俺達の行方【続編】

穂津見 乱

文字の大きさ
14 / 106

いざ!出陣!

しおりを挟む
薄暗い剛の部屋。独りで待つ俺は何だか落ち着かない。

《マジで…これからやるのか…?!》

俺自身、いつかはそんな日が来るかもと夢みていた。だが、実際に剛から話を聞いてみて…そのリアルさに驚愕している。全くもって未知の領域すぎるのだ。
剛はそれを覚悟している。今、正に準備をしているのだ…。俺の心臓は変にドキドキし続ける。

「剛…、マジで大丈夫か…?」

不安になりドアの方に目をやる。何度も握り締める拳がジワリと汗ばむ。俺はかなり緊張している。

剛に言われた言葉を頭の中で繰り返す。そして俺なりに整理する。

男同士のセックスはケツに突っ込む、ケツは肛門、だから突っ込まれる方は準備が必要。その準備の内容までは話してくれなかったが、剛の「腹の中が空っぽ」という言葉の意味は…つまり、そういう事なのだ。そして、ケツの穴はキツイのでなじませて緩める。ローションとコンドームを使う。勃起してから指を入れて前立腺を刺激する。無理矢理挿れずゆっくりやる。どう考えても未知の世界だろ。

《なじませるとか…前立腺とか…分かんねぇ…?大体、ケツって緩むのか…?!でも、そう考えると色々と……》

俺なりに真面目に考えているものの、その内容はかなり凄い。独りで妙に恥ずかしくなったり、不安になったり、心配になったり、とにかく落ち着かない。そんな事を考えていると自分のお尻までモゾモゾしてくる。

「あ~~~!もう、考えたって分かんねぇ~!やってみないと分かんねえだろ?!」

ベッドにバタンと仰向けになって天井を見上げる。自分の部屋とは違う眺めだ。

《剛はいつもこんな感じで寝てるんだな…。俺の事を想いながらかな…?なんか照れるな~!……って、俺って変質者かよ…?!》

剛のベッドで剛を想う。何だか顔がニヤけてしまう。目を閉じると剛の匂いがする。幸せを感じる。


「…………弘……人………」

剛の声、低く優しく、甘くうっとり、そっと柔らかく、俺の名を呼ぶ。何だかとっても心地よくて温かい…。頬に触れる優しい手、髪の毛を撫でる指、凄く気持ち良くていい気分…。口唇に触れてくる…柔らかくて優しくて…何だか剛にキスされているみたいで嬉しい…。

《剛…?剛か……?なんだか剛に包まれているみたいだ…。俺、幸せ~!》

「………ん…、…んっ……、剛……あぁ…。」

「弘人…。」

耳元でハッキリ聞こえる剛の声にハッとして目を開ける。間近にある剛の顔、その瞳が優しく微笑んでいる。

「あ?!あれ…?剛、いつの間に?」

「お前、寝てて気付かなかったろ?……フフッ。幸せそうな顔してるから眺めてた。」

「あ…、やっぱり?俺、寝てた?悪い。」

「待たせたな。弘人…。」

「いや、お前が何か苦労してんのに…俺が寝てたなんてな。悪い!ごめんな。」

「正座して待たれてる方がヤバイだろ?」

「それもそうだな。」

2人で顔を見合わせて小さく笑う。何だか良い感じだ。うっかり眠ってしまっていた俺は、緊張も解けてリラックスしている。眠っている間に部屋に入って来た剛は、俺の隣に寄り添うように横たわっている。薄暗い部屋の中、幸せそうなその表情、俺の頬を優しく包み込む手の温かさ、触れ合う肌、ときめく胸…。

「剛、大丈夫か…?身体しんどくねぇか?」

そっと優しく剛の頬に触れる。

「ああ、大丈夫だ。」

剛の手が俺の手を包み込んでくる。愛おしそうに頬ずりして、俺の手にチュッとキスをする。何とも愛おしくなるその仕草に、俺はムラッとしてしまう。

「剛…!」

ガバッと起き上がり、剛の身体を下に引き込むように上になる。その瞳を見つめる。そっと口唇を重ねる。俺なりに目一杯の甘いキスをする。剛の甘い舌を舐め、その唾液まで堪能する。

《マジで…すげぇ甘いよな…》

剛は受け身で応えてくる。その口唇は俺のキスを欲しがっている。軽く開いた口唇、チラリと覗く舌、口唇を舐める仕草、小さく漏れる吐息、何もかもが色っぽい。その口唇に舌を這わせると、剛の舌先がそっと触れてくる。誘うように開く口唇、もっと奥まで入れて欲しいとせがむように俺を誘う。俺は何度も応えて口唇を重ねる。

剛は俺とキスをしたがる。勿論、俺もしたいのだが…自分からは恥ずかしくてなかなか出来ないのだ。いつも、剛にリードされている。迫ってきたり、挑発してきたり、甘えてきたりする。俺は、甘えられるのが一番嬉しい。

最近、剛はよく甘えてくるようになった。ふざけるのは以前からだが、甘えるような奴ではなかった。そして、その甘え方が板についてきている。

《剛は、俺のツボを押さえている!》


いつしか溶け合うように馴染んだ口唇と舌。剛の甘い吐息が漏れる。額、頬、耳元、首すじに愛おしくキスをする。

「剛…?マジで、大丈夫か…?」

やはり心配になる。耳元で小さく訊ねる。

「心配するな。お前のキスで興奮してる。」

低く甘い声、優しい含み笑い。

「剛、お前の身体が心配だ。変に我慢するなよ…?何でも言えよ。」

「あぁ、そうする。」

今度は、素直に答えてクスリと笑う。

愛おしいその身体に触れるのはあの日以来だ。あの時は緊張しすぎて無我夢中だった。剛が興奮している事にも気付かないぐらいだった。俺の攻めのテクニックは相変わらずだろうが、今の俺は何よりも剛を大切に愛おしく想う。その身体を優しく労ってやりたい。愛おしく触れたい。感じさせたい。剛の気持ちに応えたいのだ。

俺達の記念すべき初体験だ。他の奴等とは違う凄い体験だろう。それは、俺以上に剛の方が感じているはずだ。その覚悟を決めた剛の為にも、俺は慎重にやらなければならない。

「弘人、これ先に渡しておく。」

剛が枕の下から何かを取り出してコッソリと俺に手渡した。チラリと手元を見る。片手サイズの小さなプラボトルとコンドームが数個。その感触に改めてリアルさを感じてしまう。

コンドームは見た事がある。使い方は達兄から直伝されている。あの頃の達兄は俺と同じ年齢だった。つまり、高2で経験済みだったという事になる。

《恐るべし!達兄!そして感謝!》

剛とバチンと目が合ってしまった。お互いに恥ずかしさを感じて視線を外す。僅かに緊張が走る。剛の身体からもそれを感じる。初々しいカップルみたいでドキドキが増す。

《剛も緊張してる。俺がしっかりリードしないとな!》

俺は自分に気合いを入れる。逆効果で余計に緊張してしまう。心臓がドクン、ドクンと大きく胸を打つ。ゆっくり深呼吸して落ち着ける。

まだドキドキする胸。ゴクンと唾を飲み込む。

「剛…。」

愛おしい名を呼び剛の瞳をジッと見つめる。

「弘人…。」

その瞳がゆらめいて俺を見つめ返してくる。そして、ゆっくりと閉じる瞼、長い睫毛、薄く開いた口唇が俺を甘く誘う。

《いざ!出陣!》

しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

BL 男達の性事情

蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。 漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。 漁師の仕事は多岐にわたる。 例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。 陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、 多彩だ。 漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。 漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。 養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。 陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。 漁業の種類と言われる仕事がある。 漁師の仕事だ。 仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。 沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。 日本の漁師の多くがこの形態なのだ。 沖合(近海)漁業という仕事もある。 沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。 遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。 内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。 漁師の働き方は、さまざま。 漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。 出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。 休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。 個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。 漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。 専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。 資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。 漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。 食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。 地域との連携も必要である。 沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。 この物語の主人公は極楽翔太。18歳。 翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。 もう一人の主人公は木下英二。28歳。 地元で料理旅館を経営するオーナー。 翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。 この物語の始まりである。 この物語はフィクションです。 この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

俺の親友がモテ過ぎて困る

くるむ
BL
☆完結済みです☆ 番外編として短い話を追加しました。 男子校なのに、当たり前のように毎日誰かに「好きだ」とか「付き合ってくれ」とか言われている俺の親友、結城陽翔(ゆうきはるひ) 中学の時も全く同じ状況で、女子からも男子からも追い掛け回されていたらしい。 一時は断るのも面倒くさくて、誰とも付き合っていなければそのままOKしていたらしいのだけど、それはそれでまた面倒くさくて仕方がなかったのだそうだ(ソリャソウダロ) ……と言う訳で、何を考えたのか陽翔の奴、俺に恋人のフリをしてくれと言う。 て、お前何考えてんの? 何しようとしてんの? ……てなわけで、俺は今日もこいつに振り回されています……。 美形策士×純情平凡♪

処理中です...