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動乱の幕開け
神気解放 〜ルビア編〜
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商人達の下を後にし、ルークは城へと戻っていた。そのままの足で情報を集めようかとも考えたのだが、見知らぬ男が色々と嗅ぎ回るという行為は気が進まなかったのである。現状では不審者丸出しだろう。タイムリミットが設けられているわけでも無いのだから、焦る必要は無い。それならば、ある程度の社会的基盤を整備した方が得られる情報は多いはずである。
特にすべき事も無くなった為、今度は地下農園に足を運ぶ。ルビアから、今日から地下農園に取り掛かると聞かされていた為だ。地下農園の出入り口は、暫定で地下トンネル内に作られている。将来的には帝都の壁の内側に作られるだろうが、場所の確保が出来ていない。
地下トンネルへと転移し教えられていた場所に歩いて行くと、随分と賑やかな音が聞こえて来る。そこにはドライアドを筆頭に、ドワーフの職人達が汗を流していた。その仕事ぶりを見守るルビアの姿に気付き、近寄りながら声を掛ける。
「ほんの数時間でここまで出来るもんなんだな・・・」
「私も驚いてるわ。それより用事はいいの?」
「1週間は手が空いたんだ。だからこっちを手伝おうかと思って。」
既に縦横100メートル、高さ20メートル程の空間が広がっていた。振り返ったルビアに聞かれ、暇だと正直に告げる。するとルビアはルークを足元から上半身に向かって観察する。
「手伝うつもりなら着替えた方がいいんじゃない?」
「いや、そっちは明日からにするよ。今日はルビアに神気の操作を教えようと思って。」
「その話はスフィアと一緒にって事だったわよね?」
「そのつもりだったけど、ルビア1人の方が時間取れそうだし。」
「否定はしないわ。事実、今も作業を見てるだけだもの。」
初めはルビアも手伝うつもりだったらしいのだが、王妃に手伝わせるわけにいかないと猛反発されたので諦めたとの事だった。特に予定も無かったので、どのような作業を行うのか見学していたらしい。細かいスフィアの事だし、おそらく作業の詳細を聞かれると予想した結果である。
スフィアとルビアはいがみ合っているせいか、そういう些細な事で攻撃し合う事もあるそうだ。ちなみにこれは他の嫁情報。本気で喧嘩をするのならば止めるが、細かい事に口を出すつもりのないルークである。下手に首を突っ込むと、話が大きくなる事を理解しているのだ。挙句、ルークはどちらの味方なのかと言い出し兼ねない。そんな地雷に飛び込む勇気は無い。
とりあえずルークは人目を避ける目的で、ルビアを地下道の奥へと連れ出した。
「とは言っても、まだ何が出来るのかオレも理解してないから、神気の開放だけになるかな。」
「私は魔法が使えるから、そこまで教われば充分よ。でも私達は、意識して使い分けられないって言ってたわよね?」
「ドライアドの説明は矛盾してると思う。ルビア達が魔力も神気も持ってるのはオレもわかるようになった。だから聞くけど、魔力量は減ったと思う?」
ルークの質問に、ルビアは暫く考え込んでから口を開く。
「減ってない。むしろ増えてる気がするわね。」
「それだと色々とおかしいよね?変化したり混ざったりするって事は、魔力としても神気としても使える状態って事なんだと思う。」
「そう言われるとそうね・・・」
「さらにはドライアドは神気を吸収しておきながら魔力として放出してる。つまり・・・」
「神気は魔力に変換出来る!」
「そう。そしてその逆、魔力は神気に変換出来ない。これは昨日の夜に試してわかった事なんだ。」
ルークが告げた事実に、またしてもルビアは考え込む。しかし今度は待たずに説明を続ける。
「神気を魔力に変換して気付いたんだけど、同じ量でも神気の方が内包する力が多かったんだ。」
「神気は効率の良いエネルギーって事ね。なら、魔力量が増えた気がするのって・・・」
「単純に神気が増えたからだと思う。それを無意識に変換しているだけの話かな。」
実際、この考えは正しい。自身で実験したのだから、ルークは確証を持っていた。ちなみに時折カレンが魔法を使っているのを見ていたルークは、昨晩こっそりとカレンの状態を確認していた。その結果、カレンには魔力が一切無かったのだ。これに関しては、確認する必要など無かったのだが。
「でもそれだと、神気を操作する意味が無いわよね?どうせ魔法として使うんだし。」
「それは今後の検証次第かな。何が出来るかわからないから。けど、少なくともオリハルコン製の武器や防具を使う点では意味があるでしょ?」
「あぁ・・・それもそうね。私が使うのは杖だから思い至らなかったわ。」
ルビアの思考がオリハルコンに結びつかなかったのも無理はない。この世界で杖と言ったら木製である。重要なのは、魔法の効果を上げる目的で先端に組み込まれた魔石なのだ。魔法をメインで使用する者にとって、金属製の杖はメリットが無い。壊れ難いという意味ではメリットになるが、重さがデメリットとなる。
身体能力の高い獣人のルビアであれば、多少の重さは問題にならないだろう。しかし、日頃から剣を振り回す剣士のようにはいかない。杖術というやや特殊な戦法も有るのだが、大抵の魔道士はひ弱なのだ。
そもそも魔法を得意とする者の鍛錬は?と聞かれれば、普通は魔力量を上げるか魔法の威力を上げる事を想像するだろう。毎日杖の素振りをすると考えるのは、比較的残念な人だろう。
そんな姿を想像したルークは、思わず吹き出してしまう。
「ぷっ!あはははっ、それいいな!!明日から毎朝素振りでもすれば?」
「しないわよ!腕が太くなるでしょ!!」
強さよりも女性らしさを優先する辺り、流石は元王女である。実はルビアが魔道士となった理由がソレである。獣人には珍しく魔力量が多かったのもあるが、我儘王女様は汗をかくのを嫌ったのだ。ルークの嫁の中では少数派、というかオンリーワンである。戦える者は全員が前衛及び中衛メインなのに対し、後衛メインはルビアだけ。
そのルビアも、真剣に努力すれば前衛となれるのだが、本人にその気は無い。戦闘メインの生活では無いので、指摘する者がいなかったのも災いした。この場合は幸いなのだろうが。
「それはともかく、改めてオリハルコンで護身用の短剣を用意するつもりだから、無駄にはならないだろ?」
「そう言われると・・・なるほどね。」
護身用と聞き、頭の回転が早いルビアは気付いたようだ。突然の襲撃が起こった場合、嫁の中で最も危険なのがスフィア、リノア、エミリアである。戦闘力が皆無の彼女達は言うまでもない。その次に危険なのがルビアだろう。魔道士であるルビアにとって、不意の襲撃への対応は難しい。日頃から魔法を多用している冒険者組であれば別だが、滅多に狩りをしないルビアでは咄嗟に魔法を発動出来ない。仮に出来たとしても、その威力はたかが知れているだろう。
とは言うものの獣人特有の身体能力の高さ故、半端な相手ではルビアに傷を付ける事すら難しいのだが。
「さて、早速教えようか。両手を出して。」
「・・・2人きりで向かい合って手を繋ぐと、何だかムラムラして来るわね。」
まだ昼前だと言うのにルビアが若干興奮しているのを知り、ルークは冷たい視線を向ける。しかしここで話に乗ると確実にそっち方面に向かう事がわかっている為、無視して神気を巡らせるのであった。
当然ルビアに白い目を向けながら。
「これが神気を巡らせてる状態なんだけど、何か感じる?」
「う~ん・・・・・何も感じないわね。」
「まぁ時間もある事だし、暫くこのまま様子を見てみようか。」
そのままの姿勢で集中する事10分以上。突然ルビアが沈黙を破る。
「わかったわ!コレね!!」
「おぉ!」
ルビアが声を上げながら神気を解放し、ルークは思わず声を上げた。そのまま手を放してルビアの様子を伺う。
「確かに魔力よりも強い力だけど、慣れるまでは上手く切り替えられないかも。」
「焦る必要は無いと思うから、ここで地道に練習するしかないな。」
「そうね。・・・私はここで練習出来るけど、スフィアは何処で練習するの?」
ルビアの言葉に、ルークは無言で頭を抱える。カレンに気付かれないようにと、態々城から離れた場所での練習を持ち掛けた。しかしスフィアはほぼ城内に留まっているのである。
基本的にカレンは不在なのだが、ちょくちょく城に戻ってはお茶を楽しむ。カレンのいないタイミングを見計らった所で、突然戻って来るのだから危険極まりないのは明白だった。
「カレンを城から引き離す口実を見付けるか、スフィアが城から離れる口実を見付けるか・・・どちらも難しそうだな。」
「えぇ。スフィアが城にいないと臣下が困るでしょうね。かと言って上手くカレンを城から引き離した所で、絶対に戻って来ない保証も無いし。」
自由人なカレンであれば、気まぐれに城へ転移し兼ねない。それこそ女の勘、女神の勘が働く可能性もある。魔力操作に長けたルビアでさえ一筋縄でいかないであろう神気の操作。魔法も禄に使えないスフィアでは何日掛かりになるかわからないのだ。
日中だけとは言え、カレンを数日もの間縛り付けるような口実など思いつくはずがなかった。
「カレンを敵に回すと本当に厄介だよな。」
「別にカレンは敵に回った訳じゃないでしょ?」
ルークのボヤキに、ルビアは呆れたように指摘を入れる。確かに敵に回った訳ではないのだが、完全に味方であるという確証は無い。そうである以上、ルークがボヤくのも無理は無かった。
「う~ん・・・ルビアがきっちり覚えてから、一時的にスフィアと仕事を代わって貰うしかないか。」
「確かにそれしか無さそうね。・・・頭が痛いわ。」
ルークの提案に、渋々といった様子でルビアが同意する。スフィア並の頭脳を持つルビアではあるが、本格的に国を動かした経験は少ない。元王女と元女王では、経験値に圧倒的な差があるのは仕方がないのだ。普段は張り合っているスフィアとルビアだが、それを充分理解している為、政治に関する役割分担については何も言わないのであった。
特にすべき事も無くなった為、今度は地下農園に足を運ぶ。ルビアから、今日から地下農園に取り掛かると聞かされていた為だ。地下農園の出入り口は、暫定で地下トンネル内に作られている。将来的には帝都の壁の内側に作られるだろうが、場所の確保が出来ていない。
地下トンネルへと転移し教えられていた場所に歩いて行くと、随分と賑やかな音が聞こえて来る。そこにはドライアドを筆頭に、ドワーフの職人達が汗を流していた。その仕事ぶりを見守るルビアの姿に気付き、近寄りながら声を掛ける。
「ほんの数時間でここまで出来るもんなんだな・・・」
「私も驚いてるわ。それより用事はいいの?」
「1週間は手が空いたんだ。だからこっちを手伝おうかと思って。」
既に縦横100メートル、高さ20メートル程の空間が広がっていた。振り返ったルビアに聞かれ、暇だと正直に告げる。するとルビアはルークを足元から上半身に向かって観察する。
「手伝うつもりなら着替えた方がいいんじゃない?」
「いや、そっちは明日からにするよ。今日はルビアに神気の操作を教えようと思って。」
「その話はスフィアと一緒にって事だったわよね?」
「そのつもりだったけど、ルビア1人の方が時間取れそうだし。」
「否定はしないわ。事実、今も作業を見てるだけだもの。」
初めはルビアも手伝うつもりだったらしいのだが、王妃に手伝わせるわけにいかないと猛反発されたので諦めたとの事だった。特に予定も無かったので、どのような作業を行うのか見学していたらしい。細かいスフィアの事だし、おそらく作業の詳細を聞かれると予想した結果である。
スフィアとルビアはいがみ合っているせいか、そういう些細な事で攻撃し合う事もあるそうだ。ちなみにこれは他の嫁情報。本気で喧嘩をするのならば止めるが、細かい事に口を出すつもりのないルークである。下手に首を突っ込むと、話が大きくなる事を理解しているのだ。挙句、ルークはどちらの味方なのかと言い出し兼ねない。そんな地雷に飛び込む勇気は無い。
とりあえずルークは人目を避ける目的で、ルビアを地下道の奥へと連れ出した。
「とは言っても、まだ何が出来るのかオレも理解してないから、神気の開放だけになるかな。」
「私は魔法が使えるから、そこまで教われば充分よ。でも私達は、意識して使い分けられないって言ってたわよね?」
「ドライアドの説明は矛盾してると思う。ルビア達が魔力も神気も持ってるのはオレもわかるようになった。だから聞くけど、魔力量は減ったと思う?」
ルークの質問に、ルビアは暫く考え込んでから口を開く。
「減ってない。むしろ増えてる気がするわね。」
「それだと色々とおかしいよね?変化したり混ざったりするって事は、魔力としても神気としても使える状態って事なんだと思う。」
「そう言われるとそうね・・・」
「さらにはドライアドは神気を吸収しておきながら魔力として放出してる。つまり・・・」
「神気は魔力に変換出来る!」
「そう。そしてその逆、魔力は神気に変換出来ない。これは昨日の夜に試してわかった事なんだ。」
ルークが告げた事実に、またしてもルビアは考え込む。しかし今度は待たずに説明を続ける。
「神気を魔力に変換して気付いたんだけど、同じ量でも神気の方が内包する力が多かったんだ。」
「神気は効率の良いエネルギーって事ね。なら、魔力量が増えた気がするのって・・・」
「単純に神気が増えたからだと思う。それを無意識に変換しているだけの話かな。」
実際、この考えは正しい。自身で実験したのだから、ルークは確証を持っていた。ちなみに時折カレンが魔法を使っているのを見ていたルークは、昨晩こっそりとカレンの状態を確認していた。その結果、カレンには魔力が一切無かったのだ。これに関しては、確認する必要など無かったのだが。
「でもそれだと、神気を操作する意味が無いわよね?どうせ魔法として使うんだし。」
「それは今後の検証次第かな。何が出来るかわからないから。けど、少なくともオリハルコン製の武器や防具を使う点では意味があるでしょ?」
「あぁ・・・それもそうね。私が使うのは杖だから思い至らなかったわ。」
ルビアの思考がオリハルコンに結びつかなかったのも無理はない。この世界で杖と言ったら木製である。重要なのは、魔法の効果を上げる目的で先端に組み込まれた魔石なのだ。魔法をメインで使用する者にとって、金属製の杖はメリットが無い。壊れ難いという意味ではメリットになるが、重さがデメリットとなる。
身体能力の高い獣人のルビアであれば、多少の重さは問題にならないだろう。しかし、日頃から剣を振り回す剣士のようにはいかない。杖術というやや特殊な戦法も有るのだが、大抵の魔道士はひ弱なのだ。
そもそも魔法を得意とする者の鍛錬は?と聞かれれば、普通は魔力量を上げるか魔法の威力を上げる事を想像するだろう。毎日杖の素振りをすると考えるのは、比較的残念な人だろう。
そんな姿を想像したルークは、思わず吹き出してしまう。
「ぷっ!あはははっ、それいいな!!明日から毎朝素振りでもすれば?」
「しないわよ!腕が太くなるでしょ!!」
強さよりも女性らしさを優先する辺り、流石は元王女である。実はルビアが魔道士となった理由がソレである。獣人には珍しく魔力量が多かったのもあるが、我儘王女様は汗をかくのを嫌ったのだ。ルークの嫁の中では少数派、というかオンリーワンである。戦える者は全員が前衛及び中衛メインなのに対し、後衛メインはルビアだけ。
そのルビアも、真剣に努力すれば前衛となれるのだが、本人にその気は無い。戦闘メインの生活では無いので、指摘する者がいなかったのも災いした。この場合は幸いなのだろうが。
「それはともかく、改めてオリハルコンで護身用の短剣を用意するつもりだから、無駄にはならないだろ?」
「そう言われると・・・なるほどね。」
護身用と聞き、頭の回転が早いルビアは気付いたようだ。突然の襲撃が起こった場合、嫁の中で最も危険なのがスフィア、リノア、エミリアである。戦闘力が皆無の彼女達は言うまでもない。その次に危険なのがルビアだろう。魔道士であるルビアにとって、不意の襲撃への対応は難しい。日頃から魔法を多用している冒険者組であれば別だが、滅多に狩りをしないルビアでは咄嗟に魔法を発動出来ない。仮に出来たとしても、その威力はたかが知れているだろう。
とは言うものの獣人特有の身体能力の高さ故、半端な相手ではルビアに傷を付ける事すら難しいのだが。
「さて、早速教えようか。両手を出して。」
「・・・2人きりで向かい合って手を繋ぐと、何だかムラムラして来るわね。」
まだ昼前だと言うのにルビアが若干興奮しているのを知り、ルークは冷たい視線を向ける。しかしここで話に乗ると確実にそっち方面に向かう事がわかっている為、無視して神気を巡らせるのであった。
当然ルビアに白い目を向けながら。
「これが神気を巡らせてる状態なんだけど、何か感じる?」
「う~ん・・・・・何も感じないわね。」
「まぁ時間もある事だし、暫くこのまま様子を見てみようか。」
そのままの姿勢で集中する事10分以上。突然ルビアが沈黙を破る。
「わかったわ!コレね!!」
「おぉ!」
ルビアが声を上げながら神気を解放し、ルークは思わず声を上げた。そのまま手を放してルビアの様子を伺う。
「確かに魔力よりも強い力だけど、慣れるまでは上手く切り替えられないかも。」
「焦る必要は無いと思うから、ここで地道に練習するしかないな。」
「そうね。・・・私はここで練習出来るけど、スフィアは何処で練習するの?」
ルビアの言葉に、ルークは無言で頭を抱える。カレンに気付かれないようにと、態々城から離れた場所での練習を持ち掛けた。しかしスフィアはほぼ城内に留まっているのである。
基本的にカレンは不在なのだが、ちょくちょく城に戻ってはお茶を楽しむ。カレンのいないタイミングを見計らった所で、突然戻って来るのだから危険極まりないのは明白だった。
「カレンを城から引き離す口実を見付けるか、スフィアが城から離れる口実を見付けるか・・・どちらも難しそうだな。」
「えぇ。スフィアが城にいないと臣下が困るでしょうね。かと言って上手くカレンを城から引き離した所で、絶対に戻って来ない保証も無いし。」
自由人なカレンであれば、気まぐれに城へ転移し兼ねない。それこそ女の勘、女神の勘が働く可能性もある。魔力操作に長けたルビアでさえ一筋縄でいかないであろう神気の操作。魔法も禄に使えないスフィアでは何日掛かりになるかわからないのだ。
日中だけとは言え、カレンを数日もの間縛り付けるような口実など思いつくはずがなかった。
「カレンを敵に回すと本当に厄介だよな。」
「別にカレンは敵に回った訳じゃないでしょ?」
ルークのボヤキに、ルビアは呆れたように指摘を入れる。確かに敵に回った訳ではないのだが、完全に味方であるという確証は無い。そうである以上、ルークがボヤくのも無理は無かった。
「う~ん・・・ルビアがきっちり覚えてから、一時的にスフィアと仕事を代わって貰うしかないか。」
「確かにそれしか無さそうね。・・・頭が痛いわ。」
ルークの提案に、渋々といった様子でルビアが同意する。スフィア並の頭脳を持つルビアではあるが、本格的に国を動かした経験は少ない。元王女と元女王では、経験値に圧倒的な差があるのは仕方がないのだ。普段は張り合っているスフィアとルビアだが、それを充分理解している為、政治に関する役割分担については何も言わないのであった。
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