あなたの人生、なまくらですか?

桐坂数也

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奉られて剣士さま、で窮地。

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しかし、全ての客を捌き切るのは、さすがのしのぎでも無理だったようだ。

酔ってすっかり上機嫌の、領主の家人が近づいてきた。

戦刃せんじんの御使いがやって来るとは、まことに心強い」

ここまでは何度も聞かされた。

「その御使いの御業、ぜひとも拝見したいもの。いかがでござろう」

「おお、それはよい」

すかさず領主が同意の声を上げた。みなの注目が集まる。

俊哉としのぎは、素早くめくばせを交わした。


雷を呼んだり、異形の神獣を召喚したり、などという技は当然、ない。
藁束斬りくらいが関の山だった-――今の俊哉にはそれでも大技だったが。

しかし、普通の藁束斬りくらいでは衆目は到底満足しないだろう。
できるだけ派手な演出になるよう、あらかじめ剣には、ほのかに光る鱗粉を仕込んであった。
後は俊哉のパフォーマンス次第。


のはずだったのだが。


「待たれよ」

冷や水、というより氷水を浴びせるくらいの冷徹な声が割って入った。

目つきの鋭い痩せぎすの男が立ち上がり、領主に向かって一礼する。

「お屋形さま。据え物斬りなどではみな満足致しますまい。ここは一番、わたくしが立ち合いとう存じます」

「稜水か。そちが立ち合うのか」

「はい。これをもって」

と、稜水は剣を目の前に掲げた。


どよめきが上がった。真剣勝負をするというのである。

俊哉としのぎは、再び顔を見合わせた。予想外の展開だ。まさか神刃しんじんに挑む者があろうとは。

場はおおいに沸いた。領主も興味津々だ。

「これはよい。稜水は当家でも名うての剣の使い手じゃ。神刃にどれほど敵うかの」

「恐れ入ります。非才の身なれど、座の余興に神刃さまのご威光をお示しいただければ幸いかと」

稜水は一礼した。冷静だ。飲んではいるが、酔ってはいない。


―――おれを値踏みする気だな。

俊哉はそう感じた。
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