紫の桜(番外編)

れぐまき

文字の大きさ
5 / 21
番外編

義妹(息子出産後)

しおりを挟む
ふわりと、風に乗って一枚の葉が足元まで運ばれてきた


「紅葉、か…」


赤く色づいた葉を拾い上げて見つめる
この葉を見て浮かぶのは私を紅葉のお兄様と呼び、慕ってくれる一人の女性

「そう言えば、最近は会いに行っていなかったな・・・」

久しぶりに訪ねてみようか…


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「やぁ、お久しぶりですね」
「紅葉のお兄様、お久しぶりですわ
ようこそいらっしゃいませ」

幼いころと変わらない、嬉しそうな笑みを浮かべて迎えてくれる彼女に自分の口元も緩む

「しばらく見ないうちに随分と落ち着かれましたね
大人の魅力が出てこられたようだ」
「まぁ、お兄様ったら。落ち着くのは当り前ですわ
もう二児の母なのですもの」

身分ある女性にしてはめずらしい、気取らない話し方に態度
一見失礼とも受け取れるような私の軽口を笑ってかわす気さくなご気性は、生まれ持っての物なのだろうか
初めて会った時から変わらない

変わったのは纏う雰囲気
何かを憂いているような儚い雰囲気はいつの間にか薄れていき、代わりに人々を魅了する艶やかさと華やかさが加わった

「そうだ、唐菓子を持ってきたんです。召し上がりますか?」
「まぁ!いただきます」

手渡しで差し出した菓子を何の疑いもなく受け取り、礼を述べてから口に運ぶ
続いて蕩ける様な笑みが浮かんだ

「お口に合いますか?」
「はい!とても」
「それは良かった」
「お兄様も召し上がりませんか?」
「ん?そうですね…せっかくだし頂ましょうか」
「是非。・・・はい、どうぞ?」

「・・・え?」

口元に差し出された菓子に戸惑うと不思議そうに彼女は首をかしげた

「どうなさいましたの?」
「・・・いや、何も」

否定して差し出された菓子を一口齧れば感想を期待する眼差しが注がれる

「美味ですね」
「はい!」

浮かぶ満面の笑み
こういう所も昔から全く変わらない

彼女のこの行動は、すべて親愛から来るもの
彼女から私に向かう好意はすべて兄を慕うものと同じ
それにつられるように、私も彼女を可愛がる


美しく、気性も可愛らしい
教養も深く、だからと言って驕らない

浮名を流し続けていた私が、これほど完璧な彼女と親身にかかわっていて何もないなど、いったい誰が信じるだろうか
私自身も信じられないほどだ

だが、彼女に手を出そうなどとは思わない
思えない


ただただ私を兄と慕ってくれる
親友であり、好敵手であり、かつては義理の弟であった男の後妻となった人

・・・こう考えてみるとなかなか複雑な関係だ

軽く苦笑をこぼすと、心配そうな表情の彼女が下から伺うように覗き込んでくる


「紅葉のお兄様?やっぱりどうかなさいましたの?何だか様子がおかしいわ」
「あぁ、大丈夫。少し考え事をしていただけです」

笑いかけて頭をなでる
本当に?と目で問いかけて来る彼女にもう一度うなずいて見せると心配そうだった表情が和らぎ、ふわりと笑った

「ならよかった
体調が悪くないのなら、碁でもいたしませんか?」
「いいですね、随分と久しぶりだ」
「でしょう?ふふ、今日こそ私が勝ちますわ」
「おや、それはどうでしょう」

軽口をたたき合って穏やかに時が流れていく


こんな関係も、悪くはない
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

妻の遺品を整理していたら

家紋武範
恋愛
妻の遺品整理。 片づけていくとそこには彼女の名前が記入済みの離婚届があった。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

いちばん好きな人…

麻実
恋愛
夫の裏切りを知った妻は 自分もまた・・・。

処理中です...