Shining Rhapsody 〜神に転生した料理人〜

橘 霞月

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転生〜統治(仮題)

自爆魔法?

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カレンが後ろで見守る中、オレとナディアは魔物の群れと戦闘中である。お相手はスライムとゴブリンの混成軍。魔族を隔離している大陸、カレンに習い新大陸と呼ぶ事にしたが、新大陸のスライムは初級魔法を使う。これには注意書きがある。上級レベルの威力を持つ初級魔法である。炎を矢のように打ち出す『ファイアアロー』という魔法があるのだが、ここのスライムが放つとレーザービーム状なのだ。

もう一方のゴブリンだが、武器を持っていない。否、持てない。ゴブリンの攻撃に耐えられる武器が無いのだ。よって、手と足を使った近接戦闘主体である。少し弱いナディアが沢山いるイメージだろうか。

近距離にゴブリン、中遠距離にスライムという布陣。スライムとゴブリンに仲間意識は無く、ゴブリンの身を案ずる事無く魔法を使って来る為、非常に性質が悪い。ゴブリンの相手をしていると、ゴブリンの体を貫通して魔法が飛んで来るのだ。これにはナディアも手を焼いているようで、反撃に移れずにいる。

「ルーク!あのスライム、何とかしてよ!!」
「馬鹿!戦闘中に気を逸らすな!!ぐぅ!?」
「ルーク!?ごめんなさい!」

ナディアの意識がオレに向いた瞬間、スライムからの一斉攻撃がナディアを襲った為、オレは射線上に移動して身代わりとなった。致命傷には至らなかったが、全身に傷を負い満身創痍の状態である。ナディアに当たっていたら、無事では済まなかったはずである。

「ナディアが無事なら構わないよ。」
「私が付いて来なければ・・・。」

せめて1人であれば、時間を掛けて1体ずつ確実に減らせるのだが。一瞬そう思ったが、甘い考えは捨てよう。いつか、同じような状況に見舞われる可能性だってあるのだ。いざという時、大切な人を護れないようでは後悔してもしきれない。その為にも力が欲しい。とにかく今は、この危機を乗り越える必要がある。

そう思うと同時に、オレの中に怒りが込み上げてきた。ナディアが危険に晒されたというのに、カレンはいつになったら加勢してくれるのか?何故オレがこんな目に逢わなければならないのか?どうしてスライムとゴブリンにボコボコにされてるのか?

そう考えていると、ゴブリン達が笑いだした。傷だらけのオレの姿が滑稽だったようだ。ゴブリンに笑われる屈辱ときたら、半端なものではなかった。それはもう、全身の血が頭に集まって来たのではないかと思うほど。そして、逆上した為、思考が矛盾だらけであった。武器を使っても、今の状況では満足に動けない。ならば魔法だ。ここまでは良かった。しかしオレは、危険な気がして使わずにいた魔法を使用する事にしたのだ。ただの勘だがこの魔法、オレが使える中で最高の威力だと思っていた。しかし、何となく使ってはいけないと感じていたのだ。

「・・・頭にきた!完全にキレた!!もういい。全部消えて無くなれ!」

オレはナディアに全力の防御魔法を施す。カレンは・・・知らん。自分で何とかするだろ?

「終末の訪れよ
混沌を導く者よ
我が前に立ち塞がるは雑兵
我が眼前に広がるは芥.
我が生命を糧とし
肉の一欠片血の一滴まで
一切の存在を否定する」

「・・・詠唱?カレン、ルークは何を!?」
「これは禁呪?ですが、こんな詠唱は無いはずです。はっ!?いけません!!」

カレンが何かに思い当たったようだが、時既に遅し。オレは一気に詠唱し、禁呪を発動する。


「原初より生れし闇の元
悠久を刻むは誰が為に
彼の存在こそ悪
今この時より与えよう
我と汝の力を以って
滅びという名の救済を・・・ジハード!!」

ルークが使用したのは、間違い無く禁呪である。闇属性の第十三階級。しかしこの魔法は、他の属性とは趣が異なる。過去に使えた者がいたのかは不明であるが、それには理由があった。通常は、術者本人か関係者、もしくは目撃者がいる。しかし、この魔法に関しては一切存在しない。過去に使用した者がいても。

ルークを中心に、半径数キロが黒い光に包まれる。次の瞬間、全てを吹き飛ばす爆発が広がった。数秒、あるいは数十秒だろうか。防御結界越しにその衝撃に耐えていたナディアが目を開けると、その周囲には広大なクレーターが広がっていた。

何が起きたのかを思い起こし、慌てて周囲を見渡すと、クレーターの中心に横たわるルークの姿があった。急ぎ駆け付けるナディアであるが、ルークの姿をみて愕然とする。自分を庇った時よりも、明らかに怪我の度合いが増している。

「ルーク!しっかりして!!」

抱き起して呼び掛けるが、反応は無い。かろうじて息はしているが、怪我の状態が酷く、最早一刻の猶予も無いように思えた。しかし、ナディアは回復魔法を使えない。カレンとルークが同行していた為、魔法薬も持ち合わせていない。そして何より、還る手段が無いのだ。何か出来る事は無いかと焦り始めた時、背後から声を掛けられる。

「ナディア・・・あまり強く抱き締めると、ルークが死んでしまいますよ?」
「カレン!?良かった!ルークが・・・って、どうしたの!?」

良く知った声に、振り返りながら反応し、その姿を確認して驚きの声を上げた。視界に入ったのは、本来の美しさは見る影を潜め、スラムの住人よりもボロボロになったカレンであったのだ。

「ルークの魔法の巻き添えに・・・。説明の前に、ルークの治療を済ませてしまいましょう。メガヒール!」

カレンの放つ上級魔法により、ルークの怪我は跡形もなく消え去る。しかし、ルークの意識が戻る気配は無い。心配になりカレンを見やると、いつものように微笑んでいる。心配無いと悟り安堵すると、カレンから説明を受けた。

「ルークが目覚めないのは、魔力を使い果たしたせいです。ゆっくり休めば意識を取り戻すでしょう。それよりもこの状況ですよ。・・・はぁ。」
「カレンが溜息なんて初めてね?」
「それはそうですよ!この状況、一体どうすれば良いのですか!?」
「私に言われてもね・・・。それで、何があったの?」
「ルークが禁呪を使用しました。他の属性と違い、闇属性の禁呪は私でも情報が手に入らなかったのですが・・・この状況を見て納得しました。あの魔法は、術者諸共吹き飛ばす凶悪なものです。使用者に話を聞こうにも、一緒に吹き飛んでしまったら聞けませんもの。」
「術者も一緒にって・・・じゃあ、どうして私達は生きてるの!?」
「ナディアは、ルークの超強力な防御魔法によって護られました。ルークも、咄嗟に防御魔法を使用したのでしょうね。防ぎきれなかったようですけど。」
「そう・・・って、カレンは!?」

半目で若干睨んでいるのではないか?という視線をルークに向けているカレンの様子に、ナディアは慌てて説明を求めた。

「私はこの通り、誰にも護って頂けませんでしたからね?自力で対処しましたよ?愛されているナディアと違って・・・。」
「そ、それは・・・って、カレン。妬いてるの?」
「私がこんな気持ちになるなんて思いませんでしたが・・・そのようですね。ですから、ルークが目覚めたらきちんと説明して頂きます!理由次第では、きっちりと償って頂きますから!!」
「そ、そう。まぁ、程々にね?」

カレンがここまで感情をあらわにするのも珍しいと思いながら、ナディアは視線をルークへと戻し、そっと頭を撫でる。その後叩く。自分達の気持も知らず、幸せそうに眠っているルークに腹を立てて。
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