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相澤 対 佐久間〈2〉
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授業を終えた後、佐久間が利用する駅へと向かう。待ち伏せをして葉山と別れた後に引き止めるつもりだ。その為に、金曜日の部活帰りの2人を何度も尾行している。駅周辺の下調べしもしてある。
そして、今日は金曜日だ。平日は遅くまでウロウロ出来ないだけに狙うのは金曜日しかない。
《大丈夫だ。準備は万全だ!》
佐久間にその気があるのかどうかは分からないが、大概の男なら俺の見た目に惑わされる。その先は、俺に関心を示すかどうかだ。
速水の情報を聞いてから更に詳しく観察してきた。その結果、佐久間の身辺に恋人らしい女の影は見えなかった。そして、一番親しい人物が「葉山 弘人」である事も確認済みだ。
同じ陸上部で帰る方向も同じだ。奴等が2人きりになるのはこの時だけだった。クラスが違う2人が行動を共にするのは登下校と昼休みと部活動の時だけだ。それぞれに交友関係があり、共通の仲間も居るようだ。昼休みは野郎共の集団の中に紛れている。部活動でも黙々と練習に打ち込んでいる。傍から見る限りでは、普通に学生生活を送っている友達同士という感じだ。特に怪しげな所も見当たらなかった。
ただ、週末にも会う約束をするほど仲は良いらしい。そして、帰り道でふざけ合う2人は中学生レベルだ。ムキになる葉山を面白そうに揶揄う佐久間は、学校で見る姿よりもガキっぽく見えた。女と恋愛するよりも2人でふざけている方が楽しいと言わんばかりだった。
そうなると、ネックレスの相手が気になるところだが…もしかすると、それが「葉山 弘人」なのだろうか…?
《見る限り…アイツ等はノンケだよな?もしも、ゲイだったとしたら…速水が気付かないはずないよな?》
《ノンケ同士で恋愛なんて有り得ないだろ?男同士で恋愛なんて出来る訳ない。ゲイの速水だって恐れてたぐらいだ…》
2人を待つ間、駅前のベンチに腰かけて考え込む。
「速水…。」
あの日以降、速水との関係は完全に断たれた。それは俺が望んでいた結果だった。それなのに、何故か頭の隅に引っかかってしまっている。
昼休みになるといつも隣に居た。俺の空間にズカズカと踏み込んで来た。だが、その姿も既に無い。元通りになっただけの事だ。そして、佐久間の事を考えるには独りの方が良かった。
あれから、速水の言葉が頭を離れない。何度も繰り返し、何度も語りかけてくる。
『そんなに佐久間が気になるのか?』
『まさか本気で佐久間に惚れてるとか?』
俺が佐久間に惚れているとは考えられない。そもそも、恋愛などした事が無いので分からない。佐久間に抱いているのは「理想的な男の姿」、そこに重ねる自分の姿だ。佐久間のような男に生まれたかったという思いがある。
『俺達は普通じゃないのかもしれないけどさ…。でも、やっぱり普通だよ。恋愛対象が同性ってだけで…気持ちはホンモノだからさ。それは偽りじゃない真実だって思う』
普通ではない偽りの俺に「ホンモノの気持ち」など有りはしない。何もかもが全て狂って歪んで見える。
『本当の自分を見せるって…意外と勇気が要るよな』
『俺も…傷付くのは恐いんだ』
俺は傷付く事を恐れて自分を偽っている。そうしなければ耐えられなかったからだ。だが、他の奴等も皆同じだ。本性を隠している。どいつもこいつも狡賢くて腹の中は汚い奴等ばかりだ。人間なんてそんなものだろう。
『佐久間なら…多分、お前の知りたい答えを持ってる』
俺は自分が何を知りたいのかも分かっていない。何をどうすれば良いのかも分からなくなっている。そして、速水の言葉の意味を理解出来ないままだ。
『一つずつ…見つけて行けば良いんだよ』
『相澤は自分の心を…。俺は本気になれる相手を…』
復讐に燃える俺には心など必要ない。傷付く心など邪魔なだけだ。心があるから傷付くのだ。
《心が無いから…速水を傷付けた…。アイツ、悪い奴じゃなかったよな…》
速水の事を考えると気分が重く沈んでしまう。後悔のような重苦しさを感じてしまう。だからといって、今更引き返せる道など無い。歩んで来た道のりが間違っていたのだろう。それを速水が教えてくれた気がする。
それでも、考えたところで「答え」など出て来ない。偽りの俺に「真実」など有りはしない。
そして、いつも最後に浮かぶのは…
『答えは自分で探せ。相澤の気持ちは相澤にしか分からないだろ?』
速水の言葉が俺の背中を押す。だが、速水を思うと罪悪感に苛まれてしまう。この2ヶ月近くはそんな事の繰り返しだった。
俺が答えを見付けない限り、速水への罪悪感も消える事はないのだろう。今の俺は速水と向き合う事さえ出来ないのだ。
その焦りと胸の中のモヤモヤが大きくなり、俺は復讐心に火を点ける。
《クソッ…!今更、考えたって仕方ないだろ!どうすれば良いかなんて分からないんだ!》
《アイツ等の日常などぶち壊してやる!普通では居られなくしてやる!親友なんて関係も簡単に終わる!楽しそうに笑っていられるのも今だけだ!》
速水との事も含めると無茶苦茶な気分になる。その矛先を佐久間に向けているだけの事だ。頭の片隅では分かっている。だが、もう止められない。自分の感情を制御出来なくなっている。
俺は、佐久間に色仕掛けで迫るつもりでいた。自分から好意を向けて誘いをかけるのだ。佐久間の気持ちなどは知らない。奴がどんな男なのかも良く分かっていない。他のターゲットのように上手く誘いに乗って来るかどうかも定かではない。今までとは全く違う状況だ。
これは俺の「賭け」でもあった。復讐の最後を締めるには文句無しの相手だろう。俺の悲惨な過去は「憧れ」をも「復讐」が相殺する。
「憧れる」ほどに「破壊」してやりたくなる。完全に捻くれた俺にはそういう思考しか残されていなかった。
《俺や速水の気持ちを味合わせてやる!何が真実かを確かめてやる!》
暴走する感情が方向性を見失い、思考までもが支離滅裂になっている。こんな俺を救える者など居ないだろう。
それでも、俺は最後の望みをかけた「佐久間 剛」の姿を待っている。
俺は、あの男に何を求めているのだろうか…?
そして、今日は金曜日だ。平日は遅くまでウロウロ出来ないだけに狙うのは金曜日しかない。
《大丈夫だ。準備は万全だ!》
佐久間にその気があるのかどうかは分からないが、大概の男なら俺の見た目に惑わされる。その先は、俺に関心を示すかどうかだ。
速水の情報を聞いてから更に詳しく観察してきた。その結果、佐久間の身辺に恋人らしい女の影は見えなかった。そして、一番親しい人物が「葉山 弘人」である事も確認済みだ。
同じ陸上部で帰る方向も同じだ。奴等が2人きりになるのはこの時だけだった。クラスが違う2人が行動を共にするのは登下校と昼休みと部活動の時だけだ。それぞれに交友関係があり、共通の仲間も居るようだ。昼休みは野郎共の集団の中に紛れている。部活動でも黙々と練習に打ち込んでいる。傍から見る限りでは、普通に学生生活を送っている友達同士という感じだ。特に怪しげな所も見当たらなかった。
ただ、週末にも会う約束をするほど仲は良いらしい。そして、帰り道でふざけ合う2人は中学生レベルだ。ムキになる葉山を面白そうに揶揄う佐久間は、学校で見る姿よりもガキっぽく見えた。女と恋愛するよりも2人でふざけている方が楽しいと言わんばかりだった。
そうなると、ネックレスの相手が気になるところだが…もしかすると、それが「葉山 弘人」なのだろうか…?
《見る限り…アイツ等はノンケだよな?もしも、ゲイだったとしたら…速水が気付かないはずないよな?》
《ノンケ同士で恋愛なんて有り得ないだろ?男同士で恋愛なんて出来る訳ない。ゲイの速水だって恐れてたぐらいだ…》
2人を待つ間、駅前のベンチに腰かけて考え込む。
「速水…。」
あの日以降、速水との関係は完全に断たれた。それは俺が望んでいた結果だった。それなのに、何故か頭の隅に引っかかってしまっている。
昼休みになるといつも隣に居た。俺の空間にズカズカと踏み込んで来た。だが、その姿も既に無い。元通りになっただけの事だ。そして、佐久間の事を考えるには独りの方が良かった。
あれから、速水の言葉が頭を離れない。何度も繰り返し、何度も語りかけてくる。
『そんなに佐久間が気になるのか?』
『まさか本気で佐久間に惚れてるとか?』
俺が佐久間に惚れているとは考えられない。そもそも、恋愛などした事が無いので分からない。佐久間に抱いているのは「理想的な男の姿」、そこに重ねる自分の姿だ。佐久間のような男に生まれたかったという思いがある。
『俺達は普通じゃないのかもしれないけどさ…。でも、やっぱり普通だよ。恋愛対象が同性ってだけで…気持ちはホンモノだからさ。それは偽りじゃない真実だって思う』
普通ではない偽りの俺に「ホンモノの気持ち」など有りはしない。何もかもが全て狂って歪んで見える。
『本当の自分を見せるって…意外と勇気が要るよな』
『俺も…傷付くのは恐いんだ』
俺は傷付く事を恐れて自分を偽っている。そうしなければ耐えられなかったからだ。だが、他の奴等も皆同じだ。本性を隠している。どいつもこいつも狡賢くて腹の中は汚い奴等ばかりだ。人間なんてそんなものだろう。
『佐久間なら…多分、お前の知りたい答えを持ってる』
俺は自分が何を知りたいのかも分かっていない。何をどうすれば良いのかも分からなくなっている。そして、速水の言葉の意味を理解出来ないままだ。
『一つずつ…見つけて行けば良いんだよ』
『相澤は自分の心を…。俺は本気になれる相手を…』
復讐に燃える俺には心など必要ない。傷付く心など邪魔なだけだ。心があるから傷付くのだ。
《心が無いから…速水を傷付けた…。アイツ、悪い奴じゃなかったよな…》
速水の事を考えると気分が重く沈んでしまう。後悔のような重苦しさを感じてしまう。だからといって、今更引き返せる道など無い。歩んで来た道のりが間違っていたのだろう。それを速水が教えてくれた気がする。
それでも、考えたところで「答え」など出て来ない。偽りの俺に「真実」など有りはしない。
そして、いつも最後に浮かぶのは…
『答えは自分で探せ。相澤の気持ちは相澤にしか分からないだろ?』
速水の言葉が俺の背中を押す。だが、速水を思うと罪悪感に苛まれてしまう。この2ヶ月近くはそんな事の繰り返しだった。
俺が答えを見付けない限り、速水への罪悪感も消える事はないのだろう。今の俺は速水と向き合う事さえ出来ないのだ。
その焦りと胸の中のモヤモヤが大きくなり、俺は復讐心に火を点ける。
《クソッ…!今更、考えたって仕方ないだろ!どうすれば良いかなんて分からないんだ!》
《アイツ等の日常などぶち壊してやる!普通では居られなくしてやる!親友なんて関係も簡単に終わる!楽しそうに笑っていられるのも今だけだ!》
速水との事も含めると無茶苦茶な気分になる。その矛先を佐久間に向けているだけの事だ。頭の片隅では分かっている。だが、もう止められない。自分の感情を制御出来なくなっている。
俺は、佐久間に色仕掛けで迫るつもりでいた。自分から好意を向けて誘いをかけるのだ。佐久間の気持ちなどは知らない。奴がどんな男なのかも良く分かっていない。他のターゲットのように上手く誘いに乗って来るかどうかも定かではない。今までとは全く違う状況だ。
これは俺の「賭け」でもあった。復讐の最後を締めるには文句無しの相手だろう。俺の悲惨な過去は「憧れ」をも「復讐」が相殺する。
「憧れる」ほどに「破壊」してやりたくなる。完全に捻くれた俺にはそういう思考しか残されていなかった。
《俺や速水の気持ちを味合わせてやる!何が真実かを確かめてやる!》
暴走する感情が方向性を見失い、思考までもが支離滅裂になっている。こんな俺を救える者など居ないだろう。
それでも、俺は最後の望みをかけた「佐久間 剛」の姿を待っている。
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