22 / 25
第2章
022 初めての戦闘訓練
昼食後の十三時、訓練場にアンゲロイの全員が集められた。整列した私たちの前にはメケイラがいる。
「今日は組練習だ。前回とは違う場所を想定した戦闘訓練をしてもらう。一応、組によってランダムにしている。有意義な時間となるように」
「「「了解!」」」
「ただし、四〇四組は私の監視の元、訓練してもらう。いいな?」
マジか。でも組んだばっかだし、そうなるのも納得だね。
私とティアは再び「了解」と返事をした。
メケイラに誘導されて一番奥の部屋に入ると、いきなり「はい、ストップ」と命令された。
「月城に質問する。これからお前がする作業は?」
質問されたということは、おそらくもう教わったことなのだろう。思い出せ。
「コミュニカを……かざす」
「どこに」
「えぇっと……」
気まずい空気が流れる。
私の記憶違いか、そこまで教えてもらった覚えがない。……が、すぐ横にある壁に、それらしき機械が設置されている。
「こ、これに?」
「正解だ」
ホッと安堵する私。
「この読み取り機にコミュニカをかざす。そしたらコミュニカの画面が自動で訓練モードに変わる。やってみな」
言われたとおりにすると、コミュニカから『訓練モードに切り替えます』という音声が流れた。
この後もメケイラの指示でコミュニカの操作の仕方を教わり、人数、訓練内容、訓練場所などを指定していった。
これで訓練の準備は整った。
『戦闘基礎、アンゲロイ二名、住宅地Fでの訓練を開始します』
自動音声が読み取り機から流れると、部屋が徐々に暗くなり、仮想空間と化した。
気づくと、家々に囲まれた空き地の真ん中に立っていた。コミュニカのマップを開いて現在地を確認する。ここは首都の隣町の郊外らしい。
現在地から南西六〇〇メートルのところに、宿主の居場所を示す印がついている。
「今回は戦闘訓練だから、規制線のことは考えなくてもいいからな。単純に二人の戦闘力と相性を見たいだけだ」
後ろからメケイラの声が飛んできた。
振り返り、腕を組んでいるメケイラに返事をする。
「そうなれば、武器を召喚しましょう。サモンヴォカテ=アグネス・フィデス!」
「オッケー。サモンヴォカテ=クシナダヒメ!」
私の右手に刀が、ティアの左手にハンドガンが握られる。
ティアは「戦闘服に着替えましょう」と、空いている右手を差し出した。私は左手で握り返すと、例のメイド服の亜種のような戦闘服を身にまとった。アナライザースコープも耳に装着された。
「この二人はこういう戦闘服か」
と、メケイラの声がしたものの、ティアに手を引かれ、余計なことを考える隙はなかった。
コミュニカのマップを頼りに、宿主が待つところに走っていく。武器のおかげで上がった身体能力を使い、ものの二十秒ほどで到着した。
「宿主はこの家の中にいるようね」
ティアが指さす方向から、確かに物騒な音が聞こえる。壁に物が当たる音、パリンと物が割れる音、そしてヒトのようであり獣のようでもある咆哮だ。
「外に逃がさないようにした方がいい?」
「ええ、被害を広げてはいけませんもの」
となると、狭い空間での戦闘になりそうだ。これが住宅地での戦闘の特徴だろうか。
「あたくしが先導いたしますわ。ついてきてくださる?」
「了解」
玄関のドアを静かに開き、家の中に侵入した。
引き金に指を添え、ハンドガンを構えながら、忍び足で進むティア。私もすぐ攻撃できる構えを取りながら、彼女の後ろにピタリとつく。
荒らされたリビングを通り過ぎ、別の部屋のドアの前でティアが歩みを止めた。
「この部屋の中にいるわ」
半開きになっているドアの隙間から、ティアが中を伺おうとしたその時。
私の勘が、ティアをドアから遠ざけろと叫んだ。
彼女の上腕を掴み、グイッと後ろに引っ張った。
「⁉︎」
何かが爆発したような音とともに、ドアの真ん中にヒトの拳が貫通して突き刺さっていた。
私はティアの腕を掴んだまま、「ヒィッ」と情けない声をあげてしまう。
「ありがとう存じますわ」
一瞬だけこちらを見たティアは、右腕を横に上げて私を庇うようにしながら後退りする。威嚇のために、ドアに突き刺さっている拳へ、一発攻撃した。拳はすぐに引っ込んだ。
「ティア、ここは一気に行った方がいいかもしれない」
「そうですわね、ドアを蹴り飛ばしましょう」
ティアはドアノブをひねって半開きにすると、蹴りを入れる。
勢いをつけて開くドアの隙間から、宿主の姿を確認したとたん、私はその隙間に飛び込んでいた。武器の力により、ドアを蹴ったティアの足を助走なしで越え、宿主に斬りかかる。
「はあっ!」
斬撃が宿主の体に命中し、先制攻撃に成功した。
倒れた宿主に、ティアがすかさず連射を浴びさせる。
しかし、ハンドガンが弾切れになった隙に、宿主は近くに落ちていたペンをティアに投げつけた。
「危ない!」
轟速で投げつけられるペンの軌道を読み取る時間はなく、私は体で攻撃を受ける。
戦闘服の効果により、体から十センチくらい離れたところで見えないバリアが働き、ペンは床へと落ちた。
アナライザースコープに『損耗率:92%』と表示された。
「花恋!」
「とっさに体が動いちゃった。これくらいダメージ受けるんだね」
昨日とは違う。これは訓練だ。避けるだけでなく、攻撃を受けるのも一つの訓練である。結果論だが。
そうこうしている間に、宿主が立ち上がろうとしたので、瞬時に胴を攻撃した。
宿主は完全に倒れ込んだ。起き上がる力もないようだ。
「花恋、浄化しますわよ」
ティアは一際大きな緑の弾を発射し、「ノブレス!」と浄化の言葉を唱える。宿主がその弾に覆われると、私は胸を目がけて刀を突き刺す。
「斬心!」
突き刺したところから溢れる白い光で浄化された宿主は、安らかな顔で目を閉じた。
「今日は組練習だ。前回とは違う場所を想定した戦闘訓練をしてもらう。一応、組によってランダムにしている。有意義な時間となるように」
「「「了解!」」」
「ただし、四〇四組は私の監視の元、訓練してもらう。いいな?」
マジか。でも組んだばっかだし、そうなるのも納得だね。
私とティアは再び「了解」と返事をした。
メケイラに誘導されて一番奥の部屋に入ると、いきなり「はい、ストップ」と命令された。
「月城に質問する。これからお前がする作業は?」
質問されたということは、おそらくもう教わったことなのだろう。思い出せ。
「コミュニカを……かざす」
「どこに」
「えぇっと……」
気まずい空気が流れる。
私の記憶違いか、そこまで教えてもらった覚えがない。……が、すぐ横にある壁に、それらしき機械が設置されている。
「こ、これに?」
「正解だ」
ホッと安堵する私。
「この読み取り機にコミュニカをかざす。そしたらコミュニカの画面が自動で訓練モードに変わる。やってみな」
言われたとおりにすると、コミュニカから『訓練モードに切り替えます』という音声が流れた。
この後もメケイラの指示でコミュニカの操作の仕方を教わり、人数、訓練内容、訓練場所などを指定していった。
これで訓練の準備は整った。
『戦闘基礎、アンゲロイ二名、住宅地Fでの訓練を開始します』
自動音声が読み取り機から流れると、部屋が徐々に暗くなり、仮想空間と化した。
気づくと、家々に囲まれた空き地の真ん中に立っていた。コミュニカのマップを開いて現在地を確認する。ここは首都の隣町の郊外らしい。
現在地から南西六〇〇メートルのところに、宿主の居場所を示す印がついている。
「今回は戦闘訓練だから、規制線のことは考えなくてもいいからな。単純に二人の戦闘力と相性を見たいだけだ」
後ろからメケイラの声が飛んできた。
振り返り、腕を組んでいるメケイラに返事をする。
「そうなれば、武器を召喚しましょう。サモンヴォカテ=アグネス・フィデス!」
「オッケー。サモンヴォカテ=クシナダヒメ!」
私の右手に刀が、ティアの左手にハンドガンが握られる。
ティアは「戦闘服に着替えましょう」と、空いている右手を差し出した。私は左手で握り返すと、例のメイド服の亜種のような戦闘服を身にまとった。アナライザースコープも耳に装着された。
「この二人はこういう戦闘服か」
と、メケイラの声がしたものの、ティアに手を引かれ、余計なことを考える隙はなかった。
コミュニカのマップを頼りに、宿主が待つところに走っていく。武器のおかげで上がった身体能力を使い、ものの二十秒ほどで到着した。
「宿主はこの家の中にいるようね」
ティアが指さす方向から、確かに物騒な音が聞こえる。壁に物が当たる音、パリンと物が割れる音、そしてヒトのようであり獣のようでもある咆哮だ。
「外に逃がさないようにした方がいい?」
「ええ、被害を広げてはいけませんもの」
となると、狭い空間での戦闘になりそうだ。これが住宅地での戦闘の特徴だろうか。
「あたくしが先導いたしますわ。ついてきてくださる?」
「了解」
玄関のドアを静かに開き、家の中に侵入した。
引き金に指を添え、ハンドガンを構えながら、忍び足で進むティア。私もすぐ攻撃できる構えを取りながら、彼女の後ろにピタリとつく。
荒らされたリビングを通り過ぎ、別の部屋のドアの前でティアが歩みを止めた。
「この部屋の中にいるわ」
半開きになっているドアの隙間から、ティアが中を伺おうとしたその時。
私の勘が、ティアをドアから遠ざけろと叫んだ。
彼女の上腕を掴み、グイッと後ろに引っ張った。
「⁉︎」
何かが爆発したような音とともに、ドアの真ん中にヒトの拳が貫通して突き刺さっていた。
私はティアの腕を掴んだまま、「ヒィッ」と情けない声をあげてしまう。
「ありがとう存じますわ」
一瞬だけこちらを見たティアは、右腕を横に上げて私を庇うようにしながら後退りする。威嚇のために、ドアに突き刺さっている拳へ、一発攻撃した。拳はすぐに引っ込んだ。
「ティア、ここは一気に行った方がいいかもしれない」
「そうですわね、ドアを蹴り飛ばしましょう」
ティアはドアノブをひねって半開きにすると、蹴りを入れる。
勢いをつけて開くドアの隙間から、宿主の姿を確認したとたん、私はその隙間に飛び込んでいた。武器の力により、ドアを蹴ったティアの足を助走なしで越え、宿主に斬りかかる。
「はあっ!」
斬撃が宿主の体に命中し、先制攻撃に成功した。
倒れた宿主に、ティアがすかさず連射を浴びさせる。
しかし、ハンドガンが弾切れになった隙に、宿主は近くに落ちていたペンをティアに投げつけた。
「危ない!」
轟速で投げつけられるペンの軌道を読み取る時間はなく、私は体で攻撃を受ける。
戦闘服の効果により、体から十センチくらい離れたところで見えないバリアが働き、ペンは床へと落ちた。
アナライザースコープに『損耗率:92%』と表示された。
「花恋!」
「とっさに体が動いちゃった。これくらいダメージ受けるんだね」
昨日とは違う。これは訓練だ。避けるだけでなく、攻撃を受けるのも一つの訓練である。結果論だが。
そうこうしている間に、宿主が立ち上がろうとしたので、瞬時に胴を攻撃した。
宿主は完全に倒れ込んだ。起き上がる力もないようだ。
「花恋、浄化しますわよ」
ティアは一際大きな緑の弾を発射し、「ノブレス!」と浄化の言葉を唱える。宿主がその弾に覆われると、私は胸を目がけて刀を突き刺す。
「斬心!」
突き刺したところから溢れる白い光で浄化された宿主は、安らかな顔で目を閉じた。
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
少し冷めた村人少年の冒険記 2
mizuno sei
ファンタジー
地球からの転生者である主人公トーマは、「はずれギフト」と言われた「ナビゲーションシステム」を持って新しい人生を歩み始めた。
不幸だった前世の記憶から、少し冷めた目で世の中を見つめ、誰にも邪魔されない力を身に着けて第二の人生を楽しもうと考えている。
旅の中でいろいろな人と出会い、成長していく少年の物語。