俺達の行方【続編】

穂津見 乱

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特別な夜の始まり

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俺達はふざけ合いながら身体を洗う。お互いの身体を洗い流した後、向かい合った剛が俺を優しく抱き寄せて耳元で囁く。

「弘人、来てくれて有り難うな。今日だけは、俺達の特別な日……でもいいよな?」

その瞳が愛おしそうに俺を見つめる。

「……あぁ、そうだな。今日は…特別…。」

その言葉に胸がドキドキする。剛が愛おしくて、その首に腕をまわしてそっと口唇を寄せる。

ゆっくりと触れてくる剛の口唇、その柔らかな感触、ふわりと重ねられ優しく包み込んでくる。少し離れて俺の名を囁く。

「弘…人…。」

その熱い吐息と微かに触れる口唇が甘く優しく俺の口唇をくすぐる。
また、軽く重なり口唇をなぞってゆく。

「好き…だ…。」

愛おしそうに触れては離れ、またそっと触れてくる。
優しく触れながらも、俺を求めるような柔らかで甘いキス。触れられる度に心が震える。今までに何度となく重ね合わせた口唇だが、まるで初めてのようにドキドキして俺の口唇が小さく震える。

「弘人…、緊張してるのか?」

その囁きに目を開けると、間近にある瞳が優しく微笑む。俺の胸がキュンとなる。

「うん…、ちょっとだけ…な。」

俺は素直に答えていた。恥ずかしくなり目を伏せる。

「震えてる…。可愛いな。」

そう囁かれてますます恥ずかしくなる。それでも胸はキュンキュンとトキメいてしまう。直に触れ合う肌がますます熱くなる。もっと剛を感じたくてグッと抱きしめて身体を寄せる。

《なんかもどかしい…?》

浴室の床に向かい合って座り込んで抱き合っているのだが、お互いの足が邪魔で密着出来ないでいる。

「弘人、ちょっといいか?」

そう言うなり、剛が俺の左膝を抱え上げるようにして太腿の下に右足を滑り込ませてきた。そして、俺の右腿の上を軽く跨いだ左足で器用に俺の腰をグイッと引き寄せる。

「うわっ!ちょっと何?!」

あっと言う間に、お互いの足が交差するような格好で身体が密着する。

「これでいいだろ?」

剛がニヤリと笑って言う。まるで俺の心を読み取ったかのような素早い動きだった。

「お、おい!これは…ちょっと恥ずかしいだろ。」

「何で?俺は嬉しいけどな。」

「い、いや…、さすがに…。」

「何だよ?俺とお前しか居ないだろ?」

「そ、そうだけど…。」

「嫌なのか…?」

「い、いや…。モロに当たってるぞ。」

「……。……フフッ。」

恥ずかしさと戸惑いで慌てる俺とは反対に、落ち着いた素振りで答えている剛の股間…その身は熱く硬く欲情に身を起こしている。それが俺の下腹部を刺激しているのだ。

「何だよ。欲求不満は俺だけか…?」

剛が少し照れくさそうに笑って言う。

「いや…、そうじゃない。」

《まさか、抜きすぎたなんて言えないだろ~?!》

先程、剛を焦らして興奮して半勃ちにはなったものの、その後に落ち着いてしまっている俺の下半身。軽い疼きはあるものの…やはり抜きすぎた結果なのだろう。

「お前、俺に会えない間に抜きすぎただろ?」

「う、うるせぇ…。」

図星を突かれた恥ずかしさに顔が熱くなる。


「弘人…、ごめん。寂しい思いをさせたな。」

その優しい囁きに剛の想いが溶け込んで、俺の心に染み込んでくる。そして、俺の心が甘く解けてゆく。

「剛…。お前に会えない間、ずっと心配したんだぞ。それに、すげぇ寂しかったのは……本当だ。」

抱きしめる腕に力を込める。剛を目一杯に包み込んでやりたくて、恥ずかしさも戸惑いも何もかもが吹き飛んでゆく。

「俺もだ。すっげぇ寂しかった。お前に早く会いたくて…頑張ったんだぜ。ヨレヨレだけどな。」

剛が軽く笑う。

「俺が面倒みてやるよ。」

愛おしさが込み上げて、何でもしてやりたくなる。もしかして、俺は世話女房の素質があるのかもしれない。


見つめ合って口唇を重ねる。自然と絡み合う舌。お互いに相手を求めて深く強く吸い上げて絡めとる。脳も身体も熱く痺れる。息苦しくなって口唇を離しても剛の口唇が追いかけてくる。軽く吸い付き、舌を絡めとられ、吸い上げられ、歯を立ててくる。何度も吸い付いてくるその口唇は飽くことなく俺を求める。

濡れた口唇と絡み合う唾液が奏でる淫美な音だけが浴室内を埋め尽くしてゆく。それが俺の脳をますます刺激する。俺の舌も懸命に応えるが、剛の口づけは激しさを増すばかりだ。

「…うっ……んん…っ、んっ…」

知らず知らず俺の喉から漏れる小さな呻きが徐々に色めいて甘く響く。

どれぐらい口唇を重ね合わせていたのだろう…剛の口唇がゆっくりと離れる。お互いの熱い吐息がねっとりと絡み合う。

「はあぁ……ぁぁ…、あぁ……」

身体の力が抜けて微かに震えがくる。呼吸を整えようとして大きく息をすると、吐く息に混じって小さな喘ぎが漏れてしまう。心臓がドクドク、ドクドクと激しく鳴っている。
剛の呼吸も少し荒く、その胸の鼓動がドクン、ドクンと大きく伝わってくる。

「剛…。お前、激しすぎ。」

俺は首すじに顔を埋めてボソリと言う。まだ身体の震えが止まらない。

《ヤバイ…、こんなに激しいのは初めてだ。剛って…結構すげぇな》

「俺は、3日も抜いてない。欲求不満だからな。」

剛が軽い口調で笑って言う。俺が恥ずかしくないように空気を読んでくれているのだろう。それでも、俺をこんな風にした張本人でもある。ただ、このまま押し倒されたら抵抗出来そうにない。

攻めは剛の方が上手いのだ。変に挑発しようものなら、あの時のように力で圧し切られてしまいかねない。俺は甘んじてその気遣いを受ける。

激しいキスで俺の身体の奥が疼き始めている。剛のその身も、更に熱く硬さを増して下腹部を刺激してくる。それが俺の身体を余計に熱くさせる。

《さっき出したのにすげぇ…。もう、こんなになってんのか?!》

剛の興奮と熱い昂ぶりを感じるだけで俺の脳はビンビン刺激される。剛を感じさせて悦ばせたい。あの色気満載の表情や声を思う存分堪能したい。自分の腕の中で悶えさせたい。甘えるようにねだる姿を見たい。そんな俺の中の男の欲望が刺激されて膨れ上がる。
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