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繋がって一つになあれ
マルナ密談
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マルナ・シフォン、それが彼女の名前であり、ラーミュの家主でもある。
そしてあの部屋を作った張本人……この少女が?
「そこの誰かさんが同居人になる、という事でしたっけ。よろしくお願いします誰かさん」
「上野、裕也です。よろしくお願いします!」
マルナさんは椅子から立ち上がってニヤニヤしながら、俺の横まで流れるように歩いてきた。
「裕也さん、私のお家を使うならあなたもラーミュさんのように働かないといけなくなります、分かりましたか」
「……はっ、はい!」
何でだろう、ヒモ生活が頭をよぎっていたが諦めざるを得ないようだ。あまり無礼を働きたくないし、なによりマルナさんが怖い! 変なオーラが溢れてるんです!
「そうですね、貴方はどうしましょう。ラーミュさん、どんな事がいいと思いますか」
マルナさんの髪の毛が鼻にあたってくすぐったい、お花の香りがする。
「私のお茶屋を手伝わせるから、それでいいでしょ?」
ラーミュが無理やり俺を抱き寄せてくる。今度はラーミュの髪が顔に当たってくすぐったい、お茶の香りがする。
「でもラーミュさん一人で事足りてますよね」
「少し雑用が欲しいと思っててさ」
「そんな忙しいお仕事でもないでしょう」
空気が重いです、マルナさんのお目目がラーミュさんをがっちり捉えております。
「最近ナスタティーも有名になってきたからさ、ちょっと忙しくなってきて。ね?」
「暇そうに見えますけど」
「マルナが来たのって結構前でしょ? 今は本当に人がいっぱい来るの!」
「そうなった時点で人募った方が良かったのでは」
「忙しすぎて暇がなかったの!」
「あー、そうですか。
…………そうですね。じゃあそういう事にしておきます」
マルナさんがラーミュさんから目を離して、椅子に戻った。
「まぁー、裕也くんにはお茶屋さんで経験積んでもらってから別の仕事やってもらいます、いいですか」
「あっ、はい!」
世間話とか一切する気がない、ちょっと笑いながら挨拶してお茶菓子でもいただきながら話せる感じだと思ってたのに、異世界転生したのに一気に現実に戻された気分だ。
あー、理不尽な理由で先生に怒られた事思い出してきた。
マルナさんが俺に手招きしてきたので椅子に近づくと、胸ぐらを無理やり引き寄せられ、耳元にあたたかい息が吹き込んできた。
「上手にできたら、ご褒美あげますからね」
多分吊り橋効果的なアレなんだろうけど、高まっていた感情が緊張から恋みたいな何かにじわじわと切り替わっていった。
「返事は」
「あっ、はい……」
優しく胸ぐらを戻された際に見たマルナさんの顔は、先程とは打って変わって慈愛に満ちていた。
「じゃあ、もうお話する事もありませんので今日はここまでにしましょう」
「えっ、もういいの?」
「いいです、じゃあ玄関まで」
それから本当に、何も話す事なく玄関まで案内されて外に出された。
庭の入口まで送り届けられると、
「それじゃあ頑張ってくださいね裕也さん」
マルナさんが一言。
「はい!」
元気よく返事してから、俺たちは家に戻った。
「ちょっと苦しいかなって思ったけど、良かったぁ……」
家に着くと、ラーミュちゃんはそう言って大きく息を吐いた。
「そういう事で明日から頑張ってもらうから、よろしくね!」
「あっ、うん!……良かったってな、何が?」
「もう大丈夫だから気にしなくていーよっ!」
そう言われると余計気になるのが人間の性なのでございますが。
しかし、思い描いていたレールから急に外れていった気分で、とても不安だ。
もうちょっと何かチート能力があって楽できる生活が良かった、ちくしょー!
でもラーミュさんと同居できて一緒にお仕事できるなら全然悪くないな、寧ろ最高だ。
怖いのはその後だけど。
折角だし、何か能力無いかな、と目を瞑って何かを念じようと試みる。
ふと、マルナさんの顔が頭に浮かんだ。
偉そうに座っていたマルナさん、にっこりしたマルナさん、ニヤニヤしながら近づいてきたマルナさん、最後に見た優しいマルナさん。
……いい匂いだったなぁ、マルナさん。
そしてあの部屋を作った張本人……この少女が?
「そこの誰かさんが同居人になる、という事でしたっけ。よろしくお願いします誰かさん」
「上野、裕也です。よろしくお願いします!」
マルナさんは椅子から立ち上がってニヤニヤしながら、俺の横まで流れるように歩いてきた。
「裕也さん、私のお家を使うならあなたもラーミュさんのように働かないといけなくなります、分かりましたか」
「……はっ、はい!」
何でだろう、ヒモ生活が頭をよぎっていたが諦めざるを得ないようだ。あまり無礼を働きたくないし、なによりマルナさんが怖い! 変なオーラが溢れてるんです!
「そうですね、貴方はどうしましょう。ラーミュさん、どんな事がいいと思いますか」
マルナさんの髪の毛が鼻にあたってくすぐったい、お花の香りがする。
「私のお茶屋を手伝わせるから、それでいいでしょ?」
ラーミュが無理やり俺を抱き寄せてくる。今度はラーミュの髪が顔に当たってくすぐったい、お茶の香りがする。
「でもラーミュさん一人で事足りてますよね」
「少し雑用が欲しいと思っててさ」
「そんな忙しいお仕事でもないでしょう」
空気が重いです、マルナさんのお目目がラーミュさんをがっちり捉えております。
「最近ナスタティーも有名になってきたからさ、ちょっと忙しくなってきて。ね?」
「暇そうに見えますけど」
「マルナが来たのって結構前でしょ? 今は本当に人がいっぱい来るの!」
「そうなった時点で人募った方が良かったのでは」
「忙しすぎて暇がなかったの!」
「あー、そうですか。
…………そうですね。じゃあそういう事にしておきます」
マルナさんがラーミュさんから目を離して、椅子に戻った。
「まぁー、裕也くんにはお茶屋さんで経験積んでもらってから別の仕事やってもらいます、いいですか」
「あっ、はい!」
世間話とか一切する気がない、ちょっと笑いながら挨拶してお茶菓子でもいただきながら話せる感じだと思ってたのに、異世界転生したのに一気に現実に戻された気分だ。
あー、理不尽な理由で先生に怒られた事思い出してきた。
マルナさんが俺に手招きしてきたので椅子に近づくと、胸ぐらを無理やり引き寄せられ、耳元にあたたかい息が吹き込んできた。
「上手にできたら、ご褒美あげますからね」
多分吊り橋効果的なアレなんだろうけど、高まっていた感情が緊張から恋みたいな何かにじわじわと切り替わっていった。
「返事は」
「あっ、はい……」
優しく胸ぐらを戻された際に見たマルナさんの顔は、先程とは打って変わって慈愛に満ちていた。
「じゃあ、もうお話する事もありませんので今日はここまでにしましょう」
「えっ、もういいの?」
「いいです、じゃあ玄関まで」
それから本当に、何も話す事なく玄関まで案内されて外に出された。
庭の入口まで送り届けられると、
「それじゃあ頑張ってくださいね裕也さん」
マルナさんが一言。
「はい!」
元気よく返事してから、俺たちは家に戻った。
「ちょっと苦しいかなって思ったけど、良かったぁ……」
家に着くと、ラーミュちゃんはそう言って大きく息を吐いた。
「そういう事で明日から頑張ってもらうから、よろしくね!」
「あっ、うん!……良かったってな、何が?」
「もう大丈夫だから気にしなくていーよっ!」
そう言われると余計気になるのが人間の性なのでございますが。
しかし、思い描いていたレールから急に外れていった気分で、とても不安だ。
もうちょっと何かチート能力があって楽できる生活が良かった、ちくしょー!
でもラーミュさんと同居できて一緒にお仕事できるなら全然悪くないな、寧ろ最高だ。
怖いのはその後だけど。
折角だし、何か能力無いかな、と目を瞑って何かを念じようと試みる。
ふと、マルナさんの顔が頭に浮かんだ。
偉そうに座っていたマルナさん、にっこりしたマルナさん、ニヤニヤしながら近づいてきたマルナさん、最後に見た優しいマルナさん。
……いい匂いだったなぁ、マルナさん。
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