紫の桜(番外編)

れぐまき

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花の棘

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《主人公がいろいろな人と恋を楽しむ腹黒い性格だったら》











とびきりの薄様に最高の香を焚きしめ、何刻もかかって考えた和歌を書き付ける
それを季節の花に結びつけ、特別に造らせた文箱に入れた
普通の女性…いや、ほとんどの女性の場合はここまですればだいたい手に入れられる

だが彼女の場合、これでは駄目だ…

彼女に言い寄る男は数知れず
噂では父である源氏の君を始め、叔父上や帝までが彼女を欲しているらしい
そんな彼女を手に入れるのは至難の業

彼女の気を引くにはこんなものでは足りない

「どうすれば貴女は私のものになってくださるのでしょう・・・」

呟いた疑問に答えてくれる人などいるはずもなく、むなしく消えた自分の言葉にため息をついた 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

御簾や几帳に隔てられた向こう側に座るのは、かつては同じ屋敷で過ごし、ともに眠った人
愛しい方の面影を持つ人として引き取り、育てた可愛い子は、いつしかその方をも超えた素晴らしい女性に成長するとともに多くの男を魅了する魔性の女性へと変化していた

「久しぶりです姫君」
「久しぶり…?あぁ、源氏の君がいらっしゃるのはそうでしたわねぇ」

案にほかの男は久しぶりではないと仄めかす発言にピクリと表情が引きつる
それを悟られないよう、何事もなかったかのように言葉を続けた

「久しぶりに会うのだからと思って珍しい唐菓子を持ってきたんです
いかがですか?」

そういって御簾の下から菓子の入った箱を滑らせる

「まぁ、ありがとうございます
・・・あら?これ…」

不思議そうな声を出す彼女に問いかけると、鈴がなるような朗らかな笑い声が返ってきた

「どうかしましたか?」
「ふふふ、いえ?やはり親子なんだと思いまして…」
「親子?」
「えぇ、この菓子、昨日夕霧様が持ってきてくださった物と同じですわ」
「おや・・・」

彼女の言葉にしばし固まる

夕霧が彼女に?

彼女が数多の男に言い寄られていることは知っていたがまさか夕霧までとは・・・

「源氏の君?ご機嫌を損ねてしまいました?」
「・・・」
「怒らないで?源氏の君…」

言葉とともに御簾が持ち上げられ、彼女の姿が露わになる
出てきた彼女は私の頬にそっと触れ、首をかしげて口を動かす

「私のこと、お嫌いになってしまいます・・・?」

潤んだ瞳と不安そうな声音

彼女は狡い
私が彼女を嫌うことなどできないと知っていて、こんなことを言うのだ

「嫌いになんてなれません・・・」

力なくつぶやいた言葉に、彼女の表情が綻ぶ

「よかった・・・」

美しく、乱暴に扱うと壊れてしまうように儚げな、花のような笑み
この笑顔にだまされた男は何人いるのだろうか

かくいう自分も、この笑みに騙された一人なのだが・・・



変わりだった少女は、いつの日か掛け替えのない女性へと変わり、いつしか自分が追い求めるようになってしまった


もう戻れない
きっと私は、彼女から逃れることなど一生できないのだろう・・・
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