異世界転生はハーレムの味

若憑き

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初夜

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 結局能力は見出せず、なんやかんやあって夜が来た。
 異世界での、初めての夜の雰囲気を味わっていたら外が何やら騒がしい。
「あの、何かあったんでしょうか」
「多分モンスターだよ」
 ラーミュちゃんはさらりと言って夕食の用意を続けている。
 あの異世界版マグロが出てくるのは知っているが、絶対次見たときまたビビる。
 考えていると結構腹が減っていた事に気付く。
 野菜と一緒にあのマグロが添えられていくのが見えた。楽しみだなぁ美少女の手料理。
 …………。
「いやいや待ってモンスター出てるの!? 結構近いよねこれ!?」
「いいんじゃない? モンスターにだって生きる権利はあるよ」
「こっちまで来たらどうするの!?」
「大丈夫でしょー、来たら来たでなんとかなるよ、家が壊れてもお店で寝泊まりすればいいだけだし」
 このお方すっごい余裕をお持ちです、ラーミュちゃんの感覚が普通なのかなと思いかけたけど外の反応からして絶対異常だ。それとも何か、強者の余裕でございますかね? それともただの能天気なんですかね!?
「こっ、こんなところでじっとしていられるか! 俺は遠くに逃げるぞ!」
「そっちの方が危ないんじゃ——」
「あっ、そうだ!」
 ある事を閃いた。座っていた椅子から立ち上がり、俺は家の奥、左側にあるドアの中に入る。
 先ほどまで聞こえていた喧騒が一切途絶えていった。
 そうです、ここはラーミュちゃんがいきなり案内してくれたあの部屋。
 それにしても、ここまで何も聞こえなくなるとは思わなかった。ラーミュちゃんの料理する音も聞こえない。
 これは防音加工なのかな、こんな時代にもそういう技術はあるものなのか?
 改めて見回すとたった一つの蝋燭に拘束具のついたベッド、それ以外は何もない。
 これがマルナさんの趣味なのか……。防音もついてるみたいだしやっぱりそういうことなのね!
 まぁいいや、騒ぎが終わるまで臆病者の俺はここに閉じこもらせてもらいます! ここなら思いっきり現実逃避ができるぞ!
 一先ずベッドに飛び込み寝転がる、少し硬めだけど普通に寝れるもんじゃないか。
 張り詰めた気を緩めるために背伸びをしたら、両方の手に何かが当たり、同時に何か錠が閉まるような音がした。
 ような、ではなかった。錠が閉まったのだ。
「えっ、えぇーーー!?!?」
 うっそだろお前、いやいや待ってこんな偶然がありえてたまりますかね、両方がっちり手錠がハマっております。
 しかもここ防音だよな!? いくら叫んでも意味なさそうだよな!?
「ラーミュちゃんっ、ちょっ、来てください! 助けてくださーーい!!!」
…………。
ラーミュが料理終わって呼んでくるのを待つしかないってことだよな!?
 異世界生活初日から俺になんていう苦行を強いるんだ神様は!
 なんて思ったらドアを叩く音が! やばいよまだ心の準備が——
「……るよ、入っちゃ——えっ?」
 時が、止まった。

「なに、やってんの?」

 外の喧騒、そして料理の匂いが一気に流れ込んでくる。
 ラーミュちゃんの目が手錠をしっかり捉えていて、街中で突然男性器を露出されたように目が見開いてる。
「ちっ、違うそういう事じゃないんだそういう事じゃ!」
 身を頑張ってよじるけど、まぁどうにもならないですね。
「裕也くんが手錠を見たらはめたくなっちゃう、そういう趣味のある変態っていうのなら私は別に構わないよ」
 待ってください、そのお顔で言われましても……その表情はまさに失望じゃないですか! 恥ずかしくてお顔を隠したいのに隠せないっ! やだぁ見ないでぇ! そもそも誤解だよぉ!
「問題はそこじゃなくてね、鍵持ってるのマルナなんだよ」
 ラーミュちゃんの表情の真意が分かった、この手錠を外すにはあのお方から鍵を貰いに行かなければならないということだ。
 ラーミュちゃんとマルナさんの関係はまだ家主と借主という事しか知らないが、あの短い事務的な会話の中での空気の重み、間違いなく良い仲ではないのだ。間違いなく。
「とりあえずそれじゃご飯食べれないでしょ? 今日は食べさせてあげる」
 一転して柔らかい表情に戻ったと思ったら、童貞を殺す一言が俺の胸を突き刺した。



「あのっ、優しくしてください……」
 俺は恥ずかしくて体をくねらせた。
「大丈夫そんなに緊張しなくていいよ。それじゃあ入れるからね」
「はっ、はい……」
 棒が、中にどんどん入っていく。
「んふっ、どう? 全部入ったよ」
 彼女はいやらしくうねらせてきた。
「やっ、ヤバイです……!」
「ヤバイって?」
「お、美味しいです!」
「そっか、良かった!」
 俺は今、ラーミュちゃんにあーんしてもらっている。これ以上にない程幸せだ、前の世界なんかと比べたら十倍、いや百倍幸せだ! この手錠がなかったら千倍幸せだ! いや、この手錠がなかったらこんな事できてないか! 千倍幸せ!
「ごめんちょっと一口つまみ食いさせて……んんっ、本当だ美味しくできてる」
 俺の使ったスプーンを使って食べるとか何やってるですかこれ絶対狙ってるよねそういう事狙ってるよねじゃないといきなりこんな事するとかちょっと待ってそもそも俺の唾液が結構ついたスプーンをラーミュちゃんの唾液が上書きして俺の唾液がラーミュちゃんの——
「はい、あーん」
 あっ、あっ、あっ、らめっ、入っちゃう! 入っちゃううううう!!
「あむっ」
 この一口は、天国の味がした。



「ご馳走様でした」
 お腹と心が同時に、最大限まで満たされた。異世界生活初日から俺になんていう幸せを与えてくださるんだ神様は。
「ん? ゴチソウサマ?」
「えっ、あっご馳走様です……」
「誰それ」
「あっ、その、俺の世界には、食べ物になってくれた、えっと、生き物たちに、”食べさせてくれてありがとう”って感謝の気持ちを込めて、お礼をする習慣が、あるんです」
「そうなんだ、いい文化じゃん! じゃあ私もゴチソウサマって言っておこう!」
「あっ、食べる前には頂きますって言うんだ」
「そっか、じゃあ後でイタダキマスもしておかないとね」
 日本の文化を褒めてくれたのに俺が褒められた気分がすごい、そしてそれに快感を感じるのだ。
「じゃーあ、イタダキマス! というわけでマルナの所行ってくるから待っててね!」
 どういうわけなんだ?
 そう言って彼女が外に出るとドアを閉められ、また外界との繋がりを断たれてしまう。
 と、いう事は今家の中に誰もいなくて、外はモンスター騒ぎで……。
 得体の知れない莫大な恐怖が襲いかかってくる。一本の蝋燭の生み出す光が、妖しく心を取り巻いていく。
 これはこのまま正気保ってジッとしてたらヤバイやつだ。生憎俺には放置プレイのような趣味がないから気持ちよくなれない。
 いやいや元々俺にとっては手錠すら意味不明な道具ですし! 俺はMなんかじゃないぞ別にこんな状況に快楽を求めてるわけじゃないからな!
 食べた後だからか眠気が襲ってきた、こいつを利用してさっさと寝てしまおう。
 ラーミュちゃんのくれた、甘みの増したあの一口を思い出しながら目を瞑る。
 間接キスでこんなにモンモンすることになるとは、反則だ。
 下半身が大変なことになり少し眠気がとんだが、無事に意識の闇へ落ちていく事ができた。



「こんばんは、おはようございます」
「ふぁぁっ!? あっ、えっと、おはようござまます! たっ、確か貴女は……」
 耳元に吹きかけられる、甘くて落ち着いた声によって起こされた。
 目の前にいたのは今日見た金髪の女の子に、ラーミュちゃんだった。
「はい、僕ですマルナですよ。それにしても、まだここ残しててくれてたんですね。嬉しいです」
 そう言いながら俺の手錠を弄り始める。この視点でお手手とお手手が触れると、すごくえっちいです。
「これを外して欲しいんでしたっけ」
「そうだよ、だから早くして」
「お願いしますは?」
「……お願い」
「ウフフ、分かりました。しかし夜遅くに連れ出して迷惑じゃないか、とか非常識じゃないか、とか思いませんでした?」
「マルナが鍵渡してくれれば良かっただけじゃん」
「それは難しいですね、大切な鍵を無くされたりでもしたら大変なので」
「だからぁ、大丈夫だって! ちょっと外したらすぐ返すだけだったんだよ!?」
「一つしかないんですこの鍵は、私の手錠がまたかかっちゃった場合どうなりますか。鍵がなくなったらもう外せませんよね」
「あぁもう面倒くさい! なんでいつもこんな小さいことでさぁ!」
 ちょっと待って起こされたと思ったらなんなのなんでいきなり喧嘩みたいなの始めてんのこのふ——
「もし外せなくなったらお手手切るしかないんですよ」
 同時に俺の手が握られた。
 いや手錠を壊すという考えはないんですか? そんなものをこんなラーミュちゃんの住む一般家庭に置かないでください!
 ……マルナさんの手、温かい。手から汗が漏れてきたが、冷や汗なのか暑いだけなのか分からない。
「じゃあマルナに来てもらうしかなかったじゃん」
「そうなりますね、ただこんな夜に呼ばなくても明日の朝で良かったんじゃないんですか。私、寝る準備が終わったところでしたのに」
「こんなところに一夜ずっといさせたくないでしょ!」
「寝れば一瞬なのに。ねぇ、裕也さん」
「あっ、はっ、はい」
「ちょっ、裕也くんはどっちの味方なの!」
「えっ、えっ」
 マルナさんには申し訳ないけどこの人苦手だ…… 昼休みにネチネチと俺の話の揚げ足取りばっかしてくる小林を思い出す!
 ふとあいつがマルナさんの真似した想像をしたら、顔面を潰したくなった。美少女パワーは絶大だ。
 そしてラーミュちゃんには申し訳ないけど心地よく寝れてたのは事実だし、俺は明日でも別に良かったと思う! でもきっとラーミュちゃんは俺のことを思ってしてくれたことなんだよね!
 でもそんな事口に出して言えないよ! ヘタレでごめん誰か助けて!
「裕也さんが困るような事はやめてあげましょうよ、彼からすれば重いですよこういう選択は」
「でっ、でも裕也はまだマルナの事を全然分かって——」
「だからこそ重いんですって、それに本人が良く寝れたっていうのを無理やり否定させるのもどうかと思いますが」
「むぅ……」
 良かった、マルナさんありがとう。
「そうですね、手錠を外す代わりにここに泊めさせてくださいよ」
「えぇ?……分かったよ! もうそれでいいから早くお願い!」
「ありがとうございます、では外すのは明日にして今日はこのまま寝かせてください」
 マルナさんが欠伸をしながら俺の上に被さってきた。えぇ、嘘でしょ?
「ちょっ! だめに決まってるでしょそんなの! 裕也くんから離れてよ!」
「嫌です、中々心地良い抱き枕じゃないですか。離したくないですよ」
 体を抱きしめられ、金髪とピンクの寝巻がもぞもぞと動く。
「あぁっ、まっ、マルナさん……」
「んっ、何か硬いものが…… 何ですか、これは」
 マルナさんの手が俺の下半身を弄り始める。何この展開、うそ、俺階段登らされちゃうの? あぁでもマルナさんだったら——
「ちょっと! 裕也くんに変な事しないでよ! うぅー…… 私もここで寝て監視するからね!」
 ……ラーミュさんが、更に横に寝転んできました。何この急展開。
「わかりました、しっかり監視しておいてくださいね。じゃあ、このまま三人で眠りましょうか」
「私はマルナの監視だから! 勘違いするな!」
 左手にラーミュ、右手にマルナ。俺が寝れないよこれ。
 ドキドキしてたら、右耳にまた温かい息が吹き込まれる。
「もし我慢できなくなっちゃったら、いつでも私に相談しに来てくれていいですよ」
「えっ?」
「ウフフ、おやすみなさい」
 マルナさんはすぐに寝息を立てて眠りについたようだが、俺は全然寝付ける気配がなかった。



「ねぇ、裕也くん……寝ちゃった?」
 夜も更けた頃、ラーミュは不安だった。この雌犬が一体裕也にどんな事をし、どんな事をさせるのかが、不安でたまらなかった。
「うわっ、二人とも熟睡してるじゃん…… 気分悪いなぁ」
 裕也を抱きしめる手に力がこもる。
 ラーミュはマルナが嫌いだった。しかしその全てが嫌いなのではない、時にマルナが見せる、冷静沈着で大胆な姿勢に彼女は憧れさえも覚えていた。
 もしも彼女がマルナであったなら、こう口走っていただろう。
『裕也さんは貴女の事だって知らないではないですか』
 彼女は蝋燭を見た。
 まだまだ長さを残していた蝋燭は、夜明けまでなら暗闇を灯し続けられるだろう、そう思った。
 右側の蝋が一滴、溶けて燭台へとこぼれていった。
「……寝よ」
 その日、彼女は夢を見なかった。
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