Shining Rhapsody 〜神に転生した料理人〜

橘 霞月

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転生〜統治(仮題)

40階の生存者

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ケロちゃん・・・ケルベロスを回収し、ルーク達は40階のセーフティエリアへと移動した。そこには、地面に横たわる多種多様な人種の4人パーティが倒れている。ルーク達は顔を見合わせると、足早に冒険者達の元へと駆け寄った。分担して生死を確認していくと、全員の生存が確認出来た。しかし意識が無い。その中の1人にナディアが声を掛けると、弱々しい声で反応があった。

「しっかりしなさい!助けに来たわよ!!」
「う・・・み、水・・・」

何の皮肉だろう?すぐ上には大量の水があると言うのに、この女性達は脱水症状を起こしているようだった。ティナが精霊魔法で水を出そうとするが、魔法は発動前に掻き消えてしまう。オレも水魔法を使ってみるが、発動する事は無かった。どうやら、ここは魔法が使えないらしい。

「精霊魔法が・・・」
「オレも魔法が使えない。魔封じってやつか?」
「厄介ね。なら、アイテムボックスは!?」

ナディアに聞かれ、すぐにアイテムボックスから料理を取り出してみると、こちらは問題無く出し入れが可能だった。しかしナディア以外、水を携帯していない。オレとティナは、魔法で水を確保出来る為である。ナディアはその事に気付き、自分の水を取り出して冒険者達に与える。

この場はティナに任せ、オレはボス部屋へと戻る事にした。そこでなら水魔法が使えるのは体験済である。しかし、ここに来て問題に直面する。水を入れる容器が無いのだ。日本にある異世界物のように上手く事が運ぶ訳ではない。何か無いかとアイテムボックスに集中していると、ある入れ物の存在に気が付いた。

ボスを討伐した際に現れた、巨大な宝箱である。地上に戻ってから確認しようとして、丸ごとアイテムボックスに収納しておいたのである。現在オレは、合計4つの巨大な宝箱を所持している。しかし、中身を取り出すと宝箱は消えるという話を聞いたので、実験をしてみる事にした。

ボス部屋の入り口を通り、40階のダンジョンに足を踏み入れる。そう、ボス部屋の前で宝箱の中身を取り出してみようと考えたのだ。結果は見事成功である。しかし、のんびりしていると消えるかもしれない。オレは急いで宝箱を水で満たし、すぐに収納する。4つの巨大宝箱を水で満たすと、足早にティナ達と合流する。この人数では足りない可能性があるのだ。

ティナ達の元に戻ると、水を飲んで元気を取り戻した様子の冒険者達が体を起こしていた。どうやら全員女性だったようだ。しかし、手放しで喜んでもいられない。オレは2人に声を掛ける。

「ティナ、ナディア。ちょっといいかな?」
「どうしたの?」
「水を入れる容器が足りないんだ。2人が持ってる食器を貸して欲しい。料理を纏めれば、食器が空くでしょ?」
「ですが・・・いえ、わかりました。」

ティナが悲しそうにしている。2人に預けた料理は、見た目にもこだわった一品揃いである。ティナさんはフードファイターだが、見た目も楽しむのだ。ねこまんまは遠慮したいのだろう。しかし、皆の命には代えられないと判断し、すぐに理解を示してくれた。

さっさと済ませようとしていると、意識のハッキリしてきた冒険者達のお腹が合唱を始めた。真っ赤な顔の冒険者達に苦笑して、オレは考えを改める。

「あぁ、折角だから、食べながら食器を空けようか?」
「そうですね。私も被害は最小限に留めるべきだと思います。」

被害って、料理の事だよね?他に無いよね?ひとまずそんな事は置いといて、食事を摂りながら話を聞く事となった。

「私はナディア。そこのエルフがティナで、貴女達の後ろに立ってるのがアストル。私達は冒険者ギルドからの救援依頼を受けて来たんだけど、状況を説明して貰える?」

「はい。私達はランクAパーティの『森の熊さん』と言います。私はリーダーで熊の獣人のフウです。私が熊さんです!」

森の熊さん!?ヤバイ、ストライクです!笑っちゃいけないから必死に堪えさせて頂きます!!ナディアに睨まれたので、森の熊さんに見られないように後ろに隠れてます!全員美人なのにねぇ、残念だねぇ。

「私は兎の獣人のルクルです。」
「人族のイーリアです。」
「私はエルフ族のシャルル・・・シャルルーナ=アストリアと申します。此度の救援、大変感謝致します。フォレスタニア皇帝陛下?」
「「「皇帝陛下!?」」」
「「「「「アストリア!?」」」」」

忙し娘達である。オレの正体に驚いたかと思えば、すぐにエルフ族の娘の正体に驚いていた。ちなみにオレは、どちらにも驚いてはいない。そう、何を隠そう!名前を言われてもわからないからだ!!
・・・威張る事では無かった。しかし、ナディアとティナも驚いていたな。ひょっとして有名人?

彼女の正体も気になるが、それよりどうやってオレの正体を見破ったのだろう?そっちの方が気になります。オレの髪と瞳は魔道具で黒に・・・あれ?魔封じって、魔道具にも効果あんの?

慌てて自分の髪を確認するが、黒いままだった。どうやら、魔道具は問題無いようだ。だとすると、一体何を以て判断したのだろう?しかし、この状況で素直に聞くのも悔しい。ここは一つ、しったかぶりで攻めようじゃないか。適当に相槌うっとけば、何とかなるよね?この時、素直に質問していたら、間違いなくルークの未来は変わっていただろう。行動が裏目に出るのがルークであった。

「皆さん、手が止まってますよ?ひょっとして、オレの料理は口に合いませんでしたか?」
「い、いいい、いいえ!大変美味しく頂かせて頂いております!!」
「陛下の手作りであらせるらられますか!?」
「あまりの美味しさに、ほっぺが落ちました!」

緊張で言ってる事がメチャクチャである。まぁ、冒険者が王族を相手にする機会なんて無いもんね。
あとイーリアさん。ほっぺは落としちゃいけません。拾ってちょうだい。とまぁ、冗談はこの辺でやめて、ちゃんとフォローしてあげよう。

「あ~、オレも冒険者ですから、言葉遣いは気にしなくていいですよ?」
「陛下がそうおっしゃられるのでしたら、私も同様に扱って下さい。」

シャルルーナも同様に?つまりは、彼女も王族って事か。エルフの王族ねぇ・・・嫌な予感しかしねぇわ!!同じエルフのティナに救いを求めようと、オレはティナに視線を向ける。そしてすぐにナディアに視線を移した。

『ティナさんのほっぺも落ちそうだよ!どうしてあんなに詰め込むのさ!?』
『知らないわよ!あんたの嫁でしょ!!』
『元ギルドマスターでしょ!?何とかしてよ!』
『あんたこそ国王でしょ!?自分で何とかしなさいよ!』

ルークとナディアは、視線だけでこのような会話をしていた。勿論、お互いに意味が通じてるのかは不明である。しかし、この時ばかりは会話が成立していた。人はこれを奇跡と呼ぶ・・・のかな?とりあえず、場を取り繕う意味も込めてルークは質問する事にした。

「どうしてオレが皇帝だと思ったんです?」
「ここまで辿り着いたからですよ。私達も50階から脱出を試みてここまで来ました。ですが、この階のボスを見て諦めたのです。国が軍隊を挙げて挑まなければ倒せそうにもない相手。それなのに貴方達は、たった3人でここまで辿り着きました。そのような猛者は、世界に数人しかいません。加えて陛下の容姿です。たったこれだけの条件ですが、特定するには充分ですよ?」

この世界の王族って、教育の賜物なのか随分と頭の切れる者が多い気がする。身体能力に加えて知能も高いとか、喧嘩を売る時は気を付けた方が良さそうだな。

「そうですか・・・。ところで随分と軽装ですが、4人パーティなんですか?」
「どうしてそう思うのです?アイテムボックス持ちならば、軽装でも不自然ではありませんよね?」

「50階から脱出を試みたと言ったからですよ?そこまで行くという事は、攻略を視野に入れていたという事になります。にも関わらず、貴女達はオレ達の出した料理を何も言わずに食べている。つまり、攻略を目指すにしては荷物が少な過ぎるんですよ。つまり、ポーターのような荷物持ちがいなければおかしいんです。(折角出した料理を無碍に出来ないって言われるかな?ちょっと穴だらけだよなぁ・・・)」

「陛下は戦闘だけでなく、高い頭脳まで有しておられるのですね?おっしゃる通り、もう1人ポーターがおります。(あぁ、少ない情報からこのような会話が出来るなんて・・・この方こそ、私に相応しいではありませんか!さぁ、正解を導き出せますか?もしも正解を導き出せるのでしたら、私は貴方を逃しません!!)」

相手の思惑など理解出来るはずもないルークは、自力で正解を導き出そうと試みる。勿論、自分の首を絞める為に。このシャルルーナは、結婚するなら自分と釣り合うだけの知力を相手に求めていたのである。

「(ポーターがおります?『おりました』じゃないって事は、何処か別の場所にいるのか?それって・・・) 下の階に水や食料を探しに向かったという事ですか・・・。」

「あぁん!(いい!いいですわぁ!!」
「「「「「へっ?」」」」」

シャルルーナは顔を紅潮させ、身震いしている。ティナを除く全員が、シャルルーナの喘ぎ声に驚きの声を上げた。ティナはどうしたって?シャルルーナを見たよ?ハムスターみたいに口だけ動かしながらね。

そしてルークは悪寒を感じた為、急いでこの場を離れる為の言い訳を始める。

「ならばオレ達はその人を探しに行って来ます。充分な水と食料を置いて行きますので、数日間ここで待っていて下さい!ティナ、ナディア、今すぐ出発しよう!!」
「お待ち下さい!私もご一緒しますわ?ルーク様。」
「いや、もう少し休んだ方がいいですよ!!」
「いいえ、問題ありません。それに、49階までは魔物が出ませんから。ただし、道を間違えると入り口に戻されるんです。私でしたら、迷わず道案内が出来ますよ?」

く、くそっ!嫌な予感が的中しやがった。何か逃れる方法は無いかと必死に考えていると、ティナに背後から肩を叩かれる。振り返るとそこには、可愛らしいハムスターが料理を片手に立っていた。

「んーふ、ふぁふぃふぁふぇふぁふぉふ?(ルーク、諦めましょう?)」
「ティナさん、飲み込んで!それに諦めないからね!?」
「「「「「わかるの!?」」」」」

ここで諦めたら、望まぬ未来が待っている気がする!ぜぇぇぇったいに諦めないからなぁ!!
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