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恋愛編
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「アルベルト様、見つけましたわ!」
元気のいい可愛らしい声が殿下の名を呼ぶ
レオナルド様から視線を外して解放された窓から見える中庭に目をやると、予想通りの人物が少し先にいる殿下に向かって駆け寄っていくところだった
「ローズマリー…何かようか?」
問いかけられたローズマリー姫は桃色のドレスの裾をふわふわと揺らしながら妖精のような軽やかさで殿下の腕に自身の細い腕を絡ませる
「お茶をご一緒いたしましょう?
わたくし、クッキーを焼いたんですの」
「…ローズマリーがか?」
「はい、はじめて作りましたの
アルベルト様に食べていただきたくて頑張ったんですのよ」
「そうか…」
「わたくしのお気に入りの場所にもうお茶の準備をさせていますわ
さぁ、参りましょう!」
花のような笑顔でそう告げ、ぐいぐいと殿下の腕を引っ張ていく
殿下は困ったように眉を下げながらも彼女の好きにさせている
そのまま何かを話ながら視界の外へと消えていった二人の姿を、私はぼんやりと見つめた
「……」
殿下
アンバー王国に来てからあまりお話ししてないわね
お見かけするときはいつもローズマリー様が側にいらっしゃるし……
自分には似合わないふんわりとした淡い色のドレスを着こなす少女
ウエーブのかかった長い金髪に、ぱっちりとした二重とうるんで輝く瞳、桜色の唇
誰からも愛されるその容姿と、恋心を恥じることも、隠すこともない純粋さ
現実的に考えれば少し思慮の足りないところはあるが、彼女はそれを嗜められることのない身分を持っている
それはまるで、幼い頃に憧れた絵本の中のお姫様
昔思い悩んだ自分のコンプレックスをすべて刺激してくるあの少女は殿下の隣にならんでもよく似合う
私よりも、あのヒロインよりも、ずっとヒロインらしい少女
「…セシリア嬢?大丈夫?」
「ぁ……はい、大丈夫です
申し訳ありません」
レオナルド様の声かけで思考から呼び戻される
とっさに返事を返すと、レオナルド様は何か言いたそうに口を開いたが、思い直したように微笑んだ
「行こうか」
「はい」
歩き出した彼に自分も続く
後を追いながら私はそっと自分の胸に手を当てた
……
なにかしら?
なんだかもやもやするわ……
元気のいい可愛らしい声が殿下の名を呼ぶ
レオナルド様から視線を外して解放された窓から見える中庭に目をやると、予想通りの人物が少し先にいる殿下に向かって駆け寄っていくところだった
「ローズマリー…何かようか?」
問いかけられたローズマリー姫は桃色のドレスの裾をふわふわと揺らしながら妖精のような軽やかさで殿下の腕に自身の細い腕を絡ませる
「お茶をご一緒いたしましょう?
わたくし、クッキーを焼いたんですの」
「…ローズマリーがか?」
「はい、はじめて作りましたの
アルベルト様に食べていただきたくて頑張ったんですのよ」
「そうか…」
「わたくしのお気に入りの場所にもうお茶の準備をさせていますわ
さぁ、参りましょう!」
花のような笑顔でそう告げ、ぐいぐいと殿下の腕を引っ張ていく
殿下は困ったように眉を下げながらも彼女の好きにさせている
そのまま何かを話ながら視界の外へと消えていった二人の姿を、私はぼんやりと見つめた
「……」
殿下
アンバー王国に来てからあまりお話ししてないわね
お見かけするときはいつもローズマリー様が側にいらっしゃるし……
自分には似合わないふんわりとした淡い色のドレスを着こなす少女
ウエーブのかかった長い金髪に、ぱっちりとした二重とうるんで輝く瞳、桜色の唇
誰からも愛されるその容姿と、恋心を恥じることも、隠すこともない純粋さ
現実的に考えれば少し思慮の足りないところはあるが、彼女はそれを嗜められることのない身分を持っている
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昔思い悩んだ自分のコンプレックスをすべて刺激してくるあの少女は殿下の隣にならんでもよく似合う
私よりも、あのヒロインよりも、ずっとヒロインらしい少女
「…セシリア嬢?大丈夫?」
「ぁ……はい、大丈夫です
申し訳ありません」
レオナルド様の声かけで思考から呼び戻される
とっさに返事を返すと、レオナルド様は何か言いたそうに口を開いたが、思い直したように微笑んだ
「行こうか」
「はい」
歩き出した彼に自分も続く
後を追いながら私はそっと自分の胸に手を当てた
……
なにかしら?
なんだかもやもやするわ……
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