紫の桜(番外編)

れぐまき

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番外編

母性愛(完結後)

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「ご無沙汰しております、紫の上様」
「いらっしゃいませ、夕霧様」


声をかけて室内に入り、御簾の前に座す
元服してからは当たり前となっていた行動をとると、彼女は楽しそうな声音で話しだした

「夕霧様、今日は殿のお帰りが遅いそうですの」
「?そうなんですか」
「えぇ、そうなんです
ですから・・・」

彼女はそこで言葉を区切り、ぱちんと音を鳴らして扇を閉じた
それを合図にさらさらと衣擦れの音をたてて女房達が下っていく
首をかしげて様子をみているといきなりばさりと音を立てて御簾が持ち上げられ、出てきた人物に目を見開いた

「若葉!?なぜ中に…?」
「説明は母上からお聞きください」

いたずらっぽく笑って御簾の中に目をやる若葉につられ、自分もそちらに目をやる
御簾の中の光景に再び眼を見開いた


「なっ・・・!前の中宮様!?明石の女御まで…」
「お久しぶりです、夕霧殿」
「ふふ、お兄様ったら驚きすぎですわ」
「お二人ともなぜここに…?」

問いかけると二人は目を見合わせてくすりと笑い、紫の上様を見た
彼女は微笑んで視線を受け止め、口を開く

「まぁ、取りあえずどうぞ中へ
久しぶりに皆で顔を合わせてお話しましょう?」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



要約すると・・・
父上がどうしても外せない用で出かけると聞きつけた明石の女御が先の中宮様にそれを知らせ、二人で帝に頼んで宿下がりしてきたらしい(若葉は二人の護衛役)
最初は女性陣だけで話していたらしいが、紫の上様がせっかくだから子供たち全員と話がしたいと若葉を部屋に引き入れ、私も呼ばれたそうだ

なんて突飛な事を・・・
思わず顔をひきつらせているとそれを見て明石の女御がぷぅと頬をふくらませた


「だってお父様がいらっしゃる時はなかなかお母様とお話しできないんですもの」
「源氏の君は紫の上様を溺愛していらっしゃいますものね…」
「私すら元服してからはなかなか御簾のうちに入れてもらえないほどですよ
兄上もでしょう?」

3人に同意を求めるような視線を投げられ思わず肯定の返事を返す

「まぁ、それはそうだが・・・」
「でしょう!お父様ったらひどいわ!」

女御がますます頬を膨らますと紫の上様が苦笑する

「女御、そんなにむくれては美しい顔が台無しですよ?」
「お母様…」
「せっかくなのですから、今日は楽しくお話しましょう?」


私はその方が楽しいわ、と困ったような笑顔で促されれば、彼女に弱い私達は頷くしかない

「まぁ、お母様がそうおっしゃるなら…」
「そちらの方が有意義ですしね
よろしいかしら?夕霧殿、若葉の君」
「はい」
「もちろん」

全員が同意すると紫の上様は嬉しそうにふわりと笑う
その笑みにつられて私達の顔もほころぶ

彼女はいつも心を安らげてくれる
私達の大切な憩いの存在


彼女を溺愛しているという点では、私達も父上に負けてはいないのかもしれない
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