Shining Rhapsody 〜神に転生した料理人〜

橘 霞月

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転生〜統治(仮題)

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後ろからナディアを抱き締めたまま、オレ達はカイル王国の王都ファーニスから1番近い森の中に転移した。周囲に人の気配は無い。息子のジョンが起きてしまったようだが、オレは室内派なので諦めてもらう。そもそもこの世界では、屋外でのプレイなど危険以外の何物でもない。虫や魔物が大量に生息する環境下で、肌を露出する者など・・・1人しかいない。

嫌がって逃げようとしていたナディアであったが、渋々了承してくれた。今度1つ言う事を聞く約束をさせられたが。道中でからかわれる場面もあったが、何とかなだめて冒険者ギルドに辿り着いた。

オレ達は現在、ギルドマスターの部屋にいる。ナディアの後継者は、ミウさんと言う猫の獣人である。元副ギルドマスターらしい。オレは初対面だが、かなり優秀な人のようだ。そして現在、ナディアとミウさんがギルドの業務に関して相談している横で、オレは例の魔道具を調べている。

「水晶?の玉に関しては、特別な所は無さそうだな。となると、魔道具になってるのは台座の部分か?・・・あった。でも、これって・・・」
「これまで数多くの錬金術師が解明しようとしたけど、使われている言語が理解出来なかったみたいよ?」

オレの独り言に、ナディアが反応して説明してくれた。誰にも読めなかったのか・・・。

「古代魔法言語みたいだね。内容は・・・解析、かな。その後、ステータスを表示してる?」
「「読めるの(にゃ)!?」」
「読める。そして、色々と制限されてる。個人情報を表示しないようにしてあるね。肝心のレベル表示も・・・200以上は表示しないようになってるにゃ!」

興奮のあまりミウさんの猫言葉が移ってしまい、オレは恥ずかしくなって項垂れた。

「あはははは!まぁ、気にしなくていいにゃ!!それよりも、これは大発見にゃ!早速ギルド本部に報告にゃ!!」
「ちょっと待って!この事は私達だけの秘密にしましょう?」
「何でにゃ?」
「製作者の意図がわからないし、何より解析なんて魔法が広まったら問題が起こるわ。何処まで判明するのかわからないけど、素性を隠している者の正体がバレるのは危険よ。」

確かに、国が犯罪組織に送り込んだスパイが、解析の魔法によって気付かれるといった状況になりかねない。他にも色々と考えられるが、命に直結する問題がほとんどだろう。とりあえずオレ達は、この件を秘密にする事を決めた。まぁ、オレが詳細を説明していないのだから、バレても悪用される事は無いはずである。

「確かにそうにゃ。特に獣人はそういう者が多いから、同族に恨まれかねにゃいにゃ!」
「どういう事?」
「ルーク様はまだ体験してにゃいのかにゃ?獣人は、その身体能力の高さから密偵や暗殺を行う者が多いにゃ!国の要人が狙われるのは、よくある事にゃ!!」

暗殺なんて物騒なのは体験したくない。来ても誰かが返り討ちにするだろうけど。それよりも、ミウさんの言葉が聞き取り難くてかなわない。こんなの声優さん泣かせだろうから、これ以上は会話しないが。・・・一体何の話だ!?

これ以上ミウさんを巻き込むのは控える事にし、オレ達はファーニス近くの森に戻って来た。ちなみにギルドには、オレ特製のショートケーキを置いて来た。出来る限り早くカカオを入手したい。そうすれば、一気に作れる品物が増えるのだから。

森の奥まで入ったオレ達は、先程判明した解析の魔法を試してみる事にした。ナディアにも了承して貰ったので、オレとナディアのステータスとやらを確認してみる。詳細まで確認すると、話が逸れる可能性があったので、種族と称号、レベルの上限を消して試してみた。気になってたナディアの年齢も一緒に。

◆ルーク=フォレスタニア
種族:神(覚醒前)
年齢:15
レベル:417
称号:シリウス学園1年生、フォレスタニア帝国皇帝、許可を得し者、神皇子

◆ナディア=ミトラス=ラウラ
種族:獣人(白狐)
年齢:73
レベル:206
称号:許可を得し者、フォレスタニア帝国皇帝婦人、元ギルドマスター、亡国の姫君

「亡国の姫君!?」
「神皇子って何よ!?しかもレベル400超え!?」

お互いの称号に驚いて、それぞれが気になった部分を叫ぶ。周囲に誰もいなくて良かった。

「ナディアって、お姫様だったの?それより73歳!?」
「そ、そうよ!獣人は人族の3倍の寿命だから、24歳相当ってとこね。しかし、これは相当ヤバイ魔法よ。個人情報駄々洩れじゃないの!」
「それもそうだけど、この『許可を得し者』って何だろう?オレとナディアで順番が違うけど。」
「私の並び・・・時系列になってるわね。これって、ルークは帝国との戦争前に、私はつい最近って事かしら?」
「「・・・それって!!」」

恐らくは、ギルドにあった鑑定の魔道具で、測定不能になった時に付いた称号だろう。それ以外に心当たりは無い。1つの解答は得られたが、さらに謎が深まってしまった。この件は保留にし、残った疑問について話し合う。

「神皇子って事は、ルークのご両親は神々の・・・皇帝?そんなのがいるのか知らないけど。」
「カレンに聞いても教えてくれないだろうし、機会が来るのを待つしかないね。それよりも、ナディアの国って何処?」
「そう、ね。ルークには話しておこうかしら。・・・私はここよりずっと東、獣人達が住む領域にあった、ラウラという国の第二王女だったの。獣人の領域は戦争が絶えなくてね。私の国も他国に滅ぼされたのよ。幼かった私と姉は、人族の領域に逃げ延びて一命を取り留めたけど、それ以外の者は全員殺されたらしいわ。だから、白狐の獣人はもう2人しか残っていないの。」
「そうか・・・それは大変だったね。それで、そのお姉さんは?」
「私が冒険者として一人前になった時に、旅に出てしまったわ。両親の仇を討つって言い残してね・・・。50年以上も前の話だから、もう亡くなっているのかもしれない。」
「可能性の話をしても仕方ないよ。とにかく、追々情報を集めるとしよう。まぁ、オレは生きてると思うよ?」
「ルーク・・・ありがと!」

元気になったナディアの笑顔に見惚れてしまった。やはり、オレは自分の愛する人には笑っていて欲しい。もう2度と・・・・・2度と?何だっけ?

「で、ルーク?これからどうする?・・・ルーク!」
「え?あ、あぁ、ごめん。そうだな・・・オレは本気の全力疾走で奥まで向かってみるよ。転移出来る場所は、出来るだけ近い方が良いだろうし。で、明日の朝はそこから一緒に最奥へ向かう。で、どうかな?」

オレは何を思い出し掛けた?いや、思い出す?それって・・・大切な何かを忘れている?いや、今はよそう。ナディアとの会話の最中に考える事じゃない。

「そうね。あ、それなら北側に1度抜けておいた方がいいわよ?」
「ん?何かあるの?」
「ミーニッツの北西、魔の森の西端と思われる場所から北側に行くと、スカーレット共和国があるのよ。近々行くんでしょ?」
「あぁ、なるほどね。そうだな・・・うん、ありがとう、ナディア。」

オレは近いうちに、嫁さん達の実家に挨拶回りを計画している。近くまで転移出来れば、気軽に行けるという意味だろう。ナディアの気配りには頭が上がらない。国の転移魔方陣は、緊急時以外の使用が認められていない。唯一の例外は、世界政府の会議当日のみである。その日だけは、各国の王が自由に転移出来るので、この間のように遊びに来る事が出来る。

それからナディアを城へ送り、オレはミーニッツ共和国に入って、森の横を西へ向かって全力疾走した。というか飛行魔法も使って一気に移動した。途中、森に入れるか確認しながらではあったが、イリヌス山脈の谷間に伸びる魔の森を確認出来る所までやって来た。空には無数の飛竜が飛び交っている。恐らく周囲の山が住処なのだろう。森と山、どちらを進んでも地獄の可能性が高い。山は勾配が急で見通しが良く、格好の的となるはずだ。一方の森は急激に横幅を増し、魔物の気配が濃くなっている気がする。

明日に備えて城へと戻ったオレは、ナディア用の装備を揃える事にした。恐らく、激戦必至となるはずである。武器の魔道具化は好きではないのだが、オレのこだわりよりもナディアの命の方が大切なのだから。

いよいよ明日、魔の森へのアタックを決行する。
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