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第1章 香奈子編「私があなたに惹かれた理由」
5.波の救い
もう辺りがすっかり暗くなったころ、やっと旅館に着いた。車から見える旅館の明かりがほっとさせるような暖かみを感じさせる。
車のドアを開けてたら、海風が私を撫でた。上着を羽織っていても少し寒いと感じた。
「この時期にしては少し寒いですね」
「もう夜だというのもありますが、今日は少し冷たいですね。さあ中にどうぞ」
「あっ、はい」
その時だった。暖かそうな光を放つ入口から宿の名が入ったエプロンをつけた女性が出てきた。
「いらっしゃいませ、お疲れ様でした」
そう言われて、私は軽く会釈して「よろしくお願いします」と言った。そしたら持っていた荷物をひょいと若だんなが持っていってしまった。
「あっ、荷物…」
「部屋まで運びますので、大丈夫ですよ。早く宿泊名簿に記入してください」
「これ、涼太郎!そんな言い方して!」
女性は、スタスタ歩いて中に入ってしまった若だんなの方を向いて怒っている。名前を呼び捨てにしているなんて、母親だろうか。そう思っていたら、
「お客さま、大変失礼いたしました。荷物はお部屋に運びますので、フロントで宿泊のお手続きをお願いいたします」
「はい」
宿泊手続きをして、案内された部屋へ向かった。
部屋は二階、階段を上がってすぐの部屋だった。中に入ってみると、見るからに古さを感じる、昭和という言葉がすぐに浮かぶような和室だった。
しかし、掃除が行き届いているのがよくわかる。床はピカピカだし、床の間に飾られた花もセンスがいい。そして何より何とも言えない暖かみがすごく感じられる。
今の私に一番必要なもの…だ。
荷物は、押し入れ戸の前に置かれていた。何というか、きれいに置いてあってびっくりした。口の悪い若だんなのあの調子ならドカッと乱暴に扱っていてもおかしくない気がしていた。だから、きれいに優しく整えてくれていたのが意外だった。
テーブルの前には座布団が1枚だけ置かれていて、これも若だんなが敷いていったのだろうと思った。部屋を案内してくれた女性スタッフは私が一人旅だと聞いて驚いていたし、その間に二階へ上がる人は誰もいなかったからだ。
座布団に腰を下ろした。なんか普通に観光に来たような変な気持ちでいる自分に驚いていた。あんなに何を見ても悲しかった自分はどこへ行ったのか…。
そこへノックの音が。
すぐに立ち上がりドアを開けてみると、さっき出迎えてくれた女性スタッフだった。
「はい」
「夕食の準備ができましたので、下の食堂へどうぞ」
「わかりました」
時計を見ると、もう7時半を過ぎていた。若だんなが「食事は時間が遅いので期待しないでください」と言っていたのを思い出した。
階段を下りてフロントを右に曲がると食堂の看板が見えた。食堂は、奥側がお座敷、手前側がテーブル席となっている。案内されたのはテーブル席だった。もう人もまばらで、今から食べ始めるのは私くらいなものだ。
さっき若だんなを叱っていた女性が大きなお盆を持ってきた。
「はい、おまたせしました」
「うわぁ、おいしそう!」
思わずそう声が漏れた。まったく期待していなかった食事…。お盆から次々とご馳走が私の前に並べられる。
宝石かと思うような煌めきを放つあわび。優しいクリーム色のサザエの刺身はもちろんだが、グツグツと音を立て、しょうゆと海の香りをさせているサザエの壺焼き。「期待しないでと言っていた料理がこれ!?」と驚いた。
はっきりいって私の大好物ばかりだ。
「こんなに!いいんですか?」
驚いて給仕をしてくれた女性の方を見た。
「はい。佐渡が初めてだって聞きましたのでね。おいしい物を食べてもらいたくて。ただあわびなんか小ぶりでごめんなさいね」
「いやもう、うれしいです。こんな時間だし、飛び入りだったのに。こんなご馳走を準備してもらって、なんかすみません」
「謝らないでください。さあさあ、冷めないうちにどうぞ」
「いただきます!」
手を合わせて頭を下げて、食べ始めた。
大好物のあわびに箸をつけると、粋が良すぎてまだ動いている。サザエも同様だ。口の中ではっきり命が感じられた。口の中が潮の香りでいっぱいになっていくのがわかる。出された料理は、本当に美味しくて、ネットで見た画像と説明文を遙かに超えていた。
私は箸を止めることができなかった。炊き立てのご飯や海藻が入ったお味噌汁は私のことを体の中から温めてくれている。忘れていた温かさだった。温もりだった。
きっと、若だんなが電話であらかじめ伝えておいてくれたのかもしれない。あんなに嫌な口を聞く人なのに本当は優しい人かもと思い始めていた。
食事の終わりを見計らったかのように、スタッフの女性がデザートを運んできてくれた。
「ここらの名産のおけさ柿のシャーベットです」
「デザートまであるなんて、本当に幸せです。ありがとうございます」
最後に出てきたのは、地元産の柿のシャーベット。へたの部分をスプーンでくりぬいて中身を食べるのだという。スプーンの上の柿は、濃いオレンジ色が印象的。柿なのに、ひとたび口に入れたら、この濃厚な甘さといったら……。たまらなく美味しい。しかもシャーベット状なので、優しくスプーンが入っていって、いくらでも食べられる。柿という季節はずれの果物がこんな形でデザートとして楽しめるなんて。
東京にいたらこんな美味しい物たちは、高級店に行かないと食べられない。
素晴らしい食事を堪能した私は、お礼を言って食堂を後にした。
廊下を進み、階段を上がろうとして一段上がっていた足を下に下した。フロントにいた若だんなと目が合ったから、食事のお礼をしようと思ったのだ。
「あの、食事とても美味しかったです。期待しないでくださいなんて言われていたから…」
「初めてのお客さんだし、板さんに聞いたらまだ食材があるっていうからお願いしておきました。楽しめたんならよかったです」
私の声を遮って早口で話してきた。
「本当にありがとうございました。きちんとお礼を言いたかったので」
「いえ、当たり前のことをしただけです」
ぶっきらぼうな言い方だったけど、それは無視して頭を下げて階段を上がって部屋に戻った。
部屋に入り、座ってホッと一息ついたときだった。
急に篤志と行った草津温泉へ旅行したときのことが蘇ってきた。
部屋食にしてもらって二人で「おいしいね」ってはしゃいだことや、貸し切り温泉に二人で入ったこと、たくさん撮った写メを見ては笑い合ったこと…。ずっと楽しい気持ちでいたあの頃…。
涙がこぼれそうになっていた。今ここで一人でいる。あれはもう過去のことだと強く思っても、笑っている篤志の顔が消そうになかった。
私は、部屋に置かれていた浴衣と入浴セットを持って、慌てて部屋を飛び出した。
部屋を出て、階段を降りて温泉の場所を聞くと、食堂とは反対側の通路を進んだ。女湯の暖簾(のれん)をくぐると、幸いなことに私一人だった。誰にも遠慮する事なく温泉に浸かって、涙の痕跡と篤志の思い出を消し去れる。そう思って、さっさと入った。
湯に体を静めたら、うっすら塩味があることに気がついた。島だから海に囲まれているせいだろう。波の音が聞こえる…。
その音に身を任せ目を閉じた。そして、「あのとき篤志と行った温泉とは違う」と自分に言い聞かせた。
そうしたら、いつの間にか頭の中から篤志はいなくなっていた。目を開いて、自分には自由と安堵があるんだと言い聞かせた。
波の音は今の私には心地良く、優しく包んでくれているような気がした。
おいしい食事や一人で入る温泉の温かさがあることで、篤志のいない生活や篤志にされた仕打ちを忘れなければいけないと思った。
波の音に身を任せていたら、のぼせそうになってしまった。のそのそと身支度を整えて、ペタペタと慣れないスリッパで部屋に戻ろうと廊下を歩く。
階段の手前に自販機があるのを見つけ、ビールを1本買った。
プシュ。部屋に入って荷物を置くとすぐ、缶を空けて飲んだ。
「こんなに苦かったっけ…?」
風呂上がりのビールは格別で、喉を滑り落ちていき、ヒリヒリする感覚がたまらないといつも思っていた。それなのに味覚がおかしくなったのか、苦さだけが口に残る。
入浴中にスタッフの誰かが布団を敷きにしてくれたのだろう。既に布団が敷いてあって、後は寝るだけの状態だった。ただ、眠れるかがどうかは別。あのことがあってから、ほとんど眠れていない。
半分残ったビールをテーブルに置き、布団の上に横になってみた。波の音が聞こえる。どのくらい近いのかと体を起こして窓から外を覗いてみると、海はすぐ近くだった。
左端の視界に、階段が見る。どうやらフロントを通らずにこの階からすぐに海辺に出ることができるらしい。
夜の海をぼーっと眺めるのもいいかもしれないと思い、飲みかけのビールを飲みほし、部屋を出て外階段の見えた方の廊下を進む。廊下の突き当りに扉があり「外階段」と書かれていた。
そこから外に出て階段の手すりにつかまりながら外へ出た。街灯が当たっているおかげで足元がしっかり見えていた。
階段の裏手に少し低めの防波堤があるのに気がついた。そこから先に海があるのだが、そこまで明かりが届かないのが残念だった。
防波堤が低いので、容易に登ることができる。そこに腰をかけて、波の満ち引きを聴いていた。明かりは電柱についている物しかないから、海の方は真っ暗でほとんど何も見えない。夜空に目をやると、そこには三日月が出ていた。
ザブーンという波の音と波が転がす小石の音、空には三日月、その中間に私が座っていた。
しばらくすると、ザシザシと足音が聞こえた。
「お客さん、風邪引きますよ」と急に声がした。慌てて振り返ると、あの意地悪そうな若だんなが立っていた。
車のドアを開けてたら、海風が私を撫でた。上着を羽織っていても少し寒いと感じた。
「この時期にしては少し寒いですね」
「もう夜だというのもありますが、今日は少し冷たいですね。さあ中にどうぞ」
「あっ、はい」
その時だった。暖かそうな光を放つ入口から宿の名が入ったエプロンをつけた女性が出てきた。
「いらっしゃいませ、お疲れ様でした」
そう言われて、私は軽く会釈して「よろしくお願いします」と言った。そしたら持っていた荷物をひょいと若だんなが持っていってしまった。
「あっ、荷物…」
「部屋まで運びますので、大丈夫ですよ。早く宿泊名簿に記入してください」
「これ、涼太郎!そんな言い方して!」
女性は、スタスタ歩いて中に入ってしまった若だんなの方を向いて怒っている。名前を呼び捨てにしているなんて、母親だろうか。そう思っていたら、
「お客さま、大変失礼いたしました。荷物はお部屋に運びますので、フロントで宿泊のお手続きをお願いいたします」
「はい」
宿泊手続きをして、案内された部屋へ向かった。
部屋は二階、階段を上がってすぐの部屋だった。中に入ってみると、見るからに古さを感じる、昭和という言葉がすぐに浮かぶような和室だった。
しかし、掃除が行き届いているのがよくわかる。床はピカピカだし、床の間に飾られた花もセンスがいい。そして何より何とも言えない暖かみがすごく感じられる。
今の私に一番必要なもの…だ。
荷物は、押し入れ戸の前に置かれていた。何というか、きれいに置いてあってびっくりした。口の悪い若だんなのあの調子ならドカッと乱暴に扱っていてもおかしくない気がしていた。だから、きれいに優しく整えてくれていたのが意外だった。
テーブルの前には座布団が1枚だけ置かれていて、これも若だんなが敷いていったのだろうと思った。部屋を案内してくれた女性スタッフは私が一人旅だと聞いて驚いていたし、その間に二階へ上がる人は誰もいなかったからだ。
座布団に腰を下ろした。なんか普通に観光に来たような変な気持ちでいる自分に驚いていた。あんなに何を見ても悲しかった自分はどこへ行ったのか…。
そこへノックの音が。
すぐに立ち上がりドアを開けてみると、さっき出迎えてくれた女性スタッフだった。
「はい」
「夕食の準備ができましたので、下の食堂へどうぞ」
「わかりました」
時計を見ると、もう7時半を過ぎていた。若だんなが「食事は時間が遅いので期待しないでください」と言っていたのを思い出した。
階段を下りてフロントを右に曲がると食堂の看板が見えた。食堂は、奥側がお座敷、手前側がテーブル席となっている。案内されたのはテーブル席だった。もう人もまばらで、今から食べ始めるのは私くらいなものだ。
さっき若だんなを叱っていた女性が大きなお盆を持ってきた。
「はい、おまたせしました」
「うわぁ、おいしそう!」
思わずそう声が漏れた。まったく期待していなかった食事…。お盆から次々とご馳走が私の前に並べられる。
宝石かと思うような煌めきを放つあわび。優しいクリーム色のサザエの刺身はもちろんだが、グツグツと音を立て、しょうゆと海の香りをさせているサザエの壺焼き。「期待しないでと言っていた料理がこれ!?」と驚いた。
はっきりいって私の大好物ばかりだ。
「こんなに!いいんですか?」
驚いて給仕をしてくれた女性の方を見た。
「はい。佐渡が初めてだって聞きましたのでね。おいしい物を食べてもらいたくて。ただあわびなんか小ぶりでごめんなさいね」
「いやもう、うれしいです。こんな時間だし、飛び入りだったのに。こんなご馳走を準備してもらって、なんかすみません」
「謝らないでください。さあさあ、冷めないうちにどうぞ」
「いただきます!」
手を合わせて頭を下げて、食べ始めた。
大好物のあわびに箸をつけると、粋が良すぎてまだ動いている。サザエも同様だ。口の中ではっきり命が感じられた。口の中が潮の香りでいっぱいになっていくのがわかる。出された料理は、本当に美味しくて、ネットで見た画像と説明文を遙かに超えていた。
私は箸を止めることができなかった。炊き立てのご飯や海藻が入ったお味噌汁は私のことを体の中から温めてくれている。忘れていた温かさだった。温もりだった。
きっと、若だんなが電話であらかじめ伝えておいてくれたのかもしれない。あんなに嫌な口を聞く人なのに本当は優しい人かもと思い始めていた。
食事の終わりを見計らったかのように、スタッフの女性がデザートを運んできてくれた。
「ここらの名産のおけさ柿のシャーベットです」
「デザートまであるなんて、本当に幸せです。ありがとうございます」
最後に出てきたのは、地元産の柿のシャーベット。へたの部分をスプーンでくりぬいて中身を食べるのだという。スプーンの上の柿は、濃いオレンジ色が印象的。柿なのに、ひとたび口に入れたら、この濃厚な甘さといったら……。たまらなく美味しい。しかもシャーベット状なので、優しくスプーンが入っていって、いくらでも食べられる。柿という季節はずれの果物がこんな形でデザートとして楽しめるなんて。
東京にいたらこんな美味しい物たちは、高級店に行かないと食べられない。
素晴らしい食事を堪能した私は、お礼を言って食堂を後にした。
廊下を進み、階段を上がろうとして一段上がっていた足を下に下した。フロントにいた若だんなと目が合ったから、食事のお礼をしようと思ったのだ。
「あの、食事とても美味しかったです。期待しないでくださいなんて言われていたから…」
「初めてのお客さんだし、板さんに聞いたらまだ食材があるっていうからお願いしておきました。楽しめたんならよかったです」
私の声を遮って早口で話してきた。
「本当にありがとうございました。きちんとお礼を言いたかったので」
「いえ、当たり前のことをしただけです」
ぶっきらぼうな言い方だったけど、それは無視して頭を下げて階段を上がって部屋に戻った。
部屋に入り、座ってホッと一息ついたときだった。
急に篤志と行った草津温泉へ旅行したときのことが蘇ってきた。
部屋食にしてもらって二人で「おいしいね」ってはしゃいだことや、貸し切り温泉に二人で入ったこと、たくさん撮った写メを見ては笑い合ったこと…。ずっと楽しい気持ちでいたあの頃…。
涙がこぼれそうになっていた。今ここで一人でいる。あれはもう過去のことだと強く思っても、笑っている篤志の顔が消そうになかった。
私は、部屋に置かれていた浴衣と入浴セットを持って、慌てて部屋を飛び出した。
部屋を出て、階段を降りて温泉の場所を聞くと、食堂とは反対側の通路を進んだ。女湯の暖簾(のれん)をくぐると、幸いなことに私一人だった。誰にも遠慮する事なく温泉に浸かって、涙の痕跡と篤志の思い出を消し去れる。そう思って、さっさと入った。
湯に体を静めたら、うっすら塩味があることに気がついた。島だから海に囲まれているせいだろう。波の音が聞こえる…。
その音に身を任せ目を閉じた。そして、「あのとき篤志と行った温泉とは違う」と自分に言い聞かせた。
そうしたら、いつの間にか頭の中から篤志はいなくなっていた。目を開いて、自分には自由と安堵があるんだと言い聞かせた。
波の音は今の私には心地良く、優しく包んでくれているような気がした。
おいしい食事や一人で入る温泉の温かさがあることで、篤志のいない生活や篤志にされた仕打ちを忘れなければいけないと思った。
波の音に身を任せていたら、のぼせそうになってしまった。のそのそと身支度を整えて、ペタペタと慣れないスリッパで部屋に戻ろうと廊下を歩く。
階段の手前に自販機があるのを見つけ、ビールを1本買った。
プシュ。部屋に入って荷物を置くとすぐ、缶を空けて飲んだ。
「こんなに苦かったっけ…?」
風呂上がりのビールは格別で、喉を滑り落ちていき、ヒリヒリする感覚がたまらないといつも思っていた。それなのに味覚がおかしくなったのか、苦さだけが口に残る。
入浴中にスタッフの誰かが布団を敷きにしてくれたのだろう。既に布団が敷いてあって、後は寝るだけの状態だった。ただ、眠れるかがどうかは別。あのことがあってから、ほとんど眠れていない。
半分残ったビールをテーブルに置き、布団の上に横になってみた。波の音が聞こえる。どのくらい近いのかと体を起こして窓から外を覗いてみると、海はすぐ近くだった。
左端の視界に、階段が見る。どうやらフロントを通らずにこの階からすぐに海辺に出ることができるらしい。
夜の海をぼーっと眺めるのもいいかもしれないと思い、飲みかけのビールを飲みほし、部屋を出て外階段の見えた方の廊下を進む。廊下の突き当りに扉があり「外階段」と書かれていた。
そこから外に出て階段の手すりにつかまりながら外へ出た。街灯が当たっているおかげで足元がしっかり見えていた。
階段の裏手に少し低めの防波堤があるのに気がついた。そこから先に海があるのだが、そこまで明かりが届かないのが残念だった。
防波堤が低いので、容易に登ることができる。そこに腰をかけて、波の満ち引きを聴いていた。明かりは電柱についている物しかないから、海の方は真っ暗でほとんど何も見えない。夜空に目をやると、そこには三日月が出ていた。
ザブーンという波の音と波が転がす小石の音、空には三日月、その中間に私が座っていた。
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