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盗賊は深追い注意、で逆撃。
6.降臨
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人はそう簡単にトランス状態にはならない。
神を降ろすには、それなりの手順が要る。
永年それを繰り返してきた老巫女すぐはの手順は熟練の技を感じさせるものだったが、正直に言うと傍から見ていてあまり気持ちのいいものではない。
それでも俊哉は根気強く待った。
老巫女が大きくのけぞり、ついでがくりと頭を垂れた。
俊哉はちょっと驚いたが、なおも黙って見ていると、やがて老巫女は背筋をしゃんと伸ばして顔をあげた。
黙って俊哉を見やる。明らかに今までと違う気配がする。
なおも双方、黙したまま。
そのふたりを、しのぎは息をつめて見つめていた。
「訊きたいことがあるのではないか?」
だいぶ経ってから、老巫女―――あるいは神―――が問いかけた。声色も若干変わっている。幾分男性的で、大きくはないが力を感じさせる声だ。
「あんたこそ、説明の義務があるだろう」
俊哉は言い返した。ずいぶんと無礼な物言いだったが、神は怒らなかった。
「違いない」
と言って薄く笑った。
「しかし、あまり詳しく種明かしをしてしまっては、本来の目的をゆがめてしまうでな。
おぬしに関して言えば、最初にこの娘が言ったとおりだ。好きにしてよい」
「困る。人の都合も考えずに呼び出しておいて好きにしろとは、ずいぶん無責任じゃないか」
「ではおぬしは、わしにどうしてほしいのじゃ?」
「それは……。」
俊哉は言いよどんだ。勝手に呼び出されたのは腹立たしいが、その上ああしろ、こうしろと強制されるのも余計腹立たしい。
「そして、おぬしはどうしたいのじゃ?」
「……。」
「それがおぬしの答えでもあり、わしの答えでもある。
医刀はおぬしを拒んだが、おぬしはどうじゃ。心から医刀を望んでいたか?」
神を降ろすには、それなりの手順が要る。
永年それを繰り返してきた老巫女すぐはの手順は熟練の技を感じさせるものだったが、正直に言うと傍から見ていてあまり気持ちのいいものではない。
それでも俊哉は根気強く待った。
老巫女が大きくのけぞり、ついでがくりと頭を垂れた。
俊哉はちょっと驚いたが、なおも黙って見ていると、やがて老巫女は背筋をしゃんと伸ばして顔をあげた。
黙って俊哉を見やる。明らかに今までと違う気配がする。
なおも双方、黙したまま。
そのふたりを、しのぎは息をつめて見つめていた。
「訊きたいことがあるのではないか?」
だいぶ経ってから、老巫女―――あるいは神―――が問いかけた。声色も若干変わっている。幾分男性的で、大きくはないが力を感じさせる声だ。
「あんたこそ、説明の義務があるだろう」
俊哉は言い返した。ずいぶんと無礼な物言いだったが、神は怒らなかった。
「違いない」
と言って薄く笑った。
「しかし、あまり詳しく種明かしをしてしまっては、本来の目的をゆがめてしまうでな。
おぬしに関して言えば、最初にこの娘が言ったとおりだ。好きにしてよい」
「困る。人の都合も考えずに呼び出しておいて好きにしろとは、ずいぶん無責任じゃないか」
「ではおぬしは、わしにどうしてほしいのじゃ?」
「それは……。」
俊哉は言いよどんだ。勝手に呼び出されたのは腹立たしいが、その上ああしろ、こうしろと強制されるのも余計腹立たしい。
「そして、おぬしはどうしたいのじゃ?」
「……。」
「それがおぬしの答えでもあり、わしの答えでもある。
医刀はおぬしを拒んだが、おぬしはどうじゃ。心から医刀を望んでいたか?」
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