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第63話:残念ながら。
しおりを挟む「運命の相手? それは、どういう意味でしょうか?」
ナチェルがそう尋ねると、愛那は小さく首を傾げた。
「お二人は、私が昨日召喚された神殿でのこと、知っていますか?」
愛那の問いにナチェルが答える。
「私が耳にしたのは、城の神殿で異世界召喚が行われ、召喚された黒髪の少女が行方不明になったと、それだけです」
「俺は救世主様が城から姿を消したのは、レディル王太子殿下の暴言が原因だろうという話を聞きました」
「暴言?」
ナチェルが眉を顰める。
「それじゃあ、神託のことは聞いていないんですね?」
「神託?」
「神官長が神託が下ったと、その内容を話していました」
「一体どのような?」
「私の運命の相手が、その王太子殿下だと言っていました」
愛那が表情を消したままそう話す。
「えっ!?」
「マナさまの運命の相手がですか!?」
「正確には、【運命の恋人】だと言っていました。なんでも、二人の力を合わせれば、魔物を討伐することが容易いと、そんなことを」
二人が愕然とした面持ちで口を開く。
「マナ様とレディル殿下が?」
「本当ですか? 聞き間違いとかじゃ・・・・・・」
「残念ながら」
愛那のはっきりとした答えに、モランは頭に手をやり思考を巡らす。
(ちょっと待て。もしそうなのだとしたら、話が違ってくるぞ? ライツ様は神託の内容を聞いているはずだ。ということは、ライツ様のマナさまへと想いは、恋ではなく、妹を愛おしむような、そんな感情だったのか?)
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