8 / 16
8、どうしても勝てないっ
しおりを挟む
涼くん、俺が5月に一時外泊した時、「退学してショックだった」と言ってた。
あの時点ですでに学校には退学の意思を伝えて、親父が手続きをしたはずなのに。
したはず……じゃなかったのか。
誰が動いたんだろう?
うつ伏せで横たわる俺に、伊織くんはすっと寄ってきて覆い被さった。
「~~~伊織くん、ちょっと考え事してるからやめて」
「いつもそうやって一人で考えてるんですか? 話せばいいのに」
そう言って伊織くんはキスを落としてきた。
唇が優しく髪に触れる。
後頭部に何度もキスをされてる間、俺はこの子には勝てないな、と思った。
勝ち負けじゃないけど……逆らえない?ていう感じかな?
いつもの俺よりさらに流されてしまう。
やがて伊織くんの唇は首の後ろにたどり着き、はむっと唇ではさんできた。
「っん━━」
子猫がじゃれつくように、無邪気ないやらしさでもって俺を愛撫してくる。
いつの間にか左手をTシャツの中に入れられ、撫でるようにお腹から胸へと指を這わせてきた。
「い、伊織くんてば」
「優しくがいいですか? それとも痛くされたいですか?」
「しないよっ今は考え事してるのっ」
「なに考えてるんですか? 誰が退学を止めたかですか?」
「━━━そうだよっ」
伊織くん、自他共に認めるおバカさんなのに、こういう勘がものすごく鋭い。
「最初は、一ノ瀬先パイですよ~。学校にあまね先パイの保護者が来たとき、だいぶもめてましたからね、みんな知ってます」
涼くん?
あ、そうか。
親父に辞めると言ったあと、親父はすぐに手続きしなかったんだ。
「オンラインで授業だから、病室からでも受けられるって熱弁してましたよ。あ、保護者さん渋ってたけど、ケント先生のこと言ったらすぐに態度を変えたみたいでした。あまね先パイにいわなかったのは、たぶんまだ戻る気がなさそうだったからですかねえ。時期を見てたんじゃないですか~」
おそらく、特待生を外れたせいで発生した学費で揉めていたんだ。私立高校の学費は高いからな。きっとケントさんが全部払うって、涼くん言ったんだろう。
にしても2ヶ月も黙っておく話かな、これ?
俺のことなのに。
キスを繰り返す伊織くんの下で、俺はくるりと向きを変える。そして、冷ややかな視線を送りつけた。
「……それで、みんなが内緒にしてたことを、伊織くんがしれーっとバラしたんだ?」
俺は嫌味ったらしく伊織くんに言ってやった。
伊織くんはかわいらしい瞳でじっと見つめてきた。
「うわ~、はじめてあまね先パイの冷たいいい方された。ゾクゾクしちゃう~! Sっ気あったんですね♡♡」
なんで喜んでるの。
もー。
ほんとこの子には響かない。
「今日は早く迎えにきてもらって。俺、涼くんと話したいから」
冷たい語調のまま、伊織くんを押しのけながら言い放つ。
「だめ。今日はおれとえっちするんです~」
いつもの間延びした言い方だったが、伊織くんの力強い腕は俺の首もとをつかんだ。
「もう一度聞きますけど、優しくされたいですか? それとも痛い方が好き?」
彼の右手の指が、徐々に首を圧迫していく。
「お正月に見た時、あざだらけでしたね。噛まれた跡もうっすら残ってた」
「や、め……」
苦しくなって、俺は両手で伊織くんの右腕をつかみ外そうとする。でもたくましく成長した彼の腕は、びくともしない。
「首絞めも好きそう。奥突かれながらされるの好きでしょ?」
「ぁあ゛……」
「縛られるのも好きですか?」
「や゛め……て」
「ローションどこに置いてますか? いうなら離してあげます」
俺は必死にうなずき、テレビを指差した。
「ゲホッ」
伊織くんの手が離れ、俺は深く息を吸う。酸素を存分に取り込んでから、ガサゴソとテレビ台の下を漁る伊織くんに文句を告げた。
「全然優しくする気ないじゃんっ」
振り向いた彼は、いつか使ったアナルプラグを右手に持ち、軽く振って俺に見せつけた。
「首を絞められてちんこ勃たせたの誰ですか? これぶっ刺して、やさしーくこすってあげますね♡♡」
にこにこしながら、伊織くんは箱から丁寧に道具を取り出していく。
「えっろ。手首拘束するの黒いんだ。白い肌に映えますねぇ」
「ちょちょっと、やめとこうよ。 俺、涼くんと話したいから帰ってよっ」
「だめ~。手首、前がいい? それとも後ろ? おれ先パイの顔好きだから、前で拘束して、ばんざいしてもらいますね♡♡」
「伊織くん、俺に意見聞いてるようだけど全く聞く気ないよね?!」
「えへへ~♡」
「か、かわいこぶってもダメ!!」
「えー。そんないじわるいうなら、おれ激しくしちゃうからね~」
なんて悪い子なんだ、天野伊織めっ!
伊織くんは鼻歌を歌いながらするりと俺に歩みより、目で合図をしてきた。俺は仕方なく両手を差し出す。
「古賀くんに言いつけてやる~」
手首を拘束されながら、俺は捨てゼリフを吐いた。
「ふふふ。イヤイヤいってるのに、大人しく手を出してくるのかわいい♡♡」
あきらめたんだよっ。
入院していた俺は著しく体力が落ちている。
この子相手に、勝ち目のない勝負をわざわざする気も起こらない。なんていう人間性なんだろう。
「だいじょーぶ、怖がらなくていいですよ。気持ちよ~く痛めつけてあげますね♡♡」
伊織くんは穏やかに微笑みながら、ひどいことを言ってのけた。
あの時点ですでに学校には退学の意思を伝えて、親父が手続きをしたはずなのに。
したはず……じゃなかったのか。
誰が動いたんだろう?
うつ伏せで横たわる俺に、伊織くんはすっと寄ってきて覆い被さった。
「~~~伊織くん、ちょっと考え事してるからやめて」
「いつもそうやって一人で考えてるんですか? 話せばいいのに」
そう言って伊織くんはキスを落としてきた。
唇が優しく髪に触れる。
後頭部に何度もキスをされてる間、俺はこの子には勝てないな、と思った。
勝ち負けじゃないけど……逆らえない?ていう感じかな?
いつもの俺よりさらに流されてしまう。
やがて伊織くんの唇は首の後ろにたどり着き、はむっと唇ではさんできた。
「っん━━」
子猫がじゃれつくように、無邪気ないやらしさでもって俺を愛撫してくる。
いつの間にか左手をTシャツの中に入れられ、撫でるようにお腹から胸へと指を這わせてきた。
「い、伊織くんてば」
「優しくがいいですか? それとも痛くされたいですか?」
「しないよっ今は考え事してるのっ」
「なに考えてるんですか? 誰が退学を止めたかですか?」
「━━━そうだよっ」
伊織くん、自他共に認めるおバカさんなのに、こういう勘がものすごく鋭い。
「最初は、一ノ瀬先パイですよ~。学校にあまね先パイの保護者が来たとき、だいぶもめてましたからね、みんな知ってます」
涼くん?
あ、そうか。
親父に辞めると言ったあと、親父はすぐに手続きしなかったんだ。
「オンラインで授業だから、病室からでも受けられるって熱弁してましたよ。あ、保護者さん渋ってたけど、ケント先生のこと言ったらすぐに態度を変えたみたいでした。あまね先パイにいわなかったのは、たぶんまだ戻る気がなさそうだったからですかねえ。時期を見てたんじゃないですか~」
おそらく、特待生を外れたせいで発生した学費で揉めていたんだ。私立高校の学費は高いからな。きっとケントさんが全部払うって、涼くん言ったんだろう。
にしても2ヶ月も黙っておく話かな、これ?
俺のことなのに。
キスを繰り返す伊織くんの下で、俺はくるりと向きを変える。そして、冷ややかな視線を送りつけた。
「……それで、みんなが内緒にしてたことを、伊織くんがしれーっとバラしたんだ?」
俺は嫌味ったらしく伊織くんに言ってやった。
伊織くんはかわいらしい瞳でじっと見つめてきた。
「うわ~、はじめてあまね先パイの冷たいいい方された。ゾクゾクしちゃう~! Sっ気あったんですね♡♡」
なんで喜んでるの。
もー。
ほんとこの子には響かない。
「今日は早く迎えにきてもらって。俺、涼くんと話したいから」
冷たい語調のまま、伊織くんを押しのけながら言い放つ。
「だめ。今日はおれとえっちするんです~」
いつもの間延びした言い方だったが、伊織くんの力強い腕は俺の首もとをつかんだ。
「もう一度聞きますけど、優しくされたいですか? それとも痛い方が好き?」
彼の右手の指が、徐々に首を圧迫していく。
「お正月に見た時、あざだらけでしたね。噛まれた跡もうっすら残ってた」
「や、め……」
苦しくなって、俺は両手で伊織くんの右腕をつかみ外そうとする。でもたくましく成長した彼の腕は、びくともしない。
「首絞めも好きそう。奥突かれながらされるの好きでしょ?」
「ぁあ゛……」
「縛られるのも好きですか?」
「や゛め……て」
「ローションどこに置いてますか? いうなら離してあげます」
俺は必死にうなずき、テレビを指差した。
「ゲホッ」
伊織くんの手が離れ、俺は深く息を吸う。酸素を存分に取り込んでから、ガサゴソとテレビ台の下を漁る伊織くんに文句を告げた。
「全然優しくする気ないじゃんっ」
振り向いた彼は、いつか使ったアナルプラグを右手に持ち、軽く振って俺に見せつけた。
「首を絞められてちんこ勃たせたの誰ですか? これぶっ刺して、やさしーくこすってあげますね♡♡」
にこにこしながら、伊織くんは箱から丁寧に道具を取り出していく。
「えっろ。手首拘束するの黒いんだ。白い肌に映えますねぇ」
「ちょちょっと、やめとこうよ。 俺、涼くんと話したいから帰ってよっ」
「だめ~。手首、前がいい? それとも後ろ? おれ先パイの顔好きだから、前で拘束して、ばんざいしてもらいますね♡♡」
「伊織くん、俺に意見聞いてるようだけど全く聞く気ないよね?!」
「えへへ~♡」
「か、かわいこぶってもダメ!!」
「えー。そんないじわるいうなら、おれ激しくしちゃうからね~」
なんて悪い子なんだ、天野伊織めっ!
伊織くんは鼻歌を歌いながらするりと俺に歩みより、目で合図をしてきた。俺は仕方なく両手を差し出す。
「古賀くんに言いつけてやる~」
手首を拘束されながら、俺は捨てゼリフを吐いた。
「ふふふ。イヤイヤいってるのに、大人しく手を出してくるのかわいい♡♡」
あきらめたんだよっ。
入院していた俺は著しく体力が落ちている。
この子相手に、勝ち目のない勝負をわざわざする気も起こらない。なんていう人間性なんだろう。
「だいじょーぶ、怖がらなくていいですよ。気持ちよ~く痛めつけてあげますね♡♡」
伊織くんは穏やかに微笑みながら、ひどいことを言ってのけた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
11
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる