悪役令嬢に転生しましたが、行いを変えるつもりはありません

れぐまき

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本編

12


「殿下?本当に大丈夫ですか?」

記憶の中よりもずいぶん大人びたセシリアが、記憶の中と同じように体調を心配して問いかけてくる
その時に使われた呼称に、俺は自嘲の笑みを漏らした

殿下、か…

あの一件以降、彼女がアル様と呼び掛けてくることはなくなった
それと同時に自分もセシルと呼ぶ事が出来なくなり、今では呼び掛ける機会さえもほとんどない

それだけではない

セシルが自分に向けて浮かべていた、冷たい美貌からは想像もつかない柔らかな笑みも、親しげな態度も、無邪気な言葉や仕草もすべて鳴りを潜め
変わりにどんなときも崩れない美しくも冷たい微笑みと、恭しい態度と、無駄のない言葉遣いと所作をするようになった

皇太子と公爵令嬢としては、その距離感は間違っていないのだろう
当たり前だと言ってもいい

だが、自分の醜い感情からでた言動が彼女との距離を産んでしまったのだと思うと罪悪感に苛まれ、謝罪しなければならないと思う理性とは裏腹に、俺は次第にセシルを避けるようになっていってしまった
セシル自身も俺に避けられているのを知ってか知らずか積極的に関わってこようとはしなかったため、二人の距離はどんどん開いていき会話どころか顔を会わせることも滅多になくなった

それでも、本人たちの様子は関係なく、皇太子である俺と淑女の手本のように優秀な公爵令嬢のセシリアの婚約話はなんの障害もなくスムーズに進み、二人の婚約は正式に決定する

久々にまともに会ったのは皇宮の中で内々に行われた婚約式の時
彼女はその場でも美しい笑みと恭しい態度を崩すことのない、完璧な淑女であった

開いてしまった距離感を気にしているのは…寂しいと思っているのは俺だけなんだろうか

自業自得にも関わらず、そう思うと何だか面白くなくて、俺はますますセシルを避けた
婚約発表の舞踏会のため、何度か行われた打ち合わせも、多忙を理由に一度も参加していない

たまに皇宮の廊下などで出くわしても、俺は声をかけるでもなく彼女を無視し、彼女も彼女で自分から話しかけるのは失礼に当たるとでも言うように、恭しく頭を下げるだけ

誰が見ても文句のつけようのない完璧な淑女
それが俺の知るセシリアだった

だが、今日の婚約発表の場で彼女の完璧なふるまいが崩れたのだ

もともと透明感のある白い肌をさらに白くし、倒れかけた彼女の腰を抱いて支えつつ、俺は顔には出さずにかなりの衝撃を受けた

完璧を体現したような彼女でも、失態をおかすことがあるのだと
感想 22

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