない。まぁ、嫁さん達は信用するしかありませんけど・・・。

オレ達の調理も終盤に差し掛かり、ふとエミリアを見ると何かに驚愕しているようだった。その視線を追って、オレも愕然とした。お姉ちゃ・・・クララさん、その鍋の中身は何ですか?どうして紫色をしているんですか?

「クララさん・・・一体何を作っているんですか?」
「んん?今回はシンプルに、野菜のスープだよ?」
「「「「え!?」」」」
「や、野菜?・・・・・何を入れたらこんな色になるんです?」
「ん?その辺にある物を適当に、かな?」

顎に人差し指を当てて考え込む姿が素敵だ!じゃなかった!!この場には、そんな大それた物は置かれていない。それなのにこの色!貴女は天才か!?違う!!あんたは魔女か!?

そのままオレ達は何も言えず、黙って実食する事となってしまったのだが・・・。

「ルーク様?私達はお昼を済ませたばかりですので、食べられそうにありません。」
「カレンさんに迎えに来て貰って、先に帰ってるね?」
「あ、このカップケーキは頂いて行きますね!」
「あ!!ちょっと!・・・逃げやがった。」
「皆お腹いっぱいだったんだぁ。仕方ないよね。じゃあ、ルーク君?沢山あるから、遠慮せず食べてね?」
「え、え?あ、はい。」

スプーンを持つ手が震える。体中から汗が噴き出す。スープをすくってみるが、液体も個体も全てが紫色に染め上げられている。口に運ぼうとするが、オレの右手が動こうとしない。本能が拒絶している。だが、食べるしかない。そう、これは命を懸けた闘いなのだ。煩悩対本能の真っ向勝負。憧れのお姉ちゃんを取るか、命を取るか。大丈夫!オレならやれる!!オレの性欲は無限なのだ!!!

オレが躊躇っていると、クララさんがためらいもせず口に運ぶ。

「う~ん・・・いつも通りかな!」
「いつも通り!?」

観念したオレは、ゆっくりと紫の何かを口に運んだ。そして、そのまま意識を手放した。

「ぐ、ぐはっ!!」
「ちょっと、ルーク君!?しっかりして!!・・・やっぱりダメだったかぁ。」

暫くして、オレは意識を取り戻した。後頭部に柔らかい感触を感じていると、上からクララさんが覗き込んできた。どうやら膝枕してくれていたらしい。

「良かったぁ、気が付いたんだね!」
「すみません、気を失ってたみたいで・・・。」
「うふふ。私の料理を食べた人は、み~んな気絶しちゃうんだ。お陰で誰もこの調理室に近寄らなくなっちゃって・・・。」

悲しそうにしているクララさんに、色々と事情を説明して貰った。当然、膝枕を堪能しながら。

クララさんは生まれつき貧しく、満足な料理を食べた事が無かったそうだ。成績はそれなりに優秀だった為、学園が費用を貸してくれた事もあって現在まで在籍出来ているそうだ。ただ、贅沢出来る程の余裕は無い為、食材を自分で調達して日夜研究を重ねているとの事だった。

考えてみると、料理はそれなりに金が掛かる。調理器具然り、食材然り。言われて気が付いたのだが、並べられた食材は野草の類が多く、どれも食用には適していない。メンバーがクララさん1人では、学園も活動費を支給してくれなかったという背景もあるそうだ。そこでオレは、活動資金提供と、料理を教える事にした。

「さっき学園長先生に聞いたんだけど、えっと・・・ルーク君は皇帝陛下なんだよね?」
「そうですよ。だから、お金に関しては心配いりません。対価も不要です。」
「それはダメだよ!でも、どうしよっか・・・・・そうだ!私、ルーク君の妾になるよ!!」
「はぁ!?」
「お世話になるんだから、当然でしょ?それとも、私じゃ魅力無いかなぁ?」
「そ、そんな事ありません!!じゃあ、クララはオレの物という事で!」

その後、暫く2人で食材保管庫の中を確認した。しょ、食材達の寝心地というか、何というか。嫁さん達には、そのうち話そうと思う。逃げられた仕返しという訳でもないが、ちょっとくらいは構わないだろう。どうせ叱られるんだ。

クララは城に住む訳にはいかないと言うので、学園の寮に残る事となった。卒業した後の事はその時考える事にして、一般人が一生遊んで暮らせるだけの金額を渡した。金庫代わりに、小さなアイテムボックスに入れて。オレに何かあっても問題無いようにと考えた結果である。まぁクララの性格なら、贅沢に走る事は無いだろう。

城へと戻ったオレは、料理を食べて気絶した事だけ伝えた。しかし、結局は全てバレてしまった。どうやら顔に出ていたらしい。今度からは、事後報告する場合は仮面をつける事にしよう。

結局は事に及んでしまった為、エミリア達が料理研究会に入る必要は無くなったらしい。これでオレは、あの調理室に鍵付きの頑丈な部屋を作る事が出来る。何の為かって?そんなのは、食材の声が響かないようにする為に決まっている。
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