自分の夫を寝取ってみようと思います。【長編】

れぐまき

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「……シンシア……シンシア…」 

熱を孕んだ掠れ声が、何度も縋るように私の名前を呼ぶ。
離れたばかりの唇がまたすぐに重ねられ、深く、自分の存在を確かめるように口づけられる。
その度に抱き締める腕の力が増していき、呼吸が上がっていく。

「……っ、ん……ふっ」

息を吸う隙もないほどに求められながら、シンシアは目を細めた。

必死ねぇ…

ほんの数日前まで恋人を裏切るまいと自分を抑え込もうとしていた男とは思えない。
恋人を愛していると言い聞かせ、必死に理性へ縋っていたくせに。

私が誘惑したわけではない。肉欲に煽られた訳でもない。
私を失うことに恐怖を感じ、ここまで必死に求めてくれるとは…

本当にお可愛らしい方だこと…

「ミハエル様」

そっと名を呼べば、ミハエルの肩がビクリと跳ねた。
宥める様に強張る肩をなでつつ、優しげな笑みを浮かべる。

「私は、ここにおりますわ」

肩をなぞっていた手を持ち上げて髪をすくように撫でてやれば、ミハエルは苦しげに眉を寄せ、そのまま額を首筋へ埋めた。

「……俺は…」

低く掠れた声。

「貴女が、離れていくのが……耐えられない……」

苦しげに唸るような声と共に、熱い吐息が首筋にかかる。

「……夜、君が隣にいないというだけで…おかしくなりそうだった」

その言葉に内心で笑う。

ようやく自覚した…いや、認めたというべきか。

誰を求めているのか。
誰の隣が心地いいのか。
誰がいないと駄目なのか…

笑みを浮かべて優しく頬へ触れれば、彼は縋るようにその手へすり寄ってくる。

恋人だけを愛すると言っていた口で、私を望む言葉を紡ぎ、私を失うのが怖いのだと、震えている。
誇り高く、真面目なくせに、救いようもないほど愚かな男。


身体だけでなく、心まで依存させようとした私の罠に、しっかりはまってくれたようで嬉しい限りだ。


「私は、ここにおりますわ」

ゆっくりと言い聞かせるようにもう一度囁けば、ミハエルの瞳が揺れた。

「私、貴方の妻ですもの」

そう言うと、ミハエルは瞳を潤ませ、再び強く抱きついてくる。

「……シンシアっ……!」

泣く寸前の歪んだ表情と苦しげな声。
抱き締める腕は痛いほど強い。

「…ありがとう……」

捨てられることを恐れる子供のように声を震わせるミハエル。
そんな彼の背へゆっくりと腕を回す。


さぁ、もう貴方は戻れない。
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