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天敵
しおりを挟む「失セロ」
日が沈む独特の赤の中、凛とした女の声が響く
女の言葉と共に化け物が断末魔を上げて姿を消した
無表情にそれを見届けた女は徐に形のいい眉を顰め、懐から札を取り出すと木の陰へと勢いよく投げつけた
札は地面に落ちる事無く、見えない何かに当たって燃え上がる
火の向こう側には何時の間にか狩衣姿の男が立っていた
「やぁ、今日もご苦労様です」
「…貴様、また来たのか
いい加減に私に付きまとうのはやめろ」
「どうです?今日こそ私の邸によって行きませんか?
めずらしい茶菓子を頂いたんです」
「よらん。話を聞け」
ゆったりと美しい笑みを浮かべて話す男、晴明に女はますます眉間の皺を濃くする
安倍晴明の第一印象は最悪だった
出会ってからもうすぐ半年経つが、その印象は変化していない
…いや、変化はしている。
悪い方に、だが
相手が腕の立つ術者でなければすでに呪い殺しているだろう
何故この男が私よりも能力があるのだ?
唯の変人の癖に・・・
大体何故私に付きまとう?
そんなことしてもこいつに得などないだろう…
嫌悪感と解けない謎への苛立ちを篭めて睨みつける
気づいているだろうにこいつは憎たらしい笑みを崩さない
諦めて目を逸らす
「・・・貴様、一体何が目的なんだ?」
ため息と共にたずねると晴明の笑みの種類が変わった
「知りたいですか?」
質問と同時に距離をつめられ、思わず後ずさる
「前にも言ったでしょう
私は貴女を“気に入った”んです」
また踏み出してきた晴明
女もまた一歩後ずさる
「…それが如何した、私はお前を気に入ってはいない
付きまとわれるのは迷惑だ」
吐き捨てるように言ってみても彼は全く動じない
「今の所、貴女の意思など関係ありません」
「・・・何を言っている?」
眉間の皺を深めて問いかける
晴明は艶やかに笑って一瞬のうちに彼女を抱きすくめた
「なっ!?」
混乱して暴れる彼女をその細身の外見からは想像もできないほどの力で押さえつけ、耳元に唇を寄せた
「貴女は黙って私の妻になればいいのです
心など、後からついてくる」
甘い声音で囁かれ、彼女の顔がカッと熱を帯びる
ますます混乱して全力で暴れると、先ほどの力が嘘のように簡単に解放された
「なななな、何を言っているんだ貴しゃまは!?!?」
慌てて男と距離をとり、怒鳴りつける
しかし噛んでしまった上にその顔は真っ赤
おまけに涙目
かけらも怖くなどない
晴明は思いっきり噴出した
「あはははは!まったく、貴女は本当に可愛らしい」
「な、何だと!?!?笑うな!!!!」
怒りと羞恥でより一層顔を赤くして怒鳴るが晴明は笑い続ける
やっと笑いが収まった頃彼は浮かんだ涙をぬぐいながら言葉を発した
「ふふ、あぁ…久しぶりにこれほど笑わせていただきましたよ
これに免じて今日は大人しく帰ることにします」
「・・・」
「それではまた後日お会いしましょう」
そう言って去っていく背中をジト目で睨みつける術者
その姿をやけに明るい月の光が照らしていた
<f彼女に付きまとう理由ですか?
お慕いしてるからに決まってるでしょう>
(本当は邸に連れ込むつもりだったんですけどね~)
(あまりにも純粋で可愛らしいので今日はやめにしました)
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