Shining Rhapsody 〜神に転生した料理人〜

橘 霞月

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転生〜統治(仮題)

方向音痴ではありません

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城を出発してから10日間が経過した。城を出発したルーク改めアストルは、ベルクト王国に入国してすぐ街を目指して・・・いなかった。街道で会った商人からベルクトまでの道のりを教わり、出発早々目的地を変更してしまったのだ。理由は単純、出現する魔物が少ないと聞かされたからである。

フォレスタニア帝国とミーニッツ共和国の東に位置するベルクト王国は、西側の大半を穀倉地帯が占めている。大変見晴らしが良く、非常にのどかであった。魔物の出現をいち早く察知出来る為、討伐も迅速に行われていたのだ。これではルークの求める戦闘にはありつけない。よって、国境付近を南下し、クリミア商国の国境付近に広がる山岳地帯を目指したのである。

何処の国であっても、住人のいない山岳地帯の魔物は放置している。当然弱い魔物が多いのだが、中には強い魔物もいる。数撃てば当たるといった所だろうか。そんな危険な場所を訪れるのは、冒険者くらいのものである。しかしそんな冒険者であっても、山岳地帯に長居するような真似はしない。集団での行動であれば、夜間は交代で見張りをするのだが、アストルは1人である。夜間に精力的に活動する魔物も多い為、当然寝込みを襲う魔物もいる。そしてアストルも例外ではなかった。

この夜何度目かの客を撃退し、やれやれといった表情で木の上に登る。地面で寝るよりは、危険が少ない為である。アストルの特技の1つに、どんな場所、どんな体勢であっても、瞬時に眠りにつく事が出来るというものがあった。寝返りをうつ事も無く、熟睡してしまうのだ。通常であれば、寝返りをうたないというのは不健康と言えるだろう。しかし、日頃から短時間の睡眠で済ませていた事もあり、アストルには当て嵌まらなかった。

そういった事情もあり、アストルは1日のほとんどをレベルアップに費やしていた。戦闘以外に時間を割くのは、食事と夜間の通信程度である。夜間の通信とは、嫁さん達が就寝前に毎日アストルと会話をする事である。これは、何があっても絶対に欠かさないと約束させられた為、アストルも渋々従っているのだ。長期間不在にするのだから、やむを得ない事だろう。単身赴任のような気分にさせられていたのだが。

話を戻すが、恐ろしいペースでの戦闘回数にも関わらず、本人は全く満足していない。覚醒前のレベルに到達するまでは、非常に長い道のりだと考えている為である。街に立ち寄れば、当然時間も少なくなるだろう。焦る気持ちも多少は理解出来る。しかし、アストルは失念していた。レベル400に至るまで、10年という期間を要した事を。それさえも異常な早さではあるのだが・・・。

この時点でのアストルのレベルは61。これは、ランクBからCの冒険者と同レベルである。明らかに驚異的な成長なのだが、これにもちゃんとした理由があった。神としての覚醒に伴い、低下したのはステータスのみだったのである。戦闘経験や知識、技術といった、これまで培ってきた物は一切失われていないのだ。お陰で無駄な力や時間を使う事無く、効率良く戦闘をこなせている。ここまでは順調だったのだが、この辺で一度冒険者ギルドに向かう事にした。

「あ・・・アイテムボックスがそろそろいっぱいだ。仕方ない、ギルドで買い取って貰うか。」

アストルは旅立つ直前、自らの所持金と所持品のほぼ全てをスフィアに預けていた。有事の際は、遠慮なく使って構わないと言い残して。中身を確認した嫁さん達は驚愕、歓喜したのだが、それはアストルが旅立った後の事。愛刀の美桜と、現在の実力に見合った武器(といってもミスリル製)、それから多少の金銭は手元に残している。

ギルドへ向かうと決めた翌日の夕方、なんと早々に街へ到着してしまったのだ。これは街へ近付くにつれ魔物の数が減少した為、一気に駆け抜けてしまったせいだ。ともかくこうして現在、街に入る手続きの為、門の前に並んでいる。暫く待つとアストルの番になったらしく、守衛から声が掛けられる。

「セイルの街にようこそ。街に入るなら身分証の提出と銅貨2枚の支払いをお願いします。」
「どうぞ。・・・ちょっと聞きますけど、ここはクリミア商国ですよね?」
「え!?いや、ここはベルクト王国の南東に位置するセイルって街だが・・・君は何処から来たんだ?」
「ベルクト!?マジかよ・・・あ、オレはフォレスタニア帝国から来ました。ランクF冒険者のアストルと言います。」

クリミアに向かったつもりが、戦闘でぐるぐる回ってたから方角がズレてたのか。しかもベルクトの南東とか・・・面倒な貴族が多いって言ってなかったか?

「帝国から?・・・まぁ、見た所若いし、ランクFなら地理に疎くても仕方ないか。うん、よし!身分証にも問題無いし、もう行っていいよ。少年、頑張れよな!」
「え?あ、はい。ありがとうございます。」

良くわからないけど、あっさり街に入れて良かったよ。さてと、まずは宿を探してからギルドに行くか。

ちなみにアストルは知らないが、セイルの街はベルクト王国で3番目に大きな街である。そしてベルクト王国は貴族が特に幅をきかせている国であり、大きな街ほどその数も多い。

暫く進むと、宿が立ち並ぶ区画に辿り着いたようで、客引きの女性が多く見られる。あまり女性と関わりたくないアストルは、ローブに着替えてフードを被ってから歩を進める。

「そこの人!宿を探してないかい?ウチの宿は快適だよ?」
「そっちの宿より、ウチの方が断然お勧めですよ?」
「いやいや、私の所に来てくれたら、沢山サービスしちゃうよぉ?」

「・・・やれやれ。これじゃあ、何処でも一緒だよ。ん?」

客引き同士の勢いに呆れていると、1人の少女が目に止まる。どうやら、大人の女性達に遠慮して客を捕まえられずにいるようだ。宿なんて、何処も一緒だろう。今日の宿はあの子の所にしよう。真っ直ぐに少女の所へ向かい、とりあえず確認してみる。

「ねぇ、お譲ちゃん?君の所の宿、まだ空いてるかな?」
「え?え?う、うん。じゃなかった、はい!」
「よし、それじゃあ案内してくれるかな?」
「うん!着いて来て!!」

7、8歳くらいだろうか?赤毛の少女が嬉しそうに笑い、オレの手を引いて先導する。やはり女の子には笑顔が似合う。予め言っておくが、オレはロリコンではない。そっちの気は皆無だ。間違っても「イエスロリータ、ノータッチ」なんて言う事は無い。そういう趣味の人には悪いが、オレは大人の女性が好きだ。大好きだ。むしろ、この子の母親くらいが・・・なんてアホな事を考えていると、女の子が話し掛けて来た。

「私の名前はアンナ!お兄ちゃん・・・だよね?お名前教えてくれる?」
「あぁ、ごめんアンナちゃん。オレはアストル。冒険者をしてるんだ。よろしくね?」
「うん!ねぇ、アストルお兄ちゃん?どうしてウチの宿を選んでくれたの?」
「アンナちゃんが周りに遠慮して、お客さんを捕まえられないみたいだったからかな。」
「そうなんだ・・・ありがとね!私、大きいお姉さん達が怖くて、なかなかお客さんに話し掛けられないんだ。時々話し掛けても、誰も相手にしてくれなくて・・・。お姉ちゃんのお薬を買う為にも、お客さんいっぱい来て欲しいのに・・・。」

ほぉ?病気のお姉ちゃんがいらっしゃるのですか?それは大変ですな!まぁ、オレが口出しする事ではないので、この話はサラっと流す事にしよう。

「そっか。大変だろうけど頑張ってね?」
「うん!あ、ここだよ!!お母さ~ん、お客さん連れて来たよ~!」

宿が近付くと、アンナちゃんは叫びながら中へ駆け込んで行った。この隙に逃げられたらどうするんだろ?・・・それだけ純粋なんだろうな。しかし何と言うか、まぁボロ宿だ。あんな小さい子に客引きさせる程だ、相当苦労してるんだろう。仕方ない、売上に貢献する為にも、何日か滞在する事にしよう。

宿の中に入ると、奥からアンナちゃんと同じ髪色の女性が現れた。なかなかの美人さんである。こんな美人がいる宿が流行らないのは少し妙である。とりあえず宿泊の手続きをしよう。

「い、いらっしゃいませ!私はこの宿の主で、ポーラと言います。ウチは1泊銅貨10枚、食事は1食銅貨2枚となっております。お客様は、何泊ご希望ですか?」
「オレはアストルと言います。とりあえず3泊でお願いします。」
「それでは銅貨30枚になります。食事の代金は、その都度お願いしますね。早速ですが、夕食はどうなさいますか?」
「じゃあ、銅貨30枚です。夕食は・・・お願いします。」
「はい、確かに。では、今から準備しますので、少ししたら食堂までお越し下さい。お部屋は2階の奥になります。アンナ、お客様をご案内して。」
「うん!アストルお兄ちゃん、こっちだよ!!」
「ちょっとアンナ!お客様でしょ!?」
「ごめんなさ~い。お兄ちゃん、行こう?」
「コラ!・・・もう!!」

母娘のやり取りに心を温められ、オレはアンナちゃんに着いて行った。部屋に入り、中を確認する。建物はボロいが、中はしっかり掃除されている。しかし、客の気配が無い。この宿、やはり何かがおかしい。自分からトラブルに飛び込んでる気がするな。オレを見た時のポーラさんの様子もおかしかったし。何かに警戒しているような感じだった。

・・・あっ!フード被ったままだった!!
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