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動乱の幕開け
巨竜襲来
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ひとまずの結論に至った所で、ルビアが神気について確認したいと言い出した。
「この状態で魔法を使ってみたいんだけど?」
「そうだな・・・外でやろうか?どの程度かはわからないけど、確実に威力は上がってるだろうし。」
「それならドワーフ達に言って来るから少し待ってて。」
「わかっ・・・何かいる・・・この方向は城か?」
「え?」
突然斜め上を見ながら告げたルークに、ルビアはキョトンとしながら聞き返す。
「明らかに強いのが1匹、良くわからないけどまだ何かいるような・・・ルビアはドワーフ達とこの場で待機!オレは城に戻る!!」
「っ!?わかったわ!気を付けてね!!」
基本的に命令をする事が無いルークの口調に躊躇ったルビアだが、すぐに事態を把握してドワーフ達の下へと駆け出す。得体の知れない何かが城へ向かっている。それならば地下深いこの場所の方が安全である。例え地下の空間が崩れる事態となっても、ドライアドにドワーフ達までいるのだから、生き埋めになる心配は無い。態々危険な城に戻る意味は無いのだ。
さらにルークは意識していないが、ルビアが城へ戻るというのは弱点を増やす事にしかならない。嫁達はダンジョンでナディアを庇った件を知っているのだ。言い方は悪いが、城には只でさえ足手まといのスフィアがいる。こちらから追加で弱みを提供する必要は無いのである。
不満が無いと言えば嘘になるが、嫁達はそれを充分理解している。嫁達の基本方針として、ルークが集中出来るように距離を取ると事前に話し合われていた。勿論嫁達に危険が及ぶ場合、その限りではない。ルークの邪魔にならないように離れて、万が一誘拐でもされようものなら話にならないのだから。
一方その頃、皇帝不在の城は大騒ぎであった。城に限らず、防壁を築く街には見張りがいる。双眼鏡など存在しない世界なのだから、当然視力に優れた兵士が務める。そしてこの世界は娯楽が少なく、狩りが一般的。数キロ先から近付く存在を視認出来るのは当たり前であった。
ルークがエリド村で暮らしていた頃。家から5キロ以上離れた山中で独り狩りをしている時、珍しく小腹が空いた事があった。ふと村周辺の素材で試行錯誤しながら作っていたお菓子、つまり試作品の存在を思い出したルークが味見と称して堪能・・・その姿を何故か屋根の上にいたティナに目撃され、自らが狩られる側に早変わりという事件が発生した。
この時、お菓子を見られたとは思わないルークが、訳もわからず鬼気迫るティナから『全力で逃げた』のはこれが最後である。この光景は、エリド村の住人達にとって語りぐさとなっている。『あのティナから30分も逃げ回った』と。
まぁ、結局捕まって狩り尽くされたのだが、本気の狩猟モードとなったティナの追走を30分も躱し続けたルークの才能が讃えられた事件であった。事態を飲み込めず泣きそうだったルークが『飛竜に比肩する男』とからかわれたのはオマケ。
話を戻すが、そんな見張り達から報告が上げられる。当然その終点はスフィア。貴族や重臣達との重要な会議中にも関わらず、近衛兵が重厚なドアを開ける。
「緊急!北東の空より、巨大な竜がこちらに向かっているとの報告が!!」
「「「「「は?」」」」」
近衛兵の言葉にスフィアを含めた全員が呆気にとられる。それもそのはず、帝国に竜は棲息していない。正確には飛竜と異なるのだが、ワイバーンは棲息している。しかし近衛兵は巨竜と口にした。基本的に、人里近くを竜が飛行する事は無い。唯一の例外が暴れる場合なのだが、その場合は最も近くの街や村に降り立つ。つまり、竜が棲息する他国の話であって帝国とは無縁なのだ。
例えるなら、冗談を口にしない部下が『UFOが会社に向かって来ている』と報告するようなもの。反応に窮するのは当然と言えよう。
「ですから竜がこの城に向かっているのです!」
「会議中だぞ!しかも飛竜如きで何を狼狽えておる!!」
「飛竜ではありません!巨竜、あぁ!ドラゴンです!!」
「「「「「「っ!?」」」」」
1人の貴族が乱入して来た事を叱り付けるが、近衛兵も必死である。通常、ドラゴンというのは一般的な俗称であり、公式の場で使う事は無い。使われるとすれば、種族名が○○ドラゴンの場合に限られる。竜と言っても理解して貰えないと判断した彼は、咄嗟に機転を利かせてドラゴンと言い直した。
本来であれば相手によっては叱責モノの発言だが、彼のファインプレーによって全員が理解する。噛み砕いて言うなら『ワイバーンじゃねぇよ!でっけぇドラゴンだよ!!』と言われたのだから、さぁ大変。普段は威張り散らしている貴族や重臣達も大混乱。
ここで説明する事では無いのだが、ルーク達が貴族や臣下が威張り散らすのを注意する事は無い。代わりに周知徹底しているのだ。産まれや育ちに関わらず、優秀な者を要職に就かせると。つまり、後で仕返しされても知らない、嫌なら結果を出せという事である。今更態度を改められないこの者達は、死物狂いで働いているのである。金の為、権力の為に。
「誰か!今すぐカレンさんを!!」
「カレン王妃様は、朝からお出掛けになられております。」
スフィアの叫びに、廊下に控えていたメイドが答える。肝心な時に頼りにならない神である。スフィアはすぐに次策を絞り出す。
「それではティナさんかフィーナさんを!!」
「その・・・お二方も・・・。」
誰もが思いつく人物だった事もあり、メイドは答え辛そうに答える。ちなみに、3人がいない事はスフィアも知っていた。知っていたのだが、混乱の余り口にしたのである。スフィアの脳内もお祭り騒ぎであった。
ちなみにこの時、ルークは会議室の近くに立っていた。すぐにスフィアの下へ駆け付けるつもりだったのだが、廊下にまで会話が筒抜けだった事もあり様子を伺う事にしたのである。当然、会議室の前に控えている兵士やメイド達に向かって、右手の人差し指を自身の口の前に立てた状態で。当然ニヤニヤしながら。スフィアのパニック状態という珍しい光景に、悪戯心が騒いだのは言うまでもない。
「こうなったら・・・」
スフィアの呟きに、いよいよ出番か?などと気を引き締めたルークだったが、続く言葉で盛大にコケる事となる。
「ユーナ!出来る限り時間を稼いで下さい!!」
「ふぁっ!?」
まさか自分に白羽の矢が立てられるとは露ほども思っていなかったユーナは、声にならない声を上げる。元冒険者でダークエルフという彼女ではあるが、そこまでの実力は無い。それなりに有名だったのは姉の方であって、ユーナ自身はそこまで秘めた実力も無いのだ。それでもその辺の兵士よりは大分強い。背に腹は代えられないという事で、スフィアはユーナに頼んだのである。
「むむむ、無理です!!」
「それは承知の上です!危ないと感じたら逃げて下さい!!」
「間に合うはずがないでしょう!?」
「ブレスよりも速く走れば問題ありません!誰しも、死ぬ気になれば何とかなるものです!!」
「無茶苦茶です!!」
ユーナに限らず、その場の全員が思う。だったら自分がやれよ、と。水の上を走れと言われているようなものだ。普段のスフィアであれば、そんな根性論を口にする事など無い。つまりはそれだけ追い込まれているという事なのだが。竜種という存在は、一般人にとってそれ程の脅威なのだ。美味しいという理由で、自ら乗り込む者など単なる変人と言えよう。
「地上の魔物であれば軍でも対処出来るかもしれませんが、相手は空。しかも竜・・・。」
「並の武器では歯が立たないでしょう。当然魔法も・・・。」
強靭な鱗により、物理と魔法に高い耐性を持つ竜種。さらに今回の相手は巨大である。数で攻めた所で、どれ程の効果があるのかはわからない。下手をすれば、ブレス数発で軍は壊滅する恐れだってあるのだ。正に打つ手なし、である。悪戯に兵を損なう訳にもいかないが、だからと言って何もしなければ民衆に被害が及ぶ。最悪、帝都が滅びるかもしれない。
そんなスフィアが最後に口にするのは、愛する旦那の名前というのも頷けるだろう。
「ルーク・・・」
「あれ?呼んだ?」
絶望的な状況に、掠れるような声で呟いたスフィア。片や、やっと呼ばれた事で非常に嬉しそうなルーク。あまりにも対象的でタイミングが良すぎる状況に、後日問い詰められたメイドや兵達が口を割るのは仕方のない事であった。怒り狂ったスフィアによって、ルークが全力でお仕置きされるのはまたの機会に。
「こちらに竜が!!」
「竜?」
扉は近衛兵によって開け放たれている。お陰で筒抜けだった事もあり、状況は理解していたのだが知らんぷりを突き通す。これも火に油を注ぐ結果となるのだが、そんな事を今のルークが知る由も無い。スフィアを宥めて説明を聞き、自分が向かう事を告げる。
「オレが行くのはいいとして・・・何かが向かって来てるのは感じたけど、何故か今は止まってるんだよね。」
「そうなのですか?」
「誰かを待ってる・・・のかな?」
ルークは無意識に決定的な一言を告げる。気付いてたと自爆したのだが、ルークもスフィアもそれどころではない。そして説明するなら、竜の飛行速度であればスフィアとユーナが不毛なやり取りをしている間に、城まで辿り着いていたはずである。そうならなかったのは、何故か竜が帝都から距離を置いた地点で止まっているからであった。
ルークが落ち着いてスフィアに悪戯を仕掛けたのも、その事に気が付いていたからである。当然、何か動きがあれば向かうつもりではあったが。
「此処で考えてても仕方ない。とにかく行って来るから、一応帝都の方でも警戒しといて。」
「わかりました。すみませんが宜しくお願いします。お気を付けて!」
ルークは頷くとすぐに駆け出す。会議室に窓があればそこから飛び立ったのだが、生憎この部屋には外に出られるような窓は無い。すぐ近くの部屋の窓から飛び降り、風魔法で竜に向かって行くのであった。
そんなルークの姿を、竜を目撃して震え上がっていた民衆達の多くが見守っていた。自分達を救う為に立ち上がった勇者の如く。後日嫁にお仕置きされる愚かな男だとも知らず。
「この状態で魔法を使ってみたいんだけど?」
「そうだな・・・外でやろうか?どの程度かはわからないけど、確実に威力は上がってるだろうし。」
「それならドワーフ達に言って来るから少し待ってて。」
「わかっ・・・何かいる・・・この方向は城か?」
「え?」
突然斜め上を見ながら告げたルークに、ルビアはキョトンとしながら聞き返す。
「明らかに強いのが1匹、良くわからないけどまだ何かいるような・・・ルビアはドワーフ達とこの場で待機!オレは城に戻る!!」
「っ!?わかったわ!気を付けてね!!」
基本的に命令をする事が無いルークの口調に躊躇ったルビアだが、すぐに事態を把握してドワーフ達の下へと駆け出す。得体の知れない何かが城へ向かっている。それならば地下深いこの場所の方が安全である。例え地下の空間が崩れる事態となっても、ドライアドにドワーフ達までいるのだから、生き埋めになる心配は無い。態々危険な城に戻る意味は無いのだ。
さらにルークは意識していないが、ルビアが城へ戻るというのは弱点を増やす事にしかならない。嫁達はダンジョンでナディアを庇った件を知っているのだ。言い方は悪いが、城には只でさえ足手まといのスフィアがいる。こちらから追加で弱みを提供する必要は無いのである。
不満が無いと言えば嘘になるが、嫁達はそれを充分理解している。嫁達の基本方針として、ルークが集中出来るように距離を取ると事前に話し合われていた。勿論嫁達に危険が及ぶ場合、その限りではない。ルークの邪魔にならないように離れて、万が一誘拐でもされようものなら話にならないのだから。
一方その頃、皇帝不在の城は大騒ぎであった。城に限らず、防壁を築く街には見張りがいる。双眼鏡など存在しない世界なのだから、当然視力に優れた兵士が務める。そしてこの世界は娯楽が少なく、狩りが一般的。数キロ先から近付く存在を視認出来るのは当たり前であった。
ルークがエリド村で暮らしていた頃。家から5キロ以上離れた山中で独り狩りをしている時、珍しく小腹が空いた事があった。ふと村周辺の素材で試行錯誤しながら作っていたお菓子、つまり試作品の存在を思い出したルークが味見と称して堪能・・・その姿を何故か屋根の上にいたティナに目撃され、自らが狩られる側に早変わりという事件が発生した。
この時、お菓子を見られたとは思わないルークが、訳もわからず鬼気迫るティナから『全力で逃げた』のはこれが最後である。この光景は、エリド村の住人達にとって語りぐさとなっている。『あのティナから30分も逃げ回った』と。
まぁ、結局捕まって狩り尽くされたのだが、本気の狩猟モードとなったティナの追走を30分も躱し続けたルークの才能が讃えられた事件であった。事態を飲み込めず泣きそうだったルークが『飛竜に比肩する男』とからかわれたのはオマケ。
話を戻すが、そんな見張り達から報告が上げられる。当然その終点はスフィア。貴族や重臣達との重要な会議中にも関わらず、近衛兵が重厚なドアを開ける。
「緊急!北東の空より、巨大な竜がこちらに向かっているとの報告が!!」
「「「「「は?」」」」」
近衛兵の言葉にスフィアを含めた全員が呆気にとられる。それもそのはず、帝国に竜は棲息していない。正確には飛竜と異なるのだが、ワイバーンは棲息している。しかし近衛兵は巨竜と口にした。基本的に、人里近くを竜が飛行する事は無い。唯一の例外が暴れる場合なのだが、その場合は最も近くの街や村に降り立つ。つまり、竜が棲息する他国の話であって帝国とは無縁なのだ。
例えるなら、冗談を口にしない部下が『UFOが会社に向かって来ている』と報告するようなもの。反応に窮するのは当然と言えよう。
「ですから竜がこの城に向かっているのです!」
「会議中だぞ!しかも飛竜如きで何を狼狽えておる!!」
「飛竜ではありません!巨竜、あぁ!ドラゴンです!!」
「「「「「「っ!?」」」」」
1人の貴族が乱入して来た事を叱り付けるが、近衛兵も必死である。通常、ドラゴンというのは一般的な俗称であり、公式の場で使う事は無い。使われるとすれば、種族名が○○ドラゴンの場合に限られる。竜と言っても理解して貰えないと判断した彼は、咄嗟に機転を利かせてドラゴンと言い直した。
本来であれば相手によっては叱責モノの発言だが、彼のファインプレーによって全員が理解する。噛み砕いて言うなら『ワイバーンじゃねぇよ!でっけぇドラゴンだよ!!』と言われたのだから、さぁ大変。普段は威張り散らしている貴族や重臣達も大混乱。
ここで説明する事では無いのだが、ルーク達が貴族や臣下が威張り散らすのを注意する事は無い。代わりに周知徹底しているのだ。産まれや育ちに関わらず、優秀な者を要職に就かせると。つまり、後で仕返しされても知らない、嫌なら結果を出せという事である。今更態度を改められないこの者達は、死物狂いで働いているのである。金の為、権力の為に。
「誰か!今すぐカレンさんを!!」
「カレン王妃様は、朝からお出掛けになられております。」
スフィアの叫びに、廊下に控えていたメイドが答える。肝心な時に頼りにならない神である。スフィアはすぐに次策を絞り出す。
「それではティナさんかフィーナさんを!!」
「その・・・お二方も・・・。」
誰もが思いつく人物だった事もあり、メイドは答え辛そうに答える。ちなみに、3人がいない事はスフィアも知っていた。知っていたのだが、混乱の余り口にしたのである。スフィアの脳内もお祭り騒ぎであった。
ちなみにこの時、ルークは会議室の近くに立っていた。すぐにスフィアの下へ駆け付けるつもりだったのだが、廊下にまで会話が筒抜けだった事もあり様子を伺う事にしたのである。当然、会議室の前に控えている兵士やメイド達に向かって、右手の人差し指を自身の口の前に立てた状態で。当然ニヤニヤしながら。スフィアのパニック状態という珍しい光景に、悪戯心が騒いだのは言うまでもない。
「こうなったら・・・」
スフィアの呟きに、いよいよ出番か?などと気を引き締めたルークだったが、続く言葉で盛大にコケる事となる。
「ユーナ!出来る限り時間を稼いで下さい!!」
「ふぁっ!?」
まさか自分に白羽の矢が立てられるとは露ほども思っていなかったユーナは、声にならない声を上げる。元冒険者でダークエルフという彼女ではあるが、そこまでの実力は無い。それなりに有名だったのは姉の方であって、ユーナ自身はそこまで秘めた実力も無いのだ。それでもその辺の兵士よりは大分強い。背に腹は代えられないという事で、スフィアはユーナに頼んだのである。
「むむむ、無理です!!」
「それは承知の上です!危ないと感じたら逃げて下さい!!」
「間に合うはずがないでしょう!?」
「ブレスよりも速く走れば問題ありません!誰しも、死ぬ気になれば何とかなるものです!!」
「無茶苦茶です!!」
ユーナに限らず、その場の全員が思う。だったら自分がやれよ、と。水の上を走れと言われているようなものだ。普段のスフィアであれば、そんな根性論を口にする事など無い。つまりはそれだけ追い込まれているという事なのだが。竜種という存在は、一般人にとってそれ程の脅威なのだ。美味しいという理由で、自ら乗り込む者など単なる変人と言えよう。
「地上の魔物であれば軍でも対処出来るかもしれませんが、相手は空。しかも竜・・・。」
「並の武器では歯が立たないでしょう。当然魔法も・・・。」
強靭な鱗により、物理と魔法に高い耐性を持つ竜種。さらに今回の相手は巨大である。数で攻めた所で、どれ程の効果があるのかはわからない。下手をすれば、ブレス数発で軍は壊滅する恐れだってあるのだ。正に打つ手なし、である。悪戯に兵を損なう訳にもいかないが、だからと言って何もしなければ民衆に被害が及ぶ。最悪、帝都が滅びるかもしれない。
そんなスフィアが最後に口にするのは、愛する旦那の名前というのも頷けるだろう。
「ルーク・・・」
「あれ?呼んだ?」
絶望的な状況に、掠れるような声で呟いたスフィア。片や、やっと呼ばれた事で非常に嬉しそうなルーク。あまりにも対象的でタイミングが良すぎる状況に、後日問い詰められたメイドや兵達が口を割るのは仕方のない事であった。怒り狂ったスフィアによって、ルークが全力でお仕置きされるのはまたの機会に。
「こちらに竜が!!」
「竜?」
扉は近衛兵によって開け放たれている。お陰で筒抜けだった事もあり、状況は理解していたのだが知らんぷりを突き通す。これも火に油を注ぐ結果となるのだが、そんな事を今のルークが知る由も無い。スフィアを宥めて説明を聞き、自分が向かう事を告げる。
「オレが行くのはいいとして・・・何かが向かって来てるのは感じたけど、何故か今は止まってるんだよね。」
「そうなのですか?」
「誰かを待ってる・・・のかな?」
ルークは無意識に決定的な一言を告げる。気付いてたと自爆したのだが、ルークもスフィアもそれどころではない。そして説明するなら、竜の飛行速度であればスフィアとユーナが不毛なやり取りをしている間に、城まで辿り着いていたはずである。そうならなかったのは、何故か竜が帝都から距離を置いた地点で止まっているからであった。
ルークが落ち着いてスフィアに悪戯を仕掛けたのも、その事に気が付いていたからである。当然、何か動きがあれば向かうつもりではあったが。
「此処で考えてても仕方ない。とにかく行って来るから、一応帝都の方でも警戒しといて。」
「わかりました。すみませんが宜しくお願いします。お気を付けて!」
ルークは頷くとすぐに駆け出す。会議室に窓があればそこから飛び立ったのだが、生憎この部屋には外に出られるような窓は無い。すぐ近くの部屋の窓から飛び降り、風魔法で竜に向かって行くのであった。
そんなルークの姿を、竜を目撃して震え上がっていた民衆達の多くが見守っていた。自分達を救う為に立ち上がった勇者の如く。後日嫁にお仕置きされる愚かな男だとも知らず。
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