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第1章 香奈子編「私があなたに惹かれた理由」
2.逃避
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一晩中泣き明かした。
「結婚」の2文字に踊らされていた自分が情けなかった。ずっと心の中にあった違和感はこれだったのかもしれない。
涙をぬぐい過ぎて、目じりが痛い。どうやら、私の目はぼってりと腫れ上がっているようだ。顔を洗おうと洗面台に向かい、鏡を見た途端、自分の顔が赤く腫れあがって、マンガでしか見たことないような目の腫れ方になっていた。
「ひどい顔…」
こんな状態では出社できない。私と篤志は、同じ会社に勤務している。だから会いたくなかった。階や部署が違うとはいえ、どこで会うかわからないから。
会ってしまって泣きはらした姿を見られるは絶対に嫌だ。
ベッドルームに戻り、会社には電話をした。体調不良だと言って、有給を取ることにした。私のかすれた声を聞いた課長は、風邪をこじらせたとでも思ったようだった。「ゆっくり休みなさい。」と優しい声をかけてもらった。
電話を切った後も、篤志との楽しかった日々を思い出しては泣き、泣きながら思い出すを繰り返し、魔のループの真っ只中にいた。食欲もなく、何にもする気になれなかった。
今までに、失恋は何度か経験している。でも、プロポーズを受けた後に破局したのは初めて。うれしさが強かった分、今回のダメージは耐え難く辛かった。
もういい加減何とかしなきゃと思っても、何かをするたびに、篤志と過ごした日々を思い出してしまう。五年も付き合っていた彼を忘れることができるのかどうか、30代半ばになって次があるのかどうか…。
私は迷宮に追い込められたウサギのように暗い森の中をさまよっているような感覚に陥っていた。
ふと、床に落ちていた雑誌に目をやると、サラ・ジェシカ・パーカーの記事が目に入った。
そのとき、彼女が主演した映画で結婚式をすっぽかされた主人公が、友達と旅に出るというシーンがあったことを思い出した。そしたら急に自分もどこか知らない街に行けば少しは気分が良くなり、つらい気持ちを忘れることができるんじゃないかと思うようになった。
「そうだ、私もどこか行こう…。」
心の声が音となって耳に届いた。
一度、自分自身をリセットしなくては何にもできない。
のそのそとベッドから離れ、テーブルの上のパソコンを立ち上げ、ネットで一人になれる場所を探すことにした。
検索ワードは「失恋・離島・旅行」。
さまざまなページを見てはいるが、これといったところがない。リゾートなんかじゃなくていい。何にも考えなくて済むところ、そんなところを探していた。
しばらくぼーっとパソコンの画面を見ていると、まぶしい海と白い船の写真が目に飛び込んできた。
新潟県にある佐渡ヶ島というところのようだ。ここなら篤志との思い出はないし、一人で考える時間もできる。
船に乗って本州を離れるというところに惹かれ、ここに行くことに決めた。
離島ではあるけど、船もかなりの便が出ているし、今から支度しても今日中には着ける。そう確信した私は、パジャマを抜け殻のように脱ぎ捨て、旅行カバンに最低限必要な物だけを詰め、あとはスマホと財布を手にして東京駅へと急いだ。
「結婚」の2文字に踊らされていた自分が情けなかった。ずっと心の中にあった違和感はこれだったのかもしれない。
涙をぬぐい過ぎて、目じりが痛い。どうやら、私の目はぼってりと腫れ上がっているようだ。顔を洗おうと洗面台に向かい、鏡を見た途端、自分の顔が赤く腫れあがって、マンガでしか見たことないような目の腫れ方になっていた。
「ひどい顔…」
こんな状態では出社できない。私と篤志は、同じ会社に勤務している。だから会いたくなかった。階や部署が違うとはいえ、どこで会うかわからないから。
会ってしまって泣きはらした姿を見られるは絶対に嫌だ。
ベッドルームに戻り、会社には電話をした。体調不良だと言って、有給を取ることにした。私のかすれた声を聞いた課長は、風邪をこじらせたとでも思ったようだった。「ゆっくり休みなさい。」と優しい声をかけてもらった。
電話を切った後も、篤志との楽しかった日々を思い出しては泣き、泣きながら思い出すを繰り返し、魔のループの真っ只中にいた。食欲もなく、何にもする気になれなかった。
今までに、失恋は何度か経験している。でも、プロポーズを受けた後に破局したのは初めて。うれしさが強かった分、今回のダメージは耐え難く辛かった。
もういい加減何とかしなきゃと思っても、何かをするたびに、篤志と過ごした日々を思い出してしまう。五年も付き合っていた彼を忘れることができるのかどうか、30代半ばになって次があるのかどうか…。
私は迷宮に追い込められたウサギのように暗い森の中をさまよっているような感覚に陥っていた。
ふと、床に落ちていた雑誌に目をやると、サラ・ジェシカ・パーカーの記事が目に入った。
そのとき、彼女が主演した映画で結婚式をすっぽかされた主人公が、友達と旅に出るというシーンがあったことを思い出した。そしたら急に自分もどこか知らない街に行けば少しは気分が良くなり、つらい気持ちを忘れることができるんじゃないかと思うようになった。
「そうだ、私もどこか行こう…。」
心の声が音となって耳に届いた。
一度、自分自身をリセットしなくては何にもできない。
のそのそとベッドから離れ、テーブルの上のパソコンを立ち上げ、ネットで一人になれる場所を探すことにした。
検索ワードは「失恋・離島・旅行」。
さまざまなページを見てはいるが、これといったところがない。リゾートなんかじゃなくていい。何にも考えなくて済むところ、そんなところを探していた。
しばらくぼーっとパソコンの画面を見ていると、まぶしい海と白い船の写真が目に飛び込んできた。
新潟県にある佐渡ヶ島というところのようだ。ここなら篤志との思い出はないし、一人で考える時間もできる。
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離島ではあるけど、船もかなりの便が出ているし、今から支度しても今日中には着ける。そう確信した私は、パジャマを抜け殻のように脱ぎ捨て、旅行カバンに最低限必要な物だけを詰め、あとはスマホと財布を手にして東京駅へと急いだ。
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