3 / 13
03.次兄
しおりを挟む
暁兄ちゃんに教材費を届けてから、およそ一週間後のことだった。
「乃恵留ちゃん、どこー?」
「なあに? ママ」
あたしは声の主、つまり、あたしのママのところまで駆け寄った。
「あのね、今度は昴ちゃんが教材費を忘れちゃったみたいなの。悪いんだけど、学校まで届けにいってくれない?」
「ええっ! 何で暁兄ちゃんと同じタイミングで言ってくれなかったの?」
クラスが違ったとしても、教材費の回収のタイミングなんて、同じだと思うけど。でも今回だけは、ママの言う通りにしないといけない。暁兄ちゃんが先週、言っていた。教材費の請求は来週までだと。つまり今週までだということになる。
公立の小学校で、教材費を期限までに払わないからといって、退学ってことはありえないだろうけど。ただ延滞料が追加でかかる可能性があるというのは聞いたことがある。そんなことになったら、あたしのおやつのグレードが下がりかねない。
「仕方ないわね。でも今日のおやつは、先週よりもさらに豪華にしてよ!」
あたしは先週と同じように、教材費を入れたお魚ぬいぐるみリュックを背負わせてもらい、学校に向かって出発した。もちろんその途中で「ぼおいふれんど」の虎太郎を誘って。彼はもちろん「があるふれんど」であるあたしに付き合ってくれた。
あたしたちは、並んでテクテクと小学校までの道のりを歩いていった。
「おおい、またキミたちか。ここは立入禁止だぞ」
あたしと虎太郎は、再び二見さんに正門で止められた。虎太郎はともかく、あたしは関係者よ。だって、この学校に通う生徒の家族だもの。
「あれ、また乃恵留ちゃんじゃない? あとキミは、虎太郎くんだっけ? また暁くんに会いに来たの?」
あたしたちは再び、校庭の花壇で水やりをしていたスミレさんに会った。今日も柄のないセーターとパンツという、地味な格好をしている。そういえば今更だけど、彼女は猫を飼っているのに、名字は「犬飼」なのね。ひょっとして犬も飼っているのかしら? または飼っていたのかしら?
「残念ながら、暁くんはさっき教室で、女の子たちに囲まれて楽しそうにおしゃべりしていたわよ。お兄ちゃんがモテモテで、ヤキモチ妬いたかしら?」
「いいえ、別に。あたしには虎太郎がいるし」
それに虎太郎がいなくても、暁兄ちゃんをそういう変な目で見たりしないわ。それに暁兄ちゃんが女の子たちに囲まれてデレデレしている姿なんて、想像つくわよ。これが昴兄ちゃんだったら、ビックリするだろうけど。
「そういうスミレさんこそ、暁兄ちゃんが女の子たちに囲まれて、ヤキモチ妬いたりしていないわよね?」
あたしが言うのも何だけど、暁兄ちゃんは止めておきなさいよ。遊びだと割り切っているならともかく、結婚まで考えるならお勧めしないわ。まだ昴兄ちゃんの方がマシだと思うわ。
「犬飼さん、その子は僕に用があるんだと思う」
その声と共に現れたのは、昴兄ちゃんだった。暁兄ちゃんの双子の弟だ。一卵性なのか二卵性なのかは分からないけれど、二人の顔はとてもよく似ている。
しかし家族はもちろん、学校の先生も生徒たちも、誰も二人を間違えたりしない。だって昴兄ちゃんは……すごく太っているから。ハッキリ言って、立派な「デブ」だわ。健康診断でも何度も指摘されているから間違いないわ。
もちろん、これが病気とかが原因なら、あたしだってこんな辛口を言ったりしないわ。昴兄ちゃんは、ご飯もお菓子も食べ過ぎよ。たまに暁兄ちゃんのおやつをこっそり拝借しているのを、あたしは知っているんだから。暁兄ちゃんも薄々、勘付いている気がするわ。さすがにあたしのおやつを食べたりまではしないけど。
「あの、昴くん。さすがに学校内で、揚げパンの食べ歩きは……」
スミレさんは、ドン引きしている。だって昴兄ちゃんは、給食に出たんだろう、きな粉の揚げパンを食べながら登場してきたのだから。
「今日はうちのクラス、三人も風邪で休んだんだよね」
「あら。風邪が流行っているのかしら」
少しずつ寒くなってきているから、それも仕方ないわよね。もう十一月だし。あたしだって散歩するにはそろそろ寒いかしら、と思っていたところよ。
「それで、給食の残飯処理にだって税金がかかっているんだろうから、しっかり処分してあげないといけないだろうからさ」
フードロス問題に取り組む姿勢は立派だわ。でもそれ、学校の中で食べ歩きしていい言い訳にはならないから!
昴兄ちゃんは、食べ物が絡むとやたらジャンケンが強くなる。暁兄ちゃんがぼやいていたけれど、給食の余り物をかけたジャンケンでは、勝率九割という驚異的な数値を出しているとか。好き嫌いをしないで何でも食べるのは、褒めるべきところだろうけど。
「それで、乃恵留。そのリュックの中を見ればいいんだな?」
「ちょっと! さっきまで揚げパンを食べていたせいで、きな粉がベッタリついた手で、あたしに触ろうとしないでよ!」
あたしの叫びは昴兄ちゃんには届かず、あたしの背中のお魚ぬいぐるみリュックは、きな粉まみれになってしまった。このリュックはゴミ箱行きの運命かしら。別にあたしは気に入っていた訳じゃないからいいけど。
「あー。これ僕の教材費か。別に明日でも大丈夫だったのに」
「ええっ! またこのパターンなの?」
本当、うちのママったら、その天然なところをどうにかしてちょうだい。そのうち怪しい壺とかを買わされそうで、あたしどころか桐生家全員が心配しているわよ!
「わざわざ届けてくれたんだな。乃恵留、ありがとうな」
「だから、きな粉まみれの手で、あたしに触ろうとしないでよ!」
きな粉まみれの手であたしの頭を撫でようとした昴兄ちゃんの手を、あたしはサッと避けた。昴兄ちゃんを嫌いだと思ったことはないけれど、それとこれとは話が別。彼は「僕、乃恵留に嫌われたかな?」と不思議そうな顔をしているけど、スミレさんは「そりゃそうだ」って顔をしている。
「あれ? 桐生。お客さんかい?」
昴兄ちゃんたちの後ろに現れたのは、彼の担任の三津井だった。先週、犬飼さんたちが揉めていた諸悪の根源だ。いや彼が悪いと一概に言える訳じゃないけれど。でも先週、三津井を巡っていろんな人たちが揉めていたこと、彼は知っているのかしら。
「三津井先生、こんにちは」
あたしは再び、形だけの挨拶をしておいた。三津井だって、あたしの兄の担任の先生な訳だし。あたしは好き嫌いで挨拶をするしないを決めるような、「れでぃ」にあるまじき行動はしないわ。
「はい。三津井先生。乃恵留は僕の教材費をわざわざ届けてくれたんです。これがその教材費です。忘れるといけないし貴重品なので、今ここで渡しておきますね」
昴兄ちゃんは、きな粉まみれの手で、教材費の入った袋を三津井に手渡した。三津井はあからさまに嫌そうな顔をしたけれど、昴兄ちゃんの性格についてアレコレ言うのはもう諦めているらしい。渡された教材費の封筒を、左手の親指と人差し指でつまんで受け取った。ママがパパの下着を洗濯機に入れるときと同じ仕草だわ。
「あ……」
急に三津井が、きな粉まみれの封筒を受け取ったときの十倍くらい嫌そうな顔を見せた。スミレさんも困ったような顔をしている。昴兄ちゃんはさっき食べ終わったはずの揚げパンを、どこからともなく取り出して食べ始めた。どうやら余った三つのうち、二つ目も手に入れていたらしい。
あたしと虎太郎が振り返ると、そこにはあの犬飼さんがいた。また猫のオニキスを連れている。
「やっと見つけたわよ、三津井先生。ジェットちゃんを返してちょうだい!」
犬飼さんは人生における最大の天敵を見る目で、三津井を睨んでいる。彼女にとって、ジェットは孫も同然だったんだろう。本当の孫はスミレさんのはずなのに。もちろんスミレさん以外にも孫がいる可能性はあるけれど。
「お祖母ちゃん、もういい加減にしてよ!」
スミレさんは悲鳴に近い声を上げた。そのせいで、校庭で遊んでいた子供たちの何人かが、こちらに顔を向けてヒソヒソと声を交わしている。かなり悪目立ちしちゃっているわよね、可哀想に。
「虎太郎、ごめんなさいね。ついに運命の天敵がご対面してしまったわ。あたしたちはお暇する?」
もしここで殴り合いの喧嘩でも始まってしまったら、あたしたちだって巻き添えに合う可能性があるわ。さすがにそれは避けたいわ。
「それもありなんだけどさ、あくまで僕たちは第三者。彼らの行く末を見守ってもいいんじゃないかな。こういう刺激的な出来事は、現実じゃ滅多にお目にかかれない訳だし」
「まあ、虎太郎がそう言うなら……」
あたしはあんまり気乗りしないんだけど。まあでも絶対に見たくないって訳じゃないし、虎太郎が見たいなら最後まで二人の行く末を見届けましょうか。もちろん少し離れたところで。
「犬飼さん。ジェットちゃんのことは申し訳なく思っています。しかし僕にはどうすることもできないです。もしジェットちゃんの仏壇のご用意があれば、ぜひ線香を上げさせてください」
犬飼さんが三津井に掴みかかろうとしたところで、二見さんが「落ち着いて下さい」と割って入ってきた。けれど犬飼さんの攻撃は止まらなかった。
「ふざけないで! あんたがやったことは人殺しと同じよ!」
「あの、すみません。何の騒ぎですか?」
ここで割って入ったのが、赤いフレームの眼鏡をかけた、うちのママと同い年くらいの女性だった。髪は肩にかからないくらいのボブカットで、濃紺のスーツを着ている。いかにも「教育ママ」って感じの外見だった。でも左手の薬指を見る限り、子供がいないどころか結婚もしていないわね。結構な美人だと思うけど、もったいないわね。結婚願望がないのかしら。それとも理想が高すぎるのかしら。
「あの人は誰かしら。すっごい美人だけど」
「乃恵留は、あの先生は知らないっけ? 理科の担当の大理優香子先生だよ。好きな食べ物はマカロンアイスだよ」
昴兄ちゃん、揚げパンを食べながらの器用な紹介をありがとう。そして好きな食べ物まで把握しているなんて、さすがだわ。
「ああ、大理先生。校門前で騒ぎを起こしてしまって、すみません」
ここであたしは、とんでもないものを見てしまった。三津井は割って入ってきた大理先生の肩に、さりげなく手を置いた。あらやだ、この二人、付き合っているのかしら。全然、お似合いでも何でもないけれど。
と思ったら、大理先生の方はスススッと三津井から距離を置いた。三津井が大理先生を口説いているけど、大理先生の方は相手にしていないって感じね。まあ、三津井の方が明らかに年下だからね。いくら甘いマスクをしていても、頼りなさそうだから興味ないわ、って思われているのかしらね。
「ここで騒がれても困ります。生徒たちも困惑しています。お引き取りください」
「ふざけるんじゃないわよ。絶対に訴えてやるんだから!」
訴えること自体は今すぐにできるんだから、やりたいならすればいいのに。弁護士が事案を引き受けてくれるかとか、裁判所がどう判断するかとかは、また別の問題だけど。
「訴えてもいいと思いますが、三津井先生のやったことは何の罪に問われるんですか?」
そこで話に割って入ってきたのは、昴兄ちゃんだった。彼は揚げパンを食べながらも、他の人にもハッキリと聞き取れるように器用にしゃべっている。
「テレビやインターネットでよく言われている『猫バンバン』ですが、これを怠ったことで三津井先生に課せられる罪状は、せいぜい道路運送車両法ですね。車を運転する人は、その車を安全な状態で発車させられるかどうかを確認する義務があります。しかし今はまだ十一月。北海道や東北ならともかく、東京で『猫バンバン』をやらなかったからといって、これが成立するかは微妙なところですね」
昴兄ちゃん、小学生の割には、どこからともなく変な知識を仕入れてくるのよね。そしてあたしに偉そうに聞かせるものだから、あたしにまで変な知識が広がっていく。どうせなら、あたしたちのママに聞かせてあげて欲しいわ。
「あと今回、子猫を死なせてしまったのは故意ではないので、器物損壊罪や動物愛護管理法違反に問われることはないでしょう。ここまでは刑事罰についてです。理解できていますか?」
内容は理解できても、何で揚げパンを食べている小学生から法律を教えられているのかは、理解できていないだろう。誰も何も言わずにポカンとしているのを、昴兄ちゃんは「理解できている」と受け取ったようで、話を続けた。
「次は民事上ですが、故意であっても過失であっても、他人のペットを死なせてしまったら、損害賠償責任が問われます」
「ほら! やっぱりあなたは、ジェットちゃんを死なせた罪で裁かれるのよ!」
犬飼さんは得意げな顔を見せた。正直、ここにいる面子は全員がドン引きしているだろう。もちろんあたしも含めて。
「しかしペットは法的には『物』として扱われます。他人の物を誤って壊してしまったのと変わらないんです。その際の賠償金として請求できるのは、せいぜい二十万円ってところですね」
その金額が高いのか安いのか、あたしにはよく分からないけれど。でも犬飼さんの不服そうな顔を見る限り、思っていたよりも安かったんだろう。
「それより犬飼さんの方だって、覚悟した方がいいですよ。あなたが子猫を放し飼いにしていたせいで、三津井先生は車をダメにしてしまいました。当然、彼が民事訴訟を起こせば、修理費と清掃費を支払う義務が生じます。それだけではありません」
昴兄ちゃんは二つ目の揚げパンを食べ終わると、どこからともなく三つ目を取り出した。休んだ子たちの分、全部、総取りしてきたの? 昴兄ちゃんのクラスの子たち、誰も何も文句を言わなかったの?
「三津井先生はこの事件をきっかけに、子猫のグロテスクな死骸の光景が頭から離れずに、不眠症気味になっています。ここ最近は心療内科でもらった睡眠薬を毎日、飲んでいます。そうですよね?」
「確かにそうだが、何で桐生がそれを知っているんだ?」
三津井は気味の悪い虫を見るような目で、昴兄ちゃんを見た。おそらく教員室にでも行ったとき、三津井の机の近くのゴミ箱に捨ててあった錠剤の包みを確認して、何の薬なのか調べたんだろう。やっていることがストーカーそのものよ。何が楽しくて三津井のストーカーなんてやっているのよ!
「さらに三津井先生は、そのときの事故のトラウマが原因で車を運転することができなくなりました。よってずっと電車通勤をしています。そうですよね?」
「あ、ああ。そうだが。でも何で知っているんだ?」
三津井は大量発生している気味の悪い虫を見るような目で、昴兄ちゃんを見た。しかしこれはストーカーというほどではない。最寄り駅の方角から徒歩通勤している姿を何度も見ているんだろう。
「そうなると、犬飼さんのせいで三津井先生は、不眠症と車の運転に対するトラウマを植え付けられたことになります。これは精神的苦痛に対する慰謝料請求の対象になると思います。正直、二十万円どころじゃ済みませんよ。裁判所にもっていけば、二百万円は超えるかも……」
ここまで言ったところで犬飼さんは「絶対に許さないから!」と捨て台詞を言って去っていった。あたしは彼女のことより、彼女が連れていたオニキスのことが気になった。
「あの、桐生。正直、助かったが……何で刑事罰どころか、民事上のことまで知っているんだ?」
「ただのハッタリです。僕は法律家じゃないので。裁判所がどう判断するかなんて、実際は知りません。気になるなら弁護士に相談するか、法テラスで相談するか、チャットAIにでも聞いてください」
昴兄ちゃんは三つ目の揚げパンを食べ終わって満足したらしく、あたしに「それじゃあ教室に戻るわ。母さんによろしく」と言って去っていった。
「あの、祖母がすみません……」
スミレさんは三津井に何度もペコペコ謝っている。
「いや、いいんだ。ペットだって、立派な家族だ。急に家族を亡くしたんだから、平常心でいられないのは仕方ないだろうし」
三津井、ただの女好きだと思っていたけれど、意外とできた人間なのね。それとも相手が、小学生とはいえ女だから、かしら。さすがに小学生を女として見ているなら、今すぐ学校を辞めて欲しいけれど。あたしだけでなく、生徒の保護者全員が同じことを思うでしょうけど。
ここで昼休みの終わりを告げる鐘が鳴った。三津井も大理先生もスミレさんも、校舎に戻っていった。二見さんはあたしたちに「ほら。キミたちも、もう用は済んだだろう? 早く出ていきな」と、動物を追い払う「しっしっ」というポーズを取った。
やっぱりあたし、二見さんのこと、嫌いだわ! そもそもさっきの騒ぎだって、三津井と大理先生に任せっきりにしていたじゃない。警備員としてダメダメよ!
「はあ。先週に続き、今日も変な騒動に巻き込まれたわね」
「お疲れ、乃恵留。まあ生きていれば、こんなトラブルだってあるよ。僕の『行く末を見てみたい』って希望に付き合ってくれて、ありがとうね」
あたしたちは虎太郎の家に向かって歩いている。もう今日は、このままお散歩デートをする気になれないわ。というか、先週も同じことを思っていたわね。
「ちょっと気になったのがね、あの猫のオニキスのことよ」
あの猫は先週と今日の騒動について、どう感じているのかしら。
「あの子がどう考えているかなんて分からないけどさ、僕が考えたことを言っていいかい?」
「なあに? 虎太郎」
そんなのいつでも歓迎だわ。だってあたしはあなたの「があるふれんど」だもの。
「あの犬飼さんって女性はさ、家族を亡くした悲しみでいっぱいになっていて、それを誰かにぶつけたいって気持ちになっているのは分かるんだよ」
「それはあたしも、分からなくはないけど」
本音を言うと分からないけど。あたしは経験したことないし。でも虎太郎は去年、お祖父様を亡くしたって言っていたから、分かるのかもしれない。
「ただ亡くなった家族のことばかり考えて、残された家族のことを考えていなさすぎというか……スミレさんだって困っていただろう?」
「それはあたしも思ったわ」
亡くなったジェットのことばかりで、目の前にいる孫娘が困っていることは、気にも止めなかった。スミレさんはきっと悲しかっただろうな。
「単なる勘だけどね、オニキスも同じようなことを考えていたんじゃないかな。自分の子供を死なせた相手を怒ってくれているのは嬉しいかもしれないけど。でもその分、残された自分たちを大事にしようとして欲しい、みたいな感じの」
亡くなった家族を弔う気持ちはもちろん持つべきだけど、まだ生きている家族のことは、それ以上に考えるべきよね。
別に三津井のことは許さなくていいわ。でもその憎しみの気持ちの比率が高すぎるせいで、スミレさんやオニキスのことを考えないっていうのは、間違っている。あたしはそんな風に思うわ。
「乃恵留ちゃん、どこー?」
「なあに? ママ」
あたしは声の主、つまり、あたしのママのところまで駆け寄った。
「あのね、今度は昴ちゃんが教材費を忘れちゃったみたいなの。悪いんだけど、学校まで届けにいってくれない?」
「ええっ! 何で暁兄ちゃんと同じタイミングで言ってくれなかったの?」
クラスが違ったとしても、教材費の回収のタイミングなんて、同じだと思うけど。でも今回だけは、ママの言う通りにしないといけない。暁兄ちゃんが先週、言っていた。教材費の請求は来週までだと。つまり今週までだということになる。
公立の小学校で、教材費を期限までに払わないからといって、退学ってことはありえないだろうけど。ただ延滞料が追加でかかる可能性があるというのは聞いたことがある。そんなことになったら、あたしのおやつのグレードが下がりかねない。
「仕方ないわね。でも今日のおやつは、先週よりもさらに豪華にしてよ!」
あたしは先週と同じように、教材費を入れたお魚ぬいぐるみリュックを背負わせてもらい、学校に向かって出発した。もちろんその途中で「ぼおいふれんど」の虎太郎を誘って。彼はもちろん「があるふれんど」であるあたしに付き合ってくれた。
あたしたちは、並んでテクテクと小学校までの道のりを歩いていった。
「おおい、またキミたちか。ここは立入禁止だぞ」
あたしと虎太郎は、再び二見さんに正門で止められた。虎太郎はともかく、あたしは関係者よ。だって、この学校に通う生徒の家族だもの。
「あれ、また乃恵留ちゃんじゃない? あとキミは、虎太郎くんだっけ? また暁くんに会いに来たの?」
あたしたちは再び、校庭の花壇で水やりをしていたスミレさんに会った。今日も柄のないセーターとパンツという、地味な格好をしている。そういえば今更だけど、彼女は猫を飼っているのに、名字は「犬飼」なのね。ひょっとして犬も飼っているのかしら? または飼っていたのかしら?
「残念ながら、暁くんはさっき教室で、女の子たちに囲まれて楽しそうにおしゃべりしていたわよ。お兄ちゃんがモテモテで、ヤキモチ妬いたかしら?」
「いいえ、別に。あたしには虎太郎がいるし」
それに虎太郎がいなくても、暁兄ちゃんをそういう変な目で見たりしないわ。それに暁兄ちゃんが女の子たちに囲まれてデレデレしている姿なんて、想像つくわよ。これが昴兄ちゃんだったら、ビックリするだろうけど。
「そういうスミレさんこそ、暁兄ちゃんが女の子たちに囲まれて、ヤキモチ妬いたりしていないわよね?」
あたしが言うのも何だけど、暁兄ちゃんは止めておきなさいよ。遊びだと割り切っているならともかく、結婚まで考えるならお勧めしないわ。まだ昴兄ちゃんの方がマシだと思うわ。
「犬飼さん、その子は僕に用があるんだと思う」
その声と共に現れたのは、昴兄ちゃんだった。暁兄ちゃんの双子の弟だ。一卵性なのか二卵性なのかは分からないけれど、二人の顔はとてもよく似ている。
しかし家族はもちろん、学校の先生も生徒たちも、誰も二人を間違えたりしない。だって昴兄ちゃんは……すごく太っているから。ハッキリ言って、立派な「デブ」だわ。健康診断でも何度も指摘されているから間違いないわ。
もちろん、これが病気とかが原因なら、あたしだってこんな辛口を言ったりしないわ。昴兄ちゃんは、ご飯もお菓子も食べ過ぎよ。たまに暁兄ちゃんのおやつをこっそり拝借しているのを、あたしは知っているんだから。暁兄ちゃんも薄々、勘付いている気がするわ。さすがにあたしのおやつを食べたりまではしないけど。
「あの、昴くん。さすがに学校内で、揚げパンの食べ歩きは……」
スミレさんは、ドン引きしている。だって昴兄ちゃんは、給食に出たんだろう、きな粉の揚げパンを食べながら登場してきたのだから。
「今日はうちのクラス、三人も風邪で休んだんだよね」
「あら。風邪が流行っているのかしら」
少しずつ寒くなってきているから、それも仕方ないわよね。もう十一月だし。あたしだって散歩するにはそろそろ寒いかしら、と思っていたところよ。
「それで、給食の残飯処理にだって税金がかかっているんだろうから、しっかり処分してあげないといけないだろうからさ」
フードロス問題に取り組む姿勢は立派だわ。でもそれ、学校の中で食べ歩きしていい言い訳にはならないから!
昴兄ちゃんは、食べ物が絡むとやたらジャンケンが強くなる。暁兄ちゃんがぼやいていたけれど、給食の余り物をかけたジャンケンでは、勝率九割という驚異的な数値を出しているとか。好き嫌いをしないで何でも食べるのは、褒めるべきところだろうけど。
「それで、乃恵留。そのリュックの中を見ればいいんだな?」
「ちょっと! さっきまで揚げパンを食べていたせいで、きな粉がベッタリついた手で、あたしに触ろうとしないでよ!」
あたしの叫びは昴兄ちゃんには届かず、あたしの背中のお魚ぬいぐるみリュックは、きな粉まみれになってしまった。このリュックはゴミ箱行きの運命かしら。別にあたしは気に入っていた訳じゃないからいいけど。
「あー。これ僕の教材費か。別に明日でも大丈夫だったのに」
「ええっ! またこのパターンなの?」
本当、うちのママったら、その天然なところをどうにかしてちょうだい。そのうち怪しい壺とかを買わされそうで、あたしどころか桐生家全員が心配しているわよ!
「わざわざ届けてくれたんだな。乃恵留、ありがとうな」
「だから、きな粉まみれの手で、あたしに触ろうとしないでよ!」
きな粉まみれの手であたしの頭を撫でようとした昴兄ちゃんの手を、あたしはサッと避けた。昴兄ちゃんを嫌いだと思ったことはないけれど、それとこれとは話が別。彼は「僕、乃恵留に嫌われたかな?」と不思議そうな顔をしているけど、スミレさんは「そりゃそうだ」って顔をしている。
「あれ? 桐生。お客さんかい?」
昴兄ちゃんたちの後ろに現れたのは、彼の担任の三津井だった。先週、犬飼さんたちが揉めていた諸悪の根源だ。いや彼が悪いと一概に言える訳じゃないけれど。でも先週、三津井を巡っていろんな人たちが揉めていたこと、彼は知っているのかしら。
「三津井先生、こんにちは」
あたしは再び、形だけの挨拶をしておいた。三津井だって、あたしの兄の担任の先生な訳だし。あたしは好き嫌いで挨拶をするしないを決めるような、「れでぃ」にあるまじき行動はしないわ。
「はい。三津井先生。乃恵留は僕の教材費をわざわざ届けてくれたんです。これがその教材費です。忘れるといけないし貴重品なので、今ここで渡しておきますね」
昴兄ちゃんは、きな粉まみれの手で、教材費の入った袋を三津井に手渡した。三津井はあからさまに嫌そうな顔をしたけれど、昴兄ちゃんの性格についてアレコレ言うのはもう諦めているらしい。渡された教材費の封筒を、左手の親指と人差し指でつまんで受け取った。ママがパパの下着を洗濯機に入れるときと同じ仕草だわ。
「あ……」
急に三津井が、きな粉まみれの封筒を受け取ったときの十倍くらい嫌そうな顔を見せた。スミレさんも困ったような顔をしている。昴兄ちゃんはさっき食べ終わったはずの揚げパンを、どこからともなく取り出して食べ始めた。どうやら余った三つのうち、二つ目も手に入れていたらしい。
あたしと虎太郎が振り返ると、そこにはあの犬飼さんがいた。また猫のオニキスを連れている。
「やっと見つけたわよ、三津井先生。ジェットちゃんを返してちょうだい!」
犬飼さんは人生における最大の天敵を見る目で、三津井を睨んでいる。彼女にとって、ジェットは孫も同然だったんだろう。本当の孫はスミレさんのはずなのに。もちろんスミレさん以外にも孫がいる可能性はあるけれど。
「お祖母ちゃん、もういい加減にしてよ!」
スミレさんは悲鳴に近い声を上げた。そのせいで、校庭で遊んでいた子供たちの何人かが、こちらに顔を向けてヒソヒソと声を交わしている。かなり悪目立ちしちゃっているわよね、可哀想に。
「虎太郎、ごめんなさいね。ついに運命の天敵がご対面してしまったわ。あたしたちはお暇する?」
もしここで殴り合いの喧嘩でも始まってしまったら、あたしたちだって巻き添えに合う可能性があるわ。さすがにそれは避けたいわ。
「それもありなんだけどさ、あくまで僕たちは第三者。彼らの行く末を見守ってもいいんじゃないかな。こういう刺激的な出来事は、現実じゃ滅多にお目にかかれない訳だし」
「まあ、虎太郎がそう言うなら……」
あたしはあんまり気乗りしないんだけど。まあでも絶対に見たくないって訳じゃないし、虎太郎が見たいなら最後まで二人の行く末を見届けましょうか。もちろん少し離れたところで。
「犬飼さん。ジェットちゃんのことは申し訳なく思っています。しかし僕にはどうすることもできないです。もしジェットちゃんの仏壇のご用意があれば、ぜひ線香を上げさせてください」
犬飼さんが三津井に掴みかかろうとしたところで、二見さんが「落ち着いて下さい」と割って入ってきた。けれど犬飼さんの攻撃は止まらなかった。
「ふざけないで! あんたがやったことは人殺しと同じよ!」
「あの、すみません。何の騒ぎですか?」
ここで割って入ったのが、赤いフレームの眼鏡をかけた、うちのママと同い年くらいの女性だった。髪は肩にかからないくらいのボブカットで、濃紺のスーツを着ている。いかにも「教育ママ」って感じの外見だった。でも左手の薬指を見る限り、子供がいないどころか結婚もしていないわね。結構な美人だと思うけど、もったいないわね。結婚願望がないのかしら。それとも理想が高すぎるのかしら。
「あの人は誰かしら。すっごい美人だけど」
「乃恵留は、あの先生は知らないっけ? 理科の担当の大理優香子先生だよ。好きな食べ物はマカロンアイスだよ」
昴兄ちゃん、揚げパンを食べながらの器用な紹介をありがとう。そして好きな食べ物まで把握しているなんて、さすがだわ。
「ああ、大理先生。校門前で騒ぎを起こしてしまって、すみません」
ここであたしは、とんでもないものを見てしまった。三津井は割って入ってきた大理先生の肩に、さりげなく手を置いた。あらやだ、この二人、付き合っているのかしら。全然、お似合いでも何でもないけれど。
と思ったら、大理先生の方はスススッと三津井から距離を置いた。三津井が大理先生を口説いているけど、大理先生の方は相手にしていないって感じね。まあ、三津井の方が明らかに年下だからね。いくら甘いマスクをしていても、頼りなさそうだから興味ないわ、って思われているのかしらね。
「ここで騒がれても困ります。生徒たちも困惑しています。お引き取りください」
「ふざけるんじゃないわよ。絶対に訴えてやるんだから!」
訴えること自体は今すぐにできるんだから、やりたいならすればいいのに。弁護士が事案を引き受けてくれるかとか、裁判所がどう判断するかとかは、また別の問題だけど。
「訴えてもいいと思いますが、三津井先生のやったことは何の罪に問われるんですか?」
そこで話に割って入ってきたのは、昴兄ちゃんだった。彼は揚げパンを食べながらも、他の人にもハッキリと聞き取れるように器用にしゃべっている。
「テレビやインターネットでよく言われている『猫バンバン』ですが、これを怠ったことで三津井先生に課せられる罪状は、せいぜい道路運送車両法ですね。車を運転する人は、その車を安全な状態で発車させられるかどうかを確認する義務があります。しかし今はまだ十一月。北海道や東北ならともかく、東京で『猫バンバン』をやらなかったからといって、これが成立するかは微妙なところですね」
昴兄ちゃん、小学生の割には、どこからともなく変な知識を仕入れてくるのよね。そしてあたしに偉そうに聞かせるものだから、あたしにまで変な知識が広がっていく。どうせなら、あたしたちのママに聞かせてあげて欲しいわ。
「あと今回、子猫を死なせてしまったのは故意ではないので、器物損壊罪や動物愛護管理法違反に問われることはないでしょう。ここまでは刑事罰についてです。理解できていますか?」
内容は理解できても、何で揚げパンを食べている小学生から法律を教えられているのかは、理解できていないだろう。誰も何も言わずにポカンとしているのを、昴兄ちゃんは「理解できている」と受け取ったようで、話を続けた。
「次は民事上ですが、故意であっても過失であっても、他人のペットを死なせてしまったら、損害賠償責任が問われます」
「ほら! やっぱりあなたは、ジェットちゃんを死なせた罪で裁かれるのよ!」
犬飼さんは得意げな顔を見せた。正直、ここにいる面子は全員がドン引きしているだろう。もちろんあたしも含めて。
「しかしペットは法的には『物』として扱われます。他人の物を誤って壊してしまったのと変わらないんです。その際の賠償金として請求できるのは、せいぜい二十万円ってところですね」
その金額が高いのか安いのか、あたしにはよく分からないけれど。でも犬飼さんの不服そうな顔を見る限り、思っていたよりも安かったんだろう。
「それより犬飼さんの方だって、覚悟した方がいいですよ。あなたが子猫を放し飼いにしていたせいで、三津井先生は車をダメにしてしまいました。当然、彼が民事訴訟を起こせば、修理費と清掃費を支払う義務が生じます。それだけではありません」
昴兄ちゃんは二つ目の揚げパンを食べ終わると、どこからともなく三つ目を取り出した。休んだ子たちの分、全部、総取りしてきたの? 昴兄ちゃんのクラスの子たち、誰も何も文句を言わなかったの?
「三津井先生はこの事件をきっかけに、子猫のグロテスクな死骸の光景が頭から離れずに、不眠症気味になっています。ここ最近は心療内科でもらった睡眠薬を毎日、飲んでいます。そうですよね?」
「確かにそうだが、何で桐生がそれを知っているんだ?」
三津井は気味の悪い虫を見るような目で、昴兄ちゃんを見た。おそらく教員室にでも行ったとき、三津井の机の近くのゴミ箱に捨ててあった錠剤の包みを確認して、何の薬なのか調べたんだろう。やっていることがストーカーそのものよ。何が楽しくて三津井のストーカーなんてやっているのよ!
「さらに三津井先生は、そのときの事故のトラウマが原因で車を運転することができなくなりました。よってずっと電車通勤をしています。そうですよね?」
「あ、ああ。そうだが。でも何で知っているんだ?」
三津井は大量発生している気味の悪い虫を見るような目で、昴兄ちゃんを見た。しかしこれはストーカーというほどではない。最寄り駅の方角から徒歩通勤している姿を何度も見ているんだろう。
「そうなると、犬飼さんのせいで三津井先生は、不眠症と車の運転に対するトラウマを植え付けられたことになります。これは精神的苦痛に対する慰謝料請求の対象になると思います。正直、二十万円どころじゃ済みませんよ。裁判所にもっていけば、二百万円は超えるかも……」
ここまで言ったところで犬飼さんは「絶対に許さないから!」と捨て台詞を言って去っていった。あたしは彼女のことより、彼女が連れていたオニキスのことが気になった。
「あの、桐生。正直、助かったが……何で刑事罰どころか、民事上のことまで知っているんだ?」
「ただのハッタリです。僕は法律家じゃないので。裁判所がどう判断するかなんて、実際は知りません。気になるなら弁護士に相談するか、法テラスで相談するか、チャットAIにでも聞いてください」
昴兄ちゃんは三つ目の揚げパンを食べ終わって満足したらしく、あたしに「それじゃあ教室に戻るわ。母さんによろしく」と言って去っていった。
「あの、祖母がすみません……」
スミレさんは三津井に何度もペコペコ謝っている。
「いや、いいんだ。ペットだって、立派な家族だ。急に家族を亡くしたんだから、平常心でいられないのは仕方ないだろうし」
三津井、ただの女好きだと思っていたけれど、意外とできた人間なのね。それとも相手が、小学生とはいえ女だから、かしら。さすがに小学生を女として見ているなら、今すぐ学校を辞めて欲しいけれど。あたしだけでなく、生徒の保護者全員が同じことを思うでしょうけど。
ここで昼休みの終わりを告げる鐘が鳴った。三津井も大理先生もスミレさんも、校舎に戻っていった。二見さんはあたしたちに「ほら。キミたちも、もう用は済んだだろう? 早く出ていきな」と、動物を追い払う「しっしっ」というポーズを取った。
やっぱりあたし、二見さんのこと、嫌いだわ! そもそもさっきの騒ぎだって、三津井と大理先生に任せっきりにしていたじゃない。警備員としてダメダメよ!
「はあ。先週に続き、今日も変な騒動に巻き込まれたわね」
「お疲れ、乃恵留。まあ生きていれば、こんなトラブルだってあるよ。僕の『行く末を見てみたい』って希望に付き合ってくれて、ありがとうね」
あたしたちは虎太郎の家に向かって歩いている。もう今日は、このままお散歩デートをする気になれないわ。というか、先週も同じことを思っていたわね。
「ちょっと気になったのがね、あの猫のオニキスのことよ」
あの猫は先週と今日の騒動について、どう感じているのかしら。
「あの子がどう考えているかなんて分からないけどさ、僕が考えたことを言っていいかい?」
「なあに? 虎太郎」
そんなのいつでも歓迎だわ。だってあたしはあなたの「があるふれんど」だもの。
「あの犬飼さんって女性はさ、家族を亡くした悲しみでいっぱいになっていて、それを誰かにぶつけたいって気持ちになっているのは分かるんだよ」
「それはあたしも、分からなくはないけど」
本音を言うと分からないけど。あたしは経験したことないし。でも虎太郎は去年、お祖父様を亡くしたって言っていたから、分かるのかもしれない。
「ただ亡くなった家族のことばかり考えて、残された家族のことを考えていなさすぎというか……スミレさんだって困っていただろう?」
「それはあたしも思ったわ」
亡くなったジェットのことばかりで、目の前にいる孫娘が困っていることは、気にも止めなかった。スミレさんはきっと悲しかっただろうな。
「単なる勘だけどね、オニキスも同じようなことを考えていたんじゃないかな。自分の子供を死なせた相手を怒ってくれているのは嬉しいかもしれないけど。でもその分、残された自分たちを大事にしようとして欲しい、みたいな感じの」
亡くなった家族を弔う気持ちはもちろん持つべきだけど、まだ生きている家族のことは、それ以上に考えるべきよね。
別に三津井のことは許さなくていいわ。でもその憎しみの気持ちの比率が高すぎるせいで、スミレさんやオニキスのことを考えないっていうのは、間違っている。あたしはそんな風に思うわ。
0
あなたにおすすめの小説
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
エリート警察官の溺愛は甘く切ない
日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。
両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉
短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜
美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?
烏の王と宵の花嫁
水川サキ
キャラ文芸
吸血鬼の末裔として生まれた華族の娘、月夜は家族から虐げられ孤独に生きていた。
唯一の慰めは、年に一度届く〈からす〉からの手紙。
その送り主は太陽の化身と称される上級華族、縁樹だった。
ある日、姉の縁談相手を誤って傷つけた月夜は、父に遊郭へ売られそうになり屋敷を脱出するが、陽の下で倒れてしまう。
死を覚悟した瞬間〈からす〉の正体である縁樹が現れ、互いの思惑から契約結婚を結ぶことになる。
※初出2024年7月
王妃そっちのけの王様は二人目の側室を娶る
家紋武範
恋愛
王妃は自分の人生を憂いていた。国王が王子の時代、彼が六歳、自分は五歳で婚約したものの、顔合わせする度に喧嘩。
しかし王妃はひそかに彼を愛していたのだ。
仲が最悪のまま二人は結婚し、結婚生活が始まるが当然国王は王妃の部屋に来ることはない。
そればかりか国王は側室を持ち、さらに二人目の側室を王宮に迎え入れたのだった。
『嫌われ令嬢ですが、最終的に溺愛される予定です』
由香
恋愛
貴族令嬢エマは、自分が周囲から嫌われていると信じて疑わなかった。
婚約者である侯爵令息レオンからも距離を取られ、冷たい視線を向けられている――そう思っていたのに。
ある日、思いがけず聞いてしまった彼の本音。
「君を嫌ったことなど、一度もない」
それは誤解とすれ違いが重なっただけの、両片思いだった。
勘違いから始まる、甘くて優しい溺愛恋物語。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる