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相澤 対 佐久間〈3〉
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前方にターゲットを確認する。俺はベンチに座ったままの姿勢で前髪に隠れるようにしながら様子を窺う。目元を隠しているのは他人と視線を合わせない為でもあるが、密かに周囲を観察する為でもある。
勿論、2人にも俺の姿は見えている。この駅を利用している学生は他にも居るので、俺が居たところで不自然ではないのだろう。気に留める様子も無く佐久間と葉山は楽しそうに笑いながら駅の中へと入って行く。分かってはいた事だが、素通りされてムカついた。
「佐久間君!」
葉山の姿が見えなくなった事を確認した後、バス停に向かう佐久間の前に飛び出す。
「おっと!…相澤…?だったよな。」
俺の存在に気付いていなかったらしい。少し驚いたように足を止めた佐久間が俺を見下ろして笑いかけてきた。
《な、何だよ?!余裕の微笑みかよ!?さっきは無視したくせに!》
思わずドキリとする。間近で向き合うのは2度目だが、その眼差しは不思議なほどに俺をドキリとさせる。再び、最悪の赤面症が発動する。
《クソッ!ま、負けるな!ここからが本番だ!》
俺も負けじと顔を上げてニッコリと微笑み返す。既に復讐劇は始まっている。今まで通りにやれば良いだけだ。
「熱、あるんじゃねぇ?大丈夫か?」
唐突に佐久間の手が前髪に触れてきた。又しても、突然の出来事に驚く。
《な、な、な、何なんだ?!いきなり何?!》
この男は無造作に触る癖でもあるのだろうか?そして、俺は何故かドキドキしてしまう。
《ええい!このまま押し切れ!》
待っていた間に頭の中で何度もシュミレーションしてある。
「待ってたんだ。少し時間ある?」
「あぁ、話があるって言ってたな?」
「葉山君…帰ったよね。」
「……葉山の知り合いか?」
「いや、そうじゃないけど…。俺が知ってるだけ…?かな。」
「ふ~ん。」
佐久間がチラリとバス停の方に目をやる。間もなくバスが到着する頃だ。ここで逃すつもりはない。俺はそれに気付かない振りをする。
「で…?話って何?」
「あの…、突然でごめんなさい!」
そのまま足止めする為に大袈裟に演技をしてみせる。
「おい、頭上げろよ。」
少し慌てた佐久間の声に頭を上げると、フワリと髪の毛を撫でられた。俺を見つめて微笑む口元と眼差しが優しく見えてしまうのは気のせいだろうか?
《うわわっ!ヤバイ!》
逆に、俺の方が慌ててしまった。無意識に髪の毛を何度も手櫛で整える。これも自然と身に付いた癖ではあるのだが、いつになく落ち着かない手が震えている。
「あ、悪い。」
「ううん。」
俺は慌てて首を横に振る。演技どころか動揺しまくりだ。心臓が勝手にドキドキしやがる。
《お、落ち着け!何、動揺してんだよ…!》
「こうして話すのは初めてだね。やっぱり、思った通り…優しい。」
「はぁ?何だ?急に…どうした?」
俺の言葉に軽く笑いながら答える佐久間の表情は豊かだ。気抜けするほどの緊張感の無さは佐久間自身の持ち味なのだろう。相手を身構えさせない。いや、佐久間自身が身構えていないとでも言えば良いのだろうか。
佐久間が見せる表情や態度は遠目に眺めていた時と同じだ。顔馴染みの仲間に向ける時と同じ表情を俺に向けている。明るく気さくな男は、誰に対しても平等らしい。
《本当は俺の事を知ってるんじゃないか…?》
ふと、頭に浮かんだ疑問を投げかけてみる。
「佐久間君、俺の事…やっぱり分からない?」
学食で何度か目が合っている。その時も俺を見て笑いかけてきた。本当は気付いていながら見知らぬ振りをしている可能性もある。佐久間は頭が良いだけに計算高い男なのかもしれない。
「え…?相澤だろ。名前は覚えたぜ。」
キョトンとした目で答えた後、破顔するように笑う顔は「親しみやすい」の一言だ。どうやら、この男に裏は無いらしい。裏が有り過ぎるのは俺の方だ。思わず慎重になる俺とは逆に、佐久間の方は普段と変わらない雰囲気だ。
「そうか…。そうだよね。俺は、前から知ってるけど…。いつも、見てたから…。」
その返答に何故かガクリとする。気付かれているのではないかという疑いとは別に、気付いてさえいなかったという事実に妙に胸がザワザワした。
俺は何かを期待したのだろうか…?
「悪いな。同じクラスになってたら覚えてるけど、学年の人数多すぎだからな~。」
佐久間が軽く笑う。本当に気さくな感じのこの男は場の雰囲気を和ませる力もあるらしい。気付けば俺の動揺までも取り払ってしまっている。
《ホント、気抜けする奴だな…》
想像していたよりも随分と「良い人間」に思えた。だが、素直ではない俺にそんな余裕などあるはずもない。
会話を交わしている間にバスが到着する。
《これを乗り過ごしたら次のバスは1時間後だ。逃すものか!》
佐久間を前にするとどうしてもペースが乱れる。今までのターゲットとは違うだけに入念に作戦を立ててある。今は、それを実行するのみだ。
だが、意外な事に佐久間はバスに乗るのを早々に諦めたらしい。嫌な顔一つ見せず、クルリと身体の向きを変えるとスタスタと自動販売機の方へと歩いて行った。普通なら自分の行動を邪魔される事は嫌なはずだが、そんな素振りさえも見せなかった。俺も急いで後を追う。
「相澤、何がいい?」
「え…?あ、自分で買うよ。」
「いいから、言えよ。何にする?」
「あ、じゃあ…俺も、佐久間君と同じので。」
【ガタン】
取り出し口から缶コーヒーを2本手に取り、その1本を俺の手元に差し出してくる。
「ほらよ。」
佐久間はさり気なく優しい男だ。
「ありがとう。」
急激に冷え込み始めた時期だけに、駅前で長々と待ち伏せしていた俺の手は冷え切っていた。普段は缶コーヒーのブラックなどは飲まない。俺が好きなのは甘々のフルーツミックスジュースだ。だが、冷えた身体にはそれが有り難く思えた。ただ、熱すぎて持てないので袖口で覆うように両手で包み込む。
《ああ、温かい~!》
少しホッとした気分になる。
「駅の中に入るか?」
「あ、待って!誰も居ない所がいい。」
会話を交わして間が無いにも関わらず、佐久間はあくまでも自然だ。そして、リードするのが上手い。うかうかしていると佐久間のペースに巻き込まれてしまいそうになる。
「お前…、風邪は?」
「うん、大丈夫!ありがとう!」
俺はニッコリと魅惑の微笑みを向ける。
《よし!必ず落としてやる!》
そのまま人気の無い公園へと誘い出す。数歩後ろから佐久間がゆっくりと付いて来る。対応策は色々と練ってあったが、これ程すんなり連れ出せるとは思ってもいなかった。
果たして、佐久間はどう出るのだろうか…?
勿論、2人にも俺の姿は見えている。この駅を利用している学生は他にも居るので、俺が居たところで不自然ではないのだろう。気に留める様子も無く佐久間と葉山は楽しそうに笑いながら駅の中へと入って行く。分かってはいた事だが、素通りされてムカついた。
「佐久間君!」
葉山の姿が見えなくなった事を確認した後、バス停に向かう佐久間の前に飛び出す。
「おっと!…相澤…?だったよな。」
俺の存在に気付いていなかったらしい。少し驚いたように足を止めた佐久間が俺を見下ろして笑いかけてきた。
《な、何だよ?!余裕の微笑みかよ!?さっきは無視したくせに!》
思わずドキリとする。間近で向き合うのは2度目だが、その眼差しは不思議なほどに俺をドキリとさせる。再び、最悪の赤面症が発動する。
《クソッ!ま、負けるな!ここからが本番だ!》
俺も負けじと顔を上げてニッコリと微笑み返す。既に復讐劇は始まっている。今まで通りにやれば良いだけだ。
「熱、あるんじゃねぇ?大丈夫か?」
唐突に佐久間の手が前髪に触れてきた。又しても、突然の出来事に驚く。
《な、な、な、何なんだ?!いきなり何?!》
この男は無造作に触る癖でもあるのだろうか?そして、俺は何故かドキドキしてしまう。
《ええい!このまま押し切れ!》
待っていた間に頭の中で何度もシュミレーションしてある。
「待ってたんだ。少し時間ある?」
「あぁ、話があるって言ってたな?」
「葉山君…帰ったよね。」
「……葉山の知り合いか?」
「いや、そうじゃないけど…。俺が知ってるだけ…?かな。」
「ふ~ん。」
佐久間がチラリとバス停の方に目をやる。間もなくバスが到着する頃だ。ここで逃すつもりはない。俺はそれに気付かない振りをする。
「で…?話って何?」
「あの…、突然でごめんなさい!」
そのまま足止めする為に大袈裟に演技をしてみせる。
「おい、頭上げろよ。」
少し慌てた佐久間の声に頭を上げると、フワリと髪の毛を撫でられた。俺を見つめて微笑む口元と眼差しが優しく見えてしまうのは気のせいだろうか?
《うわわっ!ヤバイ!》
逆に、俺の方が慌ててしまった。無意識に髪の毛を何度も手櫛で整える。これも自然と身に付いた癖ではあるのだが、いつになく落ち着かない手が震えている。
「あ、悪い。」
「ううん。」
俺は慌てて首を横に振る。演技どころか動揺しまくりだ。心臓が勝手にドキドキしやがる。
《お、落ち着け!何、動揺してんだよ…!》
「こうして話すのは初めてだね。やっぱり、思った通り…優しい。」
「はぁ?何だ?急に…どうした?」
俺の言葉に軽く笑いながら答える佐久間の表情は豊かだ。気抜けするほどの緊張感の無さは佐久間自身の持ち味なのだろう。相手を身構えさせない。いや、佐久間自身が身構えていないとでも言えば良いのだろうか。
佐久間が見せる表情や態度は遠目に眺めていた時と同じだ。顔馴染みの仲間に向ける時と同じ表情を俺に向けている。明るく気さくな男は、誰に対しても平等らしい。
《本当は俺の事を知ってるんじゃないか…?》
ふと、頭に浮かんだ疑問を投げかけてみる。
「佐久間君、俺の事…やっぱり分からない?」
学食で何度か目が合っている。その時も俺を見て笑いかけてきた。本当は気付いていながら見知らぬ振りをしている可能性もある。佐久間は頭が良いだけに計算高い男なのかもしれない。
「え…?相澤だろ。名前は覚えたぜ。」
キョトンとした目で答えた後、破顔するように笑う顔は「親しみやすい」の一言だ。どうやら、この男に裏は無いらしい。裏が有り過ぎるのは俺の方だ。思わず慎重になる俺とは逆に、佐久間の方は普段と変わらない雰囲気だ。
「そうか…。そうだよね。俺は、前から知ってるけど…。いつも、見てたから…。」
その返答に何故かガクリとする。気付かれているのではないかという疑いとは別に、気付いてさえいなかったという事実に妙に胸がザワザワした。
俺は何かを期待したのだろうか…?
「悪いな。同じクラスになってたら覚えてるけど、学年の人数多すぎだからな~。」
佐久間が軽く笑う。本当に気さくな感じのこの男は場の雰囲気を和ませる力もあるらしい。気付けば俺の動揺までも取り払ってしまっている。
《ホント、気抜けする奴だな…》
想像していたよりも随分と「良い人間」に思えた。だが、素直ではない俺にそんな余裕などあるはずもない。
会話を交わしている間にバスが到着する。
《これを乗り過ごしたら次のバスは1時間後だ。逃すものか!》
佐久間を前にするとどうしてもペースが乱れる。今までのターゲットとは違うだけに入念に作戦を立ててある。今は、それを実行するのみだ。
だが、意外な事に佐久間はバスに乗るのを早々に諦めたらしい。嫌な顔一つ見せず、クルリと身体の向きを変えるとスタスタと自動販売機の方へと歩いて行った。普通なら自分の行動を邪魔される事は嫌なはずだが、そんな素振りさえも見せなかった。俺も急いで後を追う。
「相澤、何がいい?」
「え…?あ、自分で買うよ。」
「いいから、言えよ。何にする?」
「あ、じゃあ…俺も、佐久間君と同じので。」
【ガタン】
取り出し口から缶コーヒーを2本手に取り、その1本を俺の手元に差し出してくる。
「ほらよ。」
佐久間はさり気なく優しい男だ。
「ありがとう。」
急激に冷え込み始めた時期だけに、駅前で長々と待ち伏せしていた俺の手は冷え切っていた。普段は缶コーヒーのブラックなどは飲まない。俺が好きなのは甘々のフルーツミックスジュースだ。だが、冷えた身体にはそれが有り難く思えた。ただ、熱すぎて持てないので袖口で覆うように両手で包み込む。
《ああ、温かい~!》
少しホッとした気分になる。
「駅の中に入るか?」
「あ、待って!誰も居ない所がいい。」
会話を交わして間が無いにも関わらず、佐久間はあくまでも自然だ。そして、リードするのが上手い。うかうかしていると佐久間のペースに巻き込まれてしまいそうになる。
「お前…、風邪は?」
「うん、大丈夫!ありがとう!」
俺はニッコリと魅惑の微笑みを向ける。
《よし!必ず落としてやる!》
そのまま人気の無い公園へと誘い出す。数歩後ろから佐久間がゆっくりと付いて来る。対応策は色々と練ってあったが、これ程すんなり連れ出せるとは思ってもいなかった。
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