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初めての任務、そして邂逅
リトス鉱山の裏側
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「何者だ?」
エリカがスッと俺と青年の間に立ちはだかる。
青年はよほど急いできたのか息を切らしながら頭を下げた。
「失礼いたしました!わ、私はコールという者です」
引き締まった身体は健康的に見えるが、くたびれた服や所々汚れているところを見るとあまり良い生活はできていないみたいだ。
「チェンバレン公爵家の方がいらしていると聞いたのですが、御二方でお間違いないでしょうか…?」
おずおずと訊ねるコールと名乗った青年に敵意がないことを確認するとエリカうむ、と答えた。
「そうだ。任務の一環で鉱山の視察に来た」
青年はその言葉に一縷の望みをかけるような顔で頼みこむ。
「私は、この鉱山で起こっている問題を告発しに参りました!どうか我々を助けてください…!」
お願いします!と地面に額がつきそうなほどに頭を下げるコールを見下ろしながら、エリカは腕を組んだ。
「先程も助けてくれと言っていたな。いいだろう、話を聞こうか」
己の言葉に責任を持てるか?と問うエリカにコールは覚悟を決めたような表情ではい、と力強く頷いた。
「まずご案内したい場所がございます」
コールは鉱山の採掘場から離れて、管理事務所のある方には向かわずに脇の山道へと入っていく。あまり人の手が入っていなさそうな周りの様子を見回しながら俺は任務前に調べたことを思い返した。
ステラではあまり大規模に開発を進めると精霊が起こって災害を起こすので必要以上に自然を破壊するような行為はしないことが暗黙の了解となっている。リトス鉱山も地球に比べると必要最低限の整備しかされていないように思うし、採掘も埋蔵量がすぐに底を尽きるようなペースでは行われていない。そもそもこの辺り一帯はマナ溜まりといって自然由来のマナが多く発生し留まっている場所であるため、マナが結晶化し魔石ができる速度が通常よりも早く滅多に資源が枯渇することはないのだが。
「私はこの鉱山に来てまだ半年も経っていないのですが…」
そう切り出したコールは静かに話し始めた。
リトス鉱山は昔から良質な魔石が継続して採れることからその歴史は古く、シュテンベルクの住民にとって身近な存在だったらしい。しかしマナ溜まりでもあるこの鉱山では、長く作業を続けると生まれつきマナの保有量が少なかったりマナへの耐性がない者はマナ中毒で倒れることがあるという。そのため労働時間や手当が細かく定められており定期的な診断を受けることが義務付けられている。ところが5年ほど前、最高責任者にジミーが就いてからはそのマニュアルを無視した行為が続くようになった。鉱山労働者は粗末に扱われ、逆らうと食事を抜かれたり給料が減らされる。鉱山では犯罪を犯した者が刑罰として奉仕活動を行っている場合も多く、そういった者はどうしても立場が強くない。ストライキを起こそうにも次々とマナ中毒で倒れていくためまともに団結できないときた。負傷したり死亡した労働者のことは報告しなければならない、つまりやらかしがバレるのでジミーは働けなくなった者は解雇して次々と追い出しまた新たに労働者を雇うという手口で鉱山を経営しているらしい。しかも最近は刑に服している連中の一部が山賊に身を窶して周辺の村や田畑を襲い、財産を失くした者を最低条件で雇い労働者の数を補っているみたいだ。
「アイツらはジミーと結託して、お互いに賄賂を受け取っているという噂もあります」
忌々しげに話すコールにエリカが納得したように頷いた。
「刑罰を受けた者は服役期間中は逃げられないからな。なんとか生き延びる方法を選択したのだろう」
エリカは考え込むように顎に手を当てる。
「近頃増えていた山賊被害ではあまり商団が襲われていなかったのが疑問だったんだ。それに、やけに鉱山労働者出身の者が多かったのが気になっていた」
「山賊が討伐されたという話は聞きましたが、公女様のおかげだったんですね!」
コールは嬉しそうに言うとこちらです、と粗末な山小屋のような建物に俺たちを案内した。ログハウスのような見た目だけど、手入れされてないのかかなりボロボロだ。
中に入ると床に敷かれたシーツのような布の上に沢山の人が横たわっていた。みんないかにも重病患者といった様子で、その合間を慌ただしく俺と同い年くらいの少年が走り回って看病している。
「これは…!」
思わず目を見張る俺たちにコールが悔しそうにギュッと拳を握る。
「マナ中毒で倒れた労働者たちです」
エリカは近くの患者に駆け寄ると簡単に診察していき、軽くため息を吐いた。
「これは一刻を争うかもしれない」
本来は同意を得てから行うべきなのだが、と心臓の辺りに手を置く。パアッと青白く光りエリカと患者の間をマナが循環するその治療行為は…。
「マナドレイン…!」
マナが極度に枯渇したり強いマナに当てられて中毒症状を起こした時などに、相手のマナに干渉してマナを調節したり直接マナのやり取りをする行為だ。相手のマナを奪ったりなどの攻撃手段にも使えないこともないが、自分も深刻なダメージを負う可能性があるので魔法士が使う場合ほとんどが治療目的となる。専門の医者でも難しいと言われているほど高度な技術を必要とするマナドレインを、まさかエリカも使えるとは。我が姉ながらハイスペックすぎではないだろうか。
感心する俺の横で、コールが驚いたように見つめている。
しばらくして光が収まると、苦しそうに呻いていた患者の意識が戻った。
「ここ、は…?」
「サム!目を覚ましたのか!!」
「その声はコール、か?」
「あぁ!よかった、もう助からないかと…!」
サムと呼ばれた男性の手を両手で握りながらコールは泣き崩れた。
なんか邪魔しちゃいけないような雰囲気なのでじっと手のひらを見つめるエリカの傍に近寄る。エリカは複雑そうな顔でコールたちの方を見た。
「かなり重症だった。あと数日手当てが遅れていたら助かる確率が下がっていたかもしれない」
「これは調査が必要そうですね」
「あぁ」
手ぬぐいやたらいを持ってたたた、と少年が駆け寄ってくる。
「お兄ちゃん!」
コールは泣き止んで少年の頭を撫でた。
「コレット!看病ありがとな」
どうやら兄弟らしい。ふと疑問に思って聞いてみる。
「コールやコレットたちは平気なのか?」
コールはあぁ、と答えた。
「俺たちは人よりもマナが多くて耐性がある方なので。周囲のマナを取り込んで錬成することもできるのでむしろ居心地がいいくらいです。マナドレインまではできませんが…」
エリカは観察してわかっていたらしい。一流の魔法士は放出するマナをコントロールしたり相手のマナの量や状態を測れるらしいが、エリカにとってはそれくらい朝飯前なのだろう。
取り急ぎ治療が必要そうな者をエリカが診て回っていく。俺は治療に関してはできることがないのでいったん外に出た。雑草が生い茂った小屋の裏手に出て、先程から俺をつついていた千鳥にどうしたんだ?と聞いてみる。
『精霊召喚を行なってみるとよい。そなたと接触したがっている精霊がおる』
「え、そうなの?」
全然わからなかった。でも確かに、親和力に意識を向けると何かが俺に触れようとするような感覚がある。その気配に集中してやや小声で詠唱を唱えてみた。
「ーー精霊召喚!!」
お決まりの演出の後目を開けるが、精霊らしき姿は見えない。
「あれ?失敗したかな。確かに感覚はあったはずなんだけど…」
きょろきょろと周りを見回す俺に千鳥が『そこにおるぞ』と前を指す。
『あ、あのぅ…』
おどおどとした声が聞こえて目を凝らすと、確かに淡く光る何かがそこにあった。お化けやスライムのようなフォルムだ。
「あ、ごめん気づかなかった」
思わず影の薄いクラスメイトに謝るような感じで言うと宙に浮く気体のような精霊は明らかに落ち込む。
『よく言われますぅ。こちらこそ存在感なくてごめんなさぁい…』
なんか、だいぶ性格に個性がありそうだな。
「俺はアシュリーといいます。千鳥に契約してない精霊とは普通話せないと聞いた覚えがあるのですが…。あなたはもしかして大精霊ですか?」
聞いてみると精霊はひぃっと飛び上がった。…元々浮いてるけど、輪郭がピャッと揺れ動いた感じだ。
『そ、そんな、私が大精霊なんて畏れ多い!私は矮小で平凡などこにでもいる精霊ですうぅ!!私はマナの操作くらいしか取り柄がないのであなたとマナの波長を合わせて会話しているだけです…。どうか敬語もやめてください、私はそんな身分じゃないので!』
「あ、そうなんだ。それで、なんで俺に接触しようと思ったんだ?」
要望通りに口調を戻すと何故か精霊は『切り替えが早い!陽キャだぁ…』と呟きながら説明してくれた。
『私は少し前からこの鉱山に棲みついていて、高濃度のマナに浸ってこれはいい場所を見つけたぞと喜んでいたんです。だけど最近マナ中毒を起こす人間が増えたのが気になって…。なんとかできないものかと考えたのですが、大精霊様たちと違って私は契約者なしに人間に干渉することはおろかまともに自然の事象にも介入できないので、山小屋の付近だけほんの少ぉしマナ濃度を低くして有害な成分を取り除いたんです。でも焼け石に水でしかなくて困っていたところにあなたが来て…。歩く精霊灯みたいなあなたに取り入らない手はないと思い接触を試みた次第ですぅ』
「そこまで人間を気にかけてくれていたんだな」
感心したように言う俺に精霊は違うんですぅ!と悲鳴まじりに否定する。
『精霊が棲みつくと、その地の自然は活性化します。精霊は自然を好み自然と共に生きるので存在するだけでそういう現象が起こるんですぅ。つまりマナ溜まりのこの鉱山に私が棲みついたことで、より普通の人間たちには過酷な環境になってしまったんですよおぉ…』
「そういうことか」
マニュアルを無視して働かせていたとはいえどうして最近いきなりマナ中毒者が増えたのか気になっていたが、そんな背景があったとはな。
『すみませぇん!あまりにも居心地が良くて離れる決心もつかず…。どうか命だけはあぁ!!』
「いや、精霊は殺せないし。マナが増えること自体は悪いことじゃないぞ、質の良い魔石がすぐできるからな」
『それはそうですけどぉ』
涙声の精霊にそれに、と俺は続ける。
「人間が魔石という自然の産物の恩恵にあやかっているだけから精霊側に責任はない。共存できる道も探せばあるはずだ」
『うぅ、精霊士は優しい人が多いという噂は本当だったんですねぇ…。聖人のようなお方ですぅ!』
そんな大層なことを言った覚えはないが、俺は痛く感動している様子の精霊に聞いてみた。
「それで、君はどうしたいんだ?」
精霊はおずおずと答える。
『も、もしよろしければ、私と契約してくださらないかなぁと…。そしたら少しはお力になれることもあるのではないかと思いますぅ。で、でも私のような卑屈で惰弱な精霊なんかと契約してくださる方なんていないですよね…。貴重な親和力をこんな私に使っていただくなんて考えただけでも申し訳なさすぎて消えてしまいそうですぅ!やっぱりこの話はなしでおねが』
「いいぞ」
『ひぇっ!え、いいんですか?本当に後悔しません?』
「あぁ。俺も契約したいと思っていたし。多分俺たちは相性も悪くなさそうだから上手くやれると思う」
好都合だ、と笑いかけるとなぜか精霊は少し距離を取った。
『またそういう勘違いさせるようなことを…』
「…?」
『そこはちゃんと鈍感系主人公なんですね!』
ゼェハァとツッコミ疲れから息を荒げる精霊に俺は向き直る。
「マナの操作の他にはどんなことが得意なんだ?」
『わ、私は霧を出すのが得意ですぅ。対象の構成要素を弄るのも好きではあるんですけど、好みの成分を霧状に噴射するのはそれはもう、気持ちがよくって…。すみませんすみません、捕まえないでくださいぃ!』
「俺は何も言ってないぞ。それにしても、霧か…」
名前どうしよう、と考え込む俺に精霊はおろおろと俺の周りを彷徨った。
『こんな霧を出すことしか脳がない変態なんて必要ないですよね…。親和力の無駄遣いですし…』
「決めた」
『はいぃ!やっぱりダメですかぁ?!』
「いや、君の名前だ。秋霧、なんてどうだろう。俺の故郷の国では昔春は霞、秋は霧という伝統的な風物美があったからそれにちなんだ名前にしたんだけど…。秋の霧のように美しい君が思うままに力を使えるように、という意味も込めてみた。どう、かな?」
名前をつけるのってなんか恥ずかしくて慣れないな。子どもの名前を考えるのに迷走する理由が少しわかった気がする。
ちょっとした羞恥と闘いながら問う俺に精霊はふるふると震えた。
『私にはもったいない名前ですうぅ!こんな、こんな良い名前をいただける日が来るなんて長生きした甲斐がありますね…!』
「よかった。君はとても魅力的な精霊だから、あまり自分を卑下しないで」
俺にとって精霊はこの世界を生きていく上で大事な存在だからな。そういう意味も込めて伝えると精霊はしゅうと萎んだ。
『私、やっぱり口説かれてます…?いけないいけない、勘違いしたら後で辛くなるのは自分ですから…!』
ぶつぶつと呟く精霊に千鳥が『こやつはいつもこの調子だぞ。それより契約するなら早くした方がいい』と促す。
『そ、そうですね!それでは…。私、秋霧はアシュリーと契約を結ぶことをここに宣言します!』
精霊、秋霧がそう言った途端また明るくなり、親和力を通して秋霧との間に何かが結ばれたのを感じた。精霊との繋がりができるのは、ひとりじゃないって実感できてけっこう心の支えになるんだよな。
『この胸が温かい感じ…。これがアシュリー様の親和力なのですね!とても心地いいですぅ!』
どこに胸があるのかということは置いておいて、さっき紺珠も契約した後似たようなことを言っていたな。てっきり契約は精霊を「縛る」ものだと思っていたが違うのだろうか。後で聞いてみよう。
「さっそくで悪いんだけど、この周辺のマナをさらに薄くすることはできる?」
『お安い御用ですぅ!鎮静効果のある成分も撒いておきますね!』
秋霧がすうっと空を舞うように動くとそれまで感じていたマナの圧迫感が減り、山小屋を包むように微細な霧が発生した。想像以上の有能さだ。
俺は秋霧にお礼を言い、いったん召喚を止めて精霊界に返す。俺の親和力が無尽蔵並みとはいえずっと召喚し続けるのも不安だし、いざという時に召喚できなくなるのは避けたいからな。千鳥は必要な親和力が少ないし伝令とかもしてもらうので基本的にずっとこっちに留めている。精霊とかの性質によってそこら辺も相談する必要があるみたいだけど。
扉を開けると、大方エリカによる治療は終わったようで、体を起こしたり意識を戻している人が増えていた。
「戻ったか」
数十人のマナドレインを行うのはさすがにエリカも疲れたのだろう、椅子に座って休憩している。俺はエリカにさっき秋霧に聞いたことを耳打ちした。ついでにこの山小屋のマナ濃度を調節したことも伝える。
「なるほどな。これで調査の手間がひとつ省けた。私だけでは知り得なかった情報だ。よくやった、アシュリー」
エリカは微笑むと俺の頭を撫でた後、「すまない。子ども扱いしてしまった」と顔を逸らした。
「いえ、エリカお姉様に褒めていただけてとても嬉しいです」
もっと撫でてくれてもいいんだぞ!上目遣いで見つめるが撫で撫での追加報酬はなかった。残念。
「それじゃあ、管理事務所に行こうか」
エリカは立ち上がるとコールを呼んで一緒に山小屋を出る。
「ジミーはどうしますか?」
「ジュディに伝えて取り押さえさせている。公爵家に移送してから調査と裁判を行う予定だ。アシュリー、君の任務だから取り調べは君が行うといい」
「わかりました。ありがとうございます」
時々マナを飛ばしていると思ったらジュディに合図を出してたのか。手柄も譲ってくれるあたり優しい。さすが俺の推しだ。
3人で管理事務所の方に行くと入り口付近で縛って転がされているジミーがいた。
「アシュリー様!この者がいきなりこのような真似を!早く解放してくだせぇ!!」
俺を見るなり叫ぶジミーは後ろのコールを見てクワッと怒鳴る。
「貴様!何故ここにいる!今日は非番のはずだろう!」
俺はビクッと反応するコールを庇うように前に出るとジミーの方に歩み寄った。
「コールからあなたが行いについては聞きました。あれほどのマナ中毒者を放置して、公爵家には何の報告もしていなかったのですか?」
「まさか、あの山小屋を見たんですかい?!」
「質問に答えろ」
喚くジミーをエリカがすかさず睨みつける。
「あ、あしは、マニュアル通りの労働しかさせていやせん!最近あまりにも早く倒れるもんんだからきっと仮病でも使ったのだろうと…!」
「彼らは深刻な状態でした。マナ量が増えてマナ中毒者が出たこと自体はあなたのせいじゃないかもしれませんが、報告を怠ったことは立派な規約違反です。それとあなたには労働者に対するハラスメントや山賊との癒着の疑いがあります」
「ご、誤解でごぜぇやす!そいつが、コールが仕組んだことに違いありやせん!」
悪役のお手本のようなセリフを言うジミーをジュディが冷たく見下ろす。
「実態は公爵家が調査します。協力的でない場合罪が増えるので正直に自白することをおすすめしますよ」
コールがそういえば、と思い出すように言った。
「昨日非番を言い渡された時に、どうせ女と子どもしか来ないから適当に誤魔化せと部下に命じていたのを聞きました」
「ほぉ…」
「へぇ…」
こいつ絶対許さねぇ。俺はまだしも、エリカを侮辱するやつには愚かな己の言動を後悔させてやる。オタクをなめるなよ。
「う、嘘でごぜぇやす!コールのでまかせに違いありません!!」
例文のように主張を繰り返すジミーを、俺とエリカは青筋を立てて瞰下する。
最後まで何やら叫んでいたジミーはジュディに引き摺られていった。シュテンベルクの市役所に牢屋があるのでそこに放り込みに行くのだろう。エリカに傾倒しているジュディに何もされなきゃいいけどな。公爵領では私刑は禁止されているので弁えてはいるだろうけど。
ジュディの往復を待つ間俺たちはできる調査をしておく。もう任務の範囲は超えているので後々派遣される公爵家の調査団に任せてもいいのだが、せっかくここまで来たんだし業績ポイント稼ぎをしておきたい。労働者たちのこともあるし。
エリカと労働者から聞き込みを行ったり備品や書類の確認をしたり、マナ中毒になったり怪我をした者、栄養失調などの労働者たちを馬車で近くの診療所に送ったりなどをしているうちにお昼を過ぎたらしい。
休憩を取りながら簡単な昼食をすませる俺の視界に飛竜が入ってきた。ジュディだろうか。もっとジミーをいじめたり諸々の手続きを済ませてから来ると思ったけど早いな。
しばらく待っているとやってきたのはなんとランディーだった。
「アシュリー様…!!」
息が上がるほど急いできたらしい。いつも余裕そうなランディーにしては珍しい様子に俺もガタリと立ち上がる。ランディーが来たということは、任せた仕事についてのことだろう。ごくりと息を呑む俺の耳に口を近づけると、ランディーは嬉しさが滲み出る声で囁いた。
「見つかりましたよ…!!」
エリカがスッと俺と青年の間に立ちはだかる。
青年はよほど急いできたのか息を切らしながら頭を下げた。
「失礼いたしました!わ、私はコールという者です」
引き締まった身体は健康的に見えるが、くたびれた服や所々汚れているところを見るとあまり良い生活はできていないみたいだ。
「チェンバレン公爵家の方がいらしていると聞いたのですが、御二方でお間違いないでしょうか…?」
おずおずと訊ねるコールと名乗った青年に敵意がないことを確認するとエリカうむ、と答えた。
「そうだ。任務の一環で鉱山の視察に来た」
青年はその言葉に一縷の望みをかけるような顔で頼みこむ。
「私は、この鉱山で起こっている問題を告発しに参りました!どうか我々を助けてください…!」
お願いします!と地面に額がつきそうなほどに頭を下げるコールを見下ろしながら、エリカは腕を組んだ。
「先程も助けてくれと言っていたな。いいだろう、話を聞こうか」
己の言葉に責任を持てるか?と問うエリカにコールは覚悟を決めたような表情ではい、と力強く頷いた。
「まずご案内したい場所がございます」
コールは鉱山の採掘場から離れて、管理事務所のある方には向かわずに脇の山道へと入っていく。あまり人の手が入っていなさそうな周りの様子を見回しながら俺は任務前に調べたことを思い返した。
ステラではあまり大規模に開発を進めると精霊が起こって災害を起こすので必要以上に自然を破壊するような行為はしないことが暗黙の了解となっている。リトス鉱山も地球に比べると必要最低限の整備しかされていないように思うし、採掘も埋蔵量がすぐに底を尽きるようなペースでは行われていない。そもそもこの辺り一帯はマナ溜まりといって自然由来のマナが多く発生し留まっている場所であるため、マナが結晶化し魔石ができる速度が通常よりも早く滅多に資源が枯渇することはないのだが。
「私はこの鉱山に来てまだ半年も経っていないのですが…」
そう切り出したコールは静かに話し始めた。
リトス鉱山は昔から良質な魔石が継続して採れることからその歴史は古く、シュテンベルクの住民にとって身近な存在だったらしい。しかしマナ溜まりでもあるこの鉱山では、長く作業を続けると生まれつきマナの保有量が少なかったりマナへの耐性がない者はマナ中毒で倒れることがあるという。そのため労働時間や手当が細かく定められており定期的な診断を受けることが義務付けられている。ところが5年ほど前、最高責任者にジミーが就いてからはそのマニュアルを無視した行為が続くようになった。鉱山労働者は粗末に扱われ、逆らうと食事を抜かれたり給料が減らされる。鉱山では犯罪を犯した者が刑罰として奉仕活動を行っている場合も多く、そういった者はどうしても立場が強くない。ストライキを起こそうにも次々とマナ中毒で倒れていくためまともに団結できないときた。負傷したり死亡した労働者のことは報告しなければならない、つまりやらかしがバレるのでジミーは働けなくなった者は解雇して次々と追い出しまた新たに労働者を雇うという手口で鉱山を経営しているらしい。しかも最近は刑に服している連中の一部が山賊に身を窶して周辺の村や田畑を襲い、財産を失くした者を最低条件で雇い労働者の数を補っているみたいだ。
「アイツらはジミーと結託して、お互いに賄賂を受け取っているという噂もあります」
忌々しげに話すコールにエリカが納得したように頷いた。
「刑罰を受けた者は服役期間中は逃げられないからな。なんとか生き延びる方法を選択したのだろう」
エリカは考え込むように顎に手を当てる。
「近頃増えていた山賊被害ではあまり商団が襲われていなかったのが疑問だったんだ。それに、やけに鉱山労働者出身の者が多かったのが気になっていた」
「山賊が討伐されたという話は聞きましたが、公女様のおかげだったんですね!」
コールは嬉しそうに言うとこちらです、と粗末な山小屋のような建物に俺たちを案内した。ログハウスのような見た目だけど、手入れされてないのかかなりボロボロだ。
中に入ると床に敷かれたシーツのような布の上に沢山の人が横たわっていた。みんないかにも重病患者といった様子で、その合間を慌ただしく俺と同い年くらいの少年が走り回って看病している。
「これは…!」
思わず目を見張る俺たちにコールが悔しそうにギュッと拳を握る。
「マナ中毒で倒れた労働者たちです」
エリカは近くの患者に駆け寄ると簡単に診察していき、軽くため息を吐いた。
「これは一刻を争うかもしれない」
本来は同意を得てから行うべきなのだが、と心臓の辺りに手を置く。パアッと青白く光りエリカと患者の間をマナが循環するその治療行為は…。
「マナドレイン…!」
マナが極度に枯渇したり強いマナに当てられて中毒症状を起こした時などに、相手のマナに干渉してマナを調節したり直接マナのやり取りをする行為だ。相手のマナを奪ったりなどの攻撃手段にも使えないこともないが、自分も深刻なダメージを負う可能性があるので魔法士が使う場合ほとんどが治療目的となる。専門の医者でも難しいと言われているほど高度な技術を必要とするマナドレインを、まさかエリカも使えるとは。我が姉ながらハイスペックすぎではないだろうか。
感心する俺の横で、コールが驚いたように見つめている。
しばらくして光が収まると、苦しそうに呻いていた患者の意識が戻った。
「ここ、は…?」
「サム!目を覚ましたのか!!」
「その声はコール、か?」
「あぁ!よかった、もう助からないかと…!」
サムと呼ばれた男性の手を両手で握りながらコールは泣き崩れた。
なんか邪魔しちゃいけないような雰囲気なのでじっと手のひらを見つめるエリカの傍に近寄る。エリカは複雑そうな顔でコールたちの方を見た。
「かなり重症だった。あと数日手当てが遅れていたら助かる確率が下がっていたかもしれない」
「これは調査が必要そうですね」
「あぁ」
手ぬぐいやたらいを持ってたたた、と少年が駆け寄ってくる。
「お兄ちゃん!」
コールは泣き止んで少年の頭を撫でた。
「コレット!看病ありがとな」
どうやら兄弟らしい。ふと疑問に思って聞いてみる。
「コールやコレットたちは平気なのか?」
コールはあぁ、と答えた。
「俺たちは人よりもマナが多くて耐性がある方なので。周囲のマナを取り込んで錬成することもできるのでむしろ居心地がいいくらいです。マナドレインまではできませんが…」
エリカは観察してわかっていたらしい。一流の魔法士は放出するマナをコントロールしたり相手のマナの量や状態を測れるらしいが、エリカにとってはそれくらい朝飯前なのだろう。
取り急ぎ治療が必要そうな者をエリカが診て回っていく。俺は治療に関してはできることがないのでいったん外に出た。雑草が生い茂った小屋の裏手に出て、先程から俺をつついていた千鳥にどうしたんだ?と聞いてみる。
『精霊召喚を行なってみるとよい。そなたと接触したがっている精霊がおる』
「え、そうなの?」
全然わからなかった。でも確かに、親和力に意識を向けると何かが俺に触れようとするような感覚がある。その気配に集中してやや小声で詠唱を唱えてみた。
「ーー精霊召喚!!」
お決まりの演出の後目を開けるが、精霊らしき姿は見えない。
「あれ?失敗したかな。確かに感覚はあったはずなんだけど…」
きょろきょろと周りを見回す俺に千鳥が『そこにおるぞ』と前を指す。
『あ、あのぅ…』
おどおどとした声が聞こえて目を凝らすと、確かに淡く光る何かがそこにあった。お化けやスライムのようなフォルムだ。
「あ、ごめん気づかなかった」
思わず影の薄いクラスメイトに謝るような感じで言うと宙に浮く気体のような精霊は明らかに落ち込む。
『よく言われますぅ。こちらこそ存在感なくてごめんなさぁい…』
なんか、だいぶ性格に個性がありそうだな。
「俺はアシュリーといいます。千鳥に契約してない精霊とは普通話せないと聞いた覚えがあるのですが…。あなたはもしかして大精霊ですか?」
聞いてみると精霊はひぃっと飛び上がった。…元々浮いてるけど、輪郭がピャッと揺れ動いた感じだ。
『そ、そんな、私が大精霊なんて畏れ多い!私は矮小で平凡などこにでもいる精霊ですうぅ!!私はマナの操作くらいしか取り柄がないのであなたとマナの波長を合わせて会話しているだけです…。どうか敬語もやめてください、私はそんな身分じゃないので!』
「あ、そうなんだ。それで、なんで俺に接触しようと思ったんだ?」
要望通りに口調を戻すと何故か精霊は『切り替えが早い!陽キャだぁ…』と呟きながら説明してくれた。
『私は少し前からこの鉱山に棲みついていて、高濃度のマナに浸ってこれはいい場所を見つけたぞと喜んでいたんです。だけど最近マナ中毒を起こす人間が増えたのが気になって…。なんとかできないものかと考えたのですが、大精霊様たちと違って私は契約者なしに人間に干渉することはおろかまともに自然の事象にも介入できないので、山小屋の付近だけほんの少ぉしマナ濃度を低くして有害な成分を取り除いたんです。でも焼け石に水でしかなくて困っていたところにあなたが来て…。歩く精霊灯みたいなあなたに取り入らない手はないと思い接触を試みた次第ですぅ』
「そこまで人間を気にかけてくれていたんだな」
感心したように言う俺に精霊は違うんですぅ!と悲鳴まじりに否定する。
『精霊が棲みつくと、その地の自然は活性化します。精霊は自然を好み自然と共に生きるので存在するだけでそういう現象が起こるんですぅ。つまりマナ溜まりのこの鉱山に私が棲みついたことで、より普通の人間たちには過酷な環境になってしまったんですよおぉ…』
「そういうことか」
マニュアルを無視して働かせていたとはいえどうして最近いきなりマナ中毒者が増えたのか気になっていたが、そんな背景があったとはな。
『すみませぇん!あまりにも居心地が良くて離れる決心もつかず…。どうか命だけはあぁ!!』
「いや、精霊は殺せないし。マナが増えること自体は悪いことじゃないぞ、質の良い魔石がすぐできるからな」
『それはそうですけどぉ』
涙声の精霊にそれに、と俺は続ける。
「人間が魔石という自然の産物の恩恵にあやかっているだけから精霊側に責任はない。共存できる道も探せばあるはずだ」
『うぅ、精霊士は優しい人が多いという噂は本当だったんですねぇ…。聖人のようなお方ですぅ!』
そんな大層なことを言った覚えはないが、俺は痛く感動している様子の精霊に聞いてみた。
「それで、君はどうしたいんだ?」
精霊はおずおずと答える。
『も、もしよろしければ、私と契約してくださらないかなぁと…。そしたら少しはお力になれることもあるのではないかと思いますぅ。で、でも私のような卑屈で惰弱な精霊なんかと契約してくださる方なんていないですよね…。貴重な親和力をこんな私に使っていただくなんて考えただけでも申し訳なさすぎて消えてしまいそうですぅ!やっぱりこの話はなしでおねが』
「いいぞ」
『ひぇっ!え、いいんですか?本当に後悔しません?』
「あぁ。俺も契約したいと思っていたし。多分俺たちは相性も悪くなさそうだから上手くやれると思う」
好都合だ、と笑いかけるとなぜか精霊は少し距離を取った。
『またそういう勘違いさせるようなことを…』
「…?」
『そこはちゃんと鈍感系主人公なんですね!』
ゼェハァとツッコミ疲れから息を荒げる精霊に俺は向き直る。
「マナの操作の他にはどんなことが得意なんだ?」
『わ、私は霧を出すのが得意ですぅ。対象の構成要素を弄るのも好きではあるんですけど、好みの成分を霧状に噴射するのはそれはもう、気持ちがよくって…。すみませんすみません、捕まえないでくださいぃ!』
「俺は何も言ってないぞ。それにしても、霧か…」
名前どうしよう、と考え込む俺に精霊はおろおろと俺の周りを彷徨った。
『こんな霧を出すことしか脳がない変態なんて必要ないですよね…。親和力の無駄遣いですし…』
「決めた」
『はいぃ!やっぱりダメですかぁ?!』
「いや、君の名前だ。秋霧、なんてどうだろう。俺の故郷の国では昔春は霞、秋は霧という伝統的な風物美があったからそれにちなんだ名前にしたんだけど…。秋の霧のように美しい君が思うままに力を使えるように、という意味も込めてみた。どう、かな?」
名前をつけるのってなんか恥ずかしくて慣れないな。子どもの名前を考えるのに迷走する理由が少しわかった気がする。
ちょっとした羞恥と闘いながら問う俺に精霊はふるふると震えた。
『私にはもったいない名前ですうぅ!こんな、こんな良い名前をいただける日が来るなんて長生きした甲斐がありますね…!』
「よかった。君はとても魅力的な精霊だから、あまり自分を卑下しないで」
俺にとって精霊はこの世界を生きていく上で大事な存在だからな。そういう意味も込めて伝えると精霊はしゅうと萎んだ。
『私、やっぱり口説かれてます…?いけないいけない、勘違いしたら後で辛くなるのは自分ですから…!』
ぶつぶつと呟く精霊に千鳥が『こやつはいつもこの調子だぞ。それより契約するなら早くした方がいい』と促す。
『そ、そうですね!それでは…。私、秋霧はアシュリーと契約を結ぶことをここに宣言します!』
精霊、秋霧がそう言った途端また明るくなり、親和力を通して秋霧との間に何かが結ばれたのを感じた。精霊との繋がりができるのは、ひとりじゃないって実感できてけっこう心の支えになるんだよな。
『この胸が温かい感じ…。これがアシュリー様の親和力なのですね!とても心地いいですぅ!』
どこに胸があるのかということは置いておいて、さっき紺珠も契約した後似たようなことを言っていたな。てっきり契約は精霊を「縛る」ものだと思っていたが違うのだろうか。後で聞いてみよう。
「さっそくで悪いんだけど、この周辺のマナをさらに薄くすることはできる?」
『お安い御用ですぅ!鎮静効果のある成分も撒いておきますね!』
秋霧がすうっと空を舞うように動くとそれまで感じていたマナの圧迫感が減り、山小屋を包むように微細な霧が発生した。想像以上の有能さだ。
俺は秋霧にお礼を言い、いったん召喚を止めて精霊界に返す。俺の親和力が無尽蔵並みとはいえずっと召喚し続けるのも不安だし、いざという時に召喚できなくなるのは避けたいからな。千鳥は必要な親和力が少ないし伝令とかもしてもらうので基本的にずっとこっちに留めている。精霊とかの性質によってそこら辺も相談する必要があるみたいだけど。
扉を開けると、大方エリカによる治療は終わったようで、体を起こしたり意識を戻している人が増えていた。
「戻ったか」
数十人のマナドレインを行うのはさすがにエリカも疲れたのだろう、椅子に座って休憩している。俺はエリカにさっき秋霧に聞いたことを耳打ちした。ついでにこの山小屋のマナ濃度を調節したことも伝える。
「なるほどな。これで調査の手間がひとつ省けた。私だけでは知り得なかった情報だ。よくやった、アシュリー」
エリカは微笑むと俺の頭を撫でた後、「すまない。子ども扱いしてしまった」と顔を逸らした。
「いえ、エリカお姉様に褒めていただけてとても嬉しいです」
もっと撫でてくれてもいいんだぞ!上目遣いで見つめるが撫で撫での追加報酬はなかった。残念。
「それじゃあ、管理事務所に行こうか」
エリカは立ち上がるとコールを呼んで一緒に山小屋を出る。
「ジミーはどうしますか?」
「ジュディに伝えて取り押さえさせている。公爵家に移送してから調査と裁判を行う予定だ。アシュリー、君の任務だから取り調べは君が行うといい」
「わかりました。ありがとうございます」
時々マナを飛ばしていると思ったらジュディに合図を出してたのか。手柄も譲ってくれるあたり優しい。さすが俺の推しだ。
3人で管理事務所の方に行くと入り口付近で縛って転がされているジミーがいた。
「アシュリー様!この者がいきなりこのような真似を!早く解放してくだせぇ!!」
俺を見るなり叫ぶジミーは後ろのコールを見てクワッと怒鳴る。
「貴様!何故ここにいる!今日は非番のはずだろう!」
俺はビクッと反応するコールを庇うように前に出るとジミーの方に歩み寄った。
「コールからあなたが行いについては聞きました。あれほどのマナ中毒者を放置して、公爵家には何の報告もしていなかったのですか?」
「まさか、あの山小屋を見たんですかい?!」
「質問に答えろ」
喚くジミーをエリカがすかさず睨みつける。
「あ、あしは、マニュアル通りの労働しかさせていやせん!最近あまりにも早く倒れるもんんだからきっと仮病でも使ったのだろうと…!」
「彼らは深刻な状態でした。マナ量が増えてマナ中毒者が出たこと自体はあなたのせいじゃないかもしれませんが、報告を怠ったことは立派な規約違反です。それとあなたには労働者に対するハラスメントや山賊との癒着の疑いがあります」
「ご、誤解でごぜぇやす!そいつが、コールが仕組んだことに違いありやせん!」
悪役のお手本のようなセリフを言うジミーをジュディが冷たく見下ろす。
「実態は公爵家が調査します。協力的でない場合罪が増えるので正直に自白することをおすすめしますよ」
コールがそういえば、と思い出すように言った。
「昨日非番を言い渡された時に、どうせ女と子どもしか来ないから適当に誤魔化せと部下に命じていたのを聞きました」
「ほぉ…」
「へぇ…」
こいつ絶対許さねぇ。俺はまだしも、エリカを侮辱するやつには愚かな己の言動を後悔させてやる。オタクをなめるなよ。
「う、嘘でごぜぇやす!コールのでまかせに違いありません!!」
例文のように主張を繰り返すジミーを、俺とエリカは青筋を立てて瞰下する。
最後まで何やら叫んでいたジミーはジュディに引き摺られていった。シュテンベルクの市役所に牢屋があるのでそこに放り込みに行くのだろう。エリカに傾倒しているジュディに何もされなきゃいいけどな。公爵領では私刑は禁止されているので弁えてはいるだろうけど。
ジュディの往復を待つ間俺たちはできる調査をしておく。もう任務の範囲は超えているので後々派遣される公爵家の調査団に任せてもいいのだが、せっかくここまで来たんだし業績ポイント稼ぎをしておきたい。労働者たちのこともあるし。
エリカと労働者から聞き込みを行ったり備品や書類の確認をしたり、マナ中毒になったり怪我をした者、栄養失調などの労働者たちを馬車で近くの診療所に送ったりなどをしているうちにお昼を過ぎたらしい。
休憩を取りながら簡単な昼食をすませる俺の視界に飛竜が入ってきた。ジュディだろうか。もっとジミーをいじめたり諸々の手続きを済ませてから来ると思ったけど早いな。
しばらく待っているとやってきたのはなんとランディーだった。
「アシュリー様…!!」
息が上がるほど急いできたらしい。いつも余裕そうなランディーにしては珍しい様子に俺もガタリと立ち上がる。ランディーが来たということは、任せた仕事についてのことだろう。ごくりと息を呑む俺の耳に口を近づけると、ランディーは嬉しさが滲み出る声で囁いた。
「見つかりましたよ…!!」
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