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ねこまんまときみどりのことり

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伯爵夫人になった私

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 煌めく王宮では、今宵もパーティーが開催されていた。 

 真夜中まで鳴り響く、楽団の音色。
 人熱ひといきれと雑談で、賑わうホール。

 酔いに身を委せた女性は、まるで引き合うように私の夫と見つめ合いダンスを踊る。ずいぶんと密着して濃厚なさまで。

 その女性はマリームと呼ばれていた。夫であった子爵を亡くしたばかりの未亡人。可愛らしいウェーブの桃色髪と、黄緑の瞳は年齢より幼く見える。その反面、たわわな乳房と括れた腰は、男達の欲望を刺激する。

 その男達の中に、私の夫であるダグラスも含まれていた。
 幸薄そうで儚げなタレ目と涙きぼくろを持つ、妖艶な雰囲気のある彼女は、私の顔を見て怯えていた。

「まあ、怖いお顔。ダンスをしただけなのに。私、どうしたら良いの?」

 小動物のように夫の後ろに隠れる彼女。


(おおっと。人の顔を見て怖いって、失礼過ぎじゃない)


「おいおい、レアナ。そうマリームを睨むんじゃない。彼女は可哀想な人なんだ。愛する夫が亡くなったばかりなんだぞ。もう少し優しくしてあげなさい」

 口調は穏やかだが、非難めいた言葉が周囲の人々を刺激する。

 女性達からは嘲笑と哀れみ、そして未亡人への非難の瞳。男性達からは、色気のある女性の腰を抱く夫への羨望の眼差しが注がれた。


 私は周囲から見えないように、扇子で口元を隠しそっと吐息を漏らす。

(可哀想な女性を慰める夫ね。あの宝石を縫い付けてギラギラしている、胸の開いた下品なドレス。いったい誰が、いくらで買ったのかしら?)


 レアナの容貌はと言えば、ストレートの焦茶髪と琥珀色の瞳の地味めな淑女。年齢もダグラスの一つ下の28歳。でもパーツの配置は悪くないので、よく見れば可愛い。



 
 今さら、こんなことで傷付かない。
 だってもう、たくさん泣いてきた。
 助けてくれる人なんて、誰もいなかった。

 だから私は、強くなったのだもの。




◇◇◇
 私はダグラスの両親に頼まれて、ギャマイラス伯爵家に嫁いで来た、現役の王宮女官。実務能力に優れていたから、家を立て直して欲しいと懇願され頭を下げられた。

 ギャマイラス伯爵家は水害による被害で、借金まみれだった。それを私とある契約を交わし、私は領地経営をする為、女官の職を休職している。

 伯爵夫妻の息子はダグラスだけ。その息子は王位継承に絡まない、役立たず第三王子の側近らしく、王宮から帰らないといつも嘆かれていた。


 結婚式も挙げない、書類だけの結婚。

 もういっそのこと、養女でも良いのではないかと思ったが、伯爵夫妻はダグラスのことを見捨てないで欲しいと頼むのだ。

 養女ならば他家に嫁ぐかもしれないからと、余計な心配もしていた。だからこその結婚なのだろう。


 何れにしろ、私は伯爵夫人になったのだ。





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