Shining Rhapsody 〜神に転生した料理人〜

橘 霞月

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転生〜統治(仮題)

ルークの予定

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城へと戻りゆっくりと休養をとった翌朝、ルーク達は朝食を済ませると今後の予定について話し合う事となった。しかし、嫁さんの人数が足りない事に気付く。

「まずはオレの今後について話しておこうと思う。でもその前に、セラとシェリーはどうしたの?」
「2人は仕事で各国を回って頂いております。この後カレンさんも合流しますから、何かあれば伝えて頂きますが・・・。」
「いや、特に用とかじゃないから。ただ気になっただけだよ。まぁ、それじゃあ説明させて貰うけど・・・まず、オレは学園に戻ろうと思う。」

昨日のうちにダンジョンでの出来事は全て伝えてあるので、ほぼ全員にオレの考えは伝わっていた。が、リノアには伝わらなかったようなので、オレは一応言葉にする。

「ナディアのお姉さんを救う手助けになるかもしれないから、魔法薬について学びたいんだ。あとは、オレの使えない魔法に関しても何か情報があるかもしれないし。」
「ルークにも使えない魔法があるのですか?」
「ティナが思う程万能じゃないよ?今わかっているだけでも、風・土・光属性の禁呪は使えないし。他にも色々とありそうじゃない?」
「何か条件でもあるのでしょうか?それか、そもそも存在しないという可能性も・・・」
「いいえ、クレアさん。少なくとも、光属性の禁呪は聖女様が使えますから、風と土属性に関しても、存在していると考えるのが妥当です。」

エミリアの言う通り、聖女と呼ばれる女性が光属性の禁呪を使えるというのは、幼い頃にオレも教わっている。だから、何らかの条件が必要なのではないかと思う。だが今は、詳しい調査をするつもりも無い。特に急いで使う用もないのだ。

「では、復学の手続きは私が済ませておきます。明日から通学という事でよろしいですか?」
「あ、事務、じゃなくて・・・ユーナ。出来れば少し待って欲しい。」

ずっと事務長と呼んでいた為、すぐに名前が出て来なかった。その為、ユーナが口を尖らせている。後で謝っておこう。

「先にドワーフ族と会っておきたい。地下農園の実現には時間が掛かるだろうから、なるべく早く依頼したいと思ってね。その前に1度、エリド村に行こうと思ってるけど。」
「「「「「「「「「「エリド村?」」」」」」」」」」

オレとティナの故郷の名前が出た事で、ティナを含めた全員が首を傾げる。これに関しては、オレの狙いを読める者はいなかったらしい。

「エリド村にいる鍛冶の師匠、ドワーフ族のランドルフさんに美桜の事を相談しようと思ってるんだ。」
「ドワーフ族のランドルフ!?」

ランドルフさんの名前に、クレアが反応を示した。知り合いなんだろうか?と思ったら、どうやら他にも知っている雰囲気であった。

「ドワーフ族のランドルフって言ったら、世界最高の鍛冶職人じゃない!?」
「長年行方不明って言われてたけど、そんな辺境に住んでたのね・・・。」

ナディアが驚き、フィーナが納得したような表情をしている。なるほど、世界一なのか。それなら皆が知っていても不思議じゃないな。・・・・・世界一!?マジか!!

「何であんたが驚いたような顔してるのよ?」
「いや、だって、世界一!?そんなに凄い人なの!?」
「ルークには教えていませんでしたね・・・。昔、ランドルフさんが嬉しそうに言ってましたよ?『ルークはオレの、最初で最後の弟子だ』と。」

ナディアに突っ込まれたが、それも当然だろう。そんなに凄い人だとは思わなかった・・・。そしてティナさん、そういう事は早めに教えて下さい。

今思うとエリド村の住人は皆、何かを抱えていたような気がする。自身の生い立ちを語りたがらなかったのだ。オレも前世の記憶など、知られたくない事があったから、深く追求する事は無かった。だが、せめてどういう人物なのか程度は、ティナに聞いておくべきだったかもしれない。

「あとは、クリスタルドラゴンに関する情報収集と、冒険者ギルド本部への対応。それからベルクト王国から受け入れた人達の「ルーク!!」・・・ナディア、何?」
「あのドラゴンの事は私に任せて欲しいの。」
「でも、ナディアは地下農園が・・・」

スイーツ第一主義のナディアだが、地下農園よりもクリスタルドラゴンを優先するのは当然だろう。唯一の肉親を救う為なのだ。姉よりスイーツを優先されたらどうしようかと思うが、そんな人じゃなくて良かったと思う。ホッと胸を撫で下ろしていると、スフィアが自身の考えを口にする。

「初めはルークにも立ち会って頂きますが、地下農園はミーナに任せようと思います。冒険者ギルド本部の事は、当然フィーナさんに。」
「でしたら学園組の私達は、魔法と魔法薬について調べてみますね?」
「リノアさん、それにクレアさんとエミリアさん、リリエルさんも。よろしくお願いしますね?」
「あの、フィーナさん?それだとオレの役割が・・・」

あと残ってるのは、ランドルフさんの事とベルクトの人達の事しか無い。あまり仕事を奪われると、不安になるんですけど?

「ルークは働き過ぎです。それとも、私達では信用なりませんか?」
「いや、そんな事はないけど・・・皆はそれでいいの?」
「当然、いいに決まっています!夫に尽くすのが妻の役目です。ルークにしか出来ない事以外は、私達に任せて頂ければ良いのです。」
「・・・・・皆、ありがとう。」

嫁さん達の優しさに、胸の奥が暖かくなる。皆が嫁さんで良かったと思う。いい雰囲気のまま、話し合いは終了するものと思っていた。しかし、1人の言葉によって状況は一変する。

「ねぇ!私には何か無いの?」
「・・・あら?ルビアさん、いらしたのですか?」
「くっ・・・相変わらずいい度胸してるわね!」
「そうですか?まぁ、部下の手を借りてルークに取り入った方には、大した度胸などありませんものね?」
「ルークのお陰でちょぉっと肌の調子がいいからって、いい気になってんじゃないわよ!」

何故かは知らないが、ルビアとスフィアの目からは火花が散っているように見える。オレがいない間に何かあったのか、こっそりリノア達に聞いてみる。

「ねぇ?あの2人はどうしたの?」
「え~と・・・ルビアさん、最初は喧嘩腰だったじゃないですか?私達は特に気にしてないんですけど、スフィアさんはそうじゃなかったみたいで・・・。」
「リノアの言う通りですけど、他にも色々とあるんですよ?」
「クレア、他って?」
「あの2人、どちらもキレ者と評判だった事もありまして・・・主に政策の面で対立する事が多いんです。」
「ユーナさんがスフィアさんの下に付いた事で、昨日まではスフィアさんが有利だったのですが・・・今はルーク様がいるせいか、ルビアさんが息を吹き返したといった所ですね。」
「あぁ・・・エミリアの言った言葉の意味がわかったよ。」

ユーナはスフィアやルビアに並ぶやり手の事務方である。そんな人が肩入れしたのでは、もう片方の立場は無い。ルビアがフィーナを味方に付けていれば、おそらくは対等の争いが出来たのだろうが、そんな時間は無かった。そこでルビアは急場しのぎの策として、オレを味方に付けようとしたのだ。

昨日の夜のお相手は何故かルビアだった。それはそれは、非常に尽くして頂けた。ちょっと位のワガママなど、喜んで聞いてあげたいと思うのは男の性だろう。しかし、だ。このまま放置する訳にもいかない。仲良くして欲しいと心から思う。そんな事を考えていると、近寄って来たナディアに焚き付けられる。

「ルーク?あんた旦那よね?皇帝なのよね?」
「一応・・・多分?」
「どうして疑問形なのよ!男らしく、ビシッと言ってやりなさい!!」
「だよねぇ・・・わかった!ビシッと言って来るよ!!」

本来であれば、女の闘いに首を突っ込むなど全力で遠慮したい。現に今も、2人の迫力にチビリそうである。今のうちにパンツを脱いでしまいたいが、それはそれで新たな火種になりそうな気がする。ここは決死の覚悟で、皇帝らしくビシッと行こう。

「あ~、スフィアさんにルビアさん?・・・仲良くしないとダメだぞぉ?」
「うるさい!」
「少し黙っていて下さい!!」
「あ、はい・・・。」

ビシッと言うつもりが、ビシッと言い返されてしまった。ショボーンとナディアの元へ戻ると、スパーンと頭を叩かれてしまう。

「アホかぁ!ビシッと言うんじゃなかったの!?何が『仲良くしないとダメだぞぉ?』よ!!」
「だって、怖いんだもん!」
「「「「「「「「「「女子か!!」」」」」」」」」」

全員に突っ込まれた。ティナやカレンにも突っ込まれたのは、地味にショックである。と思ったら、ティナとカレンの表情が険しくなった。

「ルーク?」
「今、失礼な事を考えましたか?」
「めめめ、滅相もございません!」

こ、これが伝説の『女の勘』ってヤツですか!?神様!そのスキル、僕にも下さい!!そんなアホな事を考えていたら、またしてもナディアに頭を叩かれる。

「バカな事を考えてないで、早くあの2人を止めて来なさい!」
「な、何故わかった!?さてはお前、エスパー「さっさと行け!!」痛っ!!・・・はい。」

出来る限り時間を稼ごうとしたが、オレの企みはエスパーナディアのチョップによって阻まれてしまう。まぁエスパーなんて、この世界じゃ通じないんですけど。渋々と、女の闘いを阻止すべく歩みを進める。昔テレビで覚えた牛歩戦術を発動するが、嫁さん達のスキル『冷たい視線』によって無効化されてしまう。

八方塞がりとなったオレは、ようやく覚悟を決めて2人の間に割り込む。

「スフィアとルビアに言っておくけど・・・嫁さん同士で仲良く出来ないなら、無理してこの城に住んで貰わなくても構わないからね?」
「「・・・・・」」
「オレは遠距離でも全然気にしないから、いっそ国に帰って貰うのもアリかな?」
「ルビアさん!」
「スフィア!」
「「喧嘩はいけません(ダメ)ね!」

そう言うと、スフィアとルビアはガッチリと握手を交わす。とりあえずは争いも収まったようなので、その場はお開きとなった。だから一夫多妻なんて嫌なんだよ・・・。これ以上は、増やさないからな!?絶対だぞ!!

『押すなよ?押すなよ?』と同じなのだが、精神的に疲れ果てたルークには考える余裕など無い。それがフラグと呼ばれる物である事に、全く気付かないのであった。
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