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第2章

022 初めての戦闘訓練

 昼食後の十三時、訓練場にアンゲロイの全員が集められた。整列した私たちの前にはメケイラがいる。

「今日は組練習だ。前回とは違う場所を想定した戦闘訓練をしてもらう。一応、組によってランダムにしている。有意義な時間となるように」

「「「了解!」」」

「ただし、四〇四よんまるよん組は私の監視の元、訓練してもらう。いいな?」

 マジか。でも組んだばっかだし、そうなるのも納得だね。
 私とティアは再び「了解」と返事をした。

 メケイラに誘導されて一番奥の部屋に入ると、いきなり「はい、ストップ」と命令された。

月城つきしろに質問する。これからお前がする作業は?」

 質問されたということは、おそらくもう教わったことなのだろう。思い出せ。

「コミュニカを……かざす」
「どこに」
「えぇっと……」

 気まずい空気が流れる。
 私の記憶違いか、そこまで教えてもらった覚えがない。……が、すぐ横にある壁に、それらしき機械が設置されている。

「こ、これに?」
「正解だ」

 ホッと安堵あんどする私。

「この読み取り機にコミュニカをかざす。そしたらコミュニカの画面が自動で訓練モードに変わる。やってみな」

 言われたとおりにすると、コミュニカから『訓練モードに切り替えます』という音声が流れた。

 この後もメケイラの指示でコミュニカの操作の仕方を教わり、人数、訓練内容、訓練場所などを指定していった。

 これで訓練の準備は整った。

『戦闘基礎、アンゲロイ二名、住宅地Fでの訓練を開始します』

 自動音声が読み取り機から流れると、部屋が徐々に暗くなり、仮想空間と化した。





 気づくと、家々に囲まれた空き地の真ん中に立っていた。コミュニカのマップを開いて現在地を確認する。ここは首都の隣町の郊外らしい。

 現在地から南西六〇〇メートルのところに、宿主の居場所を示す印がついている。

「今回は戦闘訓練だから、規制線のことは考えなくてもいいからな。単純に二人の戦闘力と相性を見たいだけだ」

 後ろからメケイラの声が飛んできた。
 振り返り、腕を組んでいるメケイラに返事をする。

「そうなれば、武器ペスティを召喚しましょう。サモンヴォカテ=アグネス・フィデス!」
「オッケー。サモンヴォカテ=クシナダヒメ!」

 私の右手に刀が、ティアの左手にハンドガンが握られる。

 ティアは「戦闘服に着替えましょう」と、空いている右手を差し出した。私は左手で握り返すと、例のメイド服の亜種のような戦闘服を身にまとった。アナライザースコープも耳に装着された。

「この二人はこういう戦闘服か」

 と、メケイラの声がしたものの、ティアに手を引かれ、余計なことを考える隙はなかった。

 コミュニカのマップを頼りに、宿主が待つところに走っていく。武器ペスティのおかげで上がった身体能力を使い、ものの二十秒ほどで到着した。

「宿主はこの家の中にいるようね」

 ティアが指さす方向から、確かに物騒な音が聞こえる。壁に物が当たる音、パリンと物が割れる音、そしてヒトのようであり獣のようでもある咆哮ほうこうだ。

「外に逃がさないようにした方がいい?」
「ええ、被害を広げてはいけませんもの」

 となると、狭い空間での戦闘になりそうだ。これが住宅地での戦闘の特徴だろうか。

「あたくしが先導いたしますわ。ついてきてくださる?」
「了解」

 玄関のドアを静かに開き、家の中に侵入した。
 引き金に指を添え、ハンドガンを構えながら、忍び足で進むティア。私もすぐ攻撃できる構えを取りながら、彼女の後ろにピタリとつく。

 荒らされたリビングを通り過ぎ、別の部屋のドアの前でティアが歩みを止めた。

「この部屋の中にいるわ」

 半開きになっているドアの隙間から、ティアが中を伺おうとしたその時。

 私の勘が、ティアをドアから遠ざけろと叫んだ。

 彼女の上腕をつかみ、グイッと後ろに引っ張った。

「⁉︎」

 何かが爆発したような音とともに、ドアの真ん中にヒトのこぶしが貫通して突き刺さっていた。
 私はティアの腕を掴んだまま、「ヒィッ」と情けない声をあげてしまう。

「ありがとう存じますわ」

 一瞬だけこちらを見たティアは、右腕を横に上げて私をかばうようにしながら後退りする。威嚇のために、ドアに突き刺さっている拳へ、一発攻撃した。拳はすぐに引っ込んだ。

「ティア、ここは一気に行った方がいいかもしれない」
「そうですわね、ドアを蹴り飛ばしましょう」

 ティアはドアノブをひねって半開きにすると、蹴りを入れる。
 勢いをつけて開くドアの隙間から、宿主の姿を確認したとたん、私はその隙間に飛び込んでいた。武器ペスティの力により、ドアを蹴ったティアの足を助走なしで越え、宿主に斬りかかる。

「はあっ!」

 斬撃が宿主の体に命中し、先制攻撃に成功した。
 倒れた宿主に、ティアがすかさず連射を浴びさせる。

 しかし、ハンドガンが弾切れになった隙に、宿主は近くに落ちていたペンをティアに投げつけた。

「危ない!」

 轟速ごうそくで投げつけられるペンの軌道を読み取る時間はなく、私は体で攻撃を受ける。
 戦闘服の効果により、体から十センチくらい離れたところで見えないバリアが働き、ペンは床へと落ちた。
 アナライザースコープに『損耗率:92%』と表示された。

花恋かれん!」
「とっさに体が動いちゃった。これくらいダメージ受けるんだね」

 昨日とは違う。これは訓練だ。避けるだけでなく、攻撃を受けるのも一つの訓練である。結果論だが。

 そうこうしている間に、宿主が立ち上がろうとしたので、瞬時に胴を攻撃した。

 宿主は完全に倒れ込んだ。起き上がる力もないようだ。

「花恋、浄化しますわよ」

 ティアは一際大きな緑の弾を発射し、「ノブレス!」と浄化の言葉を唱える。宿主がその弾に覆われると、私は胸を目がけて刀を突き刺す。

斬心ざんしん!」

 突き刺したところからあふれる白い光で浄化された宿主は、安らかな顔で目を閉じた。
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