Shining Rhapsody 〜神に転生した料理人〜

橘 霞月

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転生〜統治(仮題)

ダンジョン10階

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全速力で学園長を追い掛け、ルーク達は森との境界に辿り着いた。道中でキングブルの群れを発見したのだが、そこに学園長の姿は無かった。おそらく単独で森へと入ったのだろう。

警戒しながら森を進むと、すぐに気配を感じた。全員が視線を少しだけ上に向けると、そこには学園長の姿があった。どうやら、蜘蛛の巣に引っ掛かったようだが、本人は至って元気そうである。ルーク達は視線を合わせ、何故高い位置に張られた蜘蛛の巣に引っ掛かったのかは聞かないでおこうという結論に達する。

「お、皆来たようじゃな。すまぬが、降ろしては貰えんじゃろうか?」
「元気そうでがっかりしたよ。」
「久々の冒険でな、少々はしゃぎ過ぎてしまったのじゃ。」
「次は探さないからな?」
「むぅ・・・わかったのじゃ。」

本人も反省しているようだったので、フィーナが風の精霊魔法で蜘蛛の糸を切断しようとする。が、簡単には切れない。魔力を強めると、ようやく糸が切れて学園長が地面へと落下する。誰も受け止めようとしないのは、心の底から呆れていた為だった。

「魔法に耐性がある・・・訳でも無さそうだね?」
「そうね。純粋に強靭な糸みたい。出来れば遭遇したくないわ。」
「蜘蛛は美味しいのですが、ルークが料理してくれないので・・・私も闘わなくていいです。」
「ティナ、食べた事あるの!?」

ナディアよ、毒が無ければ食べてみるのは基本だよ?それが冒険者というものだろう。オレも料理人のはしくれとして、ほとんどの生物は口にした。確かに蜘蛛はカニのようだった。しかしだ、どうにも料理したくないと思ってしまうのは、オレが元日本人だからだろう。虫料理を研究する事に抵抗を覚えたのだ。

残念そうにしているティナには悪いが、今後も料理する事は無いだろう。挑戦すらしたくはない。そんなオレ達の様子が不満だったのか、学園長が口を開く。

「盛り上がっている所をすまぬが、聞きたい事がある。」
「何だ?」
「助けに来るのが遅かったのではないか?」
「そ、そうか?これでも全力で走って来たんだぞ?」
「・・・・・まぁ良い。一応周囲を探ってみたのじゃが、人の気配は無さそうじゃった。」

元々は魔物の出ない階だったのだから、冒険者達の姿が無いのは当然だろう。この辺にいるとすれば、逃げ延びた者だと思うが、それならばダンジョンから脱出していてもおかしくはない。

「とりあえず、無駄な戦闘は避けて進もう。美味しい食材は例外だけど。」
「美味しい食材じゃと?ちなみに聞くが、さっきの牛はどうなのじゃ?」
「え?・・・美味しいんじゃない?」
「ほぅ・・・どうやら討伐だけではなく、回収も済ませて来たようじゃの?」

学園長が半目でオレを睨んでいるが、相手にしない事にしよう。悪いのはアンタだ。

「こんな所でのんびりしている場合じゃな・・・」
「どうしたの?」

20メートル程先の地面が動いているのが視界に入り、思わず言葉を失った。フィーナの問い掛けに答える前に、オレは周辺を鑑定する。

「向こうの地面の下にジャイアントワーム、周辺には大蜘蛛、大百足・・・この森は大型の虫がいるみたいだ。それも大量に・・・。」
「私、ジャイアントワームは好きじゃないの。傷付けると体液が飛び散るから、全身が汚れるのよね・・・。」
「好きな人なんかいないでしょ!」
「ルークが料理してくれない魔物ばかりですね。私も闘う必要はありません。」
「ティナよ!少し飲食から頭を離した方が良いと思うぞ?」

学園長もたまにはいい事を言う。オレ達は視線を合わせ、無言で頷くと全力で移動を開始する。鑑定魔法を探査代わりにして、オレが全員を先導する。この魔法は、ダンジョンで非常に便利なものだった。範囲はそれ程広くないのだが、それでも無いよりはマシである。

こうして戦闘を回避しながら、オレ達は4階へと到着した。どういう訳か、4階は通常のダンジョンであった。迷路状の洞窟と表現すればいいのだろうか。壁や天井があって、本当にダンジョンなんだと納得させられる。

「やっと噂に聞いたダンジョンって感じね?」
「それで、早速分かれ道だけど・・・どっちに進むの?」

ここまで来る間に鑑定魔法を連発した為か、有効範囲が思い通りになっていた。オレは頭に流れ込んで来る情報を整理しながら、皆に説明していく。

「左と真ん中の道は、かなり魔物がいる。右は・・・いないかな。」
「魔物がいないってどうなの?怪しくない?」
「ナディアの言う通り、おそらく罠があるでしょうね。」
「ちょっといいかしら?全ての階を隅々まで確認するの?それとも、ルークの鑑定を頼って最短ルートを行く?」
「当然後者じゃろうな。このダンジョンはそれなりに広い。のんびりしておったら救助が間に合わなくなるじゃろう。」
「・・・急にどうした?」

学園長が真剣な表情になったので、心配になったオレは学園長に確認した。変な物でも食べてなければいいのだが。

「このダンジョン、過去に入った事があるのを思い出したのじゃ。」
「「「「今更!?」」」」
「仕方ないのじゃ!もう何百年も昔の話なのじゃ!!」
「それで?何を思い出したんだ?」
「うむ。このダンジョンにはのぅ、セーフティエリアが少ないのじゃ。」
「セーフティエリア?」
「通常は5階毎に1箇所設置されておる、魔物が入って来ない場所の事じゃ。じゃが、このダンジョンは10階毎に1箇所しかセーフティエリアが無かった。」

それって、何か問題なんだろうか?全く無いよりは大分いいと思うのだが。そんなオレの考えが伝わったのか、学園長が説明を続ける。

「お主らであれば上層階は問題無いじゃろうが、脱出出来ずにいる冒険者達は別じゃ。常に全力で闘わねば倒せぬような魔物ばかりの状況に、体力や魔力、精神力まですり減らしながら10階も進まねば休む事すらままならん。これが一体どれ程の事か、考えなくともわかるじゃろ?」
「それは・・・キツイでしょうね。」
「ちなみに学園長は何階まで進んだのですか?」
「45階じゃ。当時の私は弱かったのでな、それ以上は無理じゃった。」

現在も学園長はそれ程の強さを持ち合わせてはいない。その学園長が弱かった時の話なのだが、現在ダンジョンにいる冒険者達は、当時の学園長と大差無いだろう。このダンジョンは『初心者向け』などと呼ばれているのだから。

下手をすれば、もう生きている者はいないのかもしれない。そんな考えが頭を過るが、学園長がオレの考えを否定する。

「当時、広大なセーフティエリアのある30階前後が人気じゃった。今もそうなら、おそらく大多数の冒険者は無事じゃろう。私に気を使わなければ、お主らならすぐに着くはずじゃ。」
「いいえ、学園長を置いて行く訳にはいかないわ。」
「道案内が必要ですね。」
「ルーク?そういう訳で、お願いね?」

嫌な予感がしたが、この状況でオレに拒否権は無いだろう。渋々了承し、オレは学園町を肩車する。学園長に道案内を任せ、オレ達は先を急いだ。

「うひょ~!早いのじゃ!!もっと飛ばすのじゃ~!」
「うるさい!少し黙ってろ!!」
「うっ!いかん、ルークよ・・・股間がムズムズしてきたのじゃ。」
「てめぇ、アホな事言ってると全力でジャンプして、天井に突き刺すぞ?」
「仕方ないのじゃ!不可抗力なのじゃ!!」
「緊張感の欠片も無いわね・・・。」
「ナディア、これくらいが丁度いいんじゃない?」

くだらないやり取りをしつつ、ほとんど戦闘も無いままあっさり10階のボスがいる部屋の前へと辿り着く。重厚な扉の先に、ボスがいるらしい。通常はゴブリン達がボスとの事だったが、鑑定魔法の結果は違っていた。

「中にはゴブリンメイジ4体と、ゴブリンジェネラル1体だね。」
「討伐難易度Bランクじゃない。何だか滅茶苦茶な配置ね。」
「1階のキングブルは、運が悪かっただけじゃない?普通はあんなに群れないでしょ?」
「さて、どうしようか?オレが1人で行きたい所だけど。」
「あまり時間をかけないのなら構わないわよ?」

ナディアが答えると全員が頷いた。許可を得られたので、オレは扉を開けてゴブリンジェネラル達と対峙する。

様子を伺っていると、ゴブリンメイジ達が一斉にフレイムアローの魔法を放ってきた。オレはウォーターボールを4つ同時に放って相殺すると、その隙をついてゴブリンジェネラルが斬り掛かって来る。

予想通りの動きだった事もあり、オレは手にした美桜でゴブリンジェネラルを振りかざした剣と共に両断する。そのまま流れるような動きで、驚愕の表情を浮かべるゴブリンメイジ達にアイスアローの魔法を放つ。

隙だらけのゴブリンメイジ達は成す術もなく氷の矢を胸に受け、そのまま倒れてしまう。オレは皆の方を振り返り、戦闘が終了した旨を伝えると、皆がオレに近づいて来る。

「相変わらずデタラメよね。」
「ん?何が?」
「魔法よ、魔法!」
「アイスアロー?弱い魔法だけど、どうかしたの?」

フィーナの言葉の意味が理解出来ず、オレは思わず聞き返す。すると、思ってもみない返答が帰って来る。

「あのね?普通は同時に放てないものなのよ。熟練の魔術師なら連発は出来るけど、同時に何発も放つなんて事は出来ないの!」
「そうなの!?それは知らなかった・・・。」
「おまけに剣術も一級品だしね。」
「そんな事言ったら、フィーナとティナだって・・・」
「エルフ族は特別よ?精霊魔法は、精霊の力を借りてるだけだもの。」
「お主ら、大切な話の最中すまぬが、この先のセーフティエリアに誰かおるぞ?」

オレが初めて知る事実だったのだが、大した説明を聞く前に学園町が制止した。オレ達は話を中断して、ボス部屋の先にあるセーフティエリアへと足を運ぶと、そこには若い女性冒険者達が座り込んでいた。声を掛けようと近付き、全員の様子に慌てて回復魔法を唱える。

「き、傷が・・・」
「助かったの・・・?」
「一応回復魔法で傷は癒やしました。もう大丈夫ですね?」
「「「「「は、はい!(かっこいい)」」」」」

5人の若い女性冒険者達が返事をしたので、もう大丈夫だろう。目がキラキラしていたようにも思えるが、きっと気のせいだ。装備や服がボロボロだったので、アイテムボックスからいつものシーツを人数分取り出して、女性冒険者達に渡す。

とりあえず、5人の生存を確認した。あと何人の生存者がいるのだろうか?そんな事を考えながらも、女性冒険者達に事情を聞く事にしたのであった。
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