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アンシェル、慌てる
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「すごいわ、リーネ。本当に淑女教育を受けたことがないの? ここ数日で大まかな教育はクリアしていると、家庭教師達からお墨付きが出たわよ」
「本当? お姉様。ヤッター、嬉しいです!」
「あら、リーネ。ヤッターはここでは良いけど、外では控えめにね」
「あ、いっけない。つい嬉しくて。やっぱり付け焼き刃ではボロがでますね。ハリボテな私にはまだまだ令嬢の道は遠いです」
「そんなこと言わないで、リーネ。何度も言うけれど、殆ど教育を受けていない貴女が、ここまで出来ることがすごいのだから。きっと私では無理だったわよ」
「お姉様は完璧です。きっと立場が逆でも、すぐにマスターされた筈です。フンスッ!」
「もう、リーネったら。ふふふっ」
「ああ、またやっちゃった。てへへっ」
端から見れば仲良し姉妹の、果てのない誉め合戦である。
その後も共に家庭教師から淑女教育を受けた二人は、メキメキと学びを吸収していった。
アンシェルに合わせた、いくつかの授業を共に受けているが、リーネは初めて聞く内容も難なく理解している様子だった。
確認の小テストも満点だ。
アンシェルに合わせたカリキュラムだから、リーネには難解な筈である。しかしその際に彼女は、今まで学んだことを頭の中で組み立て、おおよその予測を立てていたのだ。大きく外れることもなく。
「もしかしたら、天才なのかしら? これは素晴らしいことだわ!」
「えっ、そんなことないですよ!」
尊敬の眼差しで見てくるアンシェルに、リーネは驚愕し言い訳を呟く。
「お姉様、違いますよ。優秀とかじゃないですからね。ただの暗記ですから。記憶力が良いだけで、応用とかできませんし……。
その点、お姉様はすごいですわ。どんなことにもスラスラと対応出来るんですもの。
お店の指示とか職員配置の采配とか。もう痺れます!」
「うっ、急に何を言うのよ?」
おだてじゃなく、ストレートで褒めてくるから、今後はアンシェルが衝撃を受けた。加えて尊敬の眼差しを受け、衝撃倍率ドン×さらに3倍だ。くうっ。
「リーネ、落ち着いて。たまたま私とお母様は、お父様の不足分を補う為に、昔からいろいろやって来ただけなのよ。
だからこれは結果なだけで、失敗だって山ほどしたのよ。
全然すごくないのよ。本当よ。
逆に公爵家の侍女達が、どれだけ素晴らしい教師となったとしても、下地がないと吸収など出来ないわ。
公爵家はこんな有能な娘を放逐して、とんでもない損失を出したことを後で悔やむでしょうね」
既に謙遜するのにも疲れ、リーネに対しての客観的な気持ちを伝えていた。
ちょっとばかり、父親がうまく立ち回らなくて尻拭いに回ったことなどもばらしつつ。そして……。
(ライラックはきっと、かなりの切れ者だ。本当に侍女なのかも分からない。何となく違う仕事も熟している気がするわ)
褒められ慣れていないのか、アンシェルに言われたから嬉しいのか、満面の笑みが止まらないリーネ。
「じゃあ今から頑張れば、お姉様のようになれますか? お姉様のお手伝いが出来ますか?」
「私のようにとか、お手伝いとかはよく分からないけれど、立派な淑女になれるのは間違いないですわ。一緒に頑張りましょうね」
微笑むアンシェルに、「はい!」と即答するリーネ。
彼女はもう、自分の進むべき道を決めてしまっていた。
(駄目と言われるまでは、アンシェル様の下で役に立ちたい。出来ればお嫁に行かれた先にも、付いて行きたいです!)
そう。リーネは育った環境故に、しっかりと使用人根性が染み付いていた。
『働かざる者、食うべからず』精神が。
出来れば有用な主人の下で働きたい!
公爵家で働くより、尊敬も張り合いもあるし。
まあ仮にも侯爵令嬢になった今であるが、三つ子の魂百まではそうそう治る訳もなく、勝手に主従を決めていた。
主人はアンシェルで、従者は自分である。
それを知らず、分かってくれたのねと思ってるアンシェルは、後にかなり混乱するのだった。
「本当? お姉様。ヤッター、嬉しいです!」
「あら、リーネ。ヤッターはここでは良いけど、外では控えめにね」
「あ、いっけない。つい嬉しくて。やっぱり付け焼き刃ではボロがでますね。ハリボテな私にはまだまだ令嬢の道は遠いです」
「そんなこと言わないで、リーネ。何度も言うけれど、殆ど教育を受けていない貴女が、ここまで出来ることがすごいのだから。きっと私では無理だったわよ」
「お姉様は完璧です。きっと立場が逆でも、すぐにマスターされた筈です。フンスッ!」
「もう、リーネったら。ふふふっ」
「ああ、またやっちゃった。てへへっ」
端から見れば仲良し姉妹の、果てのない誉め合戦である。
その後も共に家庭教師から淑女教育を受けた二人は、メキメキと学びを吸収していった。
アンシェルに合わせた、いくつかの授業を共に受けているが、リーネは初めて聞く内容も難なく理解している様子だった。
確認の小テストも満点だ。
アンシェルに合わせたカリキュラムだから、リーネには難解な筈である。しかしその際に彼女は、今まで学んだことを頭の中で組み立て、おおよその予測を立てていたのだ。大きく外れることもなく。
「もしかしたら、天才なのかしら? これは素晴らしいことだわ!」
「えっ、そんなことないですよ!」
尊敬の眼差しで見てくるアンシェルに、リーネは驚愕し言い訳を呟く。
「お姉様、違いますよ。優秀とかじゃないですからね。ただの暗記ですから。記憶力が良いだけで、応用とかできませんし……。
その点、お姉様はすごいですわ。どんなことにもスラスラと対応出来るんですもの。
お店の指示とか職員配置の采配とか。もう痺れます!」
「うっ、急に何を言うのよ?」
おだてじゃなく、ストレートで褒めてくるから、今後はアンシェルが衝撃を受けた。加えて尊敬の眼差しを受け、衝撃倍率ドン×さらに3倍だ。くうっ。
「リーネ、落ち着いて。たまたま私とお母様は、お父様の不足分を補う為に、昔からいろいろやって来ただけなのよ。
だからこれは結果なだけで、失敗だって山ほどしたのよ。
全然すごくないのよ。本当よ。
逆に公爵家の侍女達が、どれだけ素晴らしい教師となったとしても、下地がないと吸収など出来ないわ。
公爵家はこんな有能な娘を放逐して、とんでもない損失を出したことを後で悔やむでしょうね」
既に謙遜するのにも疲れ、リーネに対しての客観的な気持ちを伝えていた。
ちょっとばかり、父親がうまく立ち回らなくて尻拭いに回ったことなどもばらしつつ。そして……。
(ライラックはきっと、かなりの切れ者だ。本当に侍女なのかも分からない。何となく違う仕事も熟している気がするわ)
褒められ慣れていないのか、アンシェルに言われたから嬉しいのか、満面の笑みが止まらないリーネ。
「じゃあ今から頑張れば、お姉様のようになれますか? お姉様のお手伝いが出来ますか?」
「私のようにとか、お手伝いとかはよく分からないけれど、立派な淑女になれるのは間違いないですわ。一緒に頑張りましょうね」
微笑むアンシェルに、「はい!」と即答するリーネ。
彼女はもう、自分の進むべき道を決めてしまっていた。
(駄目と言われるまでは、アンシェル様の下で役に立ちたい。出来ればお嫁に行かれた先にも、付いて行きたいです!)
そう。リーネは育った環境故に、しっかりと使用人根性が染み付いていた。
『働かざる者、食うべからず』精神が。
出来れば有用な主人の下で働きたい!
公爵家で働くより、尊敬も張り合いもあるし。
まあ仮にも侯爵令嬢になった今であるが、三つ子の魂百まではそうそう治る訳もなく、勝手に主従を決めていた。
主人はアンシェルで、従者は自分である。
それを知らず、分かってくれたのねと思ってるアンシェルは、後にかなり混乱するのだった。
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