Shining Rhapsody 〜神に転生した料理人〜

橘 霞月

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変革

混沌の幕開け

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スフィアに国を任せたルークはまず、単独行動のカレンを探していた。探すと言っても場所の見当はついていたので、適切な表現とは言い切れないのだが。

魔の森にある転移門から少し離れた場所へと転移し、カレンの下へと急ぐ。何故目の前に転移しなかったのかと言えば、もし戦闘中だった場合にカレンの集中力を削ぐ恐れがあったからだ。既に戦闘が終了している事を知らないのである。

「カレン!無事か?」
「ルーク!?えぇ、何とか。」

無事だと告げるカレンに安堵するが、近寄ってみるとドレスはボロボロだった。だがそれ以上に気になるのは、周囲に座り込む4人の姿。

「母さん!?ランドルフさんにサラまで!?」
「ちょっとルーク!私は!?」
「ライラを呼ばなかったのは・・・何となく?」
「ムキィ!!」

本当に深い意味は無かったのだが、どうにもライラは気に食わなかったらしい。両腕を振り上げながらルークに迫る。素早く後ずさりながらも、これならば心配する必要は無いだろうと胸を撫で下ろした。

「悪いけど今は時間が無いんだ!」
「どうしたのです?」
「ライムのダンジョンを守り切れなかった。」
「そうでしたか。」

イマイチ反応の薄いカレンに対し、ルークが訝しげな表情を浮かべる。が、すぐに理由に思い至る。

「中から大量の魔物が出て来てるんだよ!!」
「「「「「なっ!?」」」」」

ハッキリと告げられた事で、漸く事の重大さに気付く。まさかのスタンピード。それも世界最高難易度のダンジョンである。それだけでも大事なのだが、事態はそれに留まらない。

「ライムのダンジョンはあちら側に繋がっています。ですから、出て来ているという魔物は恐らく・・・。」
「あぁ。先頭を確認したけど、全部向こう側の魔物だった。」
「でしたらすぐにでも魔物退治を・・・」
「消耗した今の状態でどうにか出来る数じゃない。オマケにかなり外に出ちまったからな。もう手遅れだろう。」
「ではライムの王都は・・・」
「いや、それはギリギリ防いだ。お陰で魔物を野に解き放つ事になったけど・・・。」

苦笑いを浮かべながらも事情を説明すると、エレナ達の表情が曇る。それも当然だろう。神器を壊す目的で向こうの大陸へ行くだけのつもりが、世界中を危機に晒す事となったのだから。オリド達の本当の狙いを知らなかった、で済ませる訳にはいかない。

「兎に角だ。まずはティナ達の安全を確保したいから、オレはラミスに行くよ。」
「でしたら私は城へ戻るとしましょう。」

育ての親に対して冷たい気もするが、とても再会を喜べる心境ではない。エレナ達の事には一切触れる事無くルークは転移してしまう。


残されたカレンはと言うと、そこまで非情にはなり切れなかった。

「さて・・・貴方達はどうしますか?」

カレンの問い掛けに、エレナ達は顔を見合わせる。自分達に選択権が与えられるとは思っていなかったのだ。カレンにとって、自分達はオリド・・・エリド達の協力者。助けに入ったとは言え敵なのだ。問答無用で裁かれてもおかしくはないのである。

「私達は・・・私達も一緒に連れて行っては頂けませんか?」
「良いのですか?幾らルークの育ての親でありティナの親とは言え、何を言われるかわかりませんよ?」
「それは覚悟の上です。例え意図していなくとも、多くの者達に迷惑を掛けました。どんな罰も甘んじて受けるべきでしょう。」
「エレナよ、少し待つんじゃ。」

反省した様子のエレナとは異なり、思う所のあったランドルフが制止する。

「儂らは目的を果たすまで、どのような犠牲も厭わんと決めたはず。今更怖気付いたのか?」
「怖気付くって表現は違うでしょ?それに私達が決めたのは自分達の命であって、何の罪も無い人達の命じゃないわ!」
「それでもじゃ!それでも儂らは・・・儂は・・・・・。」

俯いて拳を握りしめるランドルフ。エリド村の住人達には痛い程理解出来る。だからこそ強くは言えなかった。だがそれは話し合いをした上での、互いを理解し合う機会をも奪う。

「私もランドルフに賛成よ。」
「サラ!?」
「ごめん、私もかな・・・。」
「ライラまで!?」

これが多数決であれば結果は出たのだが、今回ばかりは個々の判断に任せるしかない。全員がそう考えたのか、残念な結果で意見が一致する。そんなエレナを気の毒に思ったカレンが話を纏める。

「どうやら1度、全員の意志を確認した方が良さそうですね。」
「カレン様・・・。」
「他の者達は何処にいるのです?」
「ラミスの遺跡にいるはずです。」

状況を全く知らないカレンの問いに、エレナが説明する。

「遺跡?何の遺跡があるのです?」
「転移門があるらしいです。」
「えっ!?」

カレンの反応に、エレナだけでなく他の者達までもが首を傾げる。

「どうかしたのか?カレン様。」
「そんなはずは・・・いえ、すぐに向かいましょう!」

ランドルフの問い掛けが耳に入らなかったのか、何かを考えていたカレンが移動を促す。エレナから詳しい場所を聞き、すぐさま転移したのだった。カレンもまた、転移魔法を隠す余裕は見られなかったのだが、彼女にも別の意味で余裕が無かった。


一方のルークだが、ラミスの店舗ではなく王都から少し離れた場所へと転移していた。理由は単純、こちらも場所などわからないのだ。ならば空から向かった方が確実。それに店舗から出て飛び立った、では面倒が起こるかもしれない。変な所で気が利くルークであった。

全速力でティナ達の下へと向かう。戦闘の爪痕があるか何か騒ぎが起きているだろうと考えての事だったのだが、この読みは当たっていた。何やら人だかりが出来ているのだ。

地上へと降り立つと、何やら見覚えのある者達の姿がある。

「カレン!?」
「おや?遅かったですね?」

勝ち誇ったようにカレンが告げる。直接転移して来たのだろうと理解はするが、そこまでする理由がわからない。

そもそもティナ達との合流が目的だったのだが、カレンがいる以上は急ぐ必要も無い。カレンに危険が迫るような状況ならば、誰が居たってどうにもならないのだから。

「城に戻るんじゃなかったのか?」
「少し気になる事がありまして・・・。」
「?」
「ここにも転移門があるらしいのです。」

魔の森にもあるし、各国には転移魔法陣だってある。特におかしな事でも無いと考えたルークだが、カレンは違うらしい。

「何か問題なのか?」
「本来この場には存在しないはずなのですよ。つまり、私の知らない神の誰かが秘密裏に設置した事になります。」
「何の為に?」
「それを知る為に、ですよ。」

なるほど、それならば納得である。そう思ったルークはそれ以上の詮索をやめた。これ以上質問した所で、カレンにもわからないのだから。しかし、ならばカレンは何を呑気に突っ立っているのだろう。

「何かを調べてるようにも見えないんだけど・・・」
「えぇ。今はエリド村の者達が結論を出すのを待っている状態です。」
「結論?」
「犯した罪を償うのか、はたまた罪を重ねるのか。」

ハッキリとはわからなかったが、カレンに任せようと考えて話を切り上げる。今考えるべきは故郷の顔馴染みの進路ではない。この世界に暮らす、多くの者達の生活である。

「まぁ、村のみんなの事はカレンに任せるよ。オレはティナ達を連れて城に戻るから、後で教えて貰える?」
「それが良いでしょうね。」

視線をティナ達に向けながらカレンが同意する。その視線に気付いたのか、ティナ達がやって来た。

「ルーク!無事でしたか!!」
「オレは無事だったんだけど、世界が無事じゃないと言うか・・・」
「「「「「世界?」」」」」

そんな説明でわかる訳も無く、ティナ達と竜王達が揃って首を傾げる。ルークとしても責任を感じている為、どうしても言い辛いのだった。とりあえずその話は後回しとばかりに話題を変える。

「ちょっと大変な事になっててさ、みんなにも手伝って欲しい事があるんだ。」
「私達に?・・・嫌な予感がするんだけど。」
「ナディアの予感は正しいけど、とりあえず帰ってから説明するよ。」
「ですが村のみんなが・・・」

情けない話は1度で済ませたいルークだったが、両親や同郷の者達が気になるティナは残りたいのだろう。仕方なく簡単に説明する事にした。

「・・・オレが弱いせいで、ライムにあるダンジョンを守りきる事が出来なかった。そのせいで、今尚魔物が溢れ出してるんだ。向こう側の魔物が。」
「「「「「っ!?」」」」」
「あの勢いはカレンにも止められない。そして、その魔物はいずれ世界中に散らばるだろう。そうなれば人が暮らせなくなる。そうなる前に何とかしたいんだ。みんなにはその手伝いをして欲しい。」

簡単な説明を終え、頭を下げるルーク。そのような頼みとあらば断る理由などない。頭を上げたルークに対し、全員が頷き返す。こうしてルーク達は城へと帰還して行ったのであった。


それを見送ったカレンの下へ、エリド村の者達が揃って歩み寄る。

「決まりましたか?」
「あぁ。エレナの意見を指示する者はいない。が、オレも一緒に残る。」
「ならばエレナとアスコットは残りなさい。あとの者達は・・・そうですね。ライムにあるダンジョンを抜けて行くと良いでしょう。」
「この遺跡じゃダメなのか?」

態々移動せずとも、この場に転移門があるのだから。そう告げるアスコットに対し、珍しくカレンが怒りを露わにする。

「黙りなさい。本来であれば全員この場で切り伏せている所なのですよ?私の為に尽くしてくれた過去を鑑みての、これが最大限の譲歩です。それでも不満なのであれば、喜んで相手になります。」
「・・・わかりました。」

散々タメ口をきいていたアスコットも、カレンの怒りっぷりには下手に出るしかない。どう逆立ちしても勝てない相手に喧嘩を売る理由は無い。


怒っているカレンではあるが、これは村の者達を気遣ってのものであった。何処に繋がっているのかすら不明な転移門。最悪の場合、転移したその場で死ぬ恐れもある。ならば比較的安全そうなダンジョンを抜けさせようと考えたのだ。ダンジョンならば、途中で引き返す事も出来るのだから。


こうしてエリド村の住人達を見送ったカレンとアスコット、エレナの3名は、フォレスタニア帝国ではなくライム魔導大国へと転移するのであった。
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