【完結】コドクニアラズ ~淫らな『なんでも屋』~

ナツキ

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2・依頼人④小野寺瑛二

自室

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コンコン

ドアがノックされ、「はい」と返事をすると、一ノ瀬が入ってきた。元この部屋の住人で、秋吉の元同室者だ。

「おかえりー、遠征お疲れ様」

「ほんと疲れたわー、うちの近くまで行ったのに、かわゆい甥っ子にも会えず3日間サッカーばっかさせられた」

「もう入部した方が良くない?」

「それって特進科やめろってことか」

けらけらと笑う一ノ瀬涼は、俺と同じサッカー同好会のエースである。サッカー部の選手がことごとく負傷したため、同好会所属の彼がピンチヒッターとしてここ3ヶ月かり出されていた。顔が良く、性格も明るいため男女共に人気の奴だ。



「……部屋替わってくれて、ありがとうな」
と言って、二段ベッドの下に腰かけた。

「どういたしまして。……なー、このベッド、少し歪んでない?  真ん中あたり沈むんだよね」

「ん、そう?  あ、これ布団か。オレ、マットレスひいてるから気付かなかったわ」

「まじかー、やっぱ厚みがあるやつがいいかあ」

「……親にはやっぱ頼まないの?」
うちの家庭事情を知る一ノ瀬は、変に同情することなく会話してくれるので助かる。

俺は学費と寮費を全額免除してもらっており、少量の奨学金とバイト代で日々の諸経費をまかなっている。実家とは関わりたくないので、なるべく帰省もしないでいる。

「そうだね。親父には頼りたくないかな」

「そっか。『なんでも屋』も今後お金かかるし、クラウドファンディングする方向でいくなら、そっからマットレスも買っちゃうか」

おどけて話す一ノ瀬がとてもありがたかった。

「その件なんだけど、この前仲間になってくれた人がめちゃくちゃお金持ちだった。車あるし、しかもドクターで、今度病院の調査もしてくれる」

「ラッキー♪」
一ノ瀬はニカッと笑って、右手で親指を立てた。

「病院に潜入するとか言ったときは心配したけど、なんとかなりそうで安心したわ。あと気がかりなのは依頼人が瑛二ってことだな」

「小野寺が?」
俺は一ノ瀬が何を言いたいのかわからずキョトンとした。

「え、」


「……え?」


「え、えー?  わからない?」

「わからない」


「あまねに好意持ってるから、気を付けろってこと」

「あー、懐いてくれてるよね。甘やかさないように気を付けるわ」

「いや、絶対わかってないな……」

一ノ瀬はあきれて、椅子に座ってる俺の手を勢いよく引っ張り、そのままベッドに転がした。

ガシャン、と椅子は倒れて、車輪がカラカラカラと回った。

二段ベッドの下で、倒された俺は一ノ瀬に手首を押さえつけられ、太ももに体重をかけられ、身動きが取れなくなった。

「い、一ノ瀬?」

「瑛二がこーいうことするかもってこと、を、気を付けろって言ったの」

手首を、ギューっとにぎりしめてくる。

「━━━━ッ!!   っ痛ェー」

捻挫した左手がジンジンと痛み、俺は悲鳴を上げた。

「あ!  ご、ごめん」

一ノ瀬は、すぐに手を離してくれた。

「痛くするつもりはなかった」

「大丈夫、少し、左手ケガしちゃっててさ」
申し訳ないという顔をする一ノ瀬にフォローを入れる。

「そいやサポーター、風呂場に忘れてきたわ。取ってくる」

明日提出の数学の宿題を渡し(一ノ瀬は写すつもりのようだ)、ドア前で別れた。

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