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相澤、過去を語る〈3〉回想と独り言
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結局、俺の人生は「生まれた時」から決まっていたようなものだ。
そもそも、母親の子供として生まれた事が不幸の始まりだろう。何もかもが母親譲りで良い事など1つも無い。女に生まれていれば違ったのかもしれないが、男に生まれた俺には欠点としか言いようがない。しかも、与えられた人生に選択の余地はない。物心ついた頃には、抗いたくても抗えない「嫌な現実」があるだけだった。
それが今に繋がっているというだけの話だ。
俺が他人を避けるのも、警戒心が強いのも、今に始まったことではない。子供の頃からそうだった。いや、そうなるように育てられた。結論から言えば、親が与える影響は大きかったという事だ。
ちなみに言っておくが、俺は「マザコン」ではない。母親は優しかったが、俺の自由を奪った人間の1人だ。
小学校に入るまで外で遊んだ記憶は殆どない。出かける時は保護者付きで自由がない。庭先で遊ぶだけでも帽子や長袖を着せられて、日焼け止めクリームを身体中にベタベタと塗りたくられた。怪我をしてはいけないと言われて遊びも制限された。それが嫌で外に出る事も少なかった。部屋で大人しくしていれば母親が安心して口を出さない事も知った。そうやって、自分が自由で居られる方法を学んで行った。
小学生になると環境が大きく変わった。母親の手元を離れた俺を待ち構えていたのは「新たな人間の壁」だった。自由を手にする反面で、多くの人間に囲まれる恐怖を感じた。俺は、ただ黙って動けずにジッとしていた。人間共に囲まれた障壁の中は暗くて窮屈で苦しかった。やがて、そこから逃げるように外の世界を求めるようになった。誰も居ない場所を探して独りで遊ぶようにもなった。
俺にとっては家も学校も息苦しい場所でしかなかった。ただ、母親の元に居る方が安心出来る分だけ反抗心に繋がらなかっただけの事だ。家に閉じ込められるのも嫌で、余計な言葉や本音は一切口にしなかった。家に帰るとテレビの前に座り込んでビデオばかりを観て過ごした。
そんな生活が俺を抑圧し続けた。俺の身体はどんどん強張り、表に出せない感情が心まで締めつけた。その反動が歪みに変わり、俺はますます心を閉ざすようになった。他人に対する恐怖心が強い拒絶に変わり、疎外感が周囲への反発を生み出した。常に孤独を感じながらも、独りで居る事しか出来なかった。
本当は、苦しくて辛くて泣きたかった。悲しくて寂しくて心が痛かった。常に、誰かに助けてもらいたいと思っていた。
それでも、周りから差し出される手を頑なに拒んだ。素直になれなくなっていた。子供なりの意地のようなものがあった。
そして、全てが偽りのように感じられた。学校という箱の中で形式的に行われる義務教育というものが苦痛で恨めしく思えた。本当の意味で俺を理解してくれる人間など一人も居なかったからだ。
俺は味方が欲しかった。自分を救ってくれる正義の味方だ。そして、俺自身もそうなりたいと願った。自分が正義の味方になれば悪い奴等をやっつけられるからだ。
だが、現実はそうではなかった。
生まれながらに身体が弱くて小さい俺が強くなれるはずもなく、誰からも相手にされない惨めな人間である事に変わりはなかった。
そもそも、俺の存在自体が周りとは大きく違っていた。色素の抜けた身体は肌も髪の毛も目の色も違う。しかも、夏でも長袖に長ズボン姿で服装まで違う。集団の中に居ても自分だけが別物に思えた。自然と周りの視線が俺に集まる。それを恐怖に感じるだけに表情は強張り「笑わない人形」のようになる。遠巻きに見られるだけでなく、陰では「宇宙人」とまで言われていた。
子供というのは残酷なもので「心無い言葉」を平気で口にする。その当時、人気のあったヒーロー番組の影響だろう。登場する敵が「宇宙人」という設定だった。周りの奴等はそれを観て「自分達とは違う」という単純な理由だけで蔑視する。子供の冗談や戯言にしても俺は酷く傷付いた。怒りや憎しみさえ感じるほどだった。人間嫌いになるのも当然だ。
ただ、直接的なイジメは無かった。気味悪がって近寄らないといった感じだった。勿論、俺から近付く事も無いので子供同士のケンカにもならない。
そうやって、俺は孤独になって行った。自ら選択した訳ではない。そうなるしか道が無かった。
それでも、幼い頃は少なからず夢や憧れや希望もあった。幻想と現実の区別も曖昧な年齢だ。一般的には「想像力を膨らませる年代」でもある。その点で言うなら、俺も普通の子供だった。周りとは違っていても、決して「欠陥品」などではない。
「銀河戦士バロン」に夢中になったのも幼心の表れだ。あの頃の俺には唯一の「心の拠り所」でもあった気がする…。
「幼少期の記憶」など有って無いようなものだと思っていたが、こうして振り返ってみれば皮肉なものだ。俺が「宇宙人」などと言われながらも、自分が「銀河戦士バロン」にハマっていたのだから笑える。いや、いっその事「本物の宇宙人」だった方がマシだったかもしれない。
アニメなど見知らぬ人間の「空想世界」の作り話だ。しかも、宇宙人などよくある設定だ。敵にするなら宇宙人が最適!もしくは「最敵!」といったところだろう。安直な地球人類の考えそうな事だ。
……あれ?
そうなると、俺は本当に宇宙人なのか…?
……おや?
どうやら、頭の中が混乱し始めたらしい。独りで考え事をしていると頭の中の境界線が不明瞭になる。思考と現実が入り乱れる。こんな事は日常茶飯事だ。
……フン。
昔の事などどうでも良い。今に始まったことではない。
俺は子供の頃から「自分の世界」の中で生きて来た。今更、そのスタイルが変わる事はない。
言いたい事はそれだけだ。
さて…、そろそろ、本題に戻ろう。
そもそも、母親の子供として生まれた事が不幸の始まりだろう。何もかもが母親譲りで良い事など1つも無い。女に生まれていれば違ったのかもしれないが、男に生まれた俺には欠点としか言いようがない。しかも、与えられた人生に選択の余地はない。物心ついた頃には、抗いたくても抗えない「嫌な現実」があるだけだった。
それが今に繋がっているというだけの話だ。
俺が他人を避けるのも、警戒心が強いのも、今に始まったことではない。子供の頃からそうだった。いや、そうなるように育てられた。結論から言えば、親が与える影響は大きかったという事だ。
ちなみに言っておくが、俺は「マザコン」ではない。母親は優しかったが、俺の自由を奪った人間の1人だ。
小学校に入るまで外で遊んだ記憶は殆どない。出かける時は保護者付きで自由がない。庭先で遊ぶだけでも帽子や長袖を着せられて、日焼け止めクリームを身体中にベタベタと塗りたくられた。怪我をしてはいけないと言われて遊びも制限された。それが嫌で外に出る事も少なかった。部屋で大人しくしていれば母親が安心して口を出さない事も知った。そうやって、自分が自由で居られる方法を学んで行った。
小学生になると環境が大きく変わった。母親の手元を離れた俺を待ち構えていたのは「新たな人間の壁」だった。自由を手にする反面で、多くの人間に囲まれる恐怖を感じた。俺は、ただ黙って動けずにジッとしていた。人間共に囲まれた障壁の中は暗くて窮屈で苦しかった。やがて、そこから逃げるように外の世界を求めるようになった。誰も居ない場所を探して独りで遊ぶようにもなった。
俺にとっては家も学校も息苦しい場所でしかなかった。ただ、母親の元に居る方が安心出来る分だけ反抗心に繋がらなかっただけの事だ。家に閉じ込められるのも嫌で、余計な言葉や本音は一切口にしなかった。家に帰るとテレビの前に座り込んでビデオばかりを観て過ごした。
そんな生活が俺を抑圧し続けた。俺の身体はどんどん強張り、表に出せない感情が心まで締めつけた。その反動が歪みに変わり、俺はますます心を閉ざすようになった。他人に対する恐怖心が強い拒絶に変わり、疎外感が周囲への反発を生み出した。常に孤独を感じながらも、独りで居る事しか出来なかった。
本当は、苦しくて辛くて泣きたかった。悲しくて寂しくて心が痛かった。常に、誰かに助けてもらいたいと思っていた。
それでも、周りから差し出される手を頑なに拒んだ。素直になれなくなっていた。子供なりの意地のようなものがあった。
そして、全てが偽りのように感じられた。学校という箱の中で形式的に行われる義務教育というものが苦痛で恨めしく思えた。本当の意味で俺を理解してくれる人間など一人も居なかったからだ。
俺は味方が欲しかった。自分を救ってくれる正義の味方だ。そして、俺自身もそうなりたいと願った。自分が正義の味方になれば悪い奴等をやっつけられるからだ。
だが、現実はそうではなかった。
生まれながらに身体が弱くて小さい俺が強くなれるはずもなく、誰からも相手にされない惨めな人間である事に変わりはなかった。
そもそも、俺の存在自体が周りとは大きく違っていた。色素の抜けた身体は肌も髪の毛も目の色も違う。しかも、夏でも長袖に長ズボン姿で服装まで違う。集団の中に居ても自分だけが別物に思えた。自然と周りの視線が俺に集まる。それを恐怖に感じるだけに表情は強張り「笑わない人形」のようになる。遠巻きに見られるだけでなく、陰では「宇宙人」とまで言われていた。
子供というのは残酷なもので「心無い言葉」を平気で口にする。その当時、人気のあったヒーロー番組の影響だろう。登場する敵が「宇宙人」という設定だった。周りの奴等はそれを観て「自分達とは違う」という単純な理由だけで蔑視する。子供の冗談や戯言にしても俺は酷く傷付いた。怒りや憎しみさえ感じるほどだった。人間嫌いになるのも当然だ。
ただ、直接的なイジメは無かった。気味悪がって近寄らないといった感じだった。勿論、俺から近付く事も無いので子供同士のケンカにもならない。
そうやって、俺は孤独になって行った。自ら選択した訳ではない。そうなるしか道が無かった。
それでも、幼い頃は少なからず夢や憧れや希望もあった。幻想と現実の区別も曖昧な年齢だ。一般的には「想像力を膨らませる年代」でもある。その点で言うなら、俺も普通の子供だった。周りとは違っていても、決して「欠陥品」などではない。
「銀河戦士バロン」に夢中になったのも幼心の表れだ。あの頃の俺には唯一の「心の拠り所」でもあった気がする…。
「幼少期の記憶」など有って無いようなものだと思っていたが、こうして振り返ってみれば皮肉なものだ。俺が「宇宙人」などと言われながらも、自分が「銀河戦士バロン」にハマっていたのだから笑える。いや、いっその事「本物の宇宙人」だった方がマシだったかもしれない。
アニメなど見知らぬ人間の「空想世界」の作り話だ。しかも、宇宙人などよくある設定だ。敵にするなら宇宙人が最適!もしくは「最敵!」といったところだろう。安直な地球人類の考えそうな事だ。
……あれ?
そうなると、俺は本当に宇宙人なのか…?
……おや?
どうやら、頭の中が混乱し始めたらしい。独りで考え事をしていると頭の中の境界線が不明瞭になる。思考と現実が入り乱れる。こんな事は日常茶飯事だ。
……フン。
昔の事などどうでも良い。今に始まったことではない。
俺は子供の頃から「自分の世界」の中で生きて来た。今更、そのスタイルが変わる事はない。
言いたい事はそれだけだ。
さて…、そろそろ、本題に戻ろう。
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