Shining Rhapsody 〜神に転生した料理人〜

橘 霞月

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転生〜統治(仮題)

新たな目標

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階段を降りてダンジョンへと足を踏み入れたアストル達は、その光景に言葉を失っていた。自分達は確かに地下へと降りた。それなのに、目の前に広がっているのは草原なのだ。見上げると空と太陽もある。オマケに端が見えない。このダンジョンが、一体どれほどの大きさなのか見当もつかない。

「・・・・・ねぇ?」
「・・・・・何よ?」
「私達って地下に降りたわよね?」
「・・・降りたわね。」
「・・・草原よね?」
「・・・草原ね。」

アストルとフィーナが言葉を失っていると、ナディアとルビアが現状を確認しようとしていた。ふとルビアが思いついて、ナディアに頼み事をする。

「これは夢?・・・ナディア?悪いけど、私の頬を・・・って危なっ!!」
「・・・どうして避けるのよ?」
「私は頬をつねって貰おうとしたの!何処に拳をフルスイングするバカがいるのよ!!」
「あら?半端な痛みじゃ夢から覚めないと思って気をつかってあげたのに。」

ルビアが言い切る前に、ナディアのフックがルビアの顔面めがけて放たれた。ルビアはそれを間一髪で躱す。腰の入った、いいパンチでした。って違うわ!あんなの貰ったら、永遠に夢の中だろ!!

「ナディアとルビアってさぁ、ひょっとして城に帰りたいの?」
「「・・・ごめんなさい。」」

言い訳したら強制送還しようと思ったのだが、どうやらオレが本気で怒っている事を悟ったらしく、素直に謝ってきた。家族なら仲良くしないと駄目である。研鑽を積む為に競うのは構わないが、争うのは良くない。素直に謝った事だし、今回は見逃してあげよう。

「向こうに森が見えるわ!行ってみましょう?」
「フィーナはブレないね。とりあえず、警戒しながらゆっくり行こうか。」

全員が頷いたので、オレ達は森に向かって歩き出す。30分程歩いて、ようやく森の目の前まで辿り着いた。ここまで歩いて来たが、魔物はおろか動物にも遭遇しなかった。

「ダンジョンは迷宮みたいな場所を想像してたんだけど、これが普通なの?」
「いいえ。聞いた話では、迷宮のように入り組んでいるみたいよ?」
「ナディアの言う通りよ。ここが特殊って事ね。」
「とりあえず、森に入るって事でいいのね?」
「うん。何もいない草原を進んでも意味無さそうだしね。」

若干緩んでいた気持ちを切り替え、全員が周囲を警戒しながら奥に進む。それから少し経って、全員が異変に気付く。

「ねぇアストル?この森、明らかに変よね?」
「ん?多分ね。何の気配も感じないし。けどオレは、これがダンジョンなんだと思ってた。」
「あぁ・・・この機会に説明しておくわ。普通のダンジョンなら、1階から魔物が出るのよ。で、奥の階に行く程魔物の強さも増して行くみたい。」
「階によって強さが変わるの?」
「そうらしいわね。本来ならココは、弱い魔物が出現するはずなんだけど・・・。」
「その魔物もいない、と・・・。深さは?何階まであるの?」

魔神特製のダンジョンだから、そんなに浅いとは思えない。説明してくれているナディアもダンジョンは初めてらしいが、元ギルドマスターだから色々と情報は持っているだろう。

「最低でも50階、としか知らないわ。」
「100階層のダンジョンもあるみたいよ?」
「「「100階!?」」」
「本当なの、フィーナ?」

これだけの広さで100階とか、攻略に何ヶ月掛かるんだよ?

「ちなみに何処のダンジョンも、10階毎にボスのいる部屋があるみたい。倒すと貴重な武器や魔道具が手に入るらしいわ。記録が残っている中で、過去最高到達地点は92階。だから100階まではあるはずっていうのが、有識者の共通認識ね。」
「ダンジョンを攻略するとどうなるの?」
「過去に攻略されたダンジョンは1つだけ。その時は、国宝級の魔剣が手に入ったらしいわね。でも、50階層の浅いダンジョンだったみたいよ?」

50階層のダンジョンでも国宝級か・・・それは攻略を目指す冒険者が跡を絶たない訳だ。あと聞いておきたいのは・・・。

「攻略したダンジョンは無くなるの?」
「無くならないわよ?でも、攻略報酬は無くなるみたいね。それと、ダンジョンの成長が止まるわ。だから冒険者ギルドとしては、早めに攻略を進めたかったのよ。手出し出来なくなる前に・・・。」
「フィーナが攻略すれば良かったんじゃない?」
「入れさせて貰えなかったのよ。冒険者ギルド本部長に何かあったら不味いって理由で。」
「そうなの?」

まぁ、組織のトップがフラフラしてるのも問題だよな。・・・何か忘れてないか?と思ったら、フィーナとナディアの溜息が聞こえてきた。

「あのねぇ?普通は、国王がダンジョンをウロウロ出来るはずないのよ?」
「スフィアに感謝する事ね。」
「あはは。ルーク、叱られちゃったね?」
「「ルビアもよ!!」」
「うっ!?」

いや、そんな事言ったら王妃の君達もイカンでしょ?逆襲されるから言わないけど。

「ダンジョンに関しては、そんな所かしらね?まだ何か聞きたい事はある?」
「魔物しか出ないの?罠とかは?」
「罠に関しては、50階以降になると仕掛けられてるって噂があったけど、真相はわからないわ。」
「わからない?」
「情報ってお金になるのよ。罠の噂は特殊な状況だから広まったけど、普通は噂にもならないでしょうね。」

その後フィーナが語った特殊な状況とは、何とも言えないものであった。

過去、92階まで到達したパーティは総勢50名の大型クラン。攻略や補給の為に、数チームに分かれて1年以上掛けての攻略だったらしい。攻略を断念したのは、人間関係の悪化であったらしい。

地上からの距離が伸びて補給が難しくなった為、それ以上進むつもりなら倍の人数が必要と判断された。そこで試しに他のパーティに協力を要請した所、連携が上手くいかずに犠牲者が出てしまう。

歯車が1つ狂うだけで全体に影響を及ぼし、やがて修復は不可能な状態に。犠牲者が増える前に攻略を諦めたのは、リーダーの英断と言われているとか。

「まぁ、欲をかき過ぎるのは危険なんでしょうね。」
「そっか。ありがとう、フィーナ。」
「どういたしまして。・・・で?何を考えているのかしら?」
「ん?あぁ、いや、カレンの言葉が気になって。」

嫁さん達が一斉に首を傾げる。その仕草が可愛らしくて、全員を押し倒してしまいたくなったのは秘密である。

「転移出来なければ最高難易度・・・まるで入った事があるような口ぶりだったでしょ?それなのに攻略したって話は無い。」
「確かに・・・何かありそうね。」
「カレン様は色々と隠してそうだものね。」
「・・・気になるなら直接聞いてみれば?」

そう言うと、ルビアは通信の魔道具をしようしてカレンを呼び出してしまう。この人は怖いもの知らずというか・・・。

「ルビア?どうかしましたか?」
「ちょっと聞きたいんだけど、ダンジョンに入った事があるわよね?どうして攻略しなかったの?」
「そ、その事ですか。それは・・・非常に言い難いのですが・・・実は、どうしても攻略に時間が掛かってしまいまして・・・」

何故かカレンが言い淀む。こんなカレンは非常に珍しい。やはり何かありそうだ。まさか魔神が!?

「・・・お風呂に入りたかったのです。」
「「「「え?」」」」
「美味しいご飯も食べたかったのです。」
「「「「は?」」」」
「だって・・・転移が使えないのですよ!?移動だけでも1週間以上掛かってしまうじゃないですか!?ご飯だって、焼いた魔物の肉ばかりなんですよ!?」

ちょっと整理しよう。カレンは1週間も風呂に入らないのは嫌だと言う。そうですね、女神様ですからね。汚い女神なんて、女神じゃない。

美味しいご飯も食べたいと言う。残念ながら、カレンは料理が出来ない。野営ともなると、食料は保存食か焼いた魔物の肉だ。毎食肉ばかりでは、お肌に悪い。

うん、結論は出た。

「アホかぁ!!」
「そんな理由なの!?」
「心配して損したわ!!」
「何処の貴族よ!?あ、女神か。」

全員に責められ、カレンが頬を膨らませる。あ、怒った顔も素敵です。

「仕方ないじゃありませんか!嫌なものは嫌なんです!!」
「いや、気持ちはわかるけど・・・ひょっとして、オレと一緒に行動しないのって・・・」
「あ!すみません、用事を思い出しました。失礼しますね!!」
「「「「あっ!!」」」」

逃げた。思い返せば、カレンは日帰りでしか一緒に行動しなかった。まさか、そんなどうしようもない理由だったとは・・・。

「・・・しょーもな!!」
「同感だわ。」
「でも、気持ちはわかるわ!」
「ルビアも!?」
「フィーナは違うの?考えてみなさいよ!私達しかいないのよ?ルークを独占出来る貴重な時間よ?それなのに、汚いままでいいの?」
「「っ!?」」

ルビアさん、一体何の話をしているんですか?ナディアさんにフィーナさん、そんなに衝撃を受けるような事ですか?一応フォローしておこう。

「お風呂は無理だけど、生活魔法で綺麗に出来るからね?」
「そういう問題じゃない!」
「ルークはお風呂上がりの香りとか、そういった物に興味は無いの!?」

フィーナさん、何を言ってるんだい?風呂上がりの香り?そんなの、大好物に決まってるじゃないか。
さらに言えば、髪を纏めてアップにしている姿なんて、普段と違った魅力で興奮してしまう。

「・・・お風呂、大事だね。」
「そうね。」
「同感だわ。」
「私の言った事がわかったようね。」

カレンさん、色々と文句を言ってすみませんでしたぁ!これは、決まりだ。今後の最優先事項について確認しておこう。

「ダンジョン内に、安全な場所ってある?」
「え?確か、セーフティエリアと呼ばれてる場所があるっていう話だったけど・・・。」
「2、30階ごとに、そんな場所があるって聞いたわよ?」
「なるほど。じゃあ、そこに家を建てよう。・・・風呂付きの。」
「いいわね。」
「でも、他の冒険者が来るんじゃない?」
「誰も来れない階層まで一気に降りちゃえば?」


ルビアの提案に、全員が無言で頷く。オレ達が猛スピードで、冒険者達のいない階層を目指したのは言うまでもない。
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