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恋愛編
49
殿下がチョコレートを一つ取って口に運ぶ
「ん…美味いな」
「……本当ですか?」
「あぁ
うん…こっちのクッキーもいいな。ワインが飲みたくなる味だ」
「チーズですものね
お口に合いましたか?」
「もちろん」
「よかったです、安心しました」
「もしよければ、また時間があるときに作ってくれないか?」
「はい、畏まりました
次は何を作りましょう…
殿下は何か好きなものはございますか?」
「リクエストを聞いてくれるのか?
そうだな…」
和やかに会話を交わしながらも、私は思考を巡らせていた
最近、殿下の様子がおかしい気がする
詳しく言うならば、私がゲームの記憶を取り戻してからだ
あの日から、口ごもったり目をそらしたり、黙り混んだり慌てたり、急に不機嫌になったり…かと思えば笑って、いきなり私を昔の愛称で呼んでみたり、今みたいに上機嫌で話してみたり…
正直、情緒不安定だと思う
前はもう少し落ち着いておられたと思うのだけど…
これほど感情を表に出されることもなかったような…
自分の知っているアルベルト皇太子殿下という人間は、穏やかな笑顔で面倒がらずに年下の私の話し相手をしてくれる、親切な少年
加えて、貴族の間で流れる噂でも勉学に励む優秀な皇太子だと評判だった
もっとも、それは昔の話であり、本人ともそれほど親しくしていなかったためここ数年のことはわからないのだが…
この数年の間に何かあったのかしら…?
…そう言えば、昔とは言葉遣いも少し変わられたような…
考えるが、殿下の思考も気持ちも全くわからない
…次に帰省する時は、積極的に社交場に出て情報収集しなくてはいけないわね…
学生という身分に胡座をかき、貴族の勤めを疎かにしていたのがいけなかった
幸い、もうすぐ冬季の長期休暇がやってくる
そこで最近の殿下や、殿下の周囲の噂を集めることにしよう
私は紅茶を飲みながらそう心に決めた
________________________________________________
楽しい時間派の過ぎるのが早い
久しぶりにセシリアと終始和やかな時を過ごし、気がつけばずいぶん時間がたっていた
遠慮して一人で帰ろうとする彼女を少し強引に寮まで送り、今は自室への道を歩いている
今日はいい日だった
先日は偶然とはいえ、俺よりも先にレオナルドが彼女の手作りの菓子を食べたことが面白くなく、今日は俺にも作ってくれるよう頼もうと思って呼び出したのだ
だがまさか先回りして持ってきてくれるとは…
嬉しさに固まっていたら危うく誤解されそうになったが、その誤解が解けた上に自分の気持ちを伝えることもできたので、結果としてはよかったと思う
彼女が自分のために作ってくれた菓子を食べ、語らいながら穏やかな時間を共に過ごす
これぞまさに理想の婚約者同士だ
口許を緩め、満足気に一つ頷く
これからも積極的に二人で過ごす時間を作っていこう
そして開いてしまった距離を少しずつ埋めていければ…
顔を綻ばせながら帰路をたどっていると、後ろから声がかけられた
「アルベルト」
「…レオナルド?」
いつもと変わらぬ笑みを浮かべた友人が近寄ってくる
「休日に外に出るなんて珍しいね
どうしたの?」
「部屋にセシルを招いていたんだ
今は送りに出てきて、帰るところだ」
答えるとレオナルドがわずかに驚いたような表情をする
「セシリア嬢を?」
「あぁ」
「ふーん…そっかぁ」
意味深に呟くレオナルドに俺は眉を寄せた
「何か言いたげだな?」
「ん?いや?仲がいいようで羨ましいなぁと思ってね」
いつもと変わらないレオナルドの笑顔
しかし、今日はその笑みがどことなく胡散臭く見えた
「ん…美味いな」
「……本当ですか?」
「あぁ
うん…こっちのクッキーもいいな。ワインが飲みたくなる味だ」
「チーズですものね
お口に合いましたか?」
「もちろん」
「よかったです、安心しました」
「もしよければ、また時間があるときに作ってくれないか?」
「はい、畏まりました
次は何を作りましょう…
殿下は何か好きなものはございますか?」
「リクエストを聞いてくれるのか?
そうだな…」
和やかに会話を交わしながらも、私は思考を巡らせていた
最近、殿下の様子がおかしい気がする
詳しく言うならば、私がゲームの記憶を取り戻してからだ
あの日から、口ごもったり目をそらしたり、黙り混んだり慌てたり、急に不機嫌になったり…かと思えば笑って、いきなり私を昔の愛称で呼んでみたり、今みたいに上機嫌で話してみたり…
正直、情緒不安定だと思う
前はもう少し落ち着いておられたと思うのだけど…
これほど感情を表に出されることもなかったような…
自分の知っているアルベルト皇太子殿下という人間は、穏やかな笑顔で面倒がらずに年下の私の話し相手をしてくれる、親切な少年
加えて、貴族の間で流れる噂でも勉学に励む優秀な皇太子だと評判だった
もっとも、それは昔の話であり、本人ともそれほど親しくしていなかったためここ数年のことはわからないのだが…
この数年の間に何かあったのかしら…?
…そう言えば、昔とは言葉遣いも少し変わられたような…
考えるが、殿下の思考も気持ちも全くわからない
…次に帰省する時は、積極的に社交場に出て情報収集しなくてはいけないわね…
学生という身分に胡座をかき、貴族の勤めを疎かにしていたのがいけなかった
幸い、もうすぐ冬季の長期休暇がやってくる
そこで最近の殿下や、殿下の周囲の噂を集めることにしよう
私は紅茶を飲みながらそう心に決めた
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楽しい時間派の過ぎるのが早い
久しぶりにセシリアと終始和やかな時を過ごし、気がつけばずいぶん時間がたっていた
遠慮して一人で帰ろうとする彼女を少し強引に寮まで送り、今は自室への道を歩いている
今日はいい日だった
先日は偶然とはいえ、俺よりも先にレオナルドが彼女の手作りの菓子を食べたことが面白くなく、今日は俺にも作ってくれるよう頼もうと思って呼び出したのだ
だがまさか先回りして持ってきてくれるとは…
嬉しさに固まっていたら危うく誤解されそうになったが、その誤解が解けた上に自分の気持ちを伝えることもできたので、結果としてはよかったと思う
彼女が自分のために作ってくれた菓子を食べ、語らいながら穏やかな時間を共に過ごす
これぞまさに理想の婚約者同士だ
口許を緩め、満足気に一つ頷く
これからも積極的に二人で過ごす時間を作っていこう
そして開いてしまった距離を少しずつ埋めていければ…
顔を綻ばせながら帰路をたどっていると、後ろから声がかけられた
「アルベルト」
「…レオナルド?」
いつもと変わらぬ笑みを浮かべた友人が近寄ってくる
「休日に外に出るなんて珍しいね
どうしたの?」
「部屋にセシルを招いていたんだ
今は送りに出てきて、帰るところだ」
答えるとレオナルドがわずかに驚いたような表情をする
「セシリア嬢を?」
「あぁ」
「ふーん…そっかぁ」
意味深に呟くレオナルドに俺は眉を寄せた
「何か言いたげだな?」
「ん?いや?仲がいいようで羨ましいなぁと思ってね」
いつもと変わらないレオナルドの笑顔
しかし、今日はその笑みがどことなく胡散臭く見えた
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