ギルド戦力調査部 あなたの旅をサポートします!

秀典

文字の大きさ
8 / 31

そんなにお金が欲しいんですか?

しおりを挟む
★前回のあらすじ。
 ファラさんに捕まってしまった僕は、お風呂場に転がされてロープでし縛られていた。
 僕はファラさんから軽く罰を受け、何とか許され、アギアさんの体を二人が洗い清めた。
 町への移送の準備が整い、僕達はアギア(ミア)さんを自分の町へ連れ帰る。


 クー・ライズ・ライト (僕)
 ファラ・ステラ・ラビス(護衛の人)
 スラー・ミスト・レイン(僕の上司)
 デッドロック・ブラッドバイド(冒険者)
 アリーア・クロフォード・ストラバス(管理お姉さん)
 ミア     (絶望のアギア・賞金首・ナンバー9)


 念の為にミアさんには体全体を隠すローブを着てもらい、やっと移送の準備が整った。
 もちろんその腕は縛りあげられ、剣は布を巻きつけ鞘を作っている。
 フードもなく腕にも剣がなくなっているから、もう手配書の姿とは似ても似つかない。

 これで大丈夫だと、町の入り口にまでやって来ている。
 しかし少し前にファラさんが言っていた言葉が気になった。
 冒険者が襲い掛かって来る的な話をしていたけど、流石にないと思うんだけどなぁ?

「じゃあ進みましょうか」

 僕は三人に声を掛けて町の入り口から移動をしようとしている。

「その女はアンタに任せているけど、移動中に手を出すんじゃないわよ」

 僕は当然のようにファラさんに注意を受けている。
 信用が無いらしい。

「こんな所じゃやりませんって」

「はぁ、こんな所じゃ無きゃやるつもりなの?!」

 答え方を間違えてしまったようだ。
 否定しなければ。

「いやいや、こんな所じゃなくてもやりません!」

「ヨメ、コドモ、クレ」

「何言ってるんですか! そんな事しませんからね!」

 ミアさんは自重してはくれない。
 恥ずかしさとかの教育は受けていないのだろう。

「クーちゃんの誘惑なら負けていられないわ。お姉さん抱いて良いのよ」

 そして知っていても自重しない人。

「いりません!」

 僕は二人の言葉を即座に断った。
 暴力的なファラさんもヤバイが、他の二人はそれ以上に地雷だ。
 お姉さんも相当キツイいが、ミアさんなんて人生が終わるレベルで不味い。
 どう考えても絶対に手を出せない。

 二人からの妙な誘惑を潜り抜け、僕は馬車が倒れていた森の入り口にまでたどり着いた。
 あの横を通り抜ければ、森の街道の始まりだ。

「待って、まずは私が……攻撃してやるわ!」

 ファラさんは懐から投げナイフを十本取り出し、馬車の影に向かって投げつけている
 それは全てガガっと地面に突き刺さっている……のかも?
 正直ここからでは見えないのだが、一応悲鳴などは聞こえてこない。

「チッ、居るならあの辺りだと思ったのだけど、違ったようね」

 いや、まあ襲われるのなら戦わなきゃいけないんだけど、人を傷つけるのはよくないんでは?

「あの、もし人間に当たってたら不味いんじゃないですか?」

「はぁ?! 人を襲って賞金を横取りしようなんて奴はぶっ倒してやればいいのよ! そんな奴等が本当に居たらだけどね」

「お姉さんはあの辺りが怪しいと思うの。ほら、あの木の後ろ辺りよ」

「確かに怪しいわ。いよっと!」

 怪しい場所は徹底的に潰していくファラさん。
 そんなにナイフ持ってたんですね?
 しかし両側に木々が生い茂るここは、隠れる場所が山ほどある。
 木の上や森の少し奥に居たとしたら見つけようがない。

 まあ今回は何所にも居ないとして、馬車の裏側に移動して二人がナイフを回収している。
 森の中の物も回収すると、左右の森を警戒しながら歩き始めた。

「クー、少しだけ聞きたいことがあるのだけど、いいかしら?」

 ファラさんは僕に質問があるらしい。

「え、何ですかファラさん」

「あのさ、少し考えてみたんだけど、今回の仕事ってナンバーズの調査じゃない?」

「あ、はい、そうですね」

「でさ、もし私達がこれを連れ帰ったとするわよね? そうすると私達のボーナスってどうなるのかしら?」

 これと言うのは、ナンバーズナインのアギアさんのことだ。
 つまりミアさんのことである。

「あ~? どうなんでしょうね。何分前例がないので分からないんですけど、本人が居るんだから調査の意味はないんじゃないですかね? でも一応調査の仕事はしてるんですし、多分貰えるんじゃないですか?」

「たぶんじゃ困るんだけど! 宿だってボーナスがあるから取ったんだからね! もし出なかったら私の立てていた予定はどうしてくれるのよ!」

「いや、僕に言われてもどうにもならないですよ。そういう交渉はスラーさんに言ってください」

 まあスラーさんが了承しても、ギルドの上層部が許さなければ意味がないのだけど。

「お姉さんが思うに、タダ働き? むしろ宿代でマイナス?」

「あんた一体どうしてくれるのよ!」

 ファラさんはアーリアさんの言葉を聞いて、僕の肩を掴んでガクガクと揺らし始めた。

「お姉さん、あおらないで! 落ち着いてくださいファラさん。ボーナスは出せませんけど、宿代ぐらいなら支払ってもいいですから!」

「そんなはした金で許せるわけがないでしょう!」

 確かにギルドから出るボーナスと、あそこの宿代では金額として相当な開きがある。

「アイツ、コワイ。ワタシ、フルエル」

 ミアさんはアーリアさんの後ろに隠れてしまっている。
 意外と懐かれているのかもしれない。

「お姉さんも怖いわ。決着がつくまで離れていましょうか」

 自分の所為だとは知らないミアさんと、さっきあおっていたお姉さんが、我関せずとのんびりしている。
 しかしどうやらファラさんが何か思いついたらしい。

「あんた、え~っとミアだっけ? もう人は襲わないって約束できる? 出来るのなら逃がしてあげるわ」

「ワタシ、ヒト、オソワナイ! ヤクソク!」

 確かにボーナスは貰えるかもしれないけど。

「いやファラさん、それは不味いでしょ!」

「こいつはもう人を襲わないし、私達も仕事を終えてボーナスが貰える。何も問題ないじゃないの? ギルド員の私達がこいつを連れ帰る必要もないし」

 捕まえるのは仕事ではないし、冒険者の為にもならないけど。

「不可抗力とはいえ捕まえてしまったのだし、逃がすのは不味いんじゃないかなぁ」

「はぁ、心配しなくてもいいわよ。覆面の冒険者に襲われたって言っとけばいいんだから」

 ファラさんは不正をしようと持ち掛けて来ている。

「流石に嘘は駄目でしょう。冒険者なんてどこにも……」

 ハッと気づいた時、僕達の周りに覆面の冒険者達が現れた。
 周りを見ると六人もいて、囲まれてしまっている。
 戦士風の男が四人と、魔導士風の男が二人。
 ファラさんは気付いていたのか?

 何故この冒険者達が覆面を被っているのか。
 そんなのは言われなくても分かる。
 身元を特定しない為だ。

「貴様等、その賞金首を渡して貰おうか。素直に渡すのならば命までは勘弁してやろう」

 道の正面に立っているのがリーダー格の男だろうか。
 剣を向けながら僕達を脅している。

「ほら、居たじゃない」

「いやファラさん、落ち着いてる場合じゃないでしょう。どうするんですかこれ!」

「どうするって、退治するに決まってるでしょ。言った通りに渡した所で、あいつらは私達を殺すわよ。報告されたら取り消されるかもしれないからね。それ以外はないわ」

「クーちゃん、慌てなくて良いのよ。こんな事をするなんて、相手を倒す実力がなくて貧乏な人達だもの。そんなのにやられたりしないわ」

「そうね。そもそも倒したのは私達だし、魔物より強い私達に勝てるかって話よ」

 ファラさんとアーリアさんは慌てていない。
 流石に一人一人がミアさん並とは思えないけど、相手は僕達より多い。
 相手が冒険者だとすると、チーム戦術も気をつけなければ。
 僕は戦闘準備をしようとリュックから鉄棒を取り出すのだけど。

「舐めてるんじゃねぇぞ!」

 僕達のやり取りに我慢できなかった奴が一人、先陣を切って襲い掛かって来た。

「おっと」

 それは僕に向かって来るのだが、アーリアさんはその剣をガッチリ掴んでいる。
 そのまま軽く剣を奪い取り、グローブで相手の顔を殴った。

「ぐあっ?!」

 防御専門のアーリアさんでも、別に攻撃出来ない訳じゃない。
 流石に一発では倒れなかったけど、攻撃手段を失って後ずさっている。

「う~ん、お姉さん思うんだけど、甘すぎ? あ、クーちゃんこれ持っといて」

 アーリアさんは奪った剣を、僕に向かって放り投げた。

「おわああ?!」

 その剣はクルクルと回転して、目の前の地面に突き刺さっている。
 正確に投げたのだと思うけど、もの凄く怖い。
 僕はその剣に手を振れ、簡単に抜けないようにと地面に押し込んだ。
 しかしそれを切っ掛けにしてか、他の五人が攻撃を始めた。

「死ねええええええええ!」

「ぬううううううううううん!」

「らああああああああああ!」

 ファラさんに一人、アーリアさんには二人。
 残っている二人の内一人は術を唱え、もう一人は何もせずに待機している。
 何もしない奴はヒーラーなのだろう。
 もう一人が唱えているのが、氷の魔法だ。

「アイス・コールド!」

 手から放たれた氷の力は、アーリアさんに向かい飛んで行く。

「お姉さん、魔法が来ます!」

「?!」

 アーリアさんの手は二つしかない。
 敵二人で手一杯で、魔法にまでは対処できない。
 どの攻撃を防ぎ、度の攻撃を食らうのかとアーリアさんは思案している。
 結局は氷魔法を受け止め、一人の剣を何とか防具で受け止め軽い傷を負ってしまった。

 ミアさんが手伝ってくれれば簡単なんだけど、冒険者相手に賞金首である彼女を使うのは不味い。
 しかし僕は相当についているらしい。
 あの魔導士が居る位置は、昨日作った結界と、先ほど剣を打ち付けた中に入っている。
 つまりは……。

「……結界の内なる冷気よ。数値となって強さを示せ。ナンバーズ・フィールド!」

 魔法が使えるということだ。
 でも相手は冒険者。
 僕の魔法の効果を知っていてもおかしくはない。
 それでも氷の魔法だけは、この結界の内でのみ封じられる。
 他属性を持っていても不思議じゃないが、あとは相手の知識次第だ。

「ファイヤ・ショット!」

 弾丸のような炎の属性攻撃は、僕に向かって撃ち放たれた。
 僕は身を捻って炎をやり過ごすと、攻撃を行った魔導士をもう一度見つめる。
 このまま待つべきか、それとも放たれるタイミングでこちらも魔法を変えてみるべきか?
 どちらにしろ賭けにしかならない。

 僕はこのまま待つことを選択し、そして……。

「アイス・コールド!」

 来た!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界で目覚めたら、もふもふ騎士団に保護されてました ~ちびっ子だけど、獣人たちの平穏のためお世話係がんばります!!~

ありぽん
ファンタジー
神のミスで命を落とした芽依は、お詫びとして大好きな異世界へ転生させてもらえることに。だが転生の際、またしても神のミスで、森の奥地に幼女の姿で送られてしまい。転生の反動で眠っていた瞳は、気づかないうちに魔獣たちに囲まれてしまう。 しかしそんな危機的状況の中、森を巡回していた、獣人だけで構成された獣騎士団が駆け付けてくれ、芽依はどうにかこの窮地を切り抜けることができたのだった。 やがて目を覚ました芽依は、初めは混乱したものの、すぐに現状を受け入れ。またその後、同じ種族の人間側で保護する案も出たが、ある事情により、芽依はそのまま獣騎士団の宿舎で暮らすことに。 そこで芽依は、助けてくれた獣騎士たちに恩を返すため、そして日々厳しい任務に向かう獣人たちが少しでも平穏に過ごせるようにと、お世話係を買って出る。 そんな芽依に、当初は不安だった獣人たちだったが、元気で明るい瞳の存在は、次第に獣人たちの力となっていくのだった。 これはちびっ子転生者の芽依が、獣人や魔獣たちのために奮闘し、癒しとなっていく。そんな、ほっこりまったり? な物語。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛

タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】 田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

ゲーム未登場の性格最悪な悪役令嬢に転生したら推しの妻だったので、人生の恩人である推しには離婚して私以外と結婚してもらいます!

クナリ
ファンタジー
江藤樹里は、かつて画家になることを夢見ていた二十七歳の女性。 ある日気がつくと、彼女は大好きな乙女ゲームであるハイグランド・シンフォニーの世界へ転生していた。 しかし彼女が転生したのは、ヘビーユーザーであるはずの自分さえ知らない、ユーフィニアという女性。 ユーフィニアがどこの誰なのかが分からないまま戸惑う樹里の前に、ユーフィニアに仕えているメイドや、樹里がゲーム内で最も推しているキャラであり、どん底にいたときの自分の心を救ってくれたリルベオラスらが現れる。 そして樹里は、絶世の美貌を持ちながらもハイグラの世界では稀代の悪女とされているユーフィニアの実情を知っていく。 国政にまで影響をもたらすほどの悪名を持つユーフィニアを、最愛の恩人であるリルベオラスの妻でいさせるわけにはいかない。 樹里は、ゲーム未登場ながら圧倒的なアクの強さを持つユーフィニアをリルベオラスから引き離すべく、離婚を目指して動き始めた。

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

処理中です...