Shining Rhapsody 〜神に転生した料理人〜

橘 霞月

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転生〜統治(仮題)

緊急嫁会議

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ルークが立ち去ってから暫く呆然としていたカレン以外の嫁さん達であったが、突如泣き出した者の声に驚き我に返る。泣き出したのは、今回の件でルークの怒りを買ったフィーナである。

「うわぁぁぁん!」
「ちょっとフィーナさん!落ち着いて!!」
「ひっく、ぐすっ・・・・・うわぁぁぁん!!
「みなさん!助けて下さい!!」

スフィアが声を掛けるが、当然効果は無い。その場にいた嫁さん達が総出で慰め、落ち着きを取り戻したのは数十分後の事であった。

「それで、これからどうしますか?」
「このまま見捨てる訳にもいきませんし、緊急会議を開きます!カレンさん、ナディア・セラ・シェリーを呼び戻す事は可能ですか?」
「可能だと思いますが・・・もう夜ですよ?」
「緊急事態ですから!!」

カレンの問い掛けに、スフィアは嫁会議の開催を宣言したものの、既に夜は更けてしまっている。通常であれば飲み歩いている者達以外、外出を控える時間帯であった。暗にカレンがそう示したのだが、スフィアは頑なに譲ろうとしない。

説得を諦めたカレンはナディア達に連絡を取り、すぐに城へと連れ帰った。そうなると面白くないのは、事情を知らないナディア達である。しかしスフィアに対し、面と向かって文句を言えるのはナディアだけである。2重の意味で面白くないナディアは、溜息混じりに不満を口にする。

「はぁ。今何時だと思ってるのよ?」
「緊急事態ですから、文句は後にして下さい。」
「カレンにも言われたけど、緊急事態って何なの?」
「フィーナさんがルークを怒らせました。」

こんな時間に連れ戻される程の理由が何なのか尋ねると、誰もが予想だにしなかった答えが返って来る。そんな事で?と思われるかもしれないが、事は非常に重大である。過去どれ程遡っても、ルークが面と向かって妻達に怒りをぶつけた事は無かったのだから。

「「え?」」
「・・・それは一大事ね。犯罪以外でルークが怒るなんて、フィーナは一体何をしたのよ?」

セラとシェリーは、スフィアが何を言っているのか理解出来なかったが、ナディアだけは冷静に事態を把握しようと努める。犯罪行為以外の事で、ルークが怒りを顕にする姿を見た事が無かったのだ。それは当然、最も付き合いの長いティナも同様である。

スフィアが一部始終を説明し終えると、ナディアは正直な感想を口にした。

「事情はわかったけど、それってフィーナが決める事よね?冷たい言い方かもしれないけど、私達を呼ぶような内容とは思えないわ。」
「わかっています。フィーナさんがどうするのかは、聞くだけに留めるつもりです。ただ、ルークが私達にあそこまでハッキリと怒りを顕にするという結果に対して、認識を改めようと考えての事ですよ。」

そう答えると、スフィアはフィーナに視線を移す。どうするつもりなのか、ここで正直に話してしまえと目が語っている。当然フィーナも理解出来ている為、静かに心境を語りだした。

「私は・・・冒険者ギルドに対して未練があった訳じゃないの。ただ、それなりに親しかった者達もいたから、その者達に被害が及ばないように行動したのも事実。どっちつかずの行動は、ルークに対する甘えだったのだと、今日改めて理解したわ。」
「そうですか・・・。それで?フィーナさんはどうするおつもりですか?」

いよいよ核心に迫り、全員が固唾を呑んで見守る中、フィーナが自身の決断を口にする。

「私は心からルークを愛している。だから、ルークが冒険者ギルドと敵対するのなら、私もそうするわ。」
「やった~!」
「良かったです!!」

リノアやクレアが喜びの声を上げ、全員がはしゃぎ始めた。手に入れた身分を守る為、誰かを蹴落とそうなどと考える者はいなかった。大抵の王侯貴族には、今回のような権力争いが蔓延っているのだが、自身の嫁にそのような者がいない事をルークは信じていた。

暫く微笑ましい光景が続いたが、やがて落ち着きを取り戻すとスフィアが今後に関して切り出した。

「フィーナさんと敵対せずに済んで喜ばしい限りですが、そろそろ私達の認識を改めるとしましょう。」
「具体的には?」

ルビアが疑問を投げ掛けるが、思ってもみなかった所から声が上がる。

「今回の件、腑に落ちない部分があります。」
「何がですか?」

幼い頃からルークと行動を共にしていたティナである。お互いに何を考えているのか、近くにいれば大体理解してしまえる程だった。そのティナであっても、今回のルークの言動は理解に苦しかった。

「今回の件、私は初めから、ルークがフィーナさんを見捨てるとは思っていませんでした。犯罪に巻き込まれた者達がいるのですから、皇帝としての覚悟ある決断だったのは理解出来ます。ですが・・・それでもルークの言動に納得がいかないのです。」
「・・・すみません、もう少し具体的におっしゃって頂けると助かるのですが。」

ティナの発言は何となくという、勘に近いものだった。その為か、その場にいる全員が理解出来なかったのだ。カレンを除いて。

「ティナが言いたいのは、今までのルークからは考えられない言動だという事です。」
「それは・・・何となくわかるわね。」

ナディアがカレンの発言に同意し、他の者達も静かに頷く。その様子を確認し、カレンは話を続ける。

「ティナの言うように『皇帝としての自覚』、と言われてしまえば納得してしまうのでしょうが、事実は全く異なります。」
「カレン様には、何か心当たりがあるのですか?」
「えぇ。神族は潜在的に優れた力を有しています。強者であるが故に、例外無く傲慢となるのです。長く人々と接してきたルークですから、かなり自制は出来ていますが・・・そういった部分が時折顔を覗かせるのは、ある意味仕方のない事なのです。」

スケールが大きくなった事で、全員がポカンとした表情になる。何処か他人事のように聞こえるのも無理は無いと思いつつも、カレンが全員を見渡して忠告する。

「亜神化した皆さんにとっても、これは他人事ではないのですよ?」
「「「「「「「「「「えっ!?」」」」」」」」」」
「亜神は神族に劣るとは言え、立派な神族です。当然皆さんも、徐々に傲慢な面を覗かせる事になるでしょう。」
「そ、それはちょっと・・・。」

全員が驚く中、説明を続けたカレンの言葉にスフィアが拒絶の意思を示す。言葉遣いが砕けたものとなったのはご愛嬌だろうか。平静を装いつつも、内心では激しく動揺していた。当然だろう。傲慢が過ぎれば、日常に変化をもたらす可能性があるのだから。カレンもその事に思い至り、全員に諭すようにアドバイスをしていく。

「ふふふ。心配せずとも大丈夫です。自身を見失わなければ、他人に悪影響を及ぼす事もありません。先程から傲慢と言ってはいますが、意味合いとしては自信に近いのですから。」
「それはつまり、自分の能力に自身があるから発言や行動が力強い物になる・・・弱い者から見れば傲慢に映るという事?」
「えぇ。ルビアの表現が1番近いですね。」

全員が理解出来たらしく、何度も頷いている者達がいる。中には良くわかっていない者もいたのだが、本人の為にも公表は控えておこう。


さて、大体を把握出来た所で話題はスフィアの提案へと移る。今までの認識のままでは、今回のような問題が起こり兼ねないからだ。

「状況を正しく把握出来た所で、私が最初に提案した事に移りたいと思います。従来通りでは、先程のフィーナさんのように、ただ泣きわめく事になりますからね?」
「もう!うるさいわね!!」

ニヤリと笑いながらスフィアに茶化され、フィーナが怒り出す。全員が笑いながらも、会議の内容は真剣なままである。

「冗談はさておき、我々も気を引き締めなければルークの手綱を手放す事になりかねません。何か良い案のある方は?」
「案と言うか、もう少しだけ説明を。ルークに変化は見られますが、根本は変わりません。個々の行動や発言はそれぞれに任せるとして、全体の指針は従来通りの作戦を、より慎重に進めるのが得策でしょう。」

議長であるスフィアの問い掛けに、カレンが補足説明を行う。カレンのお墨付きを頂いた事で、みんなは自信を取り戻して行く。

「でしたらやはり、竜人族の嫁候補の件を進めるのが良いと思います。」
「私もティナさんに賛成です。セラ、シェリー!そちらはどうなっていますか?」
「はい!一応1人、候補を見繕ってあります。」
「我々やドラゴニア武国のカグラ王女とも違う、全く新しい魅力の持ち主です。きっとルークもデレデレになる事でしょう!」

ドラゴニアという国を時間の許す限り見て回り、セラとシェリーは『これぞ』という者を見出していた。しかし、シェリーの説明を聞いた者達の表情が険しいものへと変わる。

「シェリーの説明だと、私達に魅力が無いみたいに聞こえるわね・・・。」
「あわわわ!ルビア様!!決してそんなつもりでは!」
「全くシェリーは・・・。それで、どのような人物なのですか?」

棘を含んだルビアの言葉に、シェリーは慌てふためく。そんなシェリーに呆れながらも、スフィアは該当人物の説明を求めた。スフィアの発言によって事なきを得たシェリーとセラは、事細かに人物紹介を行う。

「なるほど・・・ですが、単発では少し弱い可能性もありますね。続けてカグラさんも投入してはどうでしょうか?」
「エミリアの言う通り、カグラさんのインパクトならば、かなりの効果が期待出来ると思います。」
「それならリノア?この際、ララさんとルルさんもどうかしら?トドメの一撃になると思いますけど。」
「あ、それは名案ですね!」

説明を聞いた学園組は威力の弱さを指摘し、追い打ちとトドメの一撃を提案したのであった。この会話をルークが聞いていたら、間違い無く何処かのダンジョンに引き篭もった事だろう。

新たな女性達の魅力に翻弄された挙句、流されるままに既成事実を作り上げた場合にどうなるか。考えるまでも無く、嫁達に対して頭が上がらなくなるのは間違いなかった。


嫁達が悪い笑みを浮かべながら作戦を詰めている頃、ルークはお菓子作りに没頭していたのだが・・・。

「うぉっ!急に寒気が!!・・・風邪でも引いたかなぁ?あとでティナにエスナール草を分けてもらうか。」


見当違いな事を呟きながら、ひたすらお菓子作りに没頭していくのであった。後日嫁達によって仕組まれた、過去最大の修羅場が待ち受けているとも知らずに。
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