魔法少女の敵なんだが魔法少女に好意を寄せられて困ってる

ブロッコリークイーン

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第8話

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 余は今桜井莉緒の家で風呂に入っている。

 いや、余はいつまで桜井莉緒の家にいるのだ。

 一応粘ってはみたがあまりにも桜井莉緒がしつこくくるから断れずお風呂に入っている。

 全て断ったのだがな、まず怪我の処置、料理、風呂、全て断ったはずなのだが結局全て世話になってしまっている。

 一応余と桜井莉緒は敵なのだからこんなことはあってはならないはずなのだがな。

 まぁすべては流れの都合上仕方なくなんだがな。

 余は風呂から上がり、シャワーを浴びる。

 なぁこれって勝手にジャンプーとかって使って良いものなのだろうか?使った場合匂いが同じになってしまうのではないか?もし気付かれてしまったらどうするのだ?いや、気にしすぎだ。誰も気付かないだろう。

 よし、じゃあ風呂も入ったことだからさっさと帰る準備でもしようか。

 桜井莉緒の父親から服を借りるのだが、借りるってことは返さないないといけないってことだ。返す時って礼を言えばいいのか?だが、濡らしてきたのは桜井莉緒の方だからなぁ。

 適当に返せば良いか。

 関係ないが濡れている髪を雑に拭くのが何気に好きなんだよなぁ。

 さぁ完璧に帰る準備はできたぞ。やっとこれでこの家から出られるぞ。

 このまま黙って帰った方がもうアクシデントが起きにくいから黙って帰りたいところだが、一応一言くらいあっても良いだろう。

「ねぇお父さん、もうそろそろ再婚とか考えても良いんだよ」

「あはは。そんなの考えてないよ」

 一言かけようとさっきのリビングに戻ろうとすると桜井莉緒と桜井莉緒の父親が何か話し合っていた。

「もうお母さんのこと忘れてもいいんだよ」

「忘れないよ。僕の妻はあの人だけだからなぁ」

「お母さんもお父さんが再婚してくれるのを願ってるよ、きっと」

 おいおい、家の中に余がいること忘れてないか?なんでそんな重い話になっているんだ?勘弁してくれよ、さっさと帰れると思っていたんだがな。

「そんなことないよ。浮気なんてしたら怒られるよ」

「そんなこと言って本当は私が邪魔だから再婚ができないんでしょ?だから再婚しないだけなんだよね?」

「落ち着いて莉緒。本当にそれだけはないよ」

 おーい、余はまだこの家にいるぞー。さっきまで一緒にご飯を食べていただろー。お前が家に連れてきたんだろー。

 いや待て。もしかして余を連れてきたのは桜井莉緒ではない?そうだ、今思えばおかしかったんだ。傷の手当てもして、ご飯も用意して、お風呂も借りて、敵なのにこんなことするはずがない。という事はあいつは桜井莉緒ではないかもしれない。逆にあいつが桜井莉緒だとしたら余が余ではない可能性もある。

 余は何言っているんだ?

 あいつらが重い話をしているから変な思考になってしまったじゃないか。

 お互い熱くなっているみたいだから余に気付くのは無理だろうな。もう、こっそり帰ってやろうか?

「私がいるからお父さんが不幸なんだ」

 おいおい、周りのことを気にせずに大声で叫ぶなよ。ビックリしただろ。

「そんなことないよ」

「嘘つかないでよ。お父さんいっつもお母さんがいなくて寂しそうにしてたじゃん。お母さんじゃなくて私がいなくなれば良かったんだ」

 バンッとドアが開き、桜井莉緒がリビングから出てきた。

 おいおい、待て。家から出ようとするなよ。せめて声を掛けさせろ。このままだったら家に帰れないだろ。

 桜井莉緒はそのまま家の外へと出て行ってしまった。

  せめて余が声かけてから家から出て行けよ。そもそも他人が家にいる時にそういう話をするなよ。二人きりの時にしろよ。
 
 あ!そうか桜井莉緒の父親の方に声を掛ければ良かったのだ。別に桜井莉緒に声を掛ける必要はなかったではないか。

 さっさと桜井莉緒の父親に声を掛けて帰るとするか。

「おい、もう余は帰るからな」

 桜井莉緒の父親の近くに寄って行き声を掛けた。

「あ、そうだった。宇野くんまだ家にいたのにごめんね。こんな場所に居合わせてしまって」

「別に良いから、もう余は帰るからな」

 そう言って玄関の方へ向かおうとすると。

「ごめん。ちょっとだけ待って」

「ん?なんだ?」

「莉緒の様子を見てきてくれないかな?」

「は?なぜ余がそんなことをしなければいけないのだ」

 もう一度確認しておくが余と桜井莉緒は敵同士であって、そんなことする必要なんか一ミリもない。
 
 怪我の手当てをやってもらったのも、ご飯を食べたのも、お風呂に入ったのも流れがあったからそうしたわけであって、今から桜井莉緒の様子を見に行くのはまた別の話だ。

「そもそもお前が行けば良いだけの話だろ」

「今僕が行っても逆効果な気がするんだ」

「だからってただのクラスメイトが行っても意味ないだろ」

「そこをお願い。今莉緒の近くに誰かがいてあげてほしいんだ」

 いや、それって余じゃなくて絶対他の魔法少女の役目だろ。流石にこれは余のやることではない、きっぱり断ってやる。

「お願いします」

 桜井莉緒の父親は深々と頭を余に下げてきた。

 どんなに頭を下げられようと無理なものは無理だ。頭下げるくらいなら逆効果であっても自分で行けば良い話なのだ。

 頼むから早くその頭を上げてくれ。余が行くまでそうしている気なのか?

「はぁ~分かったから頭を上げろ」

「ありがとう」

「一応言っておくが本当に見に行くだけだからな。それが終われば余はすぐ帰るからな」

「うん」

 だぁーくそ。余のバカヤロー。そんなに頭下げられたら断れないだろー。なんで良いって言ってしまうんだよ。

 もういいよ、受けたのはもう仕方ないからさっさと桜井莉緒に会って余は家に帰ってやる。

 ていうか、あいつが出ていってから結構経ってしまったよな、今から急がないとあいつがどこに行ったのか分からなくなってしまう。

 仕方ない、少し魔法を使って桜井莉緒の居場所特定してやる。おいおい、結構遠い所に行ってやがる。

 だが、余の運動神経を舐めるなよ。すぐに追いついてやるからな。

 
* * *


 どこだよここ。

 よく分からない山奥まで来てしまった。そこに桜井莉緒が地べたに体育座りでいた。なんでこんな所にいるんだよ。

「おい」

「へ?どうして?」

「お前の父親に頼まれたからだよ」
 
「どうしてここが分かったの?」

 やべー魔法を使ったとは言えないし。

「あーえー。ここじゃないかって言われたんだよ」

「そっか。ここね、昔家族みんなで来てたんだ。昔は家族みんな仲良かったんだけど、お母さんがいなくなってからすれ違いが多くなっちゃって」

 悪いが余はこいつの父親でもないし、友達でもないし、魔法少女でもない。だからここで慰めることなんてしない。

「いいから立て、早く帰るぞ」

 桜井莉緒の腕を引っ張り無理矢理立たせた。

 もう無理だ。今日は色々ありすぎた。もうこいつには話させない。無理矢理にでも家に連れて帰らせてやる。

 なんで魔法少女なんかにこんなことをしなければいけないんだ。

 あれ?ちょっと待てよ。もしかしてこいつが精神状態が乱れている原因ってこれじゃないか?だとするとこれってかなりのチャンスなのかもしれない。この父親との関係についてさらに悪化すればもう桜井莉緒が変身しているピンクの魔法少女は魔法が使えなくなる。

 これはもうちょっとあいつらのことを知る必要があるな。

「おい、お前は元々父親と仲が悪かったのか」

「ううん。お母さんがいた時はみんな仲良かったよ」

「じゃあ何で今はそんなことになっているんだ」

「お父さんがいつまでもお母さんのことを忘れなくて寂しそうにしてるから再婚した方が良いと思ったんだけど私がいるから」

 あー。そう言えばさっきもそんなこと言ってた気がするな。

 つまりはどういうことだ?桜井莉緒の父親は母親がいなくなってから母親が忘れられずにいて寂しそうにしているから、桜井莉緒が再婚を提案をするが、その提案を父親は却下して、それは桜井莉緒が自分がいるからであると思っていて、だから桜井莉緒は自分がいると父親は不幸だと思っているんだな。それが精神状態が乱れている原因であるというわけだな。

 だから余はどうすれば良いのだ?とりあえずは父親に再婚をさせなきゃずっと桜井莉緒は自分が父親にとって邪魔者だと思い続けるから、父親の再婚を阻止すればなんとかなるのか。

 これからの方針は桜井莉緒の父親の再婚を阻止する方向にするとしよう。

 余が考えごとをしていると桜井莉緒が話しかけてきた。

「ねぇ。宇野くんって本当は優しいの?」

「は?」

 急に何言ってんだ?

「だって、お茶かけても怒らなかったし、こうやって私を見つけに来てくれたし」

 全部流れで仕方なくなんだよ。

「そんなわけないだろ」

「そうかな?」

「余が優しいわけないだろ」

 余はお前らを倒して王になるのだぞ。

「最初はそう思ってたんだけど、なんか一緒にいるとそうでもないような気がして」

 最初は優しいわけがないと思っていたのか?

「なんだそれ」

「あと委員長もやってくれたじゃん」

「それはお前が言ったからだろ」

「分かりにくいかも知れないけど優しいよ宇野くんは」

 何でこいつは余を優しいことにしたいんだ。

「余が優しいってことはない。絶対にだ」

 地球を征服して王になろうとしているんだぞ、何で人間に優しくしなくちゃいけないんだ。

「そういう事にしておく」

 なんだよその言い方。

「ねぇ今後私どうすれば良いと思う?」

 話の変わり方エグいな。

「何がだ」

「お父さんとの関係」

 だからそれを何で余に相談するんだよ。
 
「知らん。そんなもの余に聞くな」

 たとえ知っていても言うわけがないがな。

「そうだよね。ごめん」

 謝るなよ調子が狂うだろ。

 こいつの精神状態が乱れている原因も分かったから明日から動くとするか。

 よし、昨日決めた案を今日から実行に移していくとしよう。

 とりあえず桜井莉緒の父親が再婚をしないように、何か恋愛に発展しそうなことが起これば阻止しなければならない。

 だから桜井莉緒の父親を24時間監視する必要がある。

 だけど余は学校があるから24時間も監視なんかできるはずがない。しかし、余は魔法が使えるのだ。余の分身が桜井莉緒の父親を24時間監視を続けて動きがあれば余が実際に現場に行って対処する。

 これで桜井莉緒は永遠に魔法が使えず、いずれ余が勝って地球の王になるのだ。

 少し集中して余の分身を作り出した。

「では、お前は桜井莉緒の父親をずっと監視しておくんだぞ。絶対に見つかるなるなよ」

 余がそう言うと分身は返事はせず頷いた。

 * * *

 数日経ったが動きが全くない。

 桜井莉緒の父親は普通に仕事して普通に家まで直帰して普通に過ごしている。

 桜井莉緒の父親は本当に再婚する感じの動きを見せない。

 だが、桜井莉緒の方はまだ魔法が使えずにいるらしい。余がいないと思っていつもの体育館の裏で話し合っているから分かった。

 これからも桜井莉緒の父親が再婚しないように監視が必要だな。

 あれ?違うよな魔法少女を倒すのが目的だよな。何で桜井莉緒の父親が再婚しないようにしているんだ?

 桜井莉緒の父親が再婚しないようにするのは過程であって最終目的は魔法少女を倒すことだ。

 危ない危ない、本来の目的を見失うところだった。

「はーい、みんな座って。ホームルーム始まるよ」

 ガララッとドアを開けて担任が入ってきた。

 はぁ~、今日も憂鬱な時間が始まる。

* * *

「はい、ここ重要だからね。」

 世界史の授業をやっているのだが、つまらん。どうせあともう少しで余が地球を征服するのだから世界史の意味などない。

 今の時間はちょうど12時になった。終わるまでにはまだ時間がある。

 こんな授業を受けていても仕方ない。ちょうど12時ということは一般の会社は昼休憩に入る時間だ。

 だから、桜井莉緒の父親がもしかしたら動きを見せるかもしれないから余の分身と視覚を共有して、桜井莉緒の父親を監視することにするとしよう。

 片手で自分の目を隠して分身の方が見えている景色を見る。

 桜井莉緒の父親が自分のデスクから立ち、移動をしようとしていた。

 ちなみに余の分身はここの会社の清掃員の格好になって潜入している。

 魔法を使えれば簡単に会社に入れるし、服装だって変えることもできる。だから、潜入に成功しているのだ。

 これならばバレる心配は一切ない。だから安心して余の分身を単独で動かせることができるのだ。

 桜井莉緒の父親は身支度をして外へと向かう。

 昼ご飯でも食べに行くのか?
 
 余の分身を桜井莉緒の父親の背後に尾行させて動きを探る。

「…………ぅん」

 ん?どこからか声が聞こえてくる。

「………くん」

 どこからだ?

「宇野くん、起きて」

 宇野くん?余のことか?

「宇野くん、先生めっちゃ睨んでるよ」

 ああ、分身の方に気を使いすぎて実物の方を気を緩めすぎた。

 世界史の先生が余のことを睨んできている。

 余は椅子から立ち上がる。

「悪い、寝てた」

 素直に謝る余は素晴らしい王になれると思う。もちろん頭は下げないがな。

「いや、なんでそんな偉そうなの?」

「偉いからな」

「あなたは偉くないからね、立場上私が教師であなたは生徒なの。だから私の方が上なの」

 こいつが言っていることもあながち間違いではない、教える者と教えを請う者だから、それは教える者の方が上なのは間違ってはいない。
 
 だが、

「余はこのクラスの王だ」

「委員長なだけでしょ」

「だから王だ」

 誇らしいことだから胸を張る。
 
「ちょっと周りを見てみなさいよ」

 ん?周りか?

 周りを見渡すと笑っている奴もいれば、引いている奴もいる。

 ん?どうしてだ?余が王なのだからお前らも誇らしいだろう?

「もういいわ、座りなさい。次はちゃんと聞いててね」

「ああ」

 余は返事をして椅子に座る。

 さて、もう一度桜井莉緒の父親の監視を再開しよう。

「ねぇ」

 隣の桜井莉緒に肩をツンツンと突かれ桜井莉緒の方へ向く。

「なんだ」

「その王ってやつ辞めたら?」

「なぜだ?」

「みんなと馴染めなくなるよ」

「そんなもの不要だ」

 王とは孤高で1番上に立つ者、よってクラスのみんなと馴染む必要もない。

「それだと寂しいよ?」

「そんなこと余が寂しがる訳がない」

「宇野くんは優しいんだからもったいないよ」

「だから余は優しくない」

 こいつはなんで余を優しいようにしたいんだ。

「あと、余の心配をしている暇はあるのか」

「え?」

 おっとこれは言い過ぎたか?

 これ以上言ったら余が桜井莉緒が魔法少女だと知ってるいることに気づかれてしまう。

 だが、余はこいつと父親の問題のことを知っているから言い訳はできる。

 余はこいつと話している暇などない。桜井莉緒の父親の監視をしなくてはならない。

 さてと、動きはあるか?

 余はもう一度片手で目を隠して分身の方の景色を見る。
 
 分身はしっかり桜井莉緒の父親を追っていてくれたようだ。

 すると桜井莉緒の父親は誰かと話していた。

 誰と話しているのだ?

 次の瞬間、桜井莉緒の父親は大きなスライム状の何かに取り憑かれてしまった。
 
 ということはさっき桜井莉緒の父親と話していたあいつはデスゴーンだったのか。

 だが、もうすでにデスゴーンの行方は分からなくなっていた。

「先生、私保健室行ってきます」
 
「大丈夫なの?」

 隣の席の桜井がガタッと急いで席を立ち、教室を出て行く。

 ということは気づいたのだろうな。

 だが、怪人化したのが父親ということには気づいてないだろうな。

「先生、私も」

 次はレッドの魔法少女の高宮千沙が席を立ち、教室を出て行く。
 
「高宮さんも?」

「先生、私は2人のことが心配なので連れ添いで行きます」

 次はブルーの魔法少女の九重菫が席を立ち、教室を出て行く。

「九重さんまで?」

 これは普通の戦いではないぞ、桜井莉緒は怪人化したのが自分の父親だと知ったらきっと戦えなくなる。

 つまり、この戦いで魔法少女たちは負ける。

 それはちゃんとこの目で見なくてはならない。

 余は席を立ち、魔法少女たちに続く。

「すまん、散歩してくる」

「いや、君はダメだよ」


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