《急募》ヴィランから身を守る方法!!

亡羊ちろり

文字の大きさ
6 / 11
転生した

契約

しおりを挟む
「いいけど、いったい何をするつもりなんだ?」
「見てればわかるさ」
それだけ言うと俺はベッドの端に腰掛け目を閉じた。周りの音に耳を澄ましながら自分の心臓のあたりに意識を集中させる。確か、自分の中のオーラのようなものを解き放つようなイメージ、だったよな。
するとどこか遠くで魂と共鳴するような反応があった。よし、ビンゴ。俺は見えない糸を手繰り寄せるように、小さく瞬く光みたいなそれを自分の方へ引っ張ってくる。
「出てこい!」
叫ぶと同時に辺りが強い光で包まれた。
「おい、あんた…!?」
ランディーの焦ったような声が聞こえる。
『ずいぶん常識破りな召喚もあったものだな』
直接頭に響くような声が聞こえてきて、そっと目を開けると、そこには光輝く鳥がいた。
おぉ、と思わず声が漏れる。
「まさかそれ…」
異変に駆けつけようとしたらしいランディーがあんぐりと口を開けているのが見えた。俺はこくりと頷く。
「そう、精霊だ」
やった!一か八かで試してみたけど、精霊の召喚に成功したぞ!内心ガッツポーズを決める俺に鳥の形をした精霊はバサバサと羽ばたいた。
『もしかして、と思ったが。お主、何やら奇妙なことになっているではないか』
「やっぱり俺の状態がわかるのか?」
期待をこめて聞くと精霊はうむ、と肯定した。
『魂が入れ替わっておる。が、一部融合しているな』
融合、とはどういうことだろう。アシュリーの魂とくっついたってことか?
頭の中がハテナで埋まる俺にランディーが精霊を指して聞いてきた。
「精霊さん、なんて言ってるんだ?」
「え、聞こえないのか?」
『契約してもいない我と意思疎通ができるのは、親和力が高いお主が為せるわざだ。それに大精霊でもない限り普通の精霊は会話を不得意とすることもあるからな』
呆れたように精霊が説明する。そうだったのか。納得した俺はランディーに後で要約するからちょっと待ってと伝えた。それから目の前の精霊に向き直る。
「俺、お前と契約したいんだけど」
精霊はふむ、と思索するような素振りを見せた。
『それは構わないが。新たに名前が必要になるな』
名前。いまいち理解できていない俺に精霊は「まずは状況を整理しよう」とサイドテーブルに舞い降りた。

この精霊は、アシュリーが原作で契約を交わした精霊である。原作で主人公とアシュリーは聖遺物を探しに古代文明に赴く。しかし星国の調査隊と鉢合わせてしまい、さらには星国に囚われているアステリアの民の力で結界の中に閉じ込められてしまう。絶体絶命かと思われたその時、アシュリーが魔力暴走を引き起こして敵の注意を引きつけている隙に契約した精霊で主人公を外に逃すのだ。普通結界スキルを持つ者の管理下から勝手に抜け出すことはできないが、この世界の事象に人間よりも干渉できる精霊がいたことと、アシュリーを囮にした作戦が功を成したことで主人公は大きな怪我もなく生き残る。主人公は結界の外で急いで助けを求めるがその奮闘も虚しくアシュリーは魔力暴走の反動と敵の攻撃により亡くなり、その事件は主人公の心に大きな影を落とすことになる。ここの場面は原作でも見どころのあるシーンのひとつで、徐々に主人公に心を開きつつあったアシュリーの死にコメント欄は阿鼻叫喚だった。
で、だ。「かながい」では物語の終盤主人公が「回帰タイムリープ」のスキルを覚醒し何度も時間の巻き戻しを行う。しかし大切な人たちの死の前までは時を戻すことができず、さらにタイムリープを繰り返す度に制限が強くなったり自分の居場所や状態が筒抜けになって星皇側に有利になってしまうという悪循環から抜け出せなくなる。結局主人公はアシュリーを殺した敵の助力によって星皇に打ち勝ち物語に終止符を打つことになるのだ。
しかし転生前のアシュリーの話によると、原作の結末の後主人公は大幅に時を巻き戻したらしい。「次はない」と言っていたから大方を使ったんだろう。なので今俺がアシュリーに転生している時間軸は原作の後、つまり「回帰タイムリープ」を繰り返した後にあるということになる。わかりにくいけど。
そのことを精霊に確認すると精霊は「そうらしいな」と同意した。
「我ら精霊は人間とはまた別の時空に存在するものが故に、世界の巻き戻しが行われたことは自覚できるのだ」
その本人に親和力がなかったために接触することは叶わなかったがな、と精霊は少し寂しそうに言う。だから、と続けた。
『お主の身体の持ち主は今この時点では我とまだ契約をしていないことになる』
「時間を巻き戻す前にアシュリーがつけていた名前じゃ駄目なのか?」
確かアシュリーはこの精霊を「オルニス」と呼んでいた気がする。精霊は「ならぬ」と首を振った。
『お主の今の魂と結びつける必要があるのだ』
どうやら今回はかろうじてこの身体と精霊を結んでいた繋がりを辿ってきたのだそうだ。
それにしても、うーん。名前かぁ。俺、あんまり横文字の名前考えるの得意じゃないんだよな。
うんうんと悩む俺に精霊は優しく語りかけた。
『お主が分かりやすい名前にするのがいちばんだ。名を呼ぶ気持ちがこもりやすいほど、我らの繋がりは強くなるのだからな』
精霊は人間にあまり関心がないって思ってたけど、この精霊からは俺に寄せる気遣いのようなものを感じる。転生してすぐにランディーの殺気に晒された俺にはかなり沁みるものがあるんだよなぁ。精霊の言葉に背中を押され、俺は「よし。決めた」と顔を上げた。
千鳥ちどり。お前の名前は千鳥だ」
精霊は『チドリ…。不思議な響きだな。だが、良い名だ』と呟きパタパタと俺の目線まで飛んだ。
『我、千鳥はアシュリーと契約を結ぶことをここに宣言する』
精霊…千鳥がそう言い終えると強い光が千鳥を包み込む。
「え、契約成功したのか?」
俺と千鳥のやり取りを黙って見ていたランディーが口を挟んでくる。
「あぁ」
俺は確かに千鳥と自分の間にしっかりとした繋がりが結ばれたのを感じていた。
契約前よりも輪郭が明確になった千鳥が「久しいな」とランディーの方を見て言った。
「こ、声が聞こえる!本当に成功したのか!」
驚きながらも会ったことあったっけ?と不思議そうにするランディーにさっきのやり取りを説明する。
「ってことは、今朝あんたが言ってた話も本当だったのか?」
精霊が嘘をつくはずないし…とぶつぶつ言うランディーに確かに精霊を介して俺の主張の信憑性を証明する手もあったか、と思い至った。もうセドリック呼び寄せちゃったけど。
「そうだ、千鳥。精霊だってわからないように普通の鳥に変身することはできるか?」
見るからに精霊です、って見た目だといろいろ困るのでせめて使い魔的な感じにしたい。
俺リクエストに千鳥は『お安い御用だ』と言いポンッと青と紫色の羽が綺麗な小さい鳥になってみせた。そのまま俺の肩にとまる千鳥を見ながら、ランディーは何やら考え込んでいる。
俺はその後しばらく初めての契約に成功した興奮のまま千鳥といくつか精霊魔法を試していた。
「失礼、します」
お昼頃サンディーが今度は普通にドアから入ってきて、セドリックと連絡が取れたこと、今皇都にいるため到着するのは早くても3日後になりそうなことを伝えた。
「そうか、ありがとう。今回の任務は一週間ほどみておきたいから、あまり急がず道中気をつけて来るように伝えておいてくれないか?」
サンディーはこくりと頷きすぐ出て行こうとしたので、ついでにいくつか調達してほしいものを頼んでおく。
ランディーは俺の言うことをリストに書き留めながら首を傾げた。
「今回の任務には必要ないものが多くないか?」
「いや、どれも必要だ」
せっかく公爵城を離れる口実ができたんだ。やれるだけのことはやっておきたい。
そこで俺は今回の作戦を二人に共有した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

神様は身バレに気づかない!

みわ
BL
異世界ファンタジーBL 「神様、身バレしてますよ?」 ――暇を持て余した神様、現在お忍び異世界生活中。 貴族の令息として“普通”に暮らしているつもりのようですが、 その振る舞い、力、言動、すべてが神様クオリティ。 ……気づかれていないと思っているのは、本人だけ。 けれど誰も問いただせません。 もし“正体がバレた”と気づかれたら―― 神様は天へ帰ってしまうかもしれないから。 だから今日も皆、知らないふりを続けます。 そんな神様に、突然舞い込む婚約話。 お相手は、聡明で誠実……なのにシオンにだけは甘すぎる第一王子!? 「溺愛王子×お忍び(になってない)神様」 正体バレバレの異世界転生コメディ、ここに開幕!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件

碧月 晶
BL
さっきまでコンビニに向かっていたはずだったのに、何故か目が覚めたら病院にいた『俺』。 状況が分からず戸惑う『俺』は窓に映った自分の顔を見て驚いた。 「これ…俺、なのか?」 何故ならそこには、恐ろしく整った顔立ちの男が映っていたのだから。 《これは、現代魔法社会系BLゲームの主人公『石留 椿【いしどめ つばき】(16)』に転生しちゃった元平凡男子(享年18)が攻略対象たちと出会い、様々なイベントを経て『運命の相手』を見つけるまでの物語である──。》 ──────────── ~お知らせ~ ※第3話を少し修正しました。 ※第5話を少し修正しました。 ※第6話を少し修正しました。 ※第11話を少し修正しました。 ※第19話を少し修正しました。 ※第22話を少し修正しました。 ※第24話を少し修正しました。 ※第25話を少し修正しました。 ※第26話を少し修正しました。 ※第31話を少し修正しました。 ※第32話を少し修正しました。 ※第33話を少し修正しました。 ──────────── ※感想(一言だけでも構いません!)、いいね、お気に入り、近況ボードへのコメント、大歓迎です!! ※表紙絵は作者が生成AIで試しに作ってみたものです。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される

マンスーン
BL
​王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。 泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。

乙女ゲームのサポートメガネキャラに転生しました

西楓
BL
乙女ゲームのサポートキャラとして転生した俺は、ヒロインと攻略対象を無事くっつけることが出来るだろうか。どうやらヒロインの様子が違うような。距離の近いヒロインに徐々に不信感を抱く攻略対象。何故か攻略対象が接近してきて… ほのほのです。 ※有難いことに別サイトでその後の話をご希望されました(嬉しい😆)ので追加いたしました。

【完結】悪役令息の従者に転職しました

  *  ゆるゆ
BL
暗殺者なのに無様な失敗で死にそうになった俺をたすけてくれたのは、BLゲームで、どのルートでも殺されて悲惨な最期を迎える悪役令息でした。 依頼人には死んだことにして、悪役令息の従者に転職しました。 皆でしあわせになるために、あるじと一緒にがんばるよ! 透夜×ロロァのお話です。 本編完結、『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく舞踏会編、完結しました! 時々おまけを更新するかもです。 『悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?』のカイの師匠も 『悪役令息の伴侶(予定)に転生しました』のトマの師匠も、このお話の主人公、透夜です!(笑) 大陸中に、かっこいー激つよ従僕たちを輸出して、悪役令息たちをたすける透夜(笑) 名前が  *   ゆるゆ  になりました。 これからもどうぞよろしくお願い致します! 表紙や動画はAIを使用していますが、文章にはAIを一切使用しておりません。

虚ろな檻と翡翠の魔石

篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」 不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。 待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。 しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。 「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」 記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。

処理中です...